ハイスクールD×D  一誠の魔神伝説    作:新太朗

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手伝いと出会い

「こんな所で何をしているんだ?」

 

と、一誠が廃教会で二人の少女に話し掛ける少し前まで時を遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠はざあざあと雨の降る中、買い物中だった。

 

「買い物はこんなもんか……そろそろ『あいつ』が現れそうだからな」

 

一誠は時々訪ねて来る人物の事を思いながら買い物をしていた。ちなみにメニューはカレーだ。

北欧ではあまり作った事がないので作ってみる事にしたのだ。

雨が降る中、妙な事に一誠は気が付いた。周りに人気が無くなっていたのだ。時間的にこれ程人が居ないのはむしろ不自然だった。

 

ガッキン!ガッキン!

 

雨の中、金属同士が当たり甲高い音を出していた。誰かが戦っているのは一目瞭然だ。

 

(戦っているのは誰だ?それに人気が無いのは人避けの結界が張られているからか)

 

一誠は人気が無いのは人避けの結界が張られているからだと見抜いた。戦っている人物が張ったか、もしくはその協力者が張っているという事だろう。

一誠は音が鳴っていた場所に向かって歩き出した。そこには傷だらけの意外な人物が居た。

 

「こんな所で何をしているんだ?木場」

 

「……真神、君……?君こそどうしてこんな所に?」

 

「音がしてたし人避けの結界が張ってあったんでな。それにしてもだいぶやられたな」

 

音の発生源に居たのは木場佑斗だった。佑斗の身体は所々に剣で斬られた傷が見えていた。それもただの傷ではない。

 

「聖剣か?悪魔のお前には相当なダメージだな」

 

「…………」

 

「ダンマリか?まあいいか。『クジャク・ボーン』」

 

一誠は一枚のボーン・カードを佑斗に向けた。カードからは緑色の光が佑斗を包んだ。

その瞬間から見るみると傷が治っていった。

 

『クジャク・ボーン』

木属性のボーン。生物の自然治癒力を数百倍にまで上げるボーン・カードだ。数ある『ボーン』の中で特殊能力が強いカードだ。

 

「…………どうして僕を治すんだい?君はカズキ君の事を殺そうとしたのに?」

 

「確かに俺は一樹を殺そうとした。でも勘違いするな、俺が殺そうとしたのは一樹であってお前ではない。それにどういう訳か今の俺はあいつに微塵も殺意を持っていない。それどころか興味すらない」

 

「……だから、どうして僕を治したんだ?治したところで良い事なんてないだろうに……」

 

「そうでもない。お前を治したのは確かめるためだ」

 

「……確かめるため?何を?」

 

「お前の復讐をだよ。……お前の目は以前の俺の目とそっくりだ」

 

佑斗は一誠の言葉の意味を探ろうとして一誠と目を合わせた。そこにいた一誠は以前、戦った時とは違い穏やかな雰囲気があった。

 

(あの時とは全然違う?)

 

それを見た佑斗は一誠が戦った時は違うと感じ取った。

 

「……僕に君の言う事を信じろと?」

 

「ああ、そうだ。俺は気になっているのさ。どうして俺の中から一樹への殺意がなくなったのか。それを確かめるためにも……俺の復讐と他の復讐を見比べてみるのもいいかなって、思ったからだ」

 

「……だから僕の復讐を手伝う……と?」

 

「まあ、そうだな。北欧と悪魔側で問題にならない程度に手伝ってやるよ」

 

一誠としても下手に悪魔側と関わってオーディンに迷惑を掛けたくは無かった。それでも一誠は佑斗の復讐が見てみたかった。

例えどんな結末が待っていたとしてもだ。

 

「とりあえず俺の家に来い。まあ拒否権は無いがな。『ウロボロス・ボーン』」

 

「!?」

 

一誠は『ウロボロス・ボーン』の能力で佑斗を亜空間に閉じ込めた。一誠が家に帰ろうとした所、二人の白いローブを着た少女が廃教会に入って行くのが見えた。

 

(あそこに入って行くとはな。少し様子を見てくるか)

 

二人の事が心配で一誠は廃教会の中に入って行った。そこで目にしたのは栗毛でツインテールの少女が蹲り泣いているところだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――こんな所で何をしているんだ?」

 

「……え……?」

 

イリナはどことなくこの声に聞き覚えがあった。そこで顔を上げて声の主を見た。

 

「……イッセー、君?」

 

「俺は一誠だが?どこかで会った事があるか?」

 

「イッセー君!!」

 

「うわぁ!?」

 

イリナは立ち上がり一誠に抱きついて顔を一誠の胸にこすり付けた。

 

「イッセー君!イッセー君!イッセー君!」

 

「おい!ちょっと!?……お前の連れだろ?どうにかしろ」

 

「いや……私にはどうにもな。しばらく付き合ってくれ」

 

ゼノヴィアは申し訳なそうな顔をして一誠に頼んだ。一誠は仕方なく付き合う事にした。

そして泣き止んだイリナが一誠の肩を掴んで前後に揺らした。

 

「イッセー君!!!どうしてがここに居るの?」

 

「ちょっと、待て!まずお前は誰だ?」

 

一誠は目の前の少女が誰なのかまったく分かっていなかった。

 

「わ、私だよ!イリナ。紫藤イリナ!昔、ここでよく遊んだでしょ!」

 

「……紫藤、イリナ……?」

 

一誠は首を捻り昔の事を思いだそうとした。

 

(確かに昔、ここでそんな名前の奴と遊んだ記憶があるが、あれは確か『男』だった気がするが?)

 

一誠は昔のイリナの事を完全に『男』だと勘違いいていた。

 

「人違いじゃないか?俺が知っているイリナは『男』だったはずだ」

 

「そんな事ない!これを見て!」

 

イリナが取り出したのは一枚の写真だった。そこには二人の子供が写っていた。

 

(確かにこれは俺が小さい時にイリナの家で撮った写真だな。と言う事はこいつは……)

 

一誠はもう一度、イリナの顔をしっかりと見た。

 

「……イリナ。なんだな……」

 

「やっと思い出してくれたの?!」

 

「ああ、ようやく思い出したよ。懐かしいな」

 

「うん。会えて良かった」

 

イリナは嬉しさのあまり涙を流して喜んでいた。一誠はイリナにハンカチを出して涙を拭った。

 

「ありがとうねイッセー君」

 

「まあ、こんな所じゃ風邪を引くから俺の家まで来いよ。そもそもどこかに宿を取っているか?」

 

「それは助かる。イリナが余計な所で出費してしまって宿代が無かったんだ」

 

一誠の提案にゼノヴィアは申し訳ない顔をして、どうしてここに居るのかを話した。

 

「何よ!ゼノヴィア。この絵はとても素晴らしい人が描いた有り難い絵なのよ!」

 

「それを買った所為で宿が取れなかったのではないか!この異教徒が!ああ、主よ。どうして私の相棒はこうも駄目なのですか?」

 

「ゼノヴィアって、いつもそうよね。後からグチグチと!もう過ぎた事なんだから言わないでよ。これだから異教徒は!」

 

「何だと!」

 

「何よ、やる気!」

 

「ちょっと待った!ここで喧嘩するな。とりあえず風呂に入れて飯食わしてやるから。喧嘩はその後にしてくれ」

 

たった一枚の絵で二人は一触即発になっていた。そんな二人の間に一誠は割って入った。

一誠の提案に二人は頷き、一先ず一誠の家に向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがイッセー君の家なの……?」

 

「すごい、家だな……」

 

イリナとゼノヴィアは目の前の家を見て思わず息の呑んだ。

 

「まあな。服はカゴに入れてくれ。着替えは俺の服で申し訳ないが……」

 

「いや、それだけでも十分だ。助かる」

 

申し訳ない顔をした一誠にゼノヴィアが頭を下げてお礼を言って、二人は風呂に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう~……これが日本の風呂と言うものなのだな」

 

「……うん」

 

「……イリナ。あの男が君の言っていた。幼馴染なのか?」

 

「……うん。間違いないわ、ゼノヴィア。少し雰囲気は変わっているけど、あれはイッセー君だわ」

 

風呂でイリナとゼノヴィアは一誠の事について話していた。

 

「しかしあの男の性は『兵藤』ではなかったな」

 

「うん。表札は『真神』になっていた。私が居ない間に何があったの?イッセー君……」

 

「イリナ。聞いてもいいいか?君はどうして兵藤一樹にあれ程の敵意を見せたんだ?彼が何をしたんだ?」

 

「そうね。話すわ、ゼノヴィア。実は……」

 

そこからイリナは全てを話した。小学校に入る前から兵藤家とは交流がありそこで知り合った双子の少年達が一樹と一誠だった。

それから一樹だけがイリナをよく遊びに誘って一誠だけを除け者にしていた。

幼いイリナでもおかしな事はすぐに分かった。だから一樹に一誠を誘おうと話したら「あいつは一人が好きな変わったやつだから気にしてなくていいよ」と言ってイリナを一誠から遠ざけた。

それから何度もそう言う事があった。その度、一人ぼっちの一誠を見かけた。

イリナはある日、一樹がいない時に一誠に話しけた。

 

「どうしていつも一人でいるの?」

 

「お兄ちゃんがおまえはいらないやつだからどっかいけって言うんだ……」

 

「そんなのおかしい……」

 

イリナは一樹が言っている事と一誠が言っている事があっていない事がこの時、分かった。どちらかが嘘を付いているとも……。

だが、それはすぐに分かった。いつも寂しそうにしている一誠が正しいと。

それからイリナは一樹とは遊ばずに一誠とだけよく遊んだ。イリナは自分の家に一誠を入れたり、教会に行ってミサに参加した。

外国に引っ越すまで二人で色々な事をして、たくさん遊んだ。

 

「……そんな事があったのか……それにしてもあの兵藤一樹と言う男は最低な奴だな。実の弟をそこまでするか?」

 

「……私もそれをイッセー君のご両親に言ったんだけど、全然信じてもらえなくて……あいつ家では猫を被っているのよ!それに昔から変わらないあの厭らしい目が嫌なのよ」

 

「ああ、それには大いに同意だな。あの目は危険だ。すぐにでも断罪するべきものだ!」

 

イリナは一樹の目が自分の事を舐めまわす様な感じに嫌気が差していた。ゼノヴィアもそれに首を縦に振って同意した。

 

「それでイリナ。相談があるのだが……」

 

「どうしたの?ゼノヴィア。貴女にしては歯切れが悪いわね?」

 

「ここを我々の今回の任務の拠点にしないか?」

 

ゼノヴィアの相談とは宿代が無くなったので泊まる事が出来ないので一誠の家に泊めて貰おうというものだ。

 

「そ、そんなの駄目よ!イッセー君は一般人なのよ!巻き込めないわよ!!」

 

「ああ、分かっている。だから、ここに泊めて貰うだけで戦闘などには一切関わらせない。それに君だって、他にアテがないだろ?」

 

「そ、それはそうだけど……。分かったわ!私からもお願いしてみる!」

 

「決まりだな。風呂から上がったらさっそく頼んでみよう。その前に身体を洗っておくか。長旅で疲れているしな」

 

イリナとゼノヴィアは二人で一誠の家に泊めてもらおうと交渉する事を決めてから身体を洗う事にした。

 

「それにしてもイリナ。ずいぶんと髪が伸びたな」

 

「ふふっ……ゼノヴィアも伸ばせばいいのに。長い髪のゼノヴィアも素敵なのに」

 

「髪が長いと戦いの邪魔になるからな。短い方が戦い易い」

 

「もう!ゼノヴィアも女の子なんだからもう少し髪を大切にしなさいよ」

 

「私はこれでいいんだ!」

 

二人はお互いに身体を洗いあったり髪を綺麗にしていた。十分に日本の風呂を満喫した二人だった。

 


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