ガーディアン・フリート❮はいふり×GAMERA❯   作:濁酒三十六

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ガメラ登場、そして物語一日目が間もなく終わる…。


五話・灼熱の咆哮

 伝声管より聴こえる破壊音と宗谷ましろや他の艦橋クルー達が一斉に艦長を呼び叫ぶ声が響き渡り、艦内もまたパニックを起こしかけている中で水測員である万里小路楓はずっとソナーに集中し、自分が今耳に聴こえている海底音に戦慄を覚える。深海深くより上がって来る()()()()()()()()()()は浮上しながら航洋艦晴風に近付いているのだ。

 

(一体、何が起こっておりますの!?)

 

 楓は晴風がギャオスに襲われているこの状況下で自分のなせる責務を果たす。

 

「艦橋、応答願います!

此方水測室…万里小路、海底から未確認の巨大な物体が急速に浮上して参ります!

応答願います、此方水測室、何方か応答願います!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギャオスのアギトに捕まった明乃をましろはバールを手にして何度も剥き出しの歯茎を殴りつけ、牙と牙の間にバールを突っ込み梃子にして何とか明乃を助けようとするが巨大ギャオスの口は開かず、頭から両肩…左腕をダラリと見せている明乃は元気のない顔を上げてましろに話しかけた。

 

「シロちゃん…もう、いいよ。みんなを…連れ、て…逃…げて?」

 

 弱々しく苦しげに笑い、後を託そうとする明乃。だがましろは大きく首を横に二度振り、バールをギャオスの歯茎に突き刺した。

 

「嫌です、艦長の命令でも聞けません!」

「シロちゃ…」

「私なんか助けず逃げれば良かったんだ!!

なのに…、お前は……。」

 

 宗谷ましろは巨大ギャオスが艦橋に突っ込んで来たのと同時に岬明乃に強く突き飛ばされて助かったのである。そしてもし明乃がましろを助けずに逃げていれば彼女が助かっていたであろう。しかし明乃はそうはせず、無意識にましろをギャオスから遠ざけようと突き飛ばしたのであった。

 

「だっ…、て…、シロ、…ちゃん…の、方が、……頭…いい…から……。」

 

 そこまで言った明乃は咳き込み、血を吐き出した。肺に血が溜まり始めているのだ。それを見てしまったましろはバールを投げ捨てて明乃に駆け寄り彼女の左手を握り取った。

 

「わたしはっ、…私は…運が良くないんだ。私なんかよりお前…、お前の様な艦長が居てくれなくてはいけないんだ……。」

 

 ましろは最早彼女が持たないと解っているのにその手を離す事が出来なかった。涙も止まらず、今まで明乃に対し強情な態度を取っていた事をとても悔やんだ。その光景を納沙幸子や知床鈴達はましろと同じように涙を流し…嗚咽を洩らしながら見つめる。だが其処へソナー室から連絡が入った。

 

《…応答願います、此方万里小路!巨大な物体は晴風の真下より急速に浮上しております!》

 

 ひしゃげた伝声管より聴こえた声に反応したのは幸子で直ぐに伝声管より返事を返した。

 

「万里小路さん、納沙です!

状況をもう一度お願いします!?」

 

 幸子の要求に楓は今一度自分が手にした情報を端的に報告をした。

 

「海底、晴風の真下より未確認の巨大物体が急速に浮上、間もなく晴風の右舷側に浮上されます!!」

 

 それを聞いた幸子の頭にある存在が閃いた。

 

「右舷側注意、“大きいの”が浮上してきますよ!」

 

 その言葉に内田まゆみが即動いて右舷側を確かめようとしたその時、物凄い勢いで晴風を越す水柱が立ち上がり水柱が崩れる刹那に大きな異形の腕が突き出て鋭い爪がギャオスの左脇腹を深く抉り凄まじい力で晴風から引き剥がした。晴風の船体が大きく揺れ、内田まゆみは驚愕して開いた口が塞がらず、鈴はあまりの恐怖から腰が抜けてしまう。そしてましろはギャオスが晴風より引き剥がされた事で明乃も一緒に外へと放り出されてしまい破壊された艦橋端まで追った。だが立ち上った水柱が今度は滝の如く落下し艦橋内に濁流となって入り込んだ。皆掴まれる物に掴まり、腰が抜け動けなかった鈴を野間マチコが捕まえて助けた。宗谷ましろも流されそうにはなったが何とか破壊された部分端にしがみついて難を逃れた。

 

「艦長っ、………なに、あれ!?!?」

 

 ギャオスが破壊した艦橋からましろは晴風の傍らにそびえる恐らくはギャオスよりも巨大で黒く…亀の様な異形を恐怖の眼差しで見上げるが、幸子がましろの側に来て興奮しながらあの異形の正体を彼女に教えた。

 

「副長、()()()ですよ…、“GA・ME・RA”!

ギャオスの天敵、地球の守護神、きっと私達を助けに来てくれたんですよおっ!!」

 

 ましろは今一度晴風の傍らに現れたガメラと云うであろう巨大生物を見上げた。確かにガメラは晴風からギャオスを引き剥がし、まるで守るかの様に離れない。…だが仮にそうだとしても、彼女はギャオスと共に引き離された岬明乃を思いガメラに向けて声を張り上げた。

 

「私達を守ってくれたならどうしてあの娘を…、どうして艦長を助けてくれなかったんだ…?

どうして岬明乃を助けなかったんだあっ!?」

 

 宗谷ましろの叫びが巨獣…ガメラに届いたかは分からない。しかし幸子はガメラの右手の甲が下を向いているのに気付き“まさか”と感じた。ガメラはジッとギャオスを怒りと殺意の眼孔で捉え、ゴルルル…と威嚇する様に喉を鳴らした。そしてガメラによって晴風から数百m近く弾き飛ばされたギャオスは夥しい血を海面に広げており、その時抉られた左脇腹からは臓腑がはみ出、血と一緒に海面に浮かべていた。最早飛ぶ事は出来ず羽の皮膜を使い海上に身体を浮かべたギャオスはガメラを憎悪と恐怖の眼差しで見、口を開いたかと思えば“キイイイイイン”とけたたましい“音”が周囲に響き渡り、ましろ達は力一杯に耳を塞ぐ。

 

「何なんだこの音は!?」

「“超音波メス”です、ガメラを攻撃するつもりなんです!」

 

 幸子がましろと同じ様に耳を塞いで言って西崎芽依やはり耳を塞ぎながらが続く。

 

「でも空から撃って来た時はこんな音しなかった!」

 

 此には航海員の勝田聡子が皆と同じ耳を塞いで答えた。

 

「あん時は空の上から撃って来たゾナ、それでも小さく空からキンキン音したゾナ!」

 

 そして立石志摩が押さえていた耳から掌を少し浮かせて聡子の顔を見た。

 

「…ゾナ?」

 

 聡子も耳から掌を少し離す。

 

「…ゾナ。」

 

 志摩と聡子は首を傾げ、何故か無言で互いに微笑み合った。ましろ達は二人の奇妙なやり取りに一瞬だけ思考を止めてしまうが、ギャオスの渾身の超音波メスが自分達の目の前を走り、動かないガメラの右肩部分に命中…そのまま左へと超音波メスがずれていく。…するとガメラは裂けた大きな口を締め、下顎から伸び突き出た左右の牙の隙間から炎が吹き出始める。炎は閉められた牙という牙の隙間から吹き出、周囲の温度も上がり始めた。そしてましろ達はギャオスの超音波メスがガメラを傷付けていない事に気付いて皆がギャオスに目を向けると、何とあの狡猾な巨大怪鳥の顔が絶望に歪んでいるかの様に口を半開きにしてガメラを見ていた。晴風の皆が巨大ギャオスの最期を確信し、ガメラが天上を仰ぎ勢い良く頭を振り下ろすと同時に口を開け放ち凄まじく燃え盛る火球を解き放った。

 “プラズマ火球”…。幾多のギャオスやこの地球に仇為す敵を滅ぼして来た必殺の一撃。プラズマ火球はギャオスに命中し、その身体を粉砕…大爆発を起こしギャオスは文字通り海の藻屑となり果てた。

 闘いが終わり、ガメラは右の掌に仰向けになっている“岬明乃”を見おろす。ガメラがギャオスを晴風から引き剥がした際に宙に放り出された彼女をガメラは助け出していたのである。ギャオスに噛み潰された身体の損傷もガメラが治癒し…晴風の甲板へと掌を近付けた。

 すると今まで何処に隠れていたのかデブ猫の五十六がいの一番に駆けつけてガメラの掌に飛び乗った。未だ意識は戻ってはいないが五十六はそんな明乃の胸元にふてぶてしくも乗っかって寛ぎ始めてしまう。ましろ達も甲板へと急ぎ、其処で明乃を確認し、全員が歓喜の声を上げて騒いだ。ましろは急いでガメラの掌に五十六と同じ様に飛び乗り、彼女に乗っかる五十六を乱暴にどかして動脈と心臓の鼓動を確認して彼女の生存を認識した。

 

「岬さん…、艦長…良かった…。」

 

 そう呟くとまた涙を流しながら明乃の手を握り締めた。ましろは真上にあるガメラの顔を見上げると、その厳つい怪獣の表情がとても柔らかくなっている様に感じた。救援に来た横須賀女子海洋学校の教官艦…猿島も到着し、教官である古庄薫はガメラを見て驚くが、晴風のクルーが騒ぐ様を眼下に置きながら静かに佇むその怪物に無意識に表情を綻ばせたのだった。




アニメよりも明乃とましろが仲良くなってしまいそうだ。
そしてまだ予定ですがクロスタイトルを増やすかもです。…しかしゴジラはクロスしません。嫌いじゃないけど登場したらガメラとの戦いは避けられないですからね。ゴジラ強すぎるしね。

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