ボーボボたちが幻想入り   作:にゃもし。

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クリスマスの準備とハジケと慧音

 

 

「「真っ赤なお鼻の~♪」」

 

 

ボーボボは赤い格好のサンタの衣装を、天の助と首領パッチはトナカイの角を模した飾りを頭に付けて、定番のクリスマス・ソングを愉しそうに踊りながら歌っている。

 

 

「「サンタのおじさんは、言いました~♪」」

 

 

そこまで歌うと突然動きを止めて踊るのを止める三人。

天の助と首領パッチは暗く沈んだ表情で立ち尽くし、ボーボボは豪奢なイスに腰掛けていた。

ボーボボがイスを回転させて二人に背中を向けると…

 

 

「今日中に辞表を提出したまえ」

 

 

そう冷たく言い放った。

 

 

「サンタ、冷たくない!?」

 

 

クリスマスを数日後に控えたある日…

──慧音とボーボボたちはその準備をしている真っ最中だった。

 

 

「勤務中に酒を飲むような輩と一緒に仕事はできん」

 

 

キッパリと切り捨てるボーボボ、

その視線は天の助と首領パッチが付けている赤く丸い鼻に注げられていた。

 

 

「トナカイの鼻が赤いのは、酒を飲んでたからじゃないと思うぞ?」

 

 

正直、この三人だけには頼みたくなかったのだが…

他の連中は自分たちのことで手一杯らしくて、こっちまでには手が回らないとのこと。

 

 

「安心しろ慧音。他のバカは兎も角、俺はちゃんとこの通り用意をしてきた」

 

 

パンパンに膨らんだ白い袋を見せるボーボボ。

その中にはアフロがギュウギュウに詰まっていた。

 

 

うん。ボーボボのことだから、これは予想の範囲。

 

 

天の助が持っている袋の中には大量の「ゼリー」と少量の「ところてん」

天の助の性格を考えれば袋の中が「ところてん」のみと考えていたんだが…

 

 

「ところてんだけじゃ誰も受け取ってくれないから、抱き合わせてみた」

 

 

何かを悟ったように遠い目をする天の助。

お前はそれでいいのか?

 

 

「…ったく、どいつもこいつも自分のことしか考えてねぇなァ、おい

 その点、俺様は貰う人のことを第一に考えたプレゼントを用意したぞ」

 

 

袋の紐を緩めて中身を見せる首領パッチ。

その中に入ってあったのは…

 

 

「慧音のパンツ」

 

「今すぐ返せ」

 

 

得意気な顔を見せる首領パッチに頭突きをかましたのは言うまでもない。

 

 

いそいそと下着を回収する私。

その中に見覚えのないものが交ざっていた。

 

 

「何だ? この妙に柔らかく生温かい感触のモノは?」

 

 

悩む私に第三者が答えた。

しかも、超至近距離から…

 

 

「それは私のおいなりさんだ」──と、

 

 

私が触っていたのは男性の股間だった。

部屋の中にはいつの間にかに顔面に女性物下着を装着し、ブリーフしか穿いていない男が侵入していた。

 

 

「いやぁぁぁ────っ!!!?

 

 

触れていた手を瞬時に引っ込めてぷらぷらさせる私。

その男は私の声に驚いたのか、ここが二階にも関わらず窓をぶち破って外へと飛び出した。

 

 

「うわっ!? 慧音先生がいる教室から変態が降ってきたぞ!?

 

 

すぐさま変態を目撃したであろう人里の人間たちの声が聞こえてきた。

 

 

ひぃぃぃっ!?

只でさえ、ボーボボたちを扱う変な人と呼ばれているのに…

このまま変態を放置すると、さらにロクでもない噂が流れてしまう!

 

 

「おい、ボーボボ! なんとかならないのか!? あの変態!」

 

「くぅっ! すまない慧音、今すぐ走って追いかけたいのは山々なんだが…」

 

 

ファミコンでドラクエをやっていた。

 

 

「この〝 りゅうおう 〟を倒さないといけないから、この場を離れることができないんだ!」

 

 

涙を流しながらピコピコとボタンを押すボーボボ。

 

 

「それ今やる必要ないよね!?」

 

「これ〝 アクティブ・タイム・バトル・システム 〟制だから!

 ちょっと目を離したらパーティーが全滅する恐れがあるんだ!」

 

「ドラクエにそんなシステムなかったよね!?」

 

 

そうこう言っている間にも、変態は屋根から屋根へと跳び移って移動し…

やがて、視界の外へと姿を消した。

 

 

「え~~~ん、パチ美のお気に入りが盗られたぁ────!」

 

「アレ、あんたの下着だったの!?」

 

 

両手を顔に当てて泣きじゃくる首領パッチ。

むしろ、あっちの方が被害者かもしれない…

 

 

「やれやれ、随分と騒がしいとこだな」

 

 

教室の扉を開いて現れたのはサンタクロースの格好をした老人。

ただし、その色は真っ黒。

 

 

「そう、警戒するでない。

 ワシもそいつらと同様に幻想入りしたものじゃよ」

 

 

勝手知ったる他人の家とは言わんばかりに、ちゃぶ台に腰掛けて茶を啜り始める。

 

 

「良い子にプレゼントを配るのが赤い奴の役目。

 ワシはその逆、悪い子に罰を与える者がこのブラックサンタの役目なんじゃよ…」

 

「初めて耳にしたんだが、

 あと普通に不法侵入をしているんだが?」

 

「部屋の中に、動物の内臓をぶちまけるのがダメらしい」

 

「当たり前だ」

 

 

外の世界にはトンでもない風習があるようだ。

 

 

「ワシが幻想入りしたということは、そういうことなのだろう…」

 

 

外の世界で忘れ去られた者たちが最後に行き着く場所──それが幻想郷

このブラックサンタを名乗る老人も…

 

 

「まだ諦めるのは早いぜ、じいさん。

 あれを見てみな、まだお前を──ブラックサンタを必要としている連中がいるぜ?」

 

 

ボーボボが指差した場所には、時空の穴が…

その奥にはクリスマス前だというのに浮かれているカップルたちを容赦なく襲撃するフンドシにアイマスクという半裸の男たちの集団。

それを率いているのは白い覆面を被ったレスラーのような格好の二人組。

そいつらはクリスマスのモニュメントや飾り付け等を素手で破壊して回っていた。

さらに、そいつらに指示を出しているのが何処かで見たことのある妖怪。

確か「嫉妬心を操る程度の能力」を持った地底の妖怪で…

 

 

「ああ、ワシを必要とする者たちがあんなにおる。

 まだワシには帰れる場所があるんじゃ、こんな嬉しいことはない」

 

 

ブラックサンタが体を震わせて感動の涙を流していた。

いいのか、それで?

 

 

「こうしては、おられん。

 ワシもすぐにカップルどもを成敗せねば!」

 

「お前の役目は悪い子に罰を与えることだよな?」

 

「世話になったな若いの! サラバじゃ!」

 

 

時空の穴を通って祭りに参加するブラックサンタ。

その表情はとても生き生きしていた。

 

 

「「いい話だ…」」

 

「どこが!? むしろ、犯罪に加担してない、これ!?」

 

「誰にも忘れ去られるよりも、それは幸せなことかもしれんぞ?」

 

 

そう言って教室の扉を開けたのは、古代ローマの衣装を纏った壮年の男性…

 

 

「私はサンタクロースの元となったと云われている人物、

 名は「ニコラウス」という…

 私は近年のクリスマスについて物申したい」

 

 

「いえ、仕事の邪魔なので帰ってください」

 

 

有無を言わさず扉を閉める。

キャッキャッとはしゃぐ三人を見て私は思った。

 

 

「〝 類は友を呼ぶ 〟…というやつか?」

 

「でもそれってさぁ…」

 

 

私の漏らした呟きに対して、首領パッチは疑問に思ったことを口にした。

 

 

「慧音も入るんじゃね?」

 

 

それを聞いた私は暫くの間、意識を失っていたという。

 

 




(´・ω・)にゃもし。

深夜のテンションで書き上げた。

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