ハイスクールD×D  一誠の魔神伝説    作:新太朗

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聖剣事変
帰郷と期待


一誠とリアス達の戦いから数日後、二人の少女がヴァチカンから日本に入国した。

いや、一人に関しては帰郷したと、言った方が正しいだろう。

 

一人は紫藤イリナ。

教会から『擬態の聖剣』を与えられた使徒で栗色の長髪をサイドテールにしているいかにも元気がありそうな少女だ。

 

もう一人はゼノヴィア・クァルタ。

こちらは『破壊の聖剣』を与えれている使徒だが、それと別にもう一本の聖剣を持っている。

青い髪に緑のメッシュがある少々目つきが鋭い少女だ。

 

二人はヴァチカンの命令で日本の駒王町に来ていた。二人の任務は堕天使コカビエルに奪われし三本の聖剣の奪還。

それが二人に命じられた任務だ。

 

しかし彼女達が任務をこなす上で避けては通れない事がある。二人が向かう場所は魔王の妹達が管理しているという事だ。

それも彼女達は任務をこなすだろう。例え誰が相手だろうと。

 

 

 

 

 

「ん~……やっと到着したわ。私の故郷に!」

 

「そうだな。ここが君の故郷か。イリナ」

 

「そうよ、ゼノヴィア。任務で無ければ、良かったのに……」

 

二人の少女の内の一人―――イリナが日本に着いて自分の生まれた故郷を懐かしんでいた。

イリナの手には一枚の写真が握られていた。

 

「イリナ。その写真の隣が君の幼馴染の少年だな?」

 

「そうよ、ゼノヴィア!兵藤一誠君って言ってすごくカッコいいんだから!会うのが楽しみよ。ああ、主よ。再会の機会を与えてくださって感謝します。アーメン!」

 

「イリナ。祈るのはいいが、早く任務をすませよう。汚らわしき堕天使が何をしでかすか分からないからな」

 

「ええ、もちろんよ。まずは悪魔達に会わないとね」

 

「―――お嬢さん達、教会の人?」

 

二人は管理をしている悪魔に会うために駒王学園に向かおうとしたところ声を掛けられた。

声を掛けてきたのは路上販売をしていた男だ。

 

「そうだが?何か用か?」

 

「良かったら、見ていきなよ。サービスしておくからさ」

 

「え!?本当!?」

 

男の誘いにイリナは食い付いた。そして並べてある絵を見て一枚取ってみた。

 

「お嬢さん!お目が高い!それは聖なるお方が描かれた、素晴らしい絵だよ。買うなら今しかないよ!」

 

「う~ん……でもこれを買うと支給金が……」

 

教会から支給された金は聖剣奪還までの食費、宿泊費や必要な物を買うための金だ。ここで使えば持って来た金額の約9割を使う事になる。

 

(どうしよう!?ここで買わないと二度と買えないかもしれない!私はどうしたらいいのですか?主よ?)

 

イリナはこれでもかと言うくらいに考えた。

支給額を殆んど使ってこの絵を買うか、それとも諦めるかの究極の二択を頭がオーバーヒートするくらいに考えて結論を出した。

 

「……背は腹に変えられない……おじさん、私はこのを絵を買うわ!!」

 

「毎度!なら汚れないように包んでおくね」

 

「ありがとう!」

 

「おい、イリナ。ここで使うと宿泊費や食費がなくなるぞ」

 

「大丈夫よ、ゼノヴィア。それくらい色んな人から恵んで貰えば!なんせここは私の生まれ故郷なんですもの!」

 

イリナは自身満々にゼノヴィアに言ったが、ゼノヴィアはそれが心配でしょうがなかった。

 

(本当に大丈夫なんだろうか?これも試練なのですか?主よ。しかし見事超えてみせましょう!)

 

ゼノヴィアは絵を買ってご機嫌のイリナを見ながら相棒の行動を神からの試練だと勝手に変換して、超えなければと気合いを入れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ありませんが、リアスは今、席をはずしていまして……ここには居ませんので後日に来ていだかないと……街に関しては彼女の担当なので」

 

「そうか、分かった。今日はこれで失礼しよう。イリナ」

 

「そうね、ゼノヴィア」

 

駒王学園に着いた二人はさっそくリアスと話し合おうとしたが、リアスは私用で居なかった。そのためソーナが対応していた。

今、リアスは一誠の監視を眷属と交代でしていたのだ。

もちろんこの事をソーナは把握しているので特に問題ではない。しかし問題が起こった。目の前の二人だ。

 

(真神君の事があるのに……堕天使コカビエルとは、厄介ですね)

 

ソーナは二人から聞いた標的に冷や汗をかいていた。なにせ相手は『神の子を見張る者』の幹部の一人―――コカビエルだ。

しかも古の大戦を生き残った程の堕天使だ。

 

「会長……」

 

「椿姫……貴女の言いたい事は分かります」

 

ソーナの顔を見て眷属で『女王』の森羅椿姫が不安な顔を見せた。

彼女達は教会の使徒二人だけでコカビエルに勝てるとは思ってはない。むしろ負けるのが分かりきっているのにどうして戦うのかが分からなかった。

 

「彼女達はやはり教会の使徒と言ったところです。まずはリアスにこの事を報告しなければ……」

 

「すぐに連絡を取ります」

 

「ええ。頼みましたよ、椿姫」

 

ソーナ達は急ぎリアス達に連絡して教会の使徒二人が来た事やコガビエルの事を報告した。そして、会ってこれからの事を話し合いたいと言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーナの所を後にしたイリナとゼノヴィアは、イリナの案内である家に向かっていた。

 

「確かこの辺りのはず……」

 

「イリナ……覚えていないのか?」

 

「だって、もう十年近く前のなのよ!うろ覚えなんだから仕方ないでしょ!!」

 

道案内をしているイリナに不安顔でゼノヴィアは「こいつ、大丈夫か?」と見ている。

イリナは必死になって当時の事を思い出しながら探していた。

 

「……見つけた……見つけたわ。ここよ、ゼノヴィア!」

 

「やっと着いたか……主よ。私は見事、試練を乗り越えました」

 

「もう、ゼノヴィア。祈りもいいけど、早く入りましょ」

 

祈っているゼノヴィアを他所にイリナは家のインターホンを押した。

 

『はい。どちら様でしょうか?』

 

「お久し振りです。私、紫藤イリナです」

 

『え?イリナちゃん?本当に?待ってて今開けるから』

 

イリナに対応したのは家に居た女性だ。相手がイリナだと分かるとすぐに玄関を開けて二人を家に入れた。

 

 

 

 

 

「本当に久し振りね、イリナちゃん」

 

「はい。おば様もお変わりないようで」

 

「……」

 

イリナと女性が話している間、ゼノヴィヤは出されたお菓子や飲み物を口に運んでいた。

二人は昔話に花を咲かしていた。

 

「昔はよく遊びに来てくれたものよね。ご両親はお元気?」

 

「はい。二人とも元気にしています。それでイッセー君は?」

 

イリナが一誠の聞いた所、女性の瞳から光が消えた。彼女はまるで人形になってしまったかのようだった。

 

「……イリナちゃん。私の息子の名前は一樹よ?……『イッセー』って誰なの?」

 

「……え……?」

 

イリナは女性の言葉が信じられないでいた。その時、玄関から声が聞こえたきた。

 

「ただいま~」

 

「た、ただいま戻りました」

 

一樹とアーシアが悪魔の仕事が終わって帰宅してきた。

 

「お!イリナ。久し振りだな」

 

「カズキさん。お知り合いですか?」

 

「ああ、イリナは幼馴染なんだ」

 

イリナを見た一樹は挨拶をした所、隣にいたアーシアが一樹に質問した。そして一人は幼馴染だとアーシアに答えた。

しかしイリナは一樹が現れて、すぐに一樹に掴みかかった。

 

「一体、おば様に何をしたの!?」

 

「な、何だよ。急に?!」

 

イリナに掴みかかれて一樹は訳が分からないでいた。

 

(どう言う事なんだ?『原作』じゃあイリナってこんな性格だったけ?それに俺が母さんに何をしたって言うんだよ?!)

 

イリナに服を掴まれて締め上げられてた一樹は混乱していた。

 

「……私は知っていてけど、動けなかった。でも昔とは違う。お前のようなクズが兄なんて、本当に!!イッセー君が可哀相だわ!!」

 

「だから何であんな奴の名前を出すんだよ!?アイツは十年前に家を出て行ったんだよ!」

 

「それじゃあ何でおば様がイッセー君の事を知らないなんて言うのよ!?」

 

「……え?」

 

一樹は思わずマヌケな声を出してしまった。イリナが何を言っているのか分からなかった。

イリナは一樹のマヌケな声を聞いて、更に怒りに火が着いた。

 

「イリナちゃん。落ち着いてね?二人が言っている『イッセー』って本当に誰なの?」

 

「母さん……それ本気で言っているのか?確かに母さんはあいつの事を嫌っているけど、それは幾らなんでも……」

 

流石の一樹も母親の言っている事に動揺していた。

しかし一樹はすぐに母親の異変に気付いた。瞳から生気が消えていたのだ。

 

「……母さん……?」

 

「…………」

 

一樹の声にすら無反応になっていた。

 

「これで何かしていないと言えるの!?貴方は最低のクズよ!!」

 

「おい、イリナ!」

 

イリナは一樹に罵倒した後、家を飛び出た。ゼノヴィアはイリナを追いかけるように出て行った。

 

「か、カズキさん……」

 

「……アーシア。部長にすぐに連絡してくれ。大至急……」

 

「は、はい!」

 

一樹に指示されてアーシアはすぐにリアス達に連絡した。リアス達が一樹の元に来たのはそれから十分後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでどう?朱乃」

 

「はい。カズキ君のご両親の記憶の一部が封印されていますわ。部長」

 

「そう……分かったわ。とりあえず二人を寝室に運んでおいてちょうだい。小猫、朱乃を手伝ってあげて」

 

「……はい」

 

リアスに言われて、朱乃と小猫は一樹の両親を寝室まで運んだ。

 

「それでカズキ。貴方の弟についての記憶が封印されていると言うのは間違いなさそうね」

 

アーシアがリアス達に連絡してすぐに一樹の父親が帰って来たので一樹は先程と母親と同じように質問した所、同じように瞳から生気が消えてしまった。

そこで一樹はリアスに二人の記憶を視て貰った。

その結果が、一部の記憶の封印だった。どうしてこうなったのかはリアスには分からなかったが、一樹は違った。

 

「記憶を封印したのは間違いなく一誠の奴ですよ!!」

 

記憶を封印した犯人は一誠だと断言した。

 

「一樹はどうしてそう思うの?」

 

「だって、二人そろって一誠の事を憶えていないんですよ!それならあいつが一番怪しいじゃないですか!!」

 

一樹の言葉は怒りに満ちていた。リアスは「そうね」と言って考える。

 

(彼が記憶を封印したとして、その目的は?封印した記憶は一部だけ、これは調べれば簡単に犯人を特定できる。どうしてそんな事を?)

 

一誠の事を知らないリアスはその答えがまるで見えてこなかった。

考え込んでいると朱乃と小猫が戻ってきた。

 

「朱乃。二人の記憶を戻す事は可能?」

 

「……すみません部長。とても私程度では無理です」

 

朱乃が自分程度と言った事でリアスはこれの封印の強さが大体分かった。これは自分達には到底解く事の出来ない代物だと。

 

「分かったわ。とりあえず今日はここに皆で泊まりましょう。カズキの安全のためにね」

 

「ありがとうございます!部長!」

 

「ふふっ……私の可愛い眷属のためだもの」

 

リアスはそう言って一樹を抱き寄せた。それを見たアーシアが対抗心を燃やして背中から一樹に抱きついた。

 

(前は巨乳。後ろは微乳。なんとも堪らない感触だな。でヘヘ……)

 

一樹は前と後ろからの感触を大いに楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一樹がリアスとアーシアの胸の感触を楽しんでいる頃、ゼノヴィアは飛び出したイリナに漸く追いついた。

 

「イリナ。大丈夫か?」

 

「……ゼノヴィア。私、分かんなくなっちゃった……一体何なの?全部あいつの所為なのに……!!」

 

「イリナ……」

 

イリナとゼノヴィアが居るのは堕天使の一団が根城にしていた廃教会だ。外では大きな雨音がしてきた。

 

「イリナ。とりあえず、どこか雨が凌げる場所に行こう。ここでは身体が冷えてしまって任務に支障が出てしまう」

 

「……うん。分かったわ」

 

二人がこの廃教会に入る前に雨が負ってきたため全身ずぶ濡れになっていた。体調管理も任務の一環なので、万全の状態にしておきたかった。

 

「―――こんな所で何をしているんだ?」

 

二人が外に出ようとした時、入り口の方で男の声がした。

 


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