機動戦士ガンダムSEED 焔を刻む銀のロザリオ   作:ファルクラム

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第2部
PHASE-01「未来への敗走」 


 

 

 

 

 

 

 

 

 キラ・ヒビキがその男女と出会ったのは、避難民でごった返すジブラルタル基地での出来事だった。

 

 周囲を見渡せば、同様に焼け出された、脱出の順番を待っている難民達が大勢いる。

 

 彼等は皆、家を焼かれ、家族を殺され、それでもどうにか命からがら逃げだしてきた者達ばかりである。

 

 そんな中で、キラがその男女に興味をひかれたのは、彼等が他の難民達とは、どうにも様子が違うように思えたからである。

 

 うまく言葉に言い表す事はできないのだが、しいて言うなら「共感」とでも言うべきだろうか? 何となく他人のような気がしなかったのだ。

 

 青年も女性も歳は若く、キラとそう変わらないように思える。一見すると、どこにでもいる男女のカップルにも見えるのだが、気になるのは女性の右袖がだらりと下げられている事だった。

 

 恐らく戦傷によるものだろうが、女性は右腕を肩の先辺りで切断している様子だった。

 

 恐らくは2人とも軍隊経験者。それも自分と同じパイロットではないだろうか、とキラは推察した。

 

 しばらくそのまま見詰めていると、どうやら向こうもキラの事に気付いたらしい。少し不思議そうな顔をした後、微笑を向けてきた。

 

「どうです、一杯やって行きませんか?」

 

 男の方がそう言った時、キラは何の事を言っているのか判らず、キョトンとした顔をした。

 

 しかしすぐに、女性が左手に持ったポットを、床に置いたサイフォンに傾けている様子が見えた。

 

 香ばしい香りが、キラの鼻腔に漂ってくる。この匂いは、コーヒーによるものだ。どうやら、ご馳走してくれると言っているらしい。

 

「ありがとう、いただきます」

 

 幸い、時間はまだある。コーヒーの一杯くらい、ご相伴にあずかる余裕はある筈だった。

 

「はい、どうぞ」

 

 女性が差し出したカップを受け取ると、キラは熱さを掌に感じながら口へと運ぶ。

 

 程よい苦さと香ばしい旨味が、キラの喉を流れ落ちて行く。キラもコーヒーの焙煎には多少拘る方だが、流石にこのレベルには程遠かった。

 

「美味しいです」

「良かった」

 

 隻腕の女性は、キラの反応を見て満面の笑顔を浮かべる。見た目はキラと同じくらいだが、こうした仕草は、どこか子供っぽさを感じさせる女性である。

 

 それを奇禍として、3人は妙に会話を弾ませた。

 

 話を聞けば、2人はどうやら夫婦であるらしい。しかし、今回の件で済んでいた喫茶店を捨てて、このジブラルタルまで落ち延びて来たらしい。

 

「ごめんね、こんな事になっちゃって」

 

 そんな2人がいたたまれなくなり、キラは難しい顔で頭を下げる。彼等がこのような事態に陥ったのは、自分達にも責任の一端があるとキラは考えていた。

 

 そんなキラに対し、2人は恐縮したように慌て手を振ってきた。

 

「そんな、謝らないでよ」

「そうそう、ボク達だって、別に皆さんを恨んでるわけじゃないんだから」

 

 今、ジブラルタルに集まった難民の中には、地球連合軍のみならず、キラ達のような共和連合軍に対しても、露骨な恨み言を言う者も少なくは無い。戦火に巻かれ、住んでいる土地を追われた彼等からすれば、地球連合軍も共和連合軍も等しく「悪」なのだ。

 

「みんなが必死に頑張ってくれたから、とりあえずここまでは無事にこれたんだし」

「そうそう。生きていれば、きっとまだ何とかなるって思うんだ」

 

 2人はそう言って、キラに笑いかける。

 

 それにつられるようにして、キラもまた笑顔を見せる。何となく、それだけで救われたような気がした。

 

 その時、背後から駆け寄ってくる足音がある事に気が付いた。

 

「隊長、こちらでしたか。間も無く、出撃の時間です」

「判った。すぐ行くよ」

 

 そう言うと、キラは頷いてコーヒーを飲み干すと立ち上がった。

 

 そこでふと、返しかけた踵を元に戻し、もう一度2人に向き直った。

 

「実は僕、もうすぐ子供が生まれるんです」

 

 キラは遠い眼差しをしながら言う。

 

「子供が生まれたら、彼女と子供と3人で、あなた達の喫茶店に行きます。だから、それまでどうか生き延びて」

 

 そう伝えると、キラは今度こそ踵を返して歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コズミック・イラ78年2月7日。

 

 スカンジナビア王国の陥落から5カ月が経過したこの日、地球連合軍は、欧州に残った最後の共和連合軍の拠点であるジブラルタルに対し、総攻撃を開始した。

 

 半年。

 

 わずか半年もしないうちに、状況がここまで絶望的に経過すると予想し得た者は誰もいなかった。

 

 スカンジナビア王国を壊滅に追いやった地球連合軍は、その後1か月を待たずに、西ユーラシア反攻作戦を開始した。

 

 大量投入する事に成功したジェノサイドの大部隊の支援を受けた地球軍は、各戦線で共和連合軍を圧倒し、まるで卵の殻をひき潰すかのように次々と根こそぎにしていった。

 

 共和連合軍も必死の抵抗を試みたが、スカンジナビアと言う巨大な後ろ盾を失った事はやはり大きかった。ジェノサイドの大火力に加えて、スカンジナビア侵攻軍をそのまま転進させた大部隊を投入しての一斉掃滅戦である。寡兵の共和連合軍に抗する術は無かった。

 

 戦闘開始から1週間で、西ユーラシア解放軍が本拠を置くブリュッセルは奪還され、幹部の大半は捕縛、即日処刑された。

 

 これにより、西ユーラシア解放軍は完全に烏合の衆と化した。

 

 2か月を待たずに東欧地方を平定した地球連合軍は、その進路を西へと向けた。

 

 最終的な目的地は、ザフト軍の欧州方面軍司令部があるジブラルタル基地。そして、そこに至るまでにある、全ての者を焼き尽くす勢いで、地球軍の進撃は始まった。

 

 勿論、ただの進撃ではない。

 

 進撃路にはジェノサイド部隊を先鋒として投入し、徹底的な掃滅と破壊が行われた。

 

 破壊、略奪、虐殺、凌辱。

 

 戦場におけるあらゆる負の要素が、西ユーラシアを席巻した。

 

 悲惨だったのは、戦う術の無い民間人達である。彼等は地球軍に捕らわれると、例外無く虐殺の対象となった。

 

 広場に集められ、ライフルの一斉掃射で皆殺しにされるならば、まだ死に方としてはましな方である。大半の者がゲーム感覚の兵士達によって嬲り者にされたのだ。

 

 母親の目の前で子供が殺される者や、手足を捥ぎ取られたまま、瀕死の状態で放置される者も多数存在した。

 

 ある老人はモビルスーツの足元に寝ころばされ、そのままプレス機の要領で踏み潰された。ある男性は刃物で肉体を五分刻みに解体された。ある男性は木に縛り付けられた後、兵士達にサンドバックのようにされ殴り殺された。ある女性は恋人が見ている前で散々兵士に凌辱された後、恋人と共に撃ち殺された。ある幼子は、生きたまま汚物槽に放り込まれた。

 

 そのような虐殺の風景が、西ユーラシア全土で展開されたのである。正に4年前のベルリンでの惨劇が、規模を数千倍にして再現された形である。

 

 人々の足は地球軍の進撃から逃れるように、自然と西を目指した。

 

 そのような情勢下で、共和連合軍も手を拱いていた訳ではない。

 

 ザフト軍はジブラルタルに大規模な増援部隊を数度に渡って送り込み、オーブ軍もまた、第13機動遊撃部隊フリューゲル・ヴィントを中心とした緊急展開部隊を投入、地球軍の進撃に対する遅滞作戦と難民救助を行った。

 

 特にフリューゲル・ヴィントの活躍は目覚ましく、彼等は積極的に戦線介入を行い、ジェノサイド数機を含む多数の地球軍機を撃墜、地球連合軍の進撃を大いに妨げた。

 

 しかし、精鋭であっても少数でしかないフリューゲル・ヴィントの支援には限界があった。

 

 やがて地球連合軍が第81独立機動群ファントムペインを本格的に戦線投入するに至り、彼等の活躍も次第に収束せざるを得なかった。

 

 そして現在、共和連合軍は西ユーラシアの西の果てであるジブラルタルに押し込まれ、最後の抵抗を行っていた。

 

 とは言え、既に使える戦力はあと僅かである。雀の涙のような戦力では、ジェノサイドやファントムペインを含む地球連合軍の大攻勢を退ける事は不可能である。

 

 しかし、それでも彼等は戦わなくてはならない。

 

 ジブラルタルには今、戦火から逃れて落ち延びてきた難民達がごった返している。彼等は死ぬような思いをして、ようやくここまで辿りついたのだ。そんな彼等が逃げ出す時間くらいは、せめて稼いでやりたいと思う。

 

 しかし現実問題として、それすら不可能である事は火を見るよりも明らかだった。

 

 

 

 

 

 キラはシロガネを駆っていち早く戦場に飛び込むと、ビームキャノン、ビームライフル、レールガン、ヤタガラス複列位相砲を一斉展開、7連装フルバーストを仕掛ける。

 

 量産機では再現できない火力を叩き付けられ、複数のグロリアスが戦闘力を失って墜落していく。

 

 勿論、地球軍側も反撃としての砲火をシロガネへと向ける。

 

 普段のキラならその程度の攻撃、軽く回避するか、あるいはシールドで防ごうとするだろう。

 

 だが、キラはあえてそれをしない。全ての攻撃を、シロガネの表面装甲で受け止める。

 

 次の瞬間、ヤタノカガミによって反射された閃光が、そっくりそのまま撃ち返されて、地球軍の機体に命中する。

 

 自分の攻撃によって自分が撃墜されると言う屈辱を味わう地球軍。

 

 そこへキラは、ビームサーベルを構えて斬り掛かっていく。

 

 白銀の閃光がすれ違う。

 

 次の瞬間、3機のグロリアスが頭部や腕を斬り飛ばされて撃墜した。

 

 シロガネの戦闘力を前に、浮足立つ地球軍部隊。

 

 そこへもう1機、圧倒的な密度を誇る砲撃をものともせず、地球軍部隊の中へと飛び込む機体がある。

 

 蒼炎翼を羽ばたかせた純白の機体が、手にした大剣を振り翳す。

 

 シン・アスカのエルウィングである。

 

 彼もまた、フリューゲル・ヴィント1個中隊を率いる者として、この欧州戦線に参加、地獄のような戦場を戦っていた。

 

 今回のジブラルタル防衛線に投入されたフリューゲル・ヴィントは、第2、第3の2個中隊である。第3中隊は半年前から引き続きシンが率いているが、第2中隊はキラが率いていた。

 

 スカンジナビア攻防戦が終結した後、キラはカガリから請われる形でオーブ軍の軍籍に復帰、一佐の階級と共に、かつての古巣であるフリューゲル・ヴィントに戻っていた。

 

 この難局にあって、フリューゲル・ヴィントを率いるにふさわしい人間は、キラを置いて他にいなかった。

 

 そのフリューゲル・ヴィントも、本来であるなら全中隊を投入したいところではあるが、先のマドリード攻防戦の際に第1、第4中隊が壊滅的な損害を受け、中隊長も戦死した為、両中隊はオーブ本国に後退を余儀なくされていた。

 

 そんな中で、キラの第2中隊とシンの第3中隊は、貴重な中核戦力として戦い続けていた。

 

「絶対に、時間を稼ぐぞ!!」

 

 高らかに言い放つと、シンはドウジギリ対艦刀を振り翳して斬り込んで行く。

 

 蒼炎翼から迸る残像が、地球軍部隊の照準を大きく狂わせる。

 

 全ての攻撃がエルウィングを捉えられず、空しく吹き抜けていく。

 

 その間に距離を詰めるシン。

 

 ドウジギリが旋回する度、刃はグロリアスを次々と斬り飛ばしていく。

 

 中にはビームサーベルを振り翳し、エルウィングに斬り掛かろうとしてくるグロリアスもいるが、それを許すシンではない。

 

 エルウィングは蒼炎翼を羽ばたかせると、一瞬で距離を置きドウジギリを抜き打ちのように構え直す。

 

 激しいビームが悉く残像を斬り裂く中、横なぎの一閃が、グロリアスの両足を一緒くたに吹き飛ばしてしまった。

 

 更に、そこへ追い打ちをかけるように、シロガネの7連装フルバーストが迸る。

 

 その大火力を前にして、複数の地球軍機があっという間に撃墜の憂き目にあう。

 

 キラとシン。

 

 オーブ軍が誇る二大エースを前にしては、さしもの地球連合軍の大軍も抗しきれるものではない。

 

 しかし、それでも、たった2人のエースが奮戦しただけで覆せるほど、戦況は共和連合にとって容易い物ではなくなっていた。

 

 

 

 

 

 アカツキに搭乗したムウ・ラ・フラガは、上空に占位したまま全軍を俯瞰的に見れる位置にいた。

 

 このスタイルは本来、彼の得意とするやり方ではないのだが、今回は仕方のない部分がある。

 

 何しろ、敵はどこから攻め込んできてもおかしくは無い状態である。それ故にムウには、全方位の戦況に応えられるだけの目が要求されていた。

 

「こいつは、まずいんじゃないの?」

 

 操縦桿を握りながら、ムウは舌打ち交じりに尋ねる。

 

 今回の戦いで共和連合軍が戦線投入した戦力は100機に満たない。それに対して地球連合軍は500機以上の大部隊で攻め寄せている。しかも、その中にはあのジェノサイドも含まれているのだ。このままでは共和連合軍の戦線崩壊も時間の問題であった。

 

 そもそも、宇宙軍の司令官であるムウが、部隊を率いて欧州の戦場に立っている事からして、共和連合軍の苦境は一目瞭然であると言えよう。

 

 ジブラルタルへ救援部隊を送るに当たりオーブ軍は、既に本国からの長距離輸送だけでは間に合わないと判断し、アシハラから宇宙軍を直接降下させて救援を行ったのだ。

 

 アシハラのオーブ宇宙軍は、月の地球連合宇宙軍に対する大切な押さえである。彼等が消耗したら、宇宙戦線の維持も難しくなるだろう。

 

 しかし、宇宙戦線後退と言うリスクを冒してでも、今は欧州の救援が最優先事項だった。

 

 とは言え、ここに至るまでオーブ軍、ザフト軍、そしてスカンジナビア残党軍の消耗は目を覆いたくなるレベルに達している。ムウ達がここでできる抵抗も、微々たるものでしかなかった。

 

 西ユーラシアは、もう救えない。それどころか、ジブラルタルに残っている難民達を助ける時間も、もう無いかもしれない。キラとシンは最前線で踏ん張ってくれてはいるが、たった2人のスーパーエースだけでは如何ともしがたい状況であった。

 

 その時だった。

 

《フラガ司令!!》

 

 部下の一人が、慌てたように通信を入れてきた。

 

《ジェノサイドが1機、我が方の防衛線を突破しました。このままでは、避難民が収容されている区画への進行を許してしまいます!!》

 

 その報告に、ムウは苦い顔で舌打ちした。やはり、全ての攻撃を防ぎきる事など、不可能だったのだ。

 

 こちらは圧倒的に戦力が足りない。最前線にいるシンやキラを、今から呼び戻す事も出来ない。

 

 ムウに選択の余地は無かった。

 

「俺が行くッ シシオウ1個小隊、俺に着いて来い!!」

《ハッ!!》

 

 ムウは3機のシシオウを従えて、アカツキを反転させる。

 

 並みの兵士ではジェノサイドの相手は無理だ。キラとシンが動けない以上、ムウが行くしかなかった。

 

 3機のシシオウを従えて暫く飛翔すると、前方に禍々しい巨体が見えてきた。既に基地内部への侵入を許しており、辺り一面は破壊と炎によって埋め尽くされていた。

 

 あの周囲にいた避難民もまた、炎に巻かれて焼き殺されたであろう。

 

 苦い表情で顔を顰めるムウ。

 

 だがその時、ムウは信じられない物を見た。

 

「あれはッ!?」

 

 基地を蹂躙するジェノサイド。

 

 その姿を見て、ムウは思わず絶句した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラキヤ・シュナイゼルという青年が、元軍人だと聞いたら、誰もが笑い飛ばすのではないだろうか?

 

 線が細く、とても荒事に向いているようには見えない。性格も穏やかで人当たりがよく、彼がおよそ、感情をむき出しにして怒りを表している姿など、想像する事すらできそうに無い。

 

 それは、彼の妻であるアリス・シュナイゼルについても同様である。こちらはラキヤに比べると性格的には活発だが、それもどちらかと言えば「天真爛漫」と言ったイメージであり、やはり軍人と言う感じではない。

 

 つまり、ラキヤとアリスと言う夫婦は、どう見ても軍人らしくなかった。

 

 しかし、彼等が4年前まで軍人だったのは、紛れも無い事実である。

 

 それもラキヤが地球連合軍、アリスがザフト軍。つまり、互いに敵同士だった訳だ。

 

 元々、プラントで暮らし、お互いに幼馴染だったラキヤとアリスだったが、諸事情を経て、互いに異なる陣営の軍に所属するようになった。

 

 2人が再会したのは戦場である。当然の事ながら、初めはお互いの正体が分からず、銃を向けて撃ち合った。

 

 しかし、それでも尚、2人を結びつける絆が断ち切られる事は無かった。

 

 やがて、互いの立場と業を乗り越え、2人は結ばれた。そして2人は、世間の情勢から背を向けるようにして軍を抜けると、西ユーラシアで喫茶店を始めたのだ。

 

 しかし、そのささやかな幸せも、地球軍の侵攻と大虐殺によって、全てが破壊されてしまった。

 

「・・・・・・・・・・・・残念だったね」

 

 ポツリと呟くアリスの肩を、寄り添うラキヤはそっと抱き寄せる。

 

 2人で作った喫茶店も、今頃は地球軍の攻撃によって破壊されているだろう。

 

 1年前、戦傷で右腕を切断したアリスのリハビリもようやく終わり、2人で始めた喫茶店。ようやく経営も軌道に乗り、近隣の町から来てくれる客も増えてきた矢先の、今回の地球軍侵攻である。

 

 ラキヤとしても悔しい気持ちでいっぱいである。折角あそこまで頑張った物が、いともあっさりと破壊されてしまったと言う事実は受け入れがたい物があった。

 

 しかし、それでも希望はまだ残っている。

 

「大丈夫だよ」

「ラキヤ?」

「僕もアリスも、まだ生きている。生きてさえいれば、何度でもやり直す事ができるさ」

 

 そう言って、妻を慰めるラキヤ。

 

 アリスの方でも、そんなラキヤに身を預けるようにして寄りかかった。

 

 数人の兵士が、慌てた調子で駆け寄ってきて、ハンドスピーカーに口を当てたのは、そんな時だった。

 

《みなさんッ すぐにここから退避してください!!》

 

 息を切らした兵士は、切羽詰まった様子で叫び声をあげ、難民達に退避を促してくる。

 

 寄り添うようにして床に座り込んでいる難民達が訝る視線を向ける中、隊長は更に続けた。

 

《もう間もなく、地球軍がここにやってきます!! このままでは防ぎきれないかもしれません。早く逃げてください!!》

 

 その言葉に、場は大混乱に陥る。

 

 たちまち怒号が飛び交い、騒乱の渦の中、親とはぐれた子供が泣き叫ぶ声が響いてくる。

 

 だが、これ以上どこに逃げろと言うのか? ここは西ユーラシアの西の果てだ。これ以上、どこにも逃げ場など無い。

 

「アリス」

「ラキヤ・・・・・・・・・・・・」

 

 不安そうな妻の肩を、ラキヤはそっと抱き寄せる。

 

 最早、ここまでかもしれない。

 

 2人共、元軍人である。死ぬ覚悟はとうにできていた。

 

 その時だった。2人の耳に、兵士達の焦った調子の会話が聞こえてきた。

 

「クソッ 機体はこれだけあるってのに、動かせないってのは悔しいな・・・・・・」

「仕方がないさ。動かせる奴は、もう殆ど残っていないんだから」

 

 共和連合軍はこの半年で、戦力の多くを喪失している。それはパイロットも同様で、機体があってもパイロットがいないと言う状況だった。

 

 見れば、広間の先では待機状態のまま鎮座しているシシオウの姿がある。どうやら、あの機体も、パイロットがいない為に出撃できないでいるらしい。

 

「・・・・・・ラキヤ?」

 

 傍らのアリスが、何かを察したようにラキヤの方に視線を向けてくる。

 

 その視線を受けながら、ラキヤは心の中で葛藤していた。

 

 パイロットならいる。ここに。

 

 だが、自分は軍を捨てて、アリスと共に逃げた卑怯者だ。今さら、向こうの世界に戻る事が許されるのだろうか?

 

 しかし、

 

 ラキヤはアリスに、チラッと視線を向ける。

 

 ここで全てを諦めて、アリスと2人で死を待つと言うのも、正しい道だとは思えなかった。

 

 先程、自分達のコーヒーを美味しいと言って飲んでくれた、共和連合の隊長。ラキヤと同じくらいの年齢に見えたあの青年も、今頃は自分達を守る為に戦ってくれているはず。

 

 それなのに、戦う力がある自分が、ここで燻っていて果たして良いのか? 自分が戦えば、ここにいる人達を救う事ができるかもしれないと言うのに?

 

 己の内に浮かんだ考えに、ラキヤが逡巡を示した。

 

 その時、

 

 視界いっぱいに、閃光が溢れだした。

 

 轟音と、それに続く衝撃。

 

「ッ!?」

「キャァァァァァァァァァァァァ!?」

 

 ラキヤはとっさにアリスの体を抱え、受け身を取るようにして床に転がる。

 

 爆炎が踊り、周りにあるあらゆる物を破壊し尽くしていく。

 

 悲鳴は聞こえなかった。それを上げる余裕すら無かったのだ。

 

「アリス、大丈夫?」

「う、うん、何とか・・・・・・・・・・・・」

 

 とっさに受け身を取った事が功を奏し、ラキヤとアリスは奇跡的に無傷だった。

 

 だが、

 

 それまでは軍の施設の中にいた筈の2人だが、目を開けると、周囲の空気は一変して吹き曝しになっていた。

 

 吹き飛ばされた施設は瓦礫と化し、見る影も無くなっている。

 

 周囲から漂う異臭は、人間の体が炎によって焼かれて生じているのだろう。

 

 ここに至るまで何度も見てきた地獄が、再び姿を現していた。

 

 傍らのアリスも、声を上げる事ができずに立ち尽くしている。

 

 顔を上げるラキヤ。

 

 その視線の先には、この破壊をもたらしたであろう存在が、悠然と禍々しい姿をさらしているのが見える。

 

「あれは・・・・・・・・・・・・」

 

 その姿に、ラキヤは見覚えがあった。

 

 あれは4年前、地球軍が戦線投入したX1デストロイの、恐らく後継機だ。

 

 ベルリンを含む4都市を壊滅に追いやった悪魔の大量破壊兵器。

 

 そして、ステラ。

 

 ラキヤが妹のように可愛がっていたあの少女を、大量虐殺者に仕立て上げた忌むべき存在。

 

 地球連合軍は、あれを再び蘇らせたのだ。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 ジェノサイドを遠望し、ラキヤは己に自問する。

 

 ラキヤ・シュナイゼル、お前は一体、何をやっているんだ?

 

 アリスを抱く腕に、そっと力を込める。

 

 自分の立場などと言うくだらない物に拘泥して、再び大切な人を無為に失うつもりなのか? そんな事は4年前に後悔し尽くした筈じゃなかったのか?

 

「ラキヤ・・・・・・・・・・・・」

 

 傍らで見上げてくるアリスを見詰め、

 

 ラキヤは決断と共に眦を上げた。

 

「行こう、アリス!!」

 

 そう言うとラキヤは、自分のバッグとアリスの手を掴み駆け出す。

 

 その向かう先には、乗り手を待って鎮座するシシオウの姿があった。

 

 

 

 

 

 アリスを連れてコックピットに乗り込むと、ラキヤは慣れた手付きでシートに滑り込む。

 

 アリスを膝の上に座らせて、一緒にベルトで固定すると、早速機体の立ち上げに取り掛かる。

 

 オーブ系統の機体の操作は今までした事が無かったラキヤだが、こう言った事は大概、どこも似たような構造をしている物である。

 

 OSを立ち上げると、シシオウのコックピットはそれ自体が歓喜の声を上げるように、光を灯していく。

 

「行ける」

 

 低い声で呟くラキヤ。機体の立ち上げには何の問題も無い。あとはこの4年で、自分自身の操縦技術が衰えていないかどうかが心配だが、そこは実際にやってみない事には何とも言えなかった。

 

「行くよアリス。しっかり掴まって」

「はい!!」

 

 頷き合うと2人。

 

 次の瞬間ラキヤは、スロットルを全開まで開いてシシオウを飛び立たせた。

 

 たちまち、懐かしい衝撃と爽快感が2人の体を包み込んだ。

 

「すごいッ 量産型なのに、この出力って!?」

 

 ラキヤの膝の上で、アリスも感嘆の声を上げる。

 

 オーブ軍が自信を持って世に送り出した新型機動兵器シシオウの性能は、彼女がかつて乗っていたインパルスと比べても、勝るとも劣らない代物であった。

 

 これなら、ワンオフの機体が相手でも充分に戦えるはずである。

 

 ラキヤは眦を上げ、尚も砲火を吐き出し続けているジェノサイドを睨みつける。

 

 あの砲火の下では、尚も避難民達が焼き殺されているのだ。

 

「許さない・・・・・・」

 

 睨む、ラキヤの瞳。

 

「絶対に、許さないぞ!!」

 

 次の瞬間、その瞳にSEEDの光が宿った。

 

 加速するシシオウ。

 

 同時にビームライフルを抜き放ち、ジェノサイドに向けて撃ち放つ。

 

 放たれた閃光はしかし、ジェノサイドに当たる前に弾かれて空中に拡散する。

 

「シールドは健在か・・・・・・」

 

 デストロイが持っていた、陽電子リフレクターの鉄壁防御はジェノサイドにも受け継がれているようだ。

 

 更にジェノサイドは、ホバー機能を起動すると、接近するシシオウと対峙するような形で移動し、その全火力を向けてくる。

 

「デストロイの弱点は克服されているみたいッ」

「だろうね、けど!!」

 

 確かに機動性は向上しているだろう。あの巨体と火力に加えて高い機動力と、デストロイに比べてかなり死角を減らしてきているのが分かる。

 

 だが、対処法は変わっていないはず。

 

 シシオウの速度を上げるラキヤ。

 

 攻撃を受ける前に、躊躇する事無く懐へ飛び込んで接近戦を仕掛ける。それ以外にデストロイを倒せる手段は無かった。

 

 放たれる圧倒的な火力を前にして、速度を限界まで上げるラキヤ。

 

 同時にビームサーベルを抜き放ち、ジェノサイドの懐へと飛び込んだ。

 

 斬り上げる剣閃。

 

 その一撃が、ジェノサイドの胸部装甲を斬り裂く。

 

 慌てたジェノサイドは、後退しながら攻撃を続行しようとしてくるが、ラキヤはそれを許さない。

 

「逃がさない!!」

 

 更にサーベルを一閃。返す刀で、アウフプラール・ドライツェーンの砲門を斬り飛ばした。

 

 右腕を振り上げて、5連装スプリットビームガンを向けようとするジェノサイド。

 

 対してラキヤは、素早くビームライフルを抜き放つと、その腕に容赦なくビームを浴びせて動作不能にする。

 

 デストロイ級機動兵器は確かに驚異的な火力を誇っているが、そのデストロイ級を世界ではじめて撃墜したのがラキヤとアリスである。当然、その対処法も心得ていた。

 

 ラキヤが更に攻撃を仕掛けようと、ビームサーベルを構え直した。

 

 その時、

 

 突如、黄金の翼が駆け抜け、手にしたビームサーベルをジェノサイドの胸部に突きたてた。

 

 途端に大爆発を起こし、機能停止に陥るジェノサイド。その巨体はゆっくりと傾ぎ、そして轟音を上げて大地へと倒れ伏した。

 

 巻き上がる衝撃を避け、シシオウは上空へと退避する。

 

 その傍らに、黄金の機体が並び立った。

 

「あれ、アカツキだ」

「アカツキって、オーブ軍の?」

 

 ラキヤの質問に、アリスは頷きを返す。

 

 アリスはオーブ軍の旗機として建造されたアカツキと、オーブ侵攻を目指した「フューリー作戦」時に対峙している。

 

 まさか、あの時と同じようにカガリが乗っているとは思えないが、果たして・・・・・・

 

 そんな事を考えていると、そのアカツキの方からシシオウに通信を入れてきた。

 

《そこのシシオウ、まさかと思ったが、乗っているのはラキヤか?》

「え?」

 

 まさか、自分の名前を呼ばれると思ってい無かったラキヤは、目を丸くしてサブモニターに映った男の顔を見る。

 

 見覚えの無い顔である。恐らく30歳前後と思われる人物で、顔には深い傷跡が残されているのが分かる。

 

 しかし、全体的にまとった飄々としたオーラと、どこかで聞き覚えがある声を、ラキヤはひどく懐かしい思いで聞き入る。

 

《久しぶりだな、まさか、生きてるとは思わなかったぞ》

「・・・・・・・・・・・・まさか、大佐ですか?」

 

 それは、ラキヤが初めて見る「ネオ・ロアノーク」の素顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジブラルタルを包囲した地球連合軍の猛攻は、いかにキラ達であっても押しとどめる事は不可能なレベルになりつつあった。

 

 既に基地内部への侵攻も始まり、そこかしこで破壊と虐殺が行われているのが見える。

 

 限界だった。

 

 これ以上ここに踏み止まって戦っても、犬死になるだけだった。

 

 現在、戦艦信濃がジブラルタル沖に停泊し、艦載機の運用を行っている。本来ならそれで、脱出する民間人の最終便を護衛するはずだったのだが、事この段に至っては、それも叶わないだろう。

 

「バッテリーの消耗が激しい機体から後退して!! 無理せず、自分が生き残る事を最優先に考えるんだ!!」

 

 キラはシロガネの7連装フルバーストを放ちながら、指揮下の隊員達に指示を飛ばす。

 

 今こうしている間にも、ジブラルタル基地では避難民達の虐殺が行われている。できれば、彼等も助けて一緒に脱出したい。

 

 しかし悔しいが、それが最早、不可能である事は誰よりもキラ自身が良く判っていた。

 

 フリューゲル・ヴィントの機体も、地球軍に応戦しつつ、徐々に後退を余儀なくされる。

 

 そんな中で、1機のコガラスがシロガネに寄り添うような位置で掩護射撃を行っていた。

 

《キラ・・・・・・》

「君も、早く退避するんだッ」

 

 声を掛けてきたコガラスのパイロットに、キラはそう返事を返す。

 

 そのコガラスを駆るのは、キラの子飼いと言っても良いパイロットである。

 

 リィス・フェルテス。あの地獄のようなオスロ攻防戦で、エストが命を助けた傭兵の少女である。

 

 あの後、キラやエストと共にオーブへのがれた彼女も、その後、年齢にそぐわない高い戦闘技術を買われ、キラと共にフリューゲル・ヴィントに入隊したのだ。

 

 10歳と言う若さであるにもかかわらず、リィスの実力の高さは皆が認めるところであり、キラ自身、妊娠加療の為に戦線離脱したエストに代わり、しばしば彼女に自分の援護を任せる程だった。

 

 だが、この状況での交戦は、もはや不可能に近かった。

 

「エストが待ってるからね。こんな所じゃ死ねないよ」

《・・・・・・はい》

 

 不敵な笑みを浮かべてそう告げるキラに対して、リィスも静かな声で返事を返す。

 

 何となく、昔のエストを相手にしているような気分になり、キラとしては少し可笑しな気分だった。

 

 その時だった。

 

《隊長、あれを!!》

 

 他の隊員の通信を聞き、キラは視線を巡らせる。

 

 その視線を向ける先には、地球軍の所属と思われる1機の機動兵器が存在していた。

 

 漆黒の装甲に覆われ、引き絞った細めの四肢や、背中に負った大ぶりのリフターが特徴的な機体である。

 

「ジャスティス?」

 

 キラは呻くように呟く。

 

 今対峙している漆黒の機体は、かつて友人が愛機にしていたジャスティスにそっくりだったのだ。

 

 GAT-X09A「エクスプロージョン」

 

 キラが対峙している機体の名前である。

 

 かつて地球軍が、ある経緯から入手したジャスティスのデータをもとに開発された機動兵器で、機体各所にビームソードやビームサーベルを多数装備しているのが特徴である。

 

 だが、更に異様なのは、乗っているパイロットだろう。

 

 漆黒のパイロットスーツに、漆黒のヘルメット。バイザー部分は無く、僅かに視覚センサーがその役割をしているのみである。

 

 黒騎士(ダークナイト)とでも、称するべきだろうか? いずれにしても不気味な存在であるのは間違いなかった。

 

 ダークナイトは居並ぶオーブ軍機を、視覚センサーを通して一瞥すると、

 

 次の瞬間、動いた。

 

 一瞬。

 

 ただそれだけで、傍らにいたシシオウが、エクスプロージョンの剣で斬り飛ばされた。

 

 手首、リフターの翼、両脛、爪先からビーム刃を出力し、片っ端からシシオウやコガラスを斬り飛ばしていくダークナイト。

 

 圧倒的な操縦技術を前に、オーブ軍兵士達は追随する事も出来ない。

 

《この野郎!!》

 

 1人の兵士が、激昂したようにビームサーベルを翳してエクスプロージョンに斬り掛かっていく。

 

 しかしダークナイトは冷ややかにその様子を睨むと、交差法気味にエクスプロージョンの膝蹴りをシシオウに叩き込む。

 

 次の瞬間、シシオウのコックピットが刃に貫かれる。

 

 エクスプロージョンは、膝にもビームソードを備えているのだ。

 

 まさに、全身刃の塊、と言う表現がふさわしい機体である。

 

 更にダークナイトは、エクスプロージョンの腰からビームダーツを抜き放つと、立ち尽くしているシシオウへ向けて投げつける。

 

 飛翔中にビーム刃を出力したダーツは、狙い違わずシシオウのコックピットを直撃して刺し貫いた。

 

 接近戦において、圧倒的な戦闘力を見せ付けるエクスプロージョン。

 

 対して、キラは一般兵では太刀打ちできないと判断、シロガネを駆って前へと出る

 

「これ以上は!!」

 

 ビームライフルを放ち、エクスプロージョンを牽制するキラ。

 

 逃げるエクスプロージョンを追って、キラは7連装フルバーストを撃ち放つ。

 

 駆け抜ける七色の閃光。

 

 その攻撃を回避しながら、ダークナイトはシロガネを睨む。

 

 同時に指がコンソールを操作し、OSに搭載されているシステムを立ち上げる。

 

『Victim Sistem Setup』

 

 モニターにそう表示された瞬間、

 

 エクスプロージョンは凄まじい勢いで反撃を開始した。

 

 今まさに、ビームライフルを構えようとしていたシロガネ。

 

 そのシロガネの右腕を、ビームソードで斬り飛ばしてしまった。

 

「これはッ!?」

 

 呻き声を上げるキラ。

 

 とっさに後退しながら、ビームキャノンとレールガンで応戦するが、ダークナイトはその攻撃を難なく回避しながら距離を詰めてくる。

 

 腰からエクステンショナルアレスターを射出するエクスプロージョン。

 

 その攻撃を、キラは上昇しながら回避。同時に、ヤタガラス複列位相砲をエクスプロージョンに向けて撃ち放つ。

 

 しかし、その攻撃を予測していたように、ダークナイトは回避。更に距離を詰めてビームソードを振るい、シロガネの右足を叩き斬ってしまった。

 

「クッ!?」

 

 圧倒的な戦闘力を前に、キラは手も足も出せない。

 

 このままではやられてしまう。

 

 そう思った瞬間、

 

《キラさん!!》

 

 蒼炎翼を羽ばたかせて飛来したシンのエルウィングが、ドウジギリ対艦刀を振り翳してエクスプロージョンに斬り掛かった。

 

 とっさに後退しようとするダークナイト。

 

 しかし、それをキラは見逃さない。

 

 ただちにシロガネの全火力を開放して追撃を仕掛ける。

 

 放たれた砲撃。

 

 それをダークナイトは、展開したビームシールドで辛うじて受け流す。

 

 しかし、流石に2大エースを相手に、自分1人では荷が重いと踏んだのだろう。牽制の攻撃を仕掛けながら、徐々に後退していくのが見える。

 

 それを見て、キラはエルウィングに通信を入れた。

 

「シン、今の内に僕達も退避しよう!!」

《・・・・・・判りました》

 

 キラの言葉に、シンもまた悔しさを滲ませながら機体を翻す。

 

 しかし、最早これ以上戦っても、勝ち目がない事はシンにも判っていた。

 

 翼を翻し、退避していくシロガネとエルウィング。

 

 この日、欧州における共和連合軍勢力は、完全に一掃されたのだった。

 

 

 

 

 

PHASE-01「未来への敗走」      終わり

 


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