ハイスクールD×D  一誠の魔神伝説    作:新太朗

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遊びと喪失感

「……ん?……ここは?どこなの……?」

 

「ここは『閉鎖空間』―――俺が作り出したバトルフィールドだ。リアス・グレモリー」

 

「!?!?」

 

リアスは一誠が放った闇に飲み込まれたのまでは覚えているが、そこ先が分からなく周りを見渡した。しかし、ここがどこか分からなかったが、その疑問には一誠が答えた。

 

「バトル……フィールドですって?どうして私達をここに?」

 

「さっきも言ったが、あの場所で俺が暴れるとあの辺り一帯が更地になりかねないからな。ここなら俺が多少暴れても問題はない。そこでリアス・グレモリー。俺と遊び―――ゲームをしないか?」

 

「ゲームですって?生憎だけど、あなたとゲームをするつもりはないわ!朱乃、転移を!」

 

「はい。部長!」

 

リアスは一誠の提案を跳ね除けて朱乃に転移を言い渡したが、いつまで経っても転移されない事をリアスは疑問に思っていた。

 

「……朱乃。どうして転移しないの?」

 

「……それが、部長。転移出来ません……」

 

「な!?そ、それは本当なの!?」

 

転移が出来ない事にリアスは動揺を隠せ無かった。転移が出来ないという事は脱出はもちろん外に助けを呼びに行く事すら出来ないという事だ。

 

「まったく、人の話は最後まで聞くべきだと思うがな。それとも流石は『グレモリーの我が儘姫』と言った方がいいかな?」

 

「……一度ならず二度もそれを口にするとはね……!!」

 

(あれで殺気を向けているつもりか?やはり俺の『敵』にはなりえないか……どちらかと言えば子犬だな)

 

一誠の軽口にリアスは殺気を向けていたが、一誠にしてみれば子犬が威嚇しているようにしかみえないようだ。

 

「で?どうするんだ。この空間から外に出るには俺の許可が必要だぞ」

 

(ここは癪だけど、彼の提案に乗らないと出られないようね。私達に戦いを挑んだ事を後悔させてやるわ)

 

「……あなたの提案に乗るわ」

 

「そうか。でも一つだけゲームを受けずにここから出られる方法があるが、どうする?」

 

「一体なんなの……その方法は?」

 

一誠はここから出られる提案をした。その内容にリアスは激怒させるものだった。

 

「なに、簡単だ。兵藤一樹の『命』を俺に差し出せ」

 

「!?……ふ、ふぜけないで!!私の可愛い眷属を差し出すわけないでしょ!!!」

 

「そうだ!ふざけるのも大概にしろ!一誠!!!」

 

リアスと一樹は一誠の提案を否定した。そもそも『情愛』のグレモリーが眷属を犠牲にする事は無いと初めから分かっていたからこそ、一誠は無茶な提案をしたのだ。

 

「差し出す気はないと?……まあ、そうでなくては俺が楽しめないからな」

 

「!?……あなたは最初からそのつもりで……!!」

 

「ああ、もちろんだ。この十年、俺はそいつを殺す事だけを思って生きてきた。本当ならしばらくは様子見してからにするつもりだったが……辞めた。今日、この時をもって兵藤一樹を殺す!!……さあ、始めようか?殺し合いを!!」

 

「「「「「「!?!?」」」」」」

 

リアス達は一誠が出した殺気と魔力に少し後ずさりしてしまったのだ。

一誠が放出した魔力は悪魔で例えるなら最上級ほどあったのだ。リアス達にとっては過去に戦ってきたどの者達より格上だ。

『レーティングゲーム』で戦った、ライザー・フェニックスよりも上だ。

 

「……ここはやるしかないわ。皆、ここで彼を倒すわよ!!」

 

「「「「「はい!部長!!」」」」」

 

リアスは脱出が出来ない以上、ここで一誠を倒す以外の選択肢がないので戦闘は必然だと言えるだろう。

眷属達もそれは理解していたので構えた。

 

「こちらも戦闘準備をしないとな。『フェニックス・ボーン』」

 

「「「「「!?」」」」」

 

(((((不死鳥?)))))

 

一誠は『フェニックス・ボーン』を着装した。リアス達は一誠の鳥を思わせる鎧に驚いて一同に『不死鳥』と思って固まってしまった。

 

「―――戦闘中に余所見か?ずいぶん余裕だな!」

 

「ぐはっ!?」

 

「カズキ!!」

 

一誠が身に付けた鎧を見てリアス達が固まっていたので、一誠はその隙に一樹を殴り飛ばした。一樹は殴られた事で派手に転げていった。

 

「……クソが!!―――がはっ!?」

 

「まったく、これでよく上級悪魔のフェニックスに勝てたな?」

 

一誠は転げて態勢を直した一樹に対して容赦なく殴りつけたが、それで黙っている一樹ではない。

 

「な、舐めるなよ!一誠!!」

 

「ふん!甘い!」

 

殴り飛ばされた一樹を一誠は今度は蹴飛ばした。一樹もなんとか態勢を立て直し赤龍帝の篭手を装備した左腕で反撃したが、一誠に簡単に受け止められた。

 

「くそっ!!離せ!!」

 

「まったく、離せと言われて離す馬鹿がどこに居る?」

 

一誠は一樹の物言いに少しばかり、いや大いに呆れていた。

 

「吹っ飛べ!!」

 

「がはっ!?」

 

一誠は一樹をリアスの近くまで蹴り飛ばした。

 

(あまりにも弱い。これじゃつまらないな……それにさっきから感じている。この喪失感はなんだ?)

 

一誠は先ほどから一樹を殴り蹴るなどしてから自分の内から何かが消え掛けているような喪失感に陥っていた。

例えるなら今まで勢いよく燃えているロウソクの火が消えたようなそんな感じだ。

怒り、憎しみと言った負の感情が少しずつ一誠の心の中から消えていっていた。

 

「……リアス・グレモリー。俺の最初の提案を受ける気はないか?」

 

「……最初の提案?」

 

「ゲームの事だよ。正直、ここまで一樹が弱いとは思わなくてな。これでは俺が楽しめない。だから、クリア出来たらここから全員だしてやるよ」

 

「……信用出来ないわね。何が狙いなの?(彼が私達を素直に出すとは思えない……)」

 

リアスは一誠の提案に疑問を持った。ここで一誠に一撃与えて素直に外に出すのか。それともリアス達を騙す嘘なのか、とリアスは一誠を疑っていた。

 

「……別に、ただ俺は確かめたいだけだ。この喪失感を……」

 

「……喪失感?」

 

リアスは一誠が何を言っているかが分からなでいた。そもそも何に対しての喪失感なのかが分からない。

 

「いや、気にするな。それでゲームだが、時間無制限で俺の敗北はグレモリー眷属が『一撃与える』事だ。それが出来れば、ここから出してやる。そっちにの敗北条件は全員が『参った。と言う』か、『戦闘続行不可能になる』かの二つだ」

 

「……あなたは私達を甘く見ているのかしら?その条件だと私達に圧倒的に有利になるわよ」

 

一誠対グレモリー眷属では人数的に一対六なのでカバーに入ったり時間稼ぎしたりが出来てしまう。それではリアス達に有利になる事がリアスはどうしても理解出来ないでいた。

 

(こっちにはアーシアが居るのよ。回復係が居るのだから例え戦闘続行不可能になっても時間さえ稼げれば、戦い続ける事が出来るわ。彼はそれが分かって言っているのかしら?)

 

『聖母の微笑み』と言う神器を持つアーシアがいる以上、ダメージを受けても回復が出来るので、そうなればアーシアの気力が持つ限り戦闘は続行可能だ。

 

「有利?お前らが?まったく、自分と相手の実力差を測れないとはな……情けないにも程があるな、『グレモリーの我が儘姫』?」

 

「!!……またしても、言ったわね!!そのヘラ口を今すぐに閉じてくれるわ!!皆、彼に私達と戦う事を後悔させてやりましょう!」

 

「「「「「はい!部長!」」」」」

 

一誠の挑発にリアスは簡単に乗ってしまった。もはや、反射と言っても文句は言えないだろう。

 

「まずは、カズキと佑斗、小猫の接近戦で彼の注意を引き付けておいて、朱乃は私と魔力を貯めて一撃に備えるわよ。アーシアは私の後ろに!」

 

「「「「「はい!部長!!」」」」」

 

リアスの指示を聞いて一樹達はそれぞれ行動を開始した。

 

「カズキ君。僕と小猫ちゃんが左右から攻めるから正面を頼むよ」

 

「ああ、任せておけ。木場」

 

「……分かりました。佑斗先輩」

 

「―――敵を前に悠長に話をするなよな」

 

一樹達が話しているといつの間にか一誠が一樹達の目の前に立っていた。一誠は『時間停止』してから一樹達に近付いた。

 

「この!!」

 

「遅い!」

 

「がはっ!?」

 

一樹が殴りかかろうとしたので、一誠は一樹の顔面に自身の拳をめり込まして殴り飛ばした。

 

「「!?」」

 

佑斗と小猫は一誠がいつ自分達の目の前に来て、一樹を殴り飛ばしたのかが分からなく、驚愕のあまり固まってしまっていた。

 

「固まっていないで、かかって来いよ!」

 

「!?……よくもカズキ君を!」

 

「……えい……!」

 

佑斗は右から小猫は左から一誠に攻撃したが、二人の攻撃を一誠は左右の指一本ずつで受け止めた。

 

「「な!?」」

 

「なんだ?この程度なのか?これではゲームが楽しめないな」

 

一誠はつまらなそうに言った。実際、一誠にとってグレモリー眷属は『敵』ではなく、そもそも『遊び相手』にすらなっていない。

 

「木場!小猫ちゃん!そこを退け!!」

 

「「!!」」

 

佑斗と小猫は一樹の指示通りに一誠から距離を取るためバックステップで離れた。

 

「これでも喰らえ!ドラゴン・キャノン!!!」

 

一樹は一誠に自身の魔力の塊を殴りつけるように放った。その魔力弾は一誠に向かって真っ直ぐに進んで直撃は避けれなかった。

 

「『時よ』」

 

一樹の魔力弾に対して一誠はそう言っただけで、一誠はそこから居なくなって魔力弾は誰に当たる事なく無駄に終わった。

 

「……今、何が起った?一誠は、どこだ……」

 

「どこを見ている?一樹」

 

「後ろだよ!カズキ君!!」

 

「!?」

 

一樹は佑斗に言われて後ろを見るとそこには腕を組んだ一誠が立っていた。一樹はすぐさま一誠と距離を取った。

 

「なんなんだ、一体……お前の力は……」

 

「それで俺の力の事を話すと本気で思っているのか?だとしたらとんだマヌケだな?一樹。でも、俺がそっちの知っているだけでは不公平だな。まあ、教えた所で対応出来るとも思えないしな。『時よ』」

 

「!?」

 

またしても一誠が一瞬にして一樹の目の前に現れた。

 

(どうなっているんだ?一誠との距離は7~8メートルはあったのに……こいつはどうやって距離を詰めたんだ……!!)

 

一樹は一誠がどうやって自分との距離を詰めたのか分からないでいた。

 

「お前らはこの『フェニックス・ボーン』が回復か火属性と考えているようだが、違う。この『ボーン』の属性は『時間』だ」

 

「じ、時間?……そんな事が、出来るのか……お前は……」

 

「ああ、そうさ。『時間停止』『未来予知』と言った時間に関する事なら全て出来るのさ、俺は。……さあ、続きを始めようか。お前らの敗北が決まったゲームを!」

 


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