私の名は上白沢慧音(かみしらさわ けいね)
寺子屋で教師をしており、人里の守護も兼ねている。
最近は幻想入りしてきた 3バカを止めるために呼び出されることが増えてきた。
現在は魔法の森に住んでいる人形使いアリス。
彼女とともに寺子屋で行われる人形劇について話し合っているところである。
彼女が人形劇を行う場合は人里の広場で開催するのだが、首領パッチの件と安全面を考えると場所を移しざる得ないと判断した。
首領パッチが出てきた日には子供たちに悪影響を及ぼす恐れがあり、教育上にもよろしくない。
既に手遅れな気もするが…
アリスと真面目に考えてるときに、教室の戸が勢いよく開かれ、顔見知りの青年が現れる。
「大変です慧音さん! 首領パッチが風見幽香にケンカを売りました!」
私の平穏が何の前触れもなく瓦解した。
私はアリスに同行をお願いして現場へと向かう。
アリスは心底イヤな顔をしていたが…
それは幽香に対してか、それとも首領パッチか… きっと両方。
本音を言えば私も行きたくない。
…かといって、放っておけば何を仕出かすか分からないので行かざる得ない。
私はアリスの恨みがましい視線を背中に受けながら早足で駆けていく。
【 少女 移動中 】
さして時間も掛からず到着、私たちがそこで見たのは…
幽香と彼女に頭頂部のトゲを掴まれ、片手で宙に持ち上げられた首領パッチの姿であった。
首領パッチは幽香の手から逃れようと必死にもがくが、微動だにしない。
彼は私たち二人に気づくと、こちらを指差して――――
「あの人たちに命令されて、やらされたんです! 本当です!」
そう宣う。…無論、風見幽香が首領パッチの言うことなどに信じるハズがなく。
「私が… この風見幽香がそんな戯れ言を信じると、思っているの?」
どういった経緯か知らないが、風見幽香とアリスは顔見知りである。
彼女たちの付き合いは首領パッチよりも古い。そう簡単に知人を裏切るハズもなく。
風見幽香がさらに腕に力を込めたのか、首領パッチのトゲが「ミシミシっ…」と音を立てながら潰れていき、首領パッチのやかましい叫び声が通りに響く。
しかし…
「トランスフォーム “ 手裏剣 ” !」
首領パッチがそう叫ぶと体の輪郭を変えながら縮んでいき、顔のついた十字の形をした手裏剣と化して、幽香の手からすっぽ抜けて逃れる。
幽香は首領パッチに変形に僅かに目を見開きしたが… すぐさま気を取り直し、首領パッチを捕まえるべく――――宙に浮いた彼に腕を伸ばす。
もっとも端から見たら高速の “ 突き ” にしか見えないが…
幽香の手刀が頭を貫くと、首領パッチは陽炎のように揺らめかせ「ビュン!」と掻き消え――――同時に幽香の袖が細切れになって地面に落ち、彼女の細く白い腕が露になる。その細腕には細かな刀傷が幾重にも刻まれていた。
「…風見幽香とアリス・マーガトロイドを仲違いさせて争わせ、両者が疲弊したところを亡き者に… そして俺が新たな幻想郷のヒロインとなり、新世界の神になる計画が潰れるとはな……」
幽香の背後、数歩下がった距離で手裏剣の姿を解いた首領パッチが偉そうにふんぞり反っていた。
どうしよう、コイツ。救いようのないバカだ。
隣にいるアリスもゴミでも見るような目で蔑んでいる。
「あなたが幻想郷のヒロインとやらになるには、幻想郷にいる女という名の生き物を全て抹殺する必要があるわよ?」
「私も含めてね?」…振り返った幽香の顔には弱者をいたぶる加虐嗜好特有の暗い笑顔が張り付いていた。
そういう問題ではないのだが…
「ならば、オレ様の
鎖鎌を手に飛び掛かる首領パッチ。鎖鎌の刃で突き刺すよりも速く……
「ぶべらっ!?」
幽香が斜め上に突き上げた日傘――――その尖端が首領パッチの口の中に直撃。
その衝撃で首領パッチは白目を剥き、口から血が混じった泡を吹いて傘に刺されたまま「ピクピク」と痙攣する。
さらに幽香の攻撃はこれだけにとどまらず、首領パッチを刺したままの日傘を真上に向けると…
「ラストシューティング」
大きな建物すらも呑み込むであろう極太のレーザーを射出。
首領パッチがレーザーで上へ上へと押し上げられ…
遥か上空で大きな大爆発を二度引き起こし、空を紅蓮に染め上げる。
「汚い花火ね」
幽香は大空に咲いた爆煙をそう見立てると人里の外へとのんびりとした歩調で向かっていた。
「私たちも帰るか…」
アリスは反対することなく小さく頷いて、私たちは寺子屋へと戻る。
どうせ、そのうち復活するんだろうなあ… と思いながら。
(´・ω・)にゃもし。
加筆修正作業が意外とツラい。