ガーディアン・フリート❮はいふり×GAMERA❯   作:濁酒三十六

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一話・嵐の予感

 100年程前、日本は日露戦争後…海底プレートの歪みやメタンハイドレートの採掘作業により国土の大半が海中に没してしまった。その為、海上都市の開発が進み、海上交通の発展から世界有数の海運大国として君臨していった。そうした時代の流れは男性の軍艦乗りをホワイトドルフィン。そして女性を採用した軍艦乗り…平和の象徴として“ブルーマーメイド”を誕生させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 横須賀市にある“ブルーマーメイド”を育成する学校…横須賀女子海洋学校では新入生の入学式後に民間に転用された軍艦を使い、凡そ二週間の実用訓練が開始となる。かなり厳しい訓練ではあるが本物の軍艦を操作出来るので新入生達はやる気充分に賑わった。そして全軍艦が港を出航し、先ずは全艦所定の時間までに西之島新島沖ヘ来る様にと課題が出ており、横須賀女子海洋学校所属…艦番号Y467・陽炎型航洋艦“晴風”は去年と同じく入学式後の新入生達を乗せて出航し、何の因果か去年の生徒達と同じく集合地点ヘは遅刻が決定していた。理由は航海長が航行ルートを間違えてしまったのと機関部…エンジンが故障して一度停止してしまったのが原因であった。因みに晴風以外は全艦規定通りに到着し、一番乗りは戦艦武蔵との事である。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい…、わたしが方向を間違えたばっかりに……。」

 

 晴風のブリッジで操舵輪を握りながら気弱なワンコを思わせる航海長の知床鈴が半べそ顔でブリッジにいる皆に何度も謝っていた。ブリッジに晴風艦長の姿は今はなく、頭を垂れる鈴を見て副艦長の宗谷ましろは困り果てた表情で深い溜め息を吐いた。

 

「もういいと言っている。今回の失敗を今後に活かしてくれ!」

「はあ、ハイイッ!うえぇ~宗谷さんコワイよ~!」

 

 ましろが思わず声を荒げてしまったせいで鈴はダーッと川の様に涙を流して泣き出してしまい、ましろはガクリと項垂れて一言呟いた。

 

「ああ~、ツイてない…。」

「お~い副長、艦長連れて来たぞ~!」

 

 元気な声と一緒に負けん気そうな少女…水雷長の西崎芽依とその後ろからピコピコと短いツインテールを揺らしながらこの船…晴風の艦長、岬明乃がブリッジに入った。

 

「どうしたの、何かあった“シロちゃん””?」

「シロちゃんじゃなく宗谷か副長と呼んで下さい!

何が起こるか分かりませんから艦長は船橋に居て下さい!」

 

 副長であるましろは艦長の明乃が少々頼りないのが鼻持ちならず、度々強くあたってしまう所があるのだが、明乃は特に気にはせず会話を続けた。

 

「猿島…古庄教官には遅刻してしまう事は打電してあるんだから大丈夫だよシロちゃん心配性だな~。」

 

 笑顔であっけらかんとものを言う明乃をましろはムッとした顔で睨みまた声を上げた。

 

「それでもお前は艦長なんだから自分の仕事ほったらかして彼方此方に行くんじゃないっ!!」

 

 明乃はましろの怒りの迫力にビックリして「…ハイッ。」と素直に返事を返した。目標地点である西之島新島沖ヘの到着まで凡そ3~4時間、ましろには悪いがその間にクラス全員の名前を覚えて仲良くなろうと明乃は考えていた。そしてましろとももっと話せる仲になりたいと思っていた。

 

(海の仲間はみんな家族…。そうだよね“もかちゃん”。)

 

 明乃は幼馴染みであり親友…、そして今は同じ学校で何と戦艦“武蔵”の艦長である知名もえかの笑顔を脳裏に浮かべる。本日は晴天、甲板には勝手に乗り込んだデブ猫の五十六が気持ち良さげに昼寝をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、横須賀女子海洋学校教習艦隊は海上安全整備局からの突然の打電を受けて最新鋭艦艦番号Y083…猿島の艦長である古庄薫教官は席を立ち右後ろで打電内容を青醒めた表情で報告をした副艦長を見た。

 

「“ギャオス“…ですって!?」

「ハイ、太平洋領空域にてアンノウンの反応2つ有り。過去の記録と照合した結果…16年前に日本に出現した()()()()()()()()と断定。

東京の横田海上基地からF―15J、コードネームワイバーンが2機発進。…間もなくギャオス二体と接敵…攻撃に入ります。」

 

 “ギャオス”、16年前に沖縄で発見されて小さな山村を一つ壊滅させて東京に渡り都民を襲った人食いの怪物である。そのギャオスと古庄薫の脳裏をまだ到着していない晴風の存在が重なり激しい不安が彼女を襲う。

 

(いけない、もしかしたら晴風の航路とギャオスの進路がかち合うかも知れない!?)

 

 薫は戦艦武蔵の艦長…知名もえかに連絡を取った。

 

「知名もえか、整備局からの打電は聞いたか?」

《…ハイ…、聞きました。古庄教官。》

 

 少し声が震えている様に感じたが、それはギャオスと聴いた為の畏怖だと薫は思った。

 

「では…、艦長知名もえか。各艦を連れて本校ヘ帰投せよ!以後はお前に横須賀女子海洋学校教習艦隊艦長の権限を委ね…」

《武蔵も晴風救出に向かいます!》

 

 それを聴いた薫の顔が険しくなった。

 

《あけちゃ…晴風艦長は私の幼馴染みです。私も一緒に行きます!!》

 

 知名もえかは伊達に本校の首席ではなかった。あの整備局の打電から晴風の危険を悟り薫からの連絡で猿島が晴風の元ヘ行くのを確信したのだ。…だが彼女は今確実に私情に走っている。そして古庄薫は教官として生徒の同行を許す筈もなかった。

 

「駄目だ。各艦を率いて横須賀に戻れ。」

《そんな、晴風を…“あけちゃん”を助けたいんです!》

「駄目だ、生徒を連れて行く訳にはいかない。」

《でも…!》

「知名もえか、私はお前達の教官であり上官だ。

軍艦に乗る者にとって…上官の命令は絶対だ!

もう一度言う、各艦を率いて横須賀に戻れ。」

 

 もえかの返事は返って来ない。…だが薫は猿島を発進させて後言葉を彼女に続けた。

 

「大丈夫よ、知名さん。岬さん達晴風のクルーは必ず連れて帰るから、みんなを頼むわね?」

 

 そして猿島が教習艦隊を離れ、暫く武蔵は猿島を見送る様に静寂を保つ。武蔵艦橋では皆が艦長である知名もえかを心配し、もえかは涙が落ちそうになるのを我慢してクッと顔を上げて艦長帽を被り直した。

 

「全艦に打電、海洋教習は中止。全艦横須賀ヘ帰投します!」

 

 それを聴いた武蔵船員は一斉に動き出した。もえかは反転を命令し、武蔵が反転をして先頭を進み、各艦がそれに付いて行く。もえかは悔しげに唇を噛み締め、晴風救出に後ろ髪を引かれながらも古庄薫を信じた。

 

(古庄教官。どうか晴風を…、あけちゃんを頼みます!)

 

 横須賀女子海洋学校の艦隊は横須賀へと退避し、猿島はたった1隻で晴風の救助へと向かうのであった。

 




初めましてこんにちは、濁酒三十六と申します。
とうとう“はいふり”を小説で書いてしまいました。この作品は同じくハーメルンで投稿をされている方の影響もあります。序盤はある程度は原作と進みは同じですが一話の後半から一気に外れて次回はもう完全な原作無視となります。突拍子もない展開になりますが、此れからお付き合いしてるもらえたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

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