ボーボボたちが幻想入り   作:にゃもし。

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貸本屋『鈴奈庵』

 

 

人里にある貸本屋「鈴奈庵」

そこで店番をしているのは本居小鈴(もとおり こすず)という少女である。

この鈴奈庵には人だけではなく、人為らざる者も来店してくる。

そのせいか、彼女は多少のことでは驚かなくなった。

 

 

「店主はいるか? 過去の文献を調べたいのだが……」

 

 

その日も人ではない何者かが、やって来た。

多少のことでは動じない彼女でも、その人物の来店には絶句した。

特徴的で衝撃的なトグロ状の頭部を持つソフトン。

 

 

彼が店に足を踏み入れた瞬間、悲鳴を上げる子鈴。

だが、店にある書物を守るべく頭を切り替える。

竹箒を手に取りカウンターを飛び越えると、得物を槍に見立てて、鬼気迫る表情でソフトンに連続で高速の突きを繰り出す。

 

 

「往ね! 去れ! ここから消えろ! 本に臭いがつく!」

 

 

しかし、小鈴が全力で放つ突きを――――ソフトンは長箒の柄に拳の甲を当てて逸らす。

逸らされた突きの衝撃がソフトンの周囲の壁を抉り削っていく。

 

 

「落ち着くんだ少女よ、俺は君の敵ではない。その矛を収めてくれないか?」

 

 

竹箒を両手で捌きながら、小鈴に休戦を促してみるが…

 

 

「喋らないでください! 本に臭いがついたら、どうするんですか!?」

 

 

鬼のような形相で切り捨てる。

対話は無理と悟り、後ろに大きく飛び退き、店を出るソフトン。

彼が去ったのを確認すると、小鈴は入り口付近に消臭スプレーを吹きかけ始める。

 

 

一方、店の外に追い出されソフトンは「鈴奈庵」の前で顎に手を当てて考え込む。

ボーボボたちの過去を調べるには貸本屋がいいだろう、と判断した彼だが……店主から武力で店の外に追い出されるとは思わなかったようで…「解せぬ」とボソッと呟いた。

 

 

「あれ? ソフトンさん? 探し物は終わったんですか?」

 

 

そこに通りかかったビュティが声をかける。

後ろにはヘッポコ丸、慧音…もう一人、ソフトンの知らない女性、華扇もいる。

彼女はソフトンを見て「ビクッ」と身を竦ませたが…

 

 

「いや、入ろうとしたら何故か断られた。正直、困っているところだ。……ところで後ろの女性は?」

 

 

「えーっと、ボーボボの知り合いの茨木華扇さんです」

 

 

「俺の名はソフトン。バビロンの……宗教上の理由で初対面の人間との握手を禁じられている。……赦せ」

 

 

ビュティにソフトンを紹介された華扇は彼の出で立ちを見て終始、顔を引きつらせていたが…「宗教上の理由」と聞いた瞬間、華扇は今日ほど宗教の存在に感謝した日はない、というぐらいに笑顔になった。

 

 

「それじゃあ、私たちだけで行ってみよう。ソフトンさんだと入れさせてもらえないみたいだし……」

 

 

視線を逸らしながら言うものの、ソフトンを除く面々は理由を察していた、お前の頭の被り物が原因だと……

 

 

「ああ、その方がよさそうだ。気をつけろビュティ。ここの店主は “ 強い ” …」

 

 

ソフトンを外に残して中に入っていく。

彼らはこの時、気づいていなかった。

ソフトンが店の外にいることによって、他の利用者が入りづらくなっていることを…

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっちが人里の子供たちにケンカを売って、火炙りにかけられそうになった首領パッチ」

 

 

見開いた挿し絵には悲痛な表情で火炙りにかけられる寸前の首領パッチの描かれている。

 

 

「こっちは遮光器土偶と一緒に地底を探索している天の助」

 

 

冒険者の格好で巨大な蟻の巣のような場所を探索している。

その天の助の背後には人間サイズの遮光器土偶が後ろを窺っている。

 

 

「それと日本猿の群れに追われているボーボボ」

 

 

木の陰に額に汗を足らしながら身を潜めているボーボボ。

彼の視線の先には枝から枝へと飛び移って移動している日本猿の群れが映っている。

 

 

「……何これ?」

 

 

「何これ? …って、1000年前のボーボボたちですけど?」

 

 

ビュティが漏らした呟きに、さも当然のように答える小鈴。

 

 

「これじゃあ、ますます謎が深まっただけだよ。ボーボボたちのことが詳しく書いてある書物とか他には無いんですか?」

 

 

ソフトンを退けさせる強者の存在に体をこわばせながら店内に入った一行だが……そこに居たのは強者とは程遠い幼さを残す少女しかいなかった。

 

 

もっともビュティたちは今までに外見と強さが一致しない強敵と死闘を繰り広げた過去がある。

目の前の少女もそんな存在なのだろうと恐る恐る頼み込んだが、件の少女は快く承諾。

ボーボボたちに関する文献などを店の奥から引っ張り出してくるも、お世辞にも役に立てそうなものはなかった。

 

 

「うちにあるのはこれで全てですから、そうですねえ……情報をもっと知りたいなら彼らと関わりが深いと言われている――――」

 

 

…と、言葉をいったん区切ってから彼女は提案する。

 

 

 

 

「博霊神社に行ってみてはいかがですか?」

 

 

 

 




 
 
(´・ω・)にゃもし。

読んでくれて、ありがとう。

現代 → 過去 → 現代 ……

ってな感じでやろうと思うんだ。

※誤字報告のをやってみたよ。便利だね。

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