ハイスクールD×D  一誠の魔神伝説    作:新太朗

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対策と対応

一誠VSグレモリー眷属の戦いは一誠の一方的な展開で進んでいた。

『時間停止』『未来予知』の二つの能力を持つ『フェニックス・ボーン』の前では誰もが無力に等しい。

圧倒的な一誠にリアスは諦めてはいなかった。

 

(カズキが居る限り私は戦える!!)

 

リアスの心が折れずに戦えているのはひとえに一樹の存在が大きいだろう。

政略結婚をぶっ壊してくれた一樹は、リアスにとって掛け替えのない存在へとなっていた。

 

(だからこそ、絶対に『一撃』当ててやるわ!!)

 

リアスは最初一誠の事を大した事はないと踏んでいたが、戦闘が始まってみるとその考えを改めさせられた。

一樹、佑斗、小猫の三人がかりでも未だに『一撃』も与える事が出来ずにいた。

だからこそリアスは一誠が今まで戦ってきた中で一番強いと思い、今自分に出来る事をしようと決めていた。

 

(カズキ、佑斗、小猫。もう少しだけ耐えて!確実に『一撃』与えて見せるから!!)

 

ゲームに勝利する事だけをリアスは考えていた。それがここからの出る唯一の方法なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアスから少し離れた場所で一誠と戦っていた一樹達は、一誠から聞いた能力に愕然としていた。

 

(『時間停止』に『未来予知』だと!?そんな相手に勝てるはずない!)

 

一樹はすでに諦めモードに入っていた。いくら転生しても『原作』に出てきていないもは分からないのだ。

ちらりと横にいる二人の顔を見たが、微塵も諦めていない顔していた。

 

「……木場と小猫ちゃんはあんな事を聞いたってのに全然諦めて居ないんだな?」

 

「まあ、ね。それに彼の能力だけどなんとなくだけど、攻略できそうなんだ」

 

「そうなのか?でも、どうやって?」

 

「彼に触れる事さえ出来れば、間接的に『時間停止』の方は効果がないはずだよ。自分まで停止させては意味がないからね」

 

佑斗は一誠の能力の事を誰よりも理解していた。時間停止で自分までも止めては意味がない。

その事を佑斗は一番に理解していた。

 

「問題は『未来予知』か……」

 

「……だったら死角から攻撃してみてはどうでしょう?」

 

「死角から?」

 

小猫の提案に一樹は首を傾げた。

 

「……はい。もしあの人の『未来予知』が目で見えている範囲だとしたら、死角からなら触れる事ができるかもしれません」

 

「小猫ちゃんの言う通りかもしれないね。カズキはどうする?」

 

「乗った。あいつに触れて『時間停止』さえなんとかすれば、後は部長か朱乃さんが『一撃』当てる事が出来るからな!……よし、やるか!」

 

「カズキ君ならそう言うと思ったよ。それじゃあ僕が彼の目を潰すよ」

 

「……なら私は佑斗先輩を援護します」

 

「なら俺があいつに触れる。頼んだぞ、二人とも」

 

「うん!」

 

「……はい」

 

一樹達は構え直して一誠に今考えた作戦を実行しようとしていた。

 

(どうやら、作戦会議は終わったようだな。俺もそろそろ遊びを終わらせるか)

 

一樹達の作戦会議が終わったのを見た一誠が構えたと同時に佑斗が仕掛けた。

 

「はっ!!」

 

「そんな剣筋では俺を捉えられないぞ?」

 

「そんな事は分かっているよ!『魔剣創造』」

 

佑斗は一誠に切りかかると同時に自身の『神器』を発動して大量の魔剣を作り出して一誠の周りを囲い込んだ。

 

(俺の『未来予知』の対応しては上出来だな。だが、俺がそれ位考えないとでも思ったか?)

 

一誠は佑斗の事を素直に褒めてが、それ位で一誠に『一撃』を与える事は出来ない。

佑斗が作り出した魔剣が邪魔で一誠は他の二人の『未来』が視る事が出来ない。一誠の『未来予知』は小猫が指摘した通り一誠の『眼』で見た範囲しか『予知』する事が出来ない。

 

「すぐに俺の『予知』をどう言うものか理解してきたようだが、それでは俺に『一撃』与える事は出来ないぞ」

 

「そんなの百も承知だよ!」

 

佑斗は二本の魔剣で一誠に切りかかったが、一誠は『予知』で余裕で回避した。

 

(一樹と白頭が見えないから『視る』事が出来ないな。それでもいつかは仕掛けてくる。その時『視れ』ばいい)

 

一誠は佑斗を相手にしながら他の二人の事もしっかりと意識していた。

 

「……そこです!」

 

「『時よ』」

 

小猫がいつの間にか一誠の背後に回り殴りかかろうとしたが、一誠は『時間停止』を発動して時間を止めた。

一誠は小猫の腕を掴み『時間停止』を解除してから佑斗に向かって投げつけた。

 

「ほらよ!」

 

「「―――ぐはっ?!」」

 

小猫を投げつけられた佑斗は空中でバランスを崩してそのまま落ちてしまった。

 

「―――そこだ!」

 

「ッ!?」

 

一誠が佑斗と小猫に目がいっている隙に、一樹が一誠の背後からがっちりと抱きついた。

 

「……男に抱きつかれる趣味は持ち合わせてはいないんだがな」

 

「俺だって、好きこのんで男に抱きつくか!これでお前の『時間停止』は俺には効かない!!今です、部長!朱乃さん!!」

 

一誠の動きを止めた一樹がリアスと朱乃に向かって大声で叫んだ。

 

「……ええ待っていたわカズキ。こっちは準備完了よ!」

 

「ふふっ……カズキ達を散々痛み付けたお礼はしっかりとしないといけませんわね」

 

リアスと朱乃は自身の魔力を極限までに高め備えていた。まさに一撃必殺のために。

 

「……いいのか?このままだとお前まで巻き込まれるが?」

 

「はっ!それくらい、どうって事ないな!『プロモーション・戦車』!」

 

リアス達の攻撃は一誠に当たる事は間違いないが、それでは取り押さえている一樹まで攻撃の巻き添えになってしまう。一樹はそれを『プロモーション』で『戦車』へと『昇格』して防御力を高めることで対処した。

これで少なくとも直撃する一誠よりかはマシになると考えてのことだろう。

 

(カズキが攻撃に巻き込まれるのは嫌だけど、まずはここを出ないと!)

 

リアスは一樹が攻撃に巻き込まれるのを嫌っていたが、リアスは『王』なのだ。

勝つために出来る事をするのは当たり前だろう。

それにライザー戦で自分の甘さをしっかりと理解しているからこそ、この『眷属が自分の攻撃が巻き込まれる』作戦に賭けたのだろう。

 

「成る程な……甘ちょろい『王』かと思っていたが、少し評価を改めないとな。だが、いい加減離れろ!『ケルベロス・ボーン』!」

 

「な!?」

 

一誠はリアスの評価を少し改めた。そして次の瞬間に『ボーン』を変えた。

 

(姿が変わった、だと……こんだけ密着しているのに姿を変える事が出来るのか……!!)

 

一樹は一誠の鎧が変わった事に驚いてしまった。密着している状態でも自由に鎧を変えられる事は状況によって臨機応変に対応出来るという事だ。

 

『ケルベロス・ボーン』

雷属性のボーン。雷属性の中でかなりの破壊力を持っているボーンだ。

胸、両肩に犬が威嚇しているような顔があり黒と黄色で彩られている。

 

「今更、鎧を変えた所でどうにもならないわ!『滅びよ』!!」

 

「今更、無駄ですわ『雷よ』!!」

 

リアスは消滅の魔力弾を朱乃は雷を一誠に向かって放った。一樹は二人の攻撃に備えつつ一誠の拘束を緩めなかった。

例え二人の攻撃でダメージを受けてもアーシアが居るので即座に回復が出来るからだ。

 

「……『曲がれ』」

 

一誠がたった一言言い放っただけで、朱乃の雷がリアスの魔力弾に当たり相殺してしまった。

 

「「「な!?」」」

 

一樹、リアス、朱乃は何が起ったのか理解出来ないでいた。分かっている事は鎧を変えた一誠の一言で、朱乃の雷がリアスの魔力弾に当たった事くらいだろう。

 

「いい加減、離して貰おうか。『雷帝の解放』」

 

「―――ぎゃあああぁぁぁぁああああ!!?!!?」

 

「カズキ!!」

 

一誠は自身の身体から強力の雷を放った。一誠に密着していた一樹は回避する事が出来ずに一誠の攻撃を受けてしまった。

『プロモーション・戦車』で一樹は防御力を上げていたが、一誠の雷がその防御を軽々に超えていたのだ。

 

「ぁぁ……ぁぁ……」

 

「このくらいの攻撃でダウンか?情け無いな。それでも赤龍帝か?」

 

一樹は一誠の攻撃で完全に気を失って痙攣していた。そして一誠は右手を手刀にして魔力を集中させた。

オーバーキルと言ってもいい位の魔力を込めている。

 

(これでこいつへの『清算』は終わる……でも何で俺はこいつに対して今、何も思わないんだ?)

 

一樹への『清算』を前に一誠は妙な気分でいた。確かに一誠の中には一樹への復讐心があったが、今は何も無くなっていた。

一樹を攻撃している内に一誠の復讐心は綺麗さっぱり消えていた。

 

「……俺は結局、何がしたかったんだ……」

 

一樹にトドメを刺そうとして動きを止めてしまった一誠を見て動き出した者達が居た。

 

「カズキ君!!」

 

「……カズキ先輩!!」

 

佑斗と小猫の二人だ。一誠を挟み込むようにして攻撃をしかけた。一誠は手刀を一樹ではなく佑斗に向けて振りかざしたが、佑斗はそれを屈んで回避して一樹を抱えて一誠から離れた。

 

(僕の思った通りだ!鎧が違うから能力も違う!だから僕の動きを『予知』出来ない!!)

 

佑斗は鎧が変わったことで能力が変わったと考えていた。だからこそ一誠は佑斗の動きを『予知』出来ずに攻撃を避けられた。

まず『フェニックス・ボーン』ならこうはならなかっただろう。

 

そして佑斗は攻撃を回避して一樹を回収してからリアス達の後ろに居るアーシアの元に届けた。佑斗の狙いは最初から一樹だった。

瀕死の状態である一樹の回復が最優先だと佑斗は判断した。

 

「アーシアさん!カズキ君を!!」

 

「は、はい!カズキさん。しっかりしてくだい!」

 

アーシアは『聖母の微笑み』を使い一樹の回復に務めたが、ダメージが思いのほか大きく回復にはそれなりの時間が必要であった。

 

「……よくも私のカズキを……!!」

 

一樹を傷つけられて事でリアスの怒りは最高潮を迎えていた。リアスの人生の中で一番の魔力放出量だった。

怒りは力を引き出すのに最も適した感情だろう。

 

「…………」

 

一誠は黙ってリアス達を見ていた。ただ、呆然と。

 

(どうして俺の中から一樹に対しての感情が消えたのかは分からない。それなら……まとめて消すか)

 

怒り全開のリアスを他所に一誠は無言で考え込んでいた。そしてリアス達全員を消す事を決めた。

そうすれば、きっと自分の中から消えた感情の理由が分かるだろうと思い。

 

「……まあ、もういいか。まとめて消えうせろ!『雷帝の裁き』!!」

 

「喰らいなさい!!『滅びよ』!!!」

 

一誠はリアス達が消し飛ぶの十分過ぎる雷を放った。それに対してリアスの消滅の魔力弾は一誠の雷の十分の一に満たないかった。

このままいけばリアス達は一誠の攻撃で死んでしまっただろうが、二人の攻撃がぶつかろうとしたその瞬間

 

―――空が割れて『魔力の塊』が落ちてきた。

 

「何?!」

 

一誠はあまりの出来事に驚いてしまった。

 

(『コクーン』の中に入って来ただと!?そんな奴はユグドラシルにすら居なかったぞ!)

 

『コクーン』は出る事も入る事も不可能な『隔離空間』なのだ。そこに入ってきたのだから一誠の驚き様は尋常ではなかった。

そして入って来た『魔力の塊』が何なのか一誠とリアス達に分からなかった。

 


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