機動戦士ガンダムSEED 焔を刻む銀のロザリオ   作:ファルクラム

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PHASE-04「鋼鉄の海嘯」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 迫り来る鋼鉄の海嘯。

 

 表現するならば、それが最も適切であろう。

 

 コズミック・イラ78年2月29日。

 

 スカンジナビア王国を滅亡させ、西ユーラシア平定を達成した地球連合軍は次に、地球上における最大の共和連合構成国であるオーブ共和国を討伐すべく、大規模な軍事行動を起こした。

 

 参加艦艇260隻、機動兵器1600機。

 

 進撃する艦艇によって海面は埋め尽くされ、青い海面を見る事は殆どできない。

 

 「鋼鉄の海嘯」と言う表現は、決して伊達ではない。

 

 打ち寄せる巨大な波が、小国オーブを一息の内に飲み込もうとしているかのようだ。

 

 しかし、これ程の大軍を動かす軍事行動である。本来なら兵力の移動や補給体勢の確立、兵器の整備、兵士の休養などが必要である為、もっと時間を置くのが通例である。

 

 しかし、今回は2つの事情から、作戦が強行される事となった。

 

 オーブは長引く戦争や欧州での敗戦で疲弊しきった状態にある。それに比べて地球連合軍の損害も小さいとは言えないが、元々、潤沢な物量を誇る地球連合軍なら、現状の戦力差でも、充分にオーブ軍を圧倒できると判断された。

 

 もう一つの理由は、作戦総指揮官に就任したイスカ・レア・セイラン准将が、会議の場で強硬にオーブ攻めを主張した事が大きかった。彼女はオーブを攻めるなら今しかないと、会議の場で熱弁を振るい、反対派の軍人達をねじ伏せて行ったのである。

 

 その結果、オーブ討伐案は可及的速やかに可決され、物資の集積や兵力の移動が行われた。

 

 地球連合軍の太平洋方面軍だけでは、これ程の大軍を展開する事はできなかった。しかし、パナマに集結した兵力の中には欧州を転戦した部隊も多数参加しており、その結果、これ程の大軍勢が太平洋に出現する事になったわけである。

 

 中には欧州戦線終結から即座にパナマ行を命じられ、そのまま休暇無しで作戦に参加するよう命じられた兵士も少なくないし、損傷した機体や艦艇も、工廠で修理するのではなく、前線への移動中の艦内で修理する機体もある。

 

 食料や燃料、弾薬、バッテリーなどの物資も必要充分とは言えない。

 

 しかし、それでもオーブ共和国を目指して迫る地球軍の大軍勢は脅威以外の何物でもなく、ただ一戦でオーブ軍を葬り去るには充分な戦力を持っていた。

 

 対してオーブ共和国軍もまた地球軍集結の報を聞き、これを迎え撃つ準備を整えつつあった。

 

 オーブ北部の要衝であり、かつて内戦の折には政府軍が拠点を置いたアカツキ島を最前線として、眦を上げて地球軍の大軍を待ち受けている。

 

 その参加戦力は、艦艇110隻、機動兵器640機。地球軍の半数以下でしかない。

 

 たったこれだけの戦力で迎え撃つ事は、限りなく不可能に近い。

 

 しかし、もはや状況は待った無しの場所まで来てしまっている。オーブ軍は全ての不安を振り払い、決戦に赴かねばならない。

 

 オーブ政府はこの難局に対し、特例措置として、外務大臣カガリ・ユラ・アスハを臨時に最高指揮官に任じ、地球軍迎撃を命じていた。

 

 カガリは過去2度、オーブが侵攻を受けた際に軍を指揮しているし、内戦の折には政府軍を主導して、見事に勝利を収めている。更に、アスハ家が代々、軍と繋がりが深い事を考慮すれば、カガリが最高司令官に抜擢される事で、軍の士気が上がる事も期待された。

 

 辞令を受けるとカガリは、すぐさまアカツキ島へと赴き指揮権を掌握、いくつかの指示を出して急速に迎撃態勢を整えて行った。

 

 とにかく、戦力差は歴然としている。まとも戦い方では勝負にならない事は明白だった。

 

 敵は大軍である事に加えて、あのジェノサイド部隊やファントムペインを繰り出してくることも考えられる。そうなったら、スカンジナビアの二の舞になる事は明白だった。

 

 加えて、例の「オラクル」。

 

 スカンジナビアを壊滅に追いやった、正体不明の大量破壊兵器の存在も気になる所であった。

 

 だが、地球軍にも付け入る隙はある。それは必ず、このアカツキ島を攻略しないと、オーブ本国へ向かう事ができないと言う事だ。

 

 地球軍が最も嫌うのは、オーブ軍にゲリラ戦をされた場合だろう。大軍と言うのは、動かすのに、それだけ膨大な物資が必要になる。敵主力との正面からのぶつかり合いはなるべく避け、その上でそれらの補給部隊を叩く事ができれば、寡兵のオーブ軍にも充分に勝機がある筈だった。

 

 オーブの命運は正に、アカツキ島を守れるかどうかの一点に掛かっていると言っても過言ではなかった。

 

 カガリが見守る前で、戦闘機形態のシシオウが滑走路を蹴り、次々と北の空へと飛び立っていくのが見える。

 

 彼ら一人一人の双肩にオーブの未来が掛かっていると言っても良いだろう。

 

「頼むぞ、みんな」

 

 カガリは祈るような思いを込め、飛び去って行くオーブ軍を見詰めていた。

 

 

 

 

 

 アカツキ島で守りを固めるオーブ軍は、宇宙軍司令官であるムウ・ラ・フラガ中将を前線指揮官に置き、南下してくる地球軍と向かい合っていた。

 

 そのオーブ軍の先頭を飛ぶアカツキのコックピットで、ムウは笑みを浮かべてモニターを見詰めていた。

 

「おうおう、すごい大軍じゃないの。空が見えんよ、まったく」

 

 視界を埋め尽くす程の、地球軍の機動兵器群を前にして、ムウは苦笑しか出ない思いである。

 

 しかし、その態度には相変わらず気負いのような物は一切見られない。

 

 敵が来ている。

 

 ムウの大切な物を奪う為に。

 

 ならば、ムウがするべき事は何か、最初から決まっている。迷うべき物も、恐れるべき物も、何も存在しなかった。

 

 手にしたビームライフルを、アカツキは高らかに掲げて見せる。

 

 陽光に反射して煌めく、黄金の機体。

 

 注目は、否が応でも集まる中、かつて「エンデュミオンの鷹」と言う異名で呼ばれたエースパイロットは、高らかに宣言した。

 

「これより、地球連合軍を迎撃するッ ただの1機もオーブに入れるんじゃないぞ!!」

 

 言い放つと同時に、アカツキはスラスターを吹かして飛び出していく。

 

「全軍、俺に続け!!」

 

 アカツキに続き、速度を上げて突撃を開始するオーブ軍。

 

 これに先立ちオーブ軍に所属する全部隊が、最新鋭機であるシシオウへの兵備転換を終えている。つまり、数はともかく、質の面においてオーブ軍は、地球連合軍に対して劣らない物を手に入れた訳である。

 

 たちまち、鮮やかな蒼穹は両軍が入り乱れて砲火を交わし合う戦場と化した。

 

 オーブ軍にシシオウが、高機動を発揮して斬り込みをかけ砲火を浴びせたかと思うと、地球軍のグロリアスは得意の連係戦術を駆使して、砲火の中へ絡め取ろうとする。

 

 とにかく数が多い地球軍側は、力押しでオーブ軍を押しつぶそうとする。

 

 しかし、ここはオーブ領海上空。オーブ軍にとってはホームグランドである。この場での戦い方を、オーブ軍は他の誰よりも熟知しているのだ。

 

 地球軍の兵士が考え付かないような戦法を駆使して、オーブ軍は搦め手から攻め込んでくる。

 

 両軍の機体が織りなす爆炎が蒼穹に咲いた花の如く、現れては消えて行く中、黄金の翼を閃かせたアカツキは、奮迅とも言える活躍を示していた。

 

 ムウはアカツキを巧みに操って地球軍の砲撃をすり抜けると、ビームライフルやビームサーベルを駆使して、次々とグロリアスを斬り捨てていく。

 

 今回は大気圏内での戦闘である為、アカツキはドラグーンを装備したシラヌイパックではなく、空中戦用の高機動型パックのオオワシを装備しての出撃である。

 

 左右に張り出したスタビライザーと、腰部のビームキャノンが特徴のオオワシパックは、確かに屈指と言える機動性を誇っているが、火力面においてはシラヌイパックに及ばず、更にムウからすれば、得意戦術であるオールレンジ攻撃を封印しているに等しい。

 

 しかしムウは、そんなハンデを感じさせない動きを見せ、向かってくるグロリアスを迎撃していく。

 

 高速飛翔しながらビームライフルを連射、瞬く間に3機のグロリアスを撃墜すると、更に双刃型のビームサーベルを抜き放ち、アカツキの機動性に追随できないでいるグロリアスに接近、袈裟懸けに斬って捨てる。

 

 そのアカツキに向けて、ビームライフルを放ってくるグロリアス。

 

 しかし、それらの攻撃が無意味である事は、言うまでも無いだろう。

 

 アカツキに命中したビームは全て、ヤタノカガミによって反射され、翻って撃ったグロリアスを直撃する。

 

「無駄だ!!」

 

 一声吠えながら、ムウは更にアカツキを駆って斬り込んで行く。

 

 そんなムウの活躍を見て前線のオーブ兵士達は、自分達も続けとばかりに奮戦をする。

 

 シシオウが速度を上げて乱舞すると、立ち尽くしているグロリアスを次々と血祭りに上げる、と言う光景がそこかしこで現出される。

 

「ようし、良いぞ!! その調子だ!!」

 

 自身もビームサーベルでグロリアスを斬り捨てながら、ムウは部下達の善戦ぶりをストレートに称賛する。

 

 数には劣っているオーブ軍だが、その分士気は高い。それも当然だろう。自分達の背後にはオーブの国土があり、守るべき多くの民がいるのだから。自分達が敗れれば、その時は即ち、オーブが滅びる時に他ならない。

 

 それだけに、オーブ兵一人一人が、死にもの狂いの奮戦を見せているのだ。

 

 オーブ軍の奮戦が功を奏したのか、地球軍は徐々にだが後退し始めている。

 

 このまま押込みに掛かるか。

 

 そう思った時だった。

 

 先頭を進むアカツキのセンサーが、急速に接近してくる3機の機影を捉えた。

 

「速いッ 特機か!?」

 

 相手を認識すると同時に、ムウは迎撃するべく黄金の翼を翻らせる。

 

 この時、アカツキと対峙する形で向かってきたのは、イントルーダー、インヴィジブル、イラストリアスの3機、トライ・トリッカーズだった。

 

「あの金ピカっ オーブのアカツキだね。あいつやるよ!!」

《了解よん!!》

《了解した!!》

 

 ルーミアの指示に対して、それぞれに独特の返事を返すブリジットとシノブ。

 

 3機はフォーメーションを組むと、螺旋を描くような機動でアカツキに接近しながら、ビームライフルを放っていく。

 

 そのうちの数発がアカツキの機体を捉えるが、しかしやはりと言うべきか、ビームはヤタノカガミに弾かれてあらぬ方向へと飛ばされてしまった。

 

「やばッ あいつが相手じゃ、ちょっと相性が悪いかな?」

 

 アカツキがビームを弾く様子を見て、ルーミアは舌打ちする。確かに、ビーム兵器主体のイントルーダーでは、ビームを無効化できるアカツキとの相性は悪い。

 

《任せろッ 2人は掩護を頼む!!》

 

 言うが早いか、シュベルトゲベールを振り翳して斬り込んで行くのは、シノブのイラストリアスである。

 

 振り下ろされる対艦刀の一撃を、ムウは切っ先を見切りながら後退、同時にビームライフルとビームキャノンを展開して反撃に転じる。

 

「まずは、連携を崩す!!」

 

 砲撃を繰り返し、トライ・トリッカーズの隙を伺うムウ。

 

 対して3人は一斉に三方向に散開するとアカツキの攻撃を回避、同時にルーミアとブリジットが援護射撃を行い、その中をシノブが斬り掛かっていく。

 

 対抗するように、ムウもアカツキの右手にはビームサーベルを、左手にはビームライフルを構えて前に出る。

 

 仕掛けたのはシノブ。

 

 真っ向から接近し、シュベルトゲベールをアカツキめがけて振り下ろす。

 

 対してムウはイラストリアスの攻撃をシールドで弾き、ビームサーベルを振り回して反撃を行う。

 

 旋回する双刃の剣。

 

 しかし、それよりも一瞬早くシノブはイラストリアスを後退させたため、アカツキの攻撃を食らう事は無かった。

 

「逃がすかよ!!」

 

 ムウは更に、後退しようとするイラストリアスへビームライフルによる追撃を行う。

 

 その猛攻を前に、さしものトライ・トリッカーズも攻めあぐねて後退するしかない。

 

「こいつやるね!!」

《ルーミア、フォーメーションを変更するわよッ このままじゃ埒が明かないでしょ!!》

 

 ブリジットの言葉に、ルーミアも異存は無かった。

 

 3機揃えばエース級を上回る戦闘力を発揮するトライ・トリッカーズも、アカツキが相手では、相性の問題もある為、いささか分が悪かった。

 

 その間にも、オーブ軍と地球連合軍との間で行われている戦闘は激しさを増しつつある。

 

 アカツキがトライ・トリッカーズに抑えられた事で、好機と見た他の地球軍機は、再び陣形を維持しつつ距離を詰め、オーブ軍を押しつぶそうと砲火を閃かせてくる。

 

 象徴となる特機さえ排除できれば、後は物量に勝る自分達が有利である、と考えたのだろう。

 

 しかし、それがいかに浅はかな考えであったか、彼等は程無く思い知る事になる。

 

 オーブ軍に対して砲撃を開始しようとしていたグロリアス数機が、一瞬、横一文字に閃光が走った次の瞬間、炎を上げて斬り裂かれ、爆炎を上げる。

 

 何が起きたのか?

 

 誰もが驚愕する中、

 

 その機体は姿を現した。

 

 全身を目が覚めるような深紅に染めた、引き絞った四肢が特徴の機体。背部には大型のスラスター4基と、左右に水平に伸びたスタビライザーを背負っている事からも、かなり高い機動性がある事が想像される。

 

 手にした反りのある大剣が、陽光に反射して鋭い輝きを放っているのが分かる。

 

 明らかに接近戦重視と思われる、どこか、ザフト軍のジャスティス級機動兵器を連想させる機体。

 

 ORB-02「クレナイ」

 

 オーブ軍がシロガネと同時期に開発した新型機動兵器であり、フリーダム寄りの設計思想を持つシロガネに対して、クレナイはジャスティスの設計思想を受け継いでいるのが特徴である。

 

 そして操るのは、かつては「紅の騎士」の異名で呼ばれ、今はオーブを守護する立場となった青年。

 

「こちらアスラン・ザラ。これより、戦線に加わる。全軍、俺に続け!!」

 

 クレナイのコックピットでアスランは叫ぶと、クレナイを突撃させる。

 

 手にした対艦刀が鋭く旋回する度に、グロリアスが斬り裂かれ、海面へと落下していく。

 

 クレナイの最大の特徴とも言うべき、このオオデンタ対艦刀は、その刀身が軽く反り、まるで日本刀のような外見をしているのが特徴であり、切っ先から鍔元に至るまで刃を形成し、武骨なイメージのある対艦刀とは思えないほど優美な外見である。

 

 刀身が反っている事には理由があり、このような形状にする事によって、斬撃時の衝撃を和らげているのだ。更に素材には、エルウィングのドウジギリにも使われているレアメタルを採用する事で強度を上げている。

 

 刃が振るわれるたび、地球軍の機体は次々と斬り裂かれていく。

 

 ムウのアカツキ、そしてアスランのクレナイが防御するオーブ軍戦線は強固に存在し、ただの1機たりともアカツキ島を見る事ができないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アカツキ島北方海上にて、オーブ共和国軍と地球連合軍が戦闘を開始した頃、戦場から僅かに西にはずれた空域を北上する一団があった。

 

 漆黒に塗装されたシシオウ。

 

 コガラスを装備した部隊、オーブ共和国軍第13遊撃機動部隊フリューゲル・ヴィントである。

 

 オーブ最強とも言える精鋭特殊部隊が、あえて別行動を取っている理由は、作戦上の都合であった。

 

 来襲した地球連合軍に対して、オーブ軍の戦力が大きく劣っているのは、今さら語り直すまでもない事ではある。正面からのぶつかり合いでは、力で押し切られて敗北するのは目に見えている。

 

 それ故にカガリは、一計を案じる事にした。

 

 ムウ率いる主力軍がアカツキ島にあって地球軍を引き付ける一方で、フリューゲル・ヴィントは高速で戦場を迂回し、敵の補給部隊を叩くのだ。

 

 地球軍は大軍であるが故に、多量の物資を必要としている。ならば、その物資を満載した輸送船を沈めてしまえばいい。そうすれば地球軍は戦いたくても戦線を維持できず後退せざるを得ない。そうなった時、オーブ軍は後退する地球軍に追撃を掛ければいい、と言う訳である。

 

 最強部隊を戦力的に劣る補給部隊攻撃に使う事については、反対意見が多数寄せられたが、結局のところカガリの案以外に有効な作戦は無いと言う事になり、作戦は実行されたのだ。

 

 とは言え、フリューゲル・ヴィントの隊員達には、自分達の任務に不満を持っている者は1人もいない。誰もが、自分達の任務の重要性を理解し、輸送船を叩く事の意味を分かっているのだ。

 

 だが、地球連合軍艦隊が展開している海域まで、あと少しと迫った時だった。

 

 突如、吹き抜ける砲撃が、多数、フリューゲル・ヴィントに浴びせられた。

 

 流石は精鋭特殊部隊と言うべきか、フリューゲル・ヴィントの各機はすかさず回避行動を取る事で攻撃をかわしきる。

 

 しかし、

 

 前方を進むフリューゲル・ヴィントの目の前に、展開している多数の機体が見える。

 

 数はそれほど多い訳ではないが、明らかにグロリアスとは違うシルエットを持った機体も、何機かいるのが分かる。

 

 第81独立機動群ファントムペインである。

 

「やはり、来たな」

 

 ヴァニシングのコックピットの中で、ウォルフは謹厳な顔付きで、向かってくるフリューゲル・ヴィントを見据える。

 

 ウォルフは、寡兵のオーブ軍が勝利する為には、必ず少数精鋭部隊を用いて、補給船団攻撃を狙って攻撃してくると読み、網を張って待ち構えていたのだ。

 

 その読みは正しかった。ウォルフの予想通り、フリューゲル・ヴィントは輸送船団を狙って別行動を取っていたのだから。

 

「ここが貴様等の墓場となろう。今日こそ決着を付けようではないか!!」

 

 ウォルフが言い放つと同時に、ファントムペインの機体が突撃を開始する。

 

 迎え撃つように、フリューゲル・ヴィントも次々と翼を翻して向かっていく。

 

 シンの駆るエルウィングは、その先頭に立っていた。

 

「道は俺が開く!! みんな、絶対に切り抜けるぞ!!」

 

 言いながらシンはドウジギリ対艦刀を構えて斬り込みを掛け、グロリアスを斬り捨てる。

 

 ファントムペイン側もエルウィングの存在に気付き、砲撃を集中する事で撃墜しようとする。

 

 しかし蒼炎翼を羽ばたかせるエルウィングは、高速で駆け抜けながら残像を残し、照準を付けさせるような事はしない。

 

 そして立ち尽くすグロリアスに接近すると、大威力の対艦刀を軽々と振るって斬り伏せていく。

 

 数機のグロリアスが、砲撃を行いながらエルウィングに接近してくる。遠距離からの攻撃では埒が明かないと判断し、距離を詰めての攻撃に切り替えて来たのだろう。

 

 その様子を、シンは鋭く見据える。

 

 次の瞬間、シンはドウジギリを高らかと頭上に投げ上げた。

 

 予期し得なかったエルウィングの行動に、見ていたファントムペイン兵士は、一瞬動きを止め呆気に取られる。

 

 その隙を逃さず、シンは動いた。

 

 エルウィングの両肩からヒエン・ビームブーメランを抜き放つと、サーベルモードにして接近、高速で斬撃を振るう。

 

 隙を突かれた形のファントムペイン兵士はひとたまりもなかった。

 

 高速で振るわれた斬撃によって、エルウィングを攻撃しようとしていたグロリアスは全て、手足や頭を斬り飛ばされて海面へと落下していく。

 

 そこへ、自由落下してきたドウジギリを、シンは再びキャッチして構え直す。

 

 一連の動きに一切の淀みは無い。

 

 誰にも真似できず、まさにシンだからこそできる妙技と言えよう。

 

 再びドウジギリを構えたエルウィング。

 

 そこへ、砲撃を浴びせてくる機体が現れた。

 

「やるな、オーブの守護者。ならば次は、俺の相手をしてもらおう」

 

 ウォルフは言い放ちながら、ヴァニシングが構えたペネトレイトライフルを撃ち放つ。

 

 追加バレル装着した事で、威力と射程を増したビーム攻撃がエルウィングに襲い掛かる。

 

「こいつ、あの時の!?」

 

 相手が、以前戦った事のある隊長機であると気付き、シンはすぐさま向き直ってシールドを展開。ヴァニシングの攻撃を防ぎにかかる。

 

 唸るような勢いで、閃光がエルウィングに迫る。

 

 シールドに着弾した瞬間、思わずシンは姿勢を維持できずに大きく吹き飛ばされた。

 

 威力を底上げしたビーム攻撃が相手では、並みの防御手段は役に立たない。下手をすればシールドごと貫通されかねなかった。

 

「防ぐのは危険か!?」

 

 呻くように呟くと、シンはドウジギリ対艦刀を振り上げ、残像を残しながら突撃を開始する。

 

 元より、亀のように防御に徹するには、シンの性に合わない。それよりも、高い機動性駆使して斬り込みをかけ、先手先手を打っていく方が得策である。

 

 それに対してウォルフもまた接近戦で迎え撃つべく、ペネトレイトライフルをしまってビームサーベルを抜き放つ。残像機能を展開したエルウィングを相手に、砲撃戦を挑むのは効率が悪い事は既に判っていた。

 

 サーベルを振るい、袈裟懸けに斬りつけるヴァニシング。

 

 対抗するようにシンも、その斬撃をエルウィングのシールドで防ぐと、逆にドウジギリを振るって斬り付けた。

 

 シンとウォルフが白熱した激突を繰り広げている頃、その後方では白銀の翼を持つ機体が、盛んに砲撃を行い、ファントムペインの進行を阻み続けてきた。

 

 ORB-03「シロガネ」

 

 オスロ攻防戦でデビューを飾り、つい先ごろまでキラが搭乗していた機体である。

 

 そのシロガネが今、新たな主を得て戦場を舞っていた。

 

「昔は同じ軍にいた義理が無い訳じゃないけど、手加減できる立場でもないから」

 

 静かな呟きを漏らし、ラキヤ・シュナイゼル二佐は7連装フルバーストを解き放つ。

 

 ムウに請われる形でオーブ軍に入隊したラキヤは、その操縦の腕を認められ、二佐の階級とフリューゲル・ヴィント第4中隊長の肩書を手にしていた。

 

 更に、最新鋭機であるシロガネを任されると言う、破格の待遇である。

 

 普通に考えれば、このような依怙贔屓に近い人事はあり得ないだろう。しかし、今のオーブは懐が苦しい状況であり、腕の良いパイロットは敵軍から引き抜いてでも欲しいところである。

 

 ナチュラルでありながらコーディネイターを遥かに上回る実力を持つラキヤの存在は、オーブ軍にとっては千人の軍勢を得たに等しかった。

 

 ラキヤはライフル、ビームキャノン、レールガン、ヤタガラス複列位相砲を的確に駆使して、向かってくるグロリアスを撃ち抜いている。

 

 砲撃戦寄りの戦術思想を持つシロガネだが、元々ラキヤはオールラウンダー型の能力の持ち主であり、接近戦、砲撃戦双方において高い実力を持っている。操縦については何の問題も無かった。

 

 更に、シロガネの砲撃を回避して接近を試みようとしているグロリアスに対しては、ビームサーベルを抜いて斬り捨てていく。

 

 その時だった。

 

 突如、シロガネの周囲に展開していたコガラス2機が、直撃を浴びて吹き飛ばされた。

 

「何ッ!?」

 

 振り仰ぐ先には、しかし何の姿も見えない。

 

 そうしている内に、更に1機、コガラスが直撃を浴びるも、これは辛うじて左肩を撃ち抜かれただけで済んだ。

 

「狙撃か!?」

 

 相手の正体を看破したラキヤは、警戒するようにビームシールドを張り巡らせる。

 

 相手の姿は見えない。かなりの超長距離からの狙撃である事が分かった。

 

 この時、スナイパーはラキヤが予測したとおり、遥か彼方にあって照準スコープを覗いていた。

 

「大変だねー、貧乏な国は色々と。同情するぜ。ま、手加減はしねえけどね」

 

 嘯くようにそう言うと、ロベルト・グランは引き金を引き絞る。

 

 彼が乗っている機体は、かなり異様である。

 

 まるで戦車を思わせるずんぐりしたボディに、機体を安定させるための大きな足があり、肩口からは巨大な大砲が1門、突き出ている。

 

 GAT-X153「ホークアイ」

 

 その鋭いネーミングとは裏腹に、機体その物は鈍重と言ったイメージである。

 

 この機体は狙撃に特化する為、格闘戦能力と機動力を完全に排除している。メインの武装は肩口から突き出した狙撃砲で、後は両手に近接迎撃用のビームライフルとビームサブマシンガン、腰にはミサイルランチャーを装備している。

 

 装甲は厚いが足は鈍重その物であり、機動力の高い機体に接近されたら、ひとたまりもないだろう。

 

 時代を逆行するような設計のホークアイだが、こと狙撃に関する限りは世界最強レベルと言っても過言ではなく、照準の精度、速度、弾道予測、砲撃1発の威力。全てにおいて、比類する機体は存在しなかった。

 

「幕引きってのは、せいぜい派手にやるもんさ。スカンジナビアがそうだったみたいにさ!!」

 

 言いながら、引き金を引き絞るロベルト。

 

 その正確無比な狙撃を前に、流石のフリューゲル・ヴィントも、手も足も出せないでいる。

 

 対してラキヤは、ホークアイが放った砲撃をシールドで防ぎつつ、スナイパーが潜んでいる位置を探ろうとする。

 

「何とか、敵の場所さえわかれば、反撃もできるのに・・・・・・」

 

 現在、判っているのは、砲弾が飛んでくる方角のみ。しかし、いくらセンサーを巡らしても敵の姿を捉える事はできない。恐らく、モビルスーツのセンサーでは捉えられない程の超長距離から狙撃しているものと思われた。

 

「仕方がないッ」

 

 ラキヤは舌打ちしながら、シロガネを回頭させる。

 

 この位置から敵を捉えられないなら、もっと接近する以外になかった。

 

 しかし、そのシロガネの動きを待っていたかのように、急速に接近してくる漆黒の影があった。

 

 引き絞った四肢をもつ、ジャスティスを髣髴とさせる機体。

 

 ジブラルタルではキラをも圧倒した、ダークナイトのエクスプロージョンである。

 

 ダークナイトは、シロガネを見付けて急速に接近すると、両手首、両脛、両爪先のビームソードを展開して斬り掛かってくる。

 

「ッ!?」

 

 舌打ちするラキヤ。

 

 同時に、シロガネを宙返りさせるようにして距離を置きつつ、向き直ると同時に両手に装備したビームライフルを構えて砲撃を浴びせる。

 

 速射に近いシロガネの攻撃だが、しかしダークナイトは難なく回避して、シロガネへと迫ってくる。

 

「速いッ!?」

 

 エクスプロージョンの動きを脅威と感じたラキヤは、砲撃を諦め、両手にビームサーベルを構えて迎え撃つ。

 

 対峙しつつ、剣を交える両者。

 

 接近すると同時に剣を振るい、そして離脱すると言う行動を繰り返す。

 

 しかし、徐々にだが、時間が経つごとにラキヤの方が押され始めた。

 

 純粋に接近戦型のエクスプロージョンに対し、砲撃戦寄りのシロガネで白兵戦を挑むのは聊か分が悪い物がある。

 

 両手首、両脛、両爪先のビームソードに加え、エクステンショナルアレスターや両膝、両翼のビームソードまで駆使して斬り掛かってくるダークナイト。

 

 それに対してラキヤも、ビームサーベルを振り翳して対抗しようとするが、流石に手数が違い過ぎる為、完全には防ぐ事ができず、徐々に追い込まれていくのは避けられない。

 

 それでもどうにか、シールドや回避を駆使してノーダメージに押さえ続けるラキヤ。しかし、なかなか反撃の手段を見出す事ができないでいる。

 

 時折、胸部のヤタガラス複列位相砲を放って牽制を行うも、それすらダークナイトは難なくかわして攻め込んでくる。

 

 間断なく繰り出されるダークナイトの斬撃。

 

 それに対してラキヤは、徐々に追い詰められていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地球軍艦隊旗艦のブリッジに座乗したイスカ・レア・セイランは、不機嫌そうに両足を組み替えながら、もたらされる戦況の様子に聞き入っていた。

 

 状況は、彼女の思い描いた通りに進んでいなかった。

 

 当初の計画では、圧倒的大兵力でもってオーブ軍の防衛戦力を粉砕し、後は余勢を駆って本土へと侵攻、オーブと名の付くありとあらゆる物を焼き尽くす計画だった。

 

 そうする事によって、かつて自分を追放したオーブと言う国に対する復讐は完結すると思っている。

 

 しかし、意に反して地球連合軍は、未だにアカツキ島に接近する事すらできないでいる。

 

 イスカは苛立たしく足を揺らしながら、艦隊司令官を睨んで尋ねた。

 

「おい、あたしはいつまで待てば良いんだよ? このままじゃババァになるまで終わらねえんじゃねえのか?」

「ハッ」

 

 尋ねられた司令官は、恐縮した体で振り返って答える。

 

「現状、オーブ軍の抵抗激しく、なかなか敵の陣地まで辿りつけない状況でして、その・・・・・・・・・・・・」

「ああ、判った判った、もう良いから、テメェはその辺で首でも吊ってろよ」

 

 役に立たない司令官にそう吐き捨てると、イスカは再びモニターに目をやる。

 

 しかし、何度見ても状況は同じ。オーブ軍の防衛線を相手に攻めあぐねている味方を見て、イスカは更なる苛立ちを募らせる。

 

 地球軍が苦戦している理由は、オーブ軍が予想を超えて頑強な抵抗を示しているのもさる事ながら、地球軍の準備不足にも原因があった。

 

 何しろ西ユーラシアを平定して、それから1カ月もしないうちに今度はオーブまで遠征である。兵士達の疲れも癒えていないし、機体も万全でない物が多数に上る。

 

 それに関しては、出撃を強硬に主張したイスカにも責任がある事だった。

 

 イスカは内心で、焦りが生じ始めていた。

 

 カーディナルが直接指揮したスカンジナビア攻略戦の折には、今の半分の兵力で作戦に成功している。なのに自分は、圧倒的な兵力を持ちながら、オーブ侵攻に手間取っている。この事実が、プライドの高い彼女には許せなかった。

 

「ジェノサイド部隊、出撃はどうなっている!?」

 

 苛立ちを込めて叫ぶ。

 

 とにかく、質、量ともに地球軍はオーブ軍に勝っているのだ。このまま力で押せば必ず勝てるはずである。

 

「ハッ 間もなく、出撃可能との事です」

「遅ェんだよ、愚図が!! とっととしろ!!」

 

 口汚く罵るイスカ。

 

 だが、その内心では安堵にも似た笑みを浮かべている。

 

 今回の出撃に際し、地球連合軍は20機ものジェノサイドを集中投入している。これは、スカンジナビア攻略戦時の倍近い数であり、現在、現存しているジェノサイドのほぼ6割に相当する。

 

 ジェノサイドさえ出撃すれば、こちらの勝利は間違いないはずだった。

 

 多少の苦戦はあったかもしれないが、行きつく結果が同じであるならば何も問題は無い。

 

 オーブ軍をジェノサイドで焼き払い、後は思うに任せて蹂躙するだけだった。

 

「さあ、もうすぐよ」

 

 その瞬間を夢想し、イスカは暗い愉悦にほくそ笑むのだった。

 

 

 

 

 

 何機目かのグロリアスをオオデンタ対艦刀で斬り捨てた後、アスランは地球軍の動きに変化が生じている事に気付いた。

 

 それまでは盛んに攻め立ててきていた地球軍が、なぜか自分達から距離を置くような動きを見せるようになっていた。

 

 一瞬、こちらの防衛線に攻めあぐねて、いったん後退しようとしているのかと思ったが、すぐにそうではない事に気付いた。

 

 グロリアスは、ある程度距離を置きつつも、こちらの様子を伺うようにして砲撃を繰り返している。そのまま撤退すると言う感じではない。どちらかと言えば、自分達の方にオーブ軍を引き付けようとしているかのような動きだった。

 

「奴等、何をたくらんでいる?」

 

 クレナイのビームシールドで砲撃を防ぎながら、アスランは自問するように呟く。

 

 経験上、敵がこのような動きをするときには、何か作戦の切り替えを行う時であると言う事が多かった。

 

 となると、地球軍が次に打って来るであろう手は?

 

 そう考えた瞬間だった。

 

 遥か戦場の後方、

 

 海上を疾走するように移動する巨大な影がある事に、アスランは気が付いた。

 

「あれは、ジェノサイドか!?」

 

 そこでアスランは、地球軍の狙いを完全に理解した。彼等は主力隊でオーブ軍を拘束する一方で、ジェノサイド部隊を迂回する形でアカツキ島へと向かわせるつもりなのだ。

 

 思い至ると同時に、アスランは舌打ちしつつクレナイをターンさせる。

 

 向かってきたグロリアスをオオデンタで斬り捨てながら、スラスターを全開にしてジェノサイドへと向かおうとする。

 

 アカツキ島には今、カガリがいる。

 

 アスランの大切な女性が、あそこで指揮を取っている。

 

「絶対に、行かせるわけにはいかない!!」

 

 叫びながら、クレナイの速度を上げるアスラン。

 

 だが、その前に、行く手を塞ぐように砲撃を浴びせられ、アスランは回避を余儀なくされる。

 

 振り返れば、全身の武装を展開して、クレナイに向けて砲撃を浴びせてくる機体がある。

 

 レニ・ス・アクシアのサイクロンである。

 

 レニは1機だけ突出してジェノサイド部隊に向かおうとするクレナイを見付け、これを排除するべく立ち塞がったのだ。

 

 両手のダインスレイブ複合銃剣、両肩の連装ビームキャノン、4基のガンバレルを展開、照準をクレナイに向ける。

 

「行かせません」

 

 静かに言い放つと同時に、10連装フルバーストを撃ち放つレニ。

 

 その強烈な砲撃を前にして、

 

 しかしアスランは一歩も怯む事無く、ビームシールドを前面に展開して突撃を続ける。

 

 掲げたシールドの前面に、サイクロンの砲撃が命中、クレナイは大きく吹き飛ばされる。

 

 そこへ、レニは好機とばかりにダインスレイブを対艦刀モードにして斬り掛かってくる。

 

 対してアスランは、間一髪で体勢を立て直すと、両腰からビームサーベルを抜き放ち、更に両脛に装備したスクナ・ビームブレードを展開して迎え撃つ。

 

「どけェ!!」

 

 叫びながら、斬り掛かっていくアスラン。

 

 クレナイとサイクロンは、互いに剥げ行く空中で入り混じりながら斬り結ぶ。

 

 しかし、その間にもジェノサイド部隊は悠々と戦場後方を通過し、迂回する形でアカツキ島へと迫っていく。

 

 その威容は、司令部に詰めているカガリからも確認する事ができた。

 

 スカンジナビアで一度見た事がある、地球軍のデストロイ級機動兵器が急速に迫ってくるのが見える。

 

 誰もが、固唾を呑んで怯える中、

 

 カガリはその両眼を真っ直ぐに見開き、迫る悪魔を睨みつけている。

 

 負けない。

 

 たとえこの後、自分の命が尽きるにしても、最後の一瞬まで敵に背を向けるような事はしない。

 

 その意志を示すように、カガリは司令部の真ん中に立ち続けている。

 

 やがて、攻撃位置に着いた20機のジェノサイドが、全武装を展開してアカツキ島へと砲門を向けてくる。

 

 その様子を見て、イスカはほくそ笑んだ。

 

 さんざん手こずらせてくれたが、これでオーブも終わりだ。あとは残ったカス共を始末するだけ。その後は楽しい楽しい大虐殺が待っているのだ。

 

 その瞬間を夢想し、イスカは更にくっきりとした笑みを顔に張り付かせる。

 

 砲撃の準備が完了し、エネルギーの重点が終わる。

 

 海面に並んだジェノサイドが、その全ての砲門を開こうとした。

 

 次の瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中天に、日が陰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 降り注ぐ、砲撃の嵐。

 

 今にも砲撃を始めようとしていたジェノサイドは、天空からの砲撃を喰らい、砲門や手足、頭部を次々と吹き飛ばされていく。

 

 それも、1機、2機ではない。ほぼ全てのジェノサイドが、僅か一瞬のうちに直撃を食らい、吹き飛ばされていく。

 

 全てのジェノサイドが被弾し、今まさにチェックメイトを掛けようとしていた攻撃をキャンセルされ立ち尽くす状況の中で、

 

 その機体は、真っ直ぐに駆け下りてきた。

 

 蒼いボディを持ち、純白の翼を持つ機体。

 

 流麗な姿は、まるで戦天使であるかのようだ。

 

 誰もが唖然としてその機体を見守る中、

 

 凛とした声が、戦場全体に鳴り響いた。

 

「こちら、キラ・ヒビキ。これより、オーブ軍を掩護します!!」

 

 

 

 

 

PHASE-04「鋼鉄の海嘯」      終わり

 




ここまで難航した機体は、3シリーズ中初めてかも。
これ投稿している時点で、未だにキラの機体の弄っていたりします。

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