機動戦士ガンダムSEED 焔を刻む銀のロザリオ   作:ファルクラム

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PHASE-22「変革者の齎す秩序」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流麗なシルエットを持つ戦艦が、いち早くエンドレスの防衛網を突破すると、地球に向かって進行するオラクルに取りつこうとしていた。

 

 ビリーブである。

 

 エターナル級高速戦艦ならではの高速性能を如何無く発揮したビリーブは、尚も地球を壊滅に追いやるべく、行進を続けるオラクルを補足する事に成功したのだ。

 

「時間が無い。ただちに攻撃開始だ!!」

 

 ブリッジに立つアーサーの命令受け、ビリーブはオラクルに対して照準を合わせる。

 

 4基8門の主砲トリスタンが旋回して、砲門をオラクルへと向ける。

 

 その様子を見定め、アーサーは命令を下した。

 

「撃てェ!!」

 

 かつての上官、タリア・グラディスを彷彿とさせるような、裂帛の気合を漲らせた声。

 

 アーサーの声に呼応するように、ビリーブもまた咆哮を上げる。

 

 8門の主砲から撃ちだされる閃光。

 

 並みの戦艦なら良くて大破、運が悪ければ撃沈を免れないような砲撃が、オラクルを切り裂くべく飛翔して行く。

 

 間を置かずに、命中弾の閃光がオラクルの船体に刻まれる。

 

 しかし、

 

「・・・・・・駄目か」

 

 アーサーは悔しそうに呟きを洩らす。

 

 確かに、ビリーブの攻撃はオラクルに命中した。着弾箇所には損傷の痕もある。

 

 だが、それだけだ。オラクルは動きを止める気配は無いし、内部に深刻なダメージを負った様子も無い。

 

 恐らく、あの切り離された中央区画はかなり高い防御措置が取られているらしい。そのせいでビリーブの艦砲射撃も、大した効果は上げられないでいる。

 

「攻撃続行だ!!」

 

 込み上げる不安を押し殺すように、アーサーは命令を下す。

 

 再び砲撃を続行するビリーブ。

 

 その様子を眺めながら、アーサーは自嘲的に笑う。

 

 自分では処理しきれない事態にはいつも不安を覚えてしまう。結局、かつてミネルバに載っていた頃から、自分は何も変わっていないという事だ。人前で取り乱さなくなっただけマシだが。

 

 だが、あの頃とは違うところもある。自分は今や戦艦1隻を預かる艦長なのだ。自分の行動は全ての部下が見ている。情けない姿は曝せなかった。

 

「クロスファイアから連絡は無いか?」

「まだ、何も!!」

 

 アーサーからの問いかけに、メイリンが答える。

 

 クロスファイアが来てくれれば、あるいは逆転の目もあるのだが、どうやら敵の隊長機に未だに拘束されているらしい。

 

「頼むぞ、キラ」

 

 かつては共に戦った事もある青年の顔を思い浮かべ、アーサーは祈るように呟きを洩らす。

 

 キラはきっと来る。

 

 それまでの間、オラクルを抑えるのが自分達の役割だった。

 

 

 

 

 

 群がってくる親衛隊のグロリアス。

 

 それらを相手にしてアスランは、ただ1人、1歩も引かずに剣を振るい続ける。

 

 ドラグーンが吐き出す雨あられのような砲撃を回避し、接近してくるグロリアスに刀を叩きつけて切り裂く。

 

 かつての乗機であるジャスティスの流れを汲むクレナイは、アスランが要求する性能を完璧に発揮し、圧倒的に不利な状況を互角以上に進めている。

 

 長大なオオデンタ対艦刀が振るわれる度、親衛隊は確実に数を減らしていくのが分かった。

 

 たまらず、ドラグーンを一斉に射出、クレナイを捉えようとしてくる。

 

 だが、

 

「遅い!!」

 

 機体を捻り込みながらアスランは回避、そのままの体勢からスラスターを全開にして斬り込んでいく。

 

 ドラグーンは宇宙空間においては万能に近い武器である。小型で捉えにくく、高速で機動して、目標に対してあらぬ方向から襲いかかる。使いこなせれば、これほど便利な武器もそうは無いだろう。

 

 だが、弱点もまた存在する。

 

 それは、よほどの熟練者じゃない限り、ドラグーンを制御している間はどうしても機体本体の操作がおろそかになってしまうのだ。

 

 クレナイの接近に対して、親衛隊の反応は僅かに遅れてしまう。

 

 その隙に切り込むアスラン。

 

 日本刀のような刃を振りかざし、瞬く間に3機のグロリアスを斬り捨ててしまった。

 

 次の目標を。

 

 そう思って深紅の機体を振り向かせるアスラン。

 

 だが次の瞬間、対艦刀を持ったクレナイの右腕が、背後から伸びてきたビームに貫かれ爆発、そのまま吹き飛ばされた。

 

 親衛隊もさるもの。アスランが見せた一瞬の隙を突き反撃して見せたのだ。

 

 クレナイの損傷を見て好機と思ったのだろう。複数のグロリアスが、サーベルをかざして斬り込んでくる。

 

 だが、

 

「まだだ!!」

 

 脛部のスクナ・ビームブレードを緊急展開、鋭い蹴りを放ってグロリアスを斬り飛ばす。

 

 再び警戒する親衛隊。

 

 たかが損傷を負った程度で、紅の騎士を見くびる事は出来ないという事である。

 

 残った左手にビームサーベルを装備して構えるアスラン。

 

 眦を上げる。

 

 背後では、尚もキラとリィスが敵の隊長機相手に死闘を続けている。

 

 ならばアスランは、彼等の背中を最後まで守り続けなくてはならなかった。

 

 フルスピードで斬り込んで行くクレナイ。

 

 それに対して、親衛隊も残った砲撃全てを集中させて迎え撃った。

 

 

 

 

 

 フィフスドラグーンを展開。同時に全武装を振り翳し、24連装フルバーストを叩き付ける。

 

 クロスファイアが放った強烈な砲撃は、しかしスラスターモードのキュクロプスを全開にして回避行動を取るエンドレスを捉える事はできない。

 

 逆に安全圏まで退避したカーディナルは4基のキュクロプスを展開すると、指先に装備した合計20門のビーム砲で、追撃を掛けようとしているクロスファイアを狙ってくる。

 

 自機と遜色無いほど強烈な砲撃を、キラはリィスのオペレートを信じて高速で回避しつつ、両手に持ったビームライフルで反撃していく。

 

 しかし、カーディナルもまた、そんなクロスファイアの動きを封じるように、20門の砲で動きを限定しながら、隙を突いて大鎌を振り翳してくる。

 

 対抗するように、キラもまたブリューナク対艦刀を双剣モードで構えて迎え撃つ。

 

 交錯する双剣と大鎌。

 

 しかし、振るわれた刃は互いの機体を捉える事無く、そのまま両者共に高速ですれ違う。

 

「このッ!!」

 

 後退しながら腰のレールガンを展開するキラ。

 

 連続して放たれる弾丸は、しかしキュクロプスをスラスターモードに戻して回避するエンドレスを捉える事は無かった。

 

《流石だな》

 

 回避しながら、カーディナルはキラへと話しかけてくる。

 

《クロスファイアと言ったかね、その機体? あの「デュランダルの遺産」、エクシードシステムを搭載した、世界で唯一のSEED専用機。返す返すも、その機体が我々の手に入らなかったのは、我々にとって痛恨だったな》

「何を言っている!!」

 

 叫びながらフィフスドラグーンを射出するキラ。

 

 旋回して飛翔していくドラグーンは、エンドレスを囲むようにして砲撃を展開する。

 

 縦横に放たれるビームの閃光を、巧みな機動で回避するカーディナル。その華麗さすら感じさせる動きを前に、さしものドラグーンの攻撃も空を切るばかりである。

 

 その光景を見て、キラは歯ぎしりしつつも、背に寒い物を感じずにはいられない。

 

 もし、彼の手にクロスファイア、と言うよりもエクシードシステムのデータが渡っていたら、今でもただでさえ少ないキラ達の勝機は、更に少ない物になるであろう事は間違いなかった。

 

「あなたは一体、何がしたいんだ!?」

 

 今度はキラの方から問いかける。

 

 24連装フルバーストを放ってエンドレスの機動を限定しつつ、Dモードにエクシードシステムをチェンジ、紅炎翼を羽ばたかせて突撃していく。

 

 振りかざされる、双剣モードのブリューナク対艦刀。

 

 その攻撃をカーディナルはビームシールドで防ぎつつ後退。キュクロプスとビームライフルを放つ事でクロスファイアの動きを牽制しようとする。

 

 その強烈な攻撃を前に、キラも接近を諦めてクロスファイアを後退させるしかなかった。

 

「ギルバート・デュランダルの意志を、あなたが継ごうと言うのか!?」

 

 キラが言った質問は、状況を考えればごく自然な物であると言える。

 

 カーディナルがデュランダルのクローンであると言うのは、先程当の本人が告白した事である。ならば、カーディナルの意志は、かつてデュランダルが目指したデスティニープランの実行だとも考えられたのだ。

 

 しかし、

 

《いいや、そんな事はしないさ》

 

 キラの質問を、カーディナルはあっさりと否定してしまった。

 

 同時に回避行動をやめると、キュクロプス4基を同時展開してクロスファイアめがけて撃ち放つ。

 

 その攻撃を、紅炎翼を羽ばたかせて回避するキラ。

 

 エンドレスの砲撃は、クロスファイアが残した残像を斬り裂くにとどまる。

 

 回避と同時にキラは、両手のブリューナクをアンビテクストラスフォームに連結すると、刃を旋回させながらエンドレスへと斬り掛かっていく。

 

「なら、何を!?」

《そもそも、親の遺志を子供が継がなくてはならない、という考え方自体が、あまりにも固定され過ぎていると言わざるをえんだろうね。少なくとも私は、そのような意思によって動いてきたわけではないし、これからもそのつもりはないよ》

 

 親、つまりデュランダルの遺志を継ぐ気は、事実上、彼の子供である自分には無いとカーディナルは言いたいらしい。

 

 言いながらカーディナルは、クロスファイアが水平に振り翳す刃を上昇しながら回避。同時にスラスターモードのキュクロプスを吹かせて大きく距離を取ると、跳ね上げたバルムンクの砲門をクロスファイアへと向ける。

 

 その光景を見たキラは、素早く機体を後退させ、射線から逃れようとする。

 

 一瞬の後に放たれる強烈な閃光。

 

 大和ですら一撃で撃沈した攻撃を前に、しかしキラは素早く翼を返しながら反撃の手を打つ。

 

 飛翔するクロスファイアの翼が青へと変じる。

 

 Fモードにクロスファイアを変化させると、全武装を展開して構えた。

 

「あなたは、いったい何を!?」

 

 白く変化した装甲の背から生えた蒼炎翼を羽ばたかせると同時に、クロスファイアからフィフスドラグーンが射出され、エンドレスへと向かっていく。

 

 クロスファイアから放たれる砲撃。更にフィフスドラグーンは執拗にエンドレスを追いながら砲撃を仕掛けていく。

 

 それを回避しながら、カーディナルは語り続ける。

 

《私はギルバート・デュランダルのような理想家でも、ましてラウ・ル・クルーゼのような破滅主義者でもない。いわば、究極の現実主義者だよ!!》

「現実主義者だって!?」

 

 カーディナルの言葉の意味を図りかね、キラは躊躇するように動きを止める。

 

 一瞬の間を置いて、発射される24連装フルバースト。

 

 しかし、僅かにタイミングがずれたせいか、閃光はエンドレスを捉える事は無い。

 

 対抗するように、再びエンドレスから発射されるバルムンクの一撃。

 

 その強烈な閃光が、クロスファイアの周囲に浮遊していたフィフスドラグーンの内、1基を吹き飛ばしてしまった。

 

 臍を噛むキラ。

 

 ドラグーンを失ってしまった事も痛いが、何より深刻なのはエンドレスが持つ武装だ。あれほどの大威力を誇る武装を、こうまで連発できる事自体に戦慄を覚えずにはいられなかった。恐らく、かなり優秀なチャージサイクル機能を搭載しているのだろう。そうでなければ、あの威力で、これ程の連射はできないはずだ。

 

 ともかく、ドラグーンを1基失っても、クロスファイアの戦力低下はそれほど深刻な物ではない。まだまだいくらでも戦う方法はあった。

 

 砲撃戦では埒が明かないと判断したキラは、接近戦を行うべくクロスファイアをDモードへと切り替えてブリューナクを構える。

 

 双剣を振り翳してエンドレスへと斬り掛かっていくクロスファイア。

 

 それに対抗して、カーディナルもまたファーブニルを構えた。

 

 残像を引きながら一気に接近を図るキラ。

 

 交差するような軌跡を持つ斬撃が、トップスピードからの繰り出される。

 

 しかし、カーディナルはクロスファイアが振り下ろす双剣を、余裕すら感じさせる動きで回避。更に急速に後退しながら、ビームライフルによる砲火を浴びせてくる。

 

《古の昔より、多くの者達が「恒久的な平和」なる物を目指して、多くの者達が戦い続けてきているにも拘らず、今に至るまで平和を実現した者はいない。それはなぜか!?》

 

 エンドレスからの攻撃をビームシールドで弾きながら、キラは尚も斬り込むタイミングを計って両手の大剣を構える。

 

《それは、この世には2種類の人間がいるからだよ。すなわち、戦いをしたくないと言う人間と、戦いを欲する人間だ!!》

 

 人間とは、常に何かを欲して生きている。

 

 食べ物、衣類、娯楽、そして金銭。

 

 それらを自分で賄えるうちは良い。しかし、やがて自分の力だけではどうしようもなくなった時、欲望が心の内で囁く。「無い物は、ある奴から奪えば良い」と。

 

 争いが起こるきっかけなど、そうしたほんの些細な欲望が齎しているのだ。

 

《戦争をしようとする者を全て滅ぼしたとしても戦争は終わらない。なぜなら、また別の誰かが欲望を糧に戦争を起こしてしまうからだ!!》

 

 カーディナルの言葉を、キラは回避行動を続けながら聞いている。

 

 こうして語る事によって、突破口が見えるかもしれないと考えているのだ。

 

《ならば、どうするか!?》

 

 キュクロプスの20指からクローを展開するカーディナル。

 

 その20本の爪で、クロスファイアに掴みかかろうとしてくる。

 

 間一髪、残像を引きながら回避するキラ。同時に腰部のレールガンを連続して放つ事でエンドレスの動きを牽制する。

 

《簡単な話さ》

 

 クロスファイアの攻撃をシールドで受け止め、カーディナルは言った。

 

《戦争をしたい者には、そのまま続けさせればいい。何も無理にやめさせる必要は無い》

「何だってッ!?」

 

 予期しなかったその発言に、思わずキラは愕然として目を剥いた。

 

 馬鹿なッ と思う。戦争を続けたい者がいる事は、認めない訳には行けないが、それで無制限に彼等が戦い続ける事を許してどうしようと言うのか? カーディナルが目指す未来とは何なのか?

 

 キラの動揺を見透かしたように、カーディナルは更に言い募る。

 

《言ったろう。重要なのは秩序を維持する事だと。戦争をしたい者には戦争としての秩序を、平和を望む者には平和としての秩序を与える。ようは住み分けるのさ》

 

 ようするに、戦争をやりたい者がいるなら、どこか他の場所でやらせ、その間に関係ない人々は争いの無い平和を謳歌できる世界、いや、カーディナルの言葉を借りるなら秩序を作り上げると言っているのだ。

 

 戦争を無理にやめさせようとすると、必ずそこに軋轢が生まれる事になる。さりとて、戦争を「抑止」しようとすれば、却って不満が内に溜まり、やがては大きな爆発を迎える事になる。

 

 故に「ガス抜き」としての戦争は必要だと言う考えである。

 

 だからこそ、「平和の世界」と「戦争の世界」を住み分け、それぞれの秩序を維持させつつ、互いに干渉しないルールを作り上げる。

 

 組織としてのエンドレスは、その為の監視役でもあったのだ。

 

 人は口では戦争反対を唱えながらも、その裏では、理由さえあれば人と争う事も辞さないという、一種の二律背反的な側面を持っている。

 

 それ故にカーディナルは「戦争根絶」「恒久平和維持」と言う本来の通念を捨て去り、敢えて戦争をする世界と、平和な世界を分けてしまおうと考えたわけである。

 

《戦争がいかに悲惨であるか、そして巻き込まれた罪の無い人々が、いかに哀れであるか、君なら判る筈だ。いや、君ほど、その事を理解している人間はいないのではないかな、キラ・ヒビキ・・・・・・》

 

 そこまで言ってから、カーディナルは言い直した。

 

《いや、テロリスト「ヴァイオレット・フォックス」》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 刃は、背中から腹部に掛けての部位を貫通していた。

 

 その光刃を、ラキヤは信じられない面持ちで眺めていた。

 

「馬鹿な・・・・・・・・・・・・」

 

 いつの間にか、背後に回り込んでいたスターダスト。

 

 その手に装備されたビームサーベルが、シロガネの腹部を貫通していたのだ。

 

 ゆっくりと引き抜かれるサーベル。

 

 次の瞬間、シロガネは内部から沸き起こる爆発によって四散してしまった。

 

「ラキヤ!!」

 

 シロガネが爆散する光景を目の当たりにしたシンは、愕然として叫ぶ。

 

 その爆炎の中から、シロガネを仕留めたスターダストが、悠然と姿を現した。

 

「貴様ッ!!」

 

 激昂するシン。

 

 同時に、エルウィング背部から狙撃砲を跳ね上げて展開、スターダスト目がけて撃ち放つ。

 

 迫る閃光。

 

 それに対して、レニは迫る閃光を真っ直ぐに見据え、

 

 次の瞬間、SEEDを発動させた。

 

 エルウィングの攻撃を、旋回しながら回避するスターダスト。

 

 高速で機動を行いながらレニは、ビームライフルの銃口を、尚も追撃を仕掛けてくるエルウィングに向けてくる

 

 放たれた砲撃をシールドで防ぐシン。そのまま蒼炎翼を羽ばたかせ、強引に距離を詰めに掛かる。

 

 シンは突撃しながらエルウィングの肩からヒエンを抜き放つと、サーベルモードで一閃する。

 

 その攻撃を、レニは上昇して回避。同時に、残った3機のドラグーンを引き寄せて、エルウィングに対して砲撃を浴びせる。

 

「そんな物で!!」

 

 対してシンはスターダストの攻撃をシールドで防ぎ、あるいはヒエンの刀身で弾きながら、尚も突撃速度を緩める事は無い。

 

 SEEDを宿した瞳は、スターダストの動きを正確に見極める。そして、そのシンをエクシードシステムが完璧にサポートして斬り込んで行く。

 

 しかし、SEEDを発動しているのはレニも同じである。加えて彼女はヴィクティムシステムのアシストもある。事実上、2人の間に条件の違いは無きに等しい。

 

 近付こうとしたドラグーンを、シンは高速機動で回避、そのまま突撃を続ける。

 

 一瞬、スターダストとエルウィングの間に、遮る物が何も無くなった。

 

「今だ!!」

 

 手にしたヒエンを、シンはブーメランモードにすると、すかさず投擲する。

 

 旋回して飛翔するブーメラン。

 

 それに対してレニは、左手でビームライフルを構えてヒエンを吹き飛ばしてしまう。

 

 だが、そこへ好機とばかりにエルウィングが急速に接近していく。

 

「これでェ!!」

 

 蒼炎翼を羽ばたかせたエルウィングが、ドウジギリ対艦刀を肩に担ぐようにして振り翳す。

 

 袈裟懸けに一閃される大剣。

 

 その攻撃を、レニはビームシールドで防御しようとする。

 

 しかし、斬撃は防いだものの、突撃の衝撃までは防がなかった。

 

 エルウィングの斬撃によって、大きく弾き飛ばされるスターダスト。

 

 その姿を見て、シンは更に攻撃を加えるべく、ドウジギリを構え直す。

 

 攻撃は弾かれたが、スターダストの体勢を崩す事には成功した。このまま追撃を仕掛ければ倒せるはずだった。

 

 だが、シンが蒼炎翼を羽ばたかせて突撃しようとした瞬間、

 

 突如、背後から放たれた閃光によって、エルウィングの左肩の装甲が吹き飛ばされてしまった。

 

「何ッ!?」

 

 驚いて目を転じるシン。

 

 そこには3基のドラグーンが、砲撃体勢を整えてエルウィングを半包囲している所だった。

 

 その内の1発が、エルウィングの肩を吹き飛ばしたのである。

 

 ダメージを受けたのは装甲だけで、辛うじて内部機構は無事だったのがせめてもの救いであるが、しかしこの状況でドラグーンの存在はひどく鬱陶しいものであった。

 

 舌打ちするシン。

 

 同時に蒼炎翼を羽ばたかせ、距離を置くようにその場から飛び退く。どうにか包囲網を突破し、自身のアドバンテージで戦える状況を設定しなくてはならない。

 

 レニが攻撃を再開したのは、エルウィングが後退するのとほぼ同時だった。

 

 ドラグーンとビームライフル。双方合わせて4門による砲撃を、逃げるエルウィングに対して行うスターダスト。

 

 対抗するように、シンは砲撃一発一発を見極めて回避、狙撃砲を展開して撃ち放つ。

 

 双方、閃光の砲火が一瞬交錯する。

 

 次の瞬間、シンの放った狙撃砲の攻撃がドラグーン1基を破壊する。

 

 しかし、その一瞬の後にはドラグーンの攻撃が、エルウィングが構える狙撃砲の砲身を直撃して吹き飛ばしてしまった。

 

 舌打ちしつつ、更なる砲撃を回避するシン。

 

 やはり、砲撃戦では手数の差が物を言う。いかにエクシードシステムで性能をブーストしている状態とは言え、レニもまたヴィクティムシステムを使用している状態である為、最終的には物理的な数字の戦いになる事は避けられない。

 

 手数では、シンは圧倒的な不利は否めない。

 

 ならば、シンが持っている有利な要素で、最大限の勝負をかけるしかないだろう。

 

 蒼炎翼を羽ばたかせて加速するエルウィング。

 

 残像を引きながら迫るシンに対して、レニもありったけの砲撃を放って対抗しようとしてくる。

 

 それら全てを、シンは高機動を発揮して回避しようとする。

 

「舐めるなァ!!」

 

 ドラグーンから吐き出される砲撃を回避するエルウィング。同時にビームライフルを抜き放ち素早く攻撃。攻撃配置に着こうとしていたドラグーンを1基破壊する。

 

 一方、シンを相手にするレニの苛立ちは、頂点に達しようとしていた。

 

 目の前の小うるさい奴を、どうしても倒せない。

 

 どうあっても、自分の目の前から消えてくれない。

 

 こんな奴、早く倒してマスターの援護に行きたいのに。

 

 おまけに、切り札であるスターダストまで見せてしまった。これは本来、対《死の天使》用に取っておいた物だと言うのに。

 

 自分の相手はあの「死の天使」だ。こんな奴等じゃない。と言う思いが、今もレニの中ではある。

 

 しかし、エルウィングとシロガネ、2機がかりでカタストロフをスクラップにされてしまった以上、スターダストを使わない訳にはいかなかった。

 

 このスターダストは、ドラグーン操作系に強化していたカタストロフと違い、ダークナイトのエクスプロージョン同様、機動力を強化する方向にヴィクティムシステムを調整している。比類ない高機動を誇るエルウィング相手に互角以上の戦いができているのはそのためである。

 

 だが、そのスターダストの性能を持ってしても、エルウィングを仕留めきれないでいる。

 

 現状、戦いはレニの方が有利に進んでいると言うのに。シンは自身の能力と長年戦い続けてきた経験の差を活かし、レニの攻撃を避け続けている。その事がますます、レニの苛立ちを刺激して行く。

 

 これ以上、時間を掛けるのは何としても避けたかった。

 

「・・・・・・一気に、片を付けるッ」

 

 言い放つと同時に、残っている2基のドラグーンを自機の周辺に配置、同時にビームライフルを構えて3門の砲を、突撃してくるエルウィングへと向ける。

 

 砲門数は最初の頃より減っているが、エネルギーのチャージサイクルを速めれば、速射だけでも充分な量の弾幕を形成できるはず。

 

 それでエルウィングを仕留める。

 

 レニの瞳が、大剣を振り翳して迫るエルウィングをしっかりと捉える。

 

 3つの砲門が、エネルギーチャージによって輝きを増す。

 

 これで終わり。

 

 そう思った瞬間、

 

 スターダストのすぐ脇に配置していた2基のドラグーンが突如、あらぬ方向からの攻撃を受けて爆発した。

 

「なッ!?」

 

 あまりに突然の事態に、思わず攻撃のタイミングを忘れて声を失うレニ。

 

 レニは怒りに沸騰しそうな視線を、攻撃が飛来した方向へと向ける。

 

 そこには、先程のスターダストの攻撃で下半身を吹き飛ばされた状態のシロガネが、生き残った肩部のビームキャノンで砲撃を仕掛けてきていた。

 

「やられっぱなしじゃ、格好悪いからね」

 

 そう言って、コックピット内のラキヤは苦笑を浮かべる。

 

 先程のレニの攻撃によって、機体の半分を吹き飛ばされる程のダメージを受けたシロガネだったが、まだ辛うじてエンジンは生きており稼働可能な状態だった。

 

 とは言え機体は大破、武装の大半を喪失しスラスターも使用不能。戦闘どころか方向転換すらままならない状態である。

 

 それでもラキヤは諦めなかった。

 

 残った武装はビームキャノン1門のみ。しかも、まともに照準を合わせる事も出来ない。

 

 だから今まで、残骸を装ってひたすら待ち続けたのだ。レニが油断して、自分の射程距離内に入って来るのを。

 

 そして、まさに絶好のタイミングで戦闘に介入したのである。

 

 ラキヤが持つ経験と技術、そして戦士として勝利を目指す飽くなき執念が、最後の援護射撃を成功させたのだ。

 

「おのれェ!!」

 

 まさに必殺のタイミングで放とうとしていた攻撃を邪魔され、激昂するレニ。

 

 そのまま怒りにまかせて、小癪な相手にトドメを刺してやろうかと機体を操る。

 

 しかし、それはできなかった。

 

 機体を振り向かせようとした正に直前、シンのエルウィングがドウジギリを振り翳して斬り込んで来たのだ。

 

 叩き付けられる大威力の剣閃。

 

 その攻撃をレニは間一髪、対艦刀の切っ先を見極め、機体を後退させる事で回避する。

 

「邪魔するなら、お前からだ!!」

 

 言い放つと同時にスラスターを全開にするレニ。

 

 ドラグーンは全て失ってしまったが、そんな物は関係ない。スターダストの高機動をもってすれば、充分に敵を圧倒する事が可能なはずだった。

 

 事実、シンの攻撃を辛うじて回避に成功している。レニの勝機はまだ充分にあった。

 

 シンは追撃としてビームライフルを矢継ぎ早に放ち、スターダストを追い詰めてくる。

 

 対抗して、レニもまたビームライフルを抜き放ってエルウィングを狙う。

 

 互いの砲火が交錯し、立ち位置はめまぐるしく変化する両者。

 

 両者、距離が詰まった事で、応酬は一気に激しさを増した。

 

 レニの放った一射は、エルウィングの右足を吹き飛ばした。

 

 翻って、反撃とばかりにシンが放った一撃は、ビームライフルを持ったスターダストの右腕を吹き飛ばす。

 

「「クッ!?」」

 

 同時に舌打ちする両者。

 

 たがいに機体を損傷させながらも、一歩も退かぬ構えで対峙を続ける。

 

 先に動いたのは、

 

 レニだった。

 

 スラスター全開で接近。同時に残った左手でビームサーベルを抜き放つ。

 

 一閃する刃。

 

 SEED因子に加えて、ヴィクティムシステムのサポートを得た鋭い斬撃は、一瞬のすきを見せたエルウィングの左腕を斬り飛ばす。

 

 その瞬間、レニは己の勝利を確信した。

 

 エルウィングの主武装であるドウジギリ対艦刀は、かつてのデスティニーが使用していたアロンダイト対艦刀をコピーした物であるから、かなりのデッドウェイトである。普通のモビルスーツなら、振り回すだけで腕部の機構がいかれてしまうだろう。

 

 片腕を失ったエルウィングは、ドウジギリをまともに振るう事ができない。仮に振るえたとしても、大した威力を発揮できない。

 

 故に、

 

「この戦い、私の勝ちだァァァァァァ!!」

 

 声高に叫んだ瞬間、

 

 レニは見た。

 

 右手一本でドウジギリ対艦刀を構えたエルウィングは、蒼炎翼を目一杯広げて、スターダスト目がけて突撃してきている姿を。

 

 エルウィングは、かつてザフト軍が開発したデスティニー級機動兵器の設計図を基に、シンの恋人であるリリア・クラウディスが開発した機体である。

 

 しかしリリアは、開発に当たって一点だけ、デスティニーの設計を踏襲しなかったものがある。それこそが、主力武装であるパルマ・フィオキーナ掌底ビーム砲のオミットである。リリアはパルマ・フィオキーナをオミットする代わりに、余剰スペースにシステムを追加、接近戦の力を極限まで強化してある。

 

 つまり、エルウィングは片腕でもドウジギリを問題なく振るえるだけの膂力を持っているのだ。

 

「これで、終わりだァ!!」

 

 振り下ろされる大剣。

 

 対抗するように、レニもまた、ビームサーベルを振り翳す。彼女もまた、最後まで勝負を諦める心算は無かった。

 

 一閃されたスターダストのビームサーベルが、エルウィングの胸部装甲を切り裂く。

 

 対して、

 

 エルウィングのドウジギリ対艦刀は、スターダストの肩口に食い込んだ。

 

「悪い・・・・・・」

 

 シンは静かに、今まさに自身の剣が斬り裂こうとしている相手に語りかける。

 

「あんたにも、守りたい物とか、譲れない物とかがあったんだろう?」

 

 けどな、とシンは続ける。

 

「守りたい物も、譲れない物も、俺にだってあるんだッ!!」

 

 蒼炎翼を目いっぱいに羽ばたかせ、一気に斬り下げられる大剣の刃。

 

 そのあまりの威力を前にドウジギリが耐え切れず、中途から亀裂が入ったかと思うと、半ば以上スターダストに食い込んだ状態で、刀身が半ばから折れ飛んでしまった。

 

 柄だけになったドウジギリを携え、エルウィングを後退させるシン。

 

 対してレニは、火花の散るコックピットの中で、朦朧とした意識のまま、ゆっくりと口を開く。

 

「・・・・・・マス、ター・・・・・・」

 

 それが、最後だった。

 

 ガックリと首を垂れるレニ。

 

 一瞬、脳裏にはこれまで自らが経験してきた数々の事が思い出される。

 

 研究所で実験動物のように扱われていた自分を連れ出してくれたカーディナル。そのカーディナルを助ける為に、今までレニは必死に闘ってきた。

 

 カーディナルが命じた事なら、どんな事でもこなしてきた。それが善か悪かは関係ない。レニにとって重要なのは、カーディナルの期待に応え続ける。ただ、その一点だけだったのだ。

 

 しかしやがて、その情景も落ち行く意識の底に沈み暗転して行く。

 

 次の瞬間、スターダストは爆炎に包まれ、主たる少女を乗せて炎に包まれる。

 

 その様子を、シンは無言の内に見詰めている事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 キラは対峙しているエンドレスを見詰め、ギリッと歯を噛み鳴らした。

 

 エストから、自分がかつてテロリスト「ヴァイオレットフォックス」だった事が、カーディナルに知られている事は聞いていたので、その事自体に驚きはさほど無い。

 

 しかし、いわば自分の最大のウィークポイントを握られている状況は、お世辞にも気分が良いとは言えなかった。

 

《かつてはテロリストとして、あるいはゲリラとして戦ってきた君ならば、戦争の悲惨さも理解していると思う。だからこそ、今こそ必要なのだよ、新たなる秩序が》

「あなたは・・・・・・」

 

 油断なく剣を構えるキラ。

 

 いつ、どんな攻撃が襲ってきても対応できるようにしながら、カーディナルに問いかける。

 

「本当に可能だと思っているのか? 戦争と平和とを分けた秩序を作り出すなどと・・・・・・」

《無論だとも》

 

 キラの質問に対して、カーディナルは一切の躊躇なく答えた。

 

《戦争をする上で必要な、あらゆる物資、情報、人の流れを統括し、制御する事によって、戦争をする者達と平和を望む人々とを隔離する。かつてはあのロゴスもやっていた事だ。私の考えは、そのシステムにほんの少しだけ手を加えたに過ぎない》

 

 かつて、ロゴスは世界の情報や物の流れを自分達で統括する事で、戦争が終わる事の無い世界を作り上げてきた。

 

 そう考えればカーディナルが主張する事も、さほど目新しい考えとも言えないかもしれない。

 

「けど、ロゴスは滅びた。それは、人々がその在り方を否定したからだ」

《ロゴスが滅びたのは、彼等が自分達の利益ばかりを追求しようとしたからだ。だが、私が望むのはあくまでも新しい秩序だ。利に走る気は無いさ》

「それでもッ!!」

 

 言い放つと同時に、キラは動いた。

 

 FモードにOSを切り替えると同時に、残った3機のドラグーンを射出、カーディナルへと向かわせる。

 

 蒼炎翼から迸るように、3基のドラグーンがエンドレスへと砲門を向け、砲撃を開始する。

 

「そんな簡単に、世界が割り切れる物かッ いずれ世界は、あなたの制御を離れ、また暴走を始める事になる!!」

《このまま、人と人とがが争うに任せても、結果的には同じ事だよ!!》

 

 フィフスドラグーンから放たれる15発の閃光を回避するカーディナル。同時にキュクロプスを展開、クロスファイアめがけて20門の砲撃を浴びせる。

 

《だからこそ、管理する者が必要なのだよ、世界は!! そしてその者も力を持たなくてはならないッ 弱い者に制御できるほど、この世界は甘くは無いのだからね!!》

 

 叫びながら、クロスファイアに砲撃を放つカーディナル。

 

 しかし、その動きはクロスファイア後席に座るリィスが、完全に読み切っていた。

 

 ここに至るまで、カーディナルの行動パターンを完全に把握、解析したリィスのオペレートは、完璧に近い。

 

 圧倒的な砲撃をすり抜け、双剣を振りかざしてクロスファイアはエンドレスへと接近する。

 

 Dモードにチェンジし、装甲は黒に、翼は赤に変化するクロスファイア。2本のブリューナクを構え、残像を発生させながら突撃を開始する。

 

 接近と同時に、エンドレスめがけて両手の大剣を振り翳すキラ。

 

「それじゃあ、結局は新しい世界を迎える事にはならないッ あなたがやろうとしている事は、ただ今ある世界を壊して、多くの犠牲者を生もうとしているだけだ!!」

 

 振るわれる大剣。

 

 交差するように高速で振り翳す斬撃が、キュクロプス2基をアームの中途から斬り飛ばしてしまった。

 

「ぬっ!?」

 

 呻き声を上げるカーディナル。

 

 常に冷静さを失わなかった彼が、初めて動揺したような声を見せたのだ。

 

 とっさに機体を後退させながら、カーディナルは残った2基のキュクロプスを起動して、クロスファイアに攻撃を仕掛ける。

 

 しかし、当たらない。

 

 攻撃が着弾する前に、キラは残像を引きながら回避。同時にクロスファイアの両手に装備しているブリューナクを高速で振るった。

 

 回避しようとするカーディナル。

 

 しかし、間に合わない。

 

 クロスファイアの斬撃は、エンドレスの両足を斬り飛ばす。

 

 キラの猛攻の前に、流石のカーディナルも、手も足も出せないでいる。

 

 トドメとばかりに、キラはビームライフル2丁を抜き放ち斉射、残った2本のキュクロプスを吹き飛ばす。

 

「よし、これで!!」

 

 キラは会心の手ごたえを感じる。

 

 キュクロプスを全て失った事で、エンドレスは全てのスラスターを失った事になる。それは即ち、いかに攻撃力が高かろうと、この宇宙空間では移動すらままならなくなったことを意味する。加えて両足まで失っては、まともな姿勢制御すらままならないだろう。

 

 後一撃で、勝負を決する。

 

 そう思ってブリューナクの切っ先を返した、その瞬間、

 

 キラは、

 

 そしてリィスも、思わず目を剥いた。

 

 そこには、キュクロプスの残骸をパージした、エンドレスの姿がある。

 

 そして、その背には、

 

 鮮血の如き赤色に輝く翼が、禍々しくも勇壮に広げられていた。

 

《「これで」、何かね? まだ、終わりではないよ》

 

 

 

 

 

PHASE-22「変革者の齎す秩序」      終わり

 


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