ハイスクールD×D  一誠の魔神伝説    作:新太朗

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接触と再会

「―――そこで何をしているのかしら?」

 

一誠は顔を後ろに向けて声の主を確認したら、それはリアスだった。更に三名の眷属を引き連れていた。

 

(不味いな……ここで悪魔側と揉め事を起こしたくはない。どうする?)

 

悪魔側と今、問題を起こしたくない一誠はこの状況をどう切りぬけるかを必死に考えようとしていた。

 

(あの鎧は一体何かしら?……あんな神器は聞いた事も見た事もないわね)

 

リアスは目の前の鎧の人物を何者なのか見極めようとしていた。

 

「もう一度言うわ。そこで何をしているのかしら?」

 

「……それをあんたに言う理由は俺にはない。リアス・グレモリー……」

 

(声からして男で歳は近いわね。何者なの?正体を確かめないと)

 

リアスは相手の正体を探る事にした。

 

「……私の事を知ってなお、どうしても言う気はないのかしら?」

 

「ああ、無いな。それともここで何かをしていると都合が悪いのか?」

 

「………………」

 

一誠の質問にリアスは無言で答えてしまった。

 

(ここで目の前の人物を野放しにはしておけない。少し前に堕天使の事で私の評価は下がったと聞いたわ。ここでまたしても不審人物を逃がしたとなれば、更に下げてしまう事になりかけない。ここは強引にでも連れて行くしかないわね)

 

実際にここでの事を調べられでもして、何かリアスにとって不味い事でも見つかれば、家の名に傷を付けてしまう。

それだけはリアスの避けたい事だった。

 

「あなたが私に従わないと言うなら……力尽くで連れて行くわ、皆!」

 

朱乃、佑斗、小猫は戦闘態勢に入った。

 

(はぁ~面倒だな……資料にあった通りだ。あれでも言ってみるか)

 

一誠はリアスのあまりにも短気な性格に溜め息が出てしまった。

 

「……いい加減にしろよ、リアス・グレモリー。自分の言う事を聞かない奴は強引にか……流石は『グレモリーの我が儘姫』だな」

 

「な!?なんですって!!訂正しなさい!今の言葉!!」

 

一誠の言葉はリアスが一番に嫌っている二つ名だった。それでリアスは冷静さを欠いてしまった。

 

『グレモリーの我が儘姫』

これがいくつかある二つ名でリアスが一番に嫌っているものだ。

グレモリー家の令嬢として好き勝手に振舞っている内に付いた二つ名だ。

 

(これは資料にあって言ってみたが、想像したより怒りを露にしたな、これは使えるな)

 

一誠はリアスが相当にこの二つ名を嫌っている事を改めて知った

 

「あなたは私を怒らしてしまった。手加減しないわ!覚悟はいいかしら?」

 

リアスは全身から魔力を出して一誠を脅したが、一誠にとってリアス程度の魔力では『敵』にはなれない。

 

「……所詮は上級悪魔か……やっぱり大した事はないな」

 

「っ!?……大した事はないですって……!!その言葉、後悔されてあげるわ!滅び「遅い!」なっ!?」

 

一誠はフェニックス・ボーンの能力の一つ―――『時間停止』を発動してリアスの首を片手で締め上げた。

 

(どうしていきなり目の前に!?距離は十分にあったはずなのに!?)

 

リアスはいきなり首を締めれている事に動揺していた。

 

「「「部長!」」」

 

「下手に動かないほうがいいぞ?」

 

「「「っ!?」」」

 

朱乃、佑斗、小猫はリアスをすぐさま助け出そうとしたが、首を締められている状況では迂闊に手が出せなくなった。

 

「そのまま、動くなよ?」

 

一誠はリアスを締め上げたまま、ゆっくりと出口の方に向かって歩き出した。

もちろん朱乃達、眷属からは目を離さずにだ。

後、少しで出らそうな時に一誠の後ろの扉から乱入者―――一樹が現れた。

 

「―――部長からその手を離せ!!」

 

「おっと」

 

一樹の攻撃を難なく避けた一誠はリアスを離して一樹から距離を取った。

 

「部長!大丈夫ですか?」

 

「部長さん。大丈夫ですか?」

 

「ゲホッ…ゲホッ……た、助かったわ、カズキ。アーシアもありがとう」

 

一樹とアーシアはリアスの近くに寄って主の無事を確認した。

 

「ところで、あいつは誰なんですか?」

 

「分からないわ。でも声から若い男であるのは間違いないわ」

 

一樹は目の前の鎧の人物の事をリアスに聞き向き直した。朱乃達は一樹の周りの集まって来た。

 

「朱乃さん達は大丈夫なんですか?」

 

「ええ、問題はありませんわ。でも目の前の人物の能力が不明なので遅れを取ってしまいましたが、もうそのような事はありませんわ」

 

一樹と合流した朱乃達は二度と遅れを取らないように構えた。

目の前の『敵』を倒すために。

 

「……その様子だとまだ、俺の伝言は届けていないらしいな木場」

 

「……え?……い、一体なんの事だ。僕は君の事なんて知らない!」

 

いきなり自分の事を呼ばれた佑斗はぼう然としてしまったが、すぐに我に返り目の前の人物に問いかけを否定した。

 

「知らないのは当たり前だ。なんたって、俺は今日転校してきたんだからな」

 

「……君は真神君なのか……?」

 

「おい、木場。真神って誰だよ?」

 

一樹はすぐに佑斗に呼びかけて質問した。

 

「真神一誠君って言って、今日僕のクラスに転校してきたんだ」

 

「真神、一誠……だと…………お前まさか、『あの』一誠なのか?」

 

「ああ、そうだぜ。一樹」

 

次の瞬間、辺りが光に包まれたと思ったら、一誠は鎧を解除していた。

 

「「「「……え?」」」」

 

一樹、佑斗を除くリアス達は目の前の顔を見た瞬間に驚愕してしまった。

その顔はまるで一樹とうり二つだったのだ。違いは髪の色くらいだろうか。

一樹は茶色かかっている髪が、一誠は黒髪だ。

 

「カズキ……?」

 

「カズキ君、なのですか?」

 

「カズキさん……ですか?」

 

「……カズキ先輩に似ていますけど、別人です」

 

リアス、朱乃、アーシアは目の前の人物を一樹と勘違いしていたが、小猫だけは別人と断言した。

 

「正解だ。塔城小猫。お前の言う通り、俺は一樹ではない。よく……いや、流石と言うべきか?」

 

拍手の後で一誠は小猫を賞賛した。一誠を一樹と違うときっぱりと断言したのだ。

 

「だったら、誰だと言うの?あなたは?」

 

「だから、さっき木場が言っていただろ。真神一誠だって……まったくさっさと分かれよな……は~」

 

一誠はリアスの理解力の低さに溜め息を出してしまった。

そんなリアス達をよそに1人だけ頭の中がパンクしそうな人物がいた。一樹だ。

 

(どうして!どうして!どうして!あいつが生きてここに居るんだ?!折角、転生して一誠の兄ってポジションになって、あいつを追い出して俺がハーレムを築くはずなのに!!それに一誠は原作とは違う力を宿していた。だから余計な事をする前にあいつを消そうとしたのに!!)

 

兵藤一樹は転生者だ。それも原作知識と前世の記憶を持った転生者だ。

だからこそ、一樹は原作ヒロインを全て自分のものにするために一誠が邪魔だった。

しかも一誠は一樹も知らない力を持っていた。それゆえに一樹は幼い時に一誠を家から追い出した。

自分こそが主人公で原作一誠が作ったハーレムを己のものにするために。

 

「どうした?一樹。さっきから顔が青いぞ?」

 

「……して……どうしてだ……!!」

 

「ん?すまん。声が小さくて聞き取りづらいんだが?」

 

「どうして!お前は!!生きて、ここに居るんだ!!!お前はあの時に死んでいなきゃいけなったんだよ!!なのに!なのに!お前は……!!」

 

「カ、カズキ?あなた……」

 

リアス達は今まで見たこともない態度に困惑していた。それだけ一樹の取り乱した態度を見た事がなかったという事だ。

 

「俺がどうして生きているか……それは十年前にある神に拾って貰ったらからだよ」

 

「拾って貰っただと……何処の神なんだ!答えろ!!」

 

「まあ、それを含めて改めて自己紹介をした方がいいな。一先ず十年前に俺を拾ってくれたのはユグドラシルの主神、オーディンだ。……俺は今オーディンの爺さんの私兵をしている。真神一誠だ、よろしく」

 

「オーディンだと……?まさか、そんな事が……ありえない!有りえてたまるか!!」

 

一樹は一誠が言っている事が信じられないでいた。

 

「落ち着きなさい、カズキ。彼が本当にオーディン様の私兵という証拠はないわ。きっと彼は嘘でこちらを混乱させようとしているのよ」

 

「……部長……!そ、そうですよね!そうに違いない。きっとそうだ……!!」

 

(確かに俺がオーディンの爺さんの私兵だと証拠を出せと言われれてもそれは出来ない。だけど、ここまで話が通じないとは……逃げた方がいいな)

 

リアスと一樹の会話を聞いていた、一誠はあまりの2人の頭の中が大丈夫かと本気で心配していた。

一誠がオーディンの私兵である事を示すものはないので一誠は逃げる準備をしていた。

 

(部長の言う通りだ。あいつがオーディンの私兵なんて事はない。確かに一誠には俺も知らない力が有った。だからなんだ、ここであいつを殺して『原作』を守るだけだ。そうだ。俺が赤龍帝なんだ!絶対に誰にも俺のハーレムを邪魔させない!!リアス達にバレないようにしないとな……)

 

一樹の頭の中では、一誠をどのように殺すか考えていた。リアス達に不自然に見えないようにこちらの攻撃でうっかり死んでしまった事になるように。

 

「さあ!カズキも持ち直した事だし行くわよ、私の可愛い眷属達!」

 

「「「「「はい!部長!!」」」」」

 

リアス達は改めて構えた。しかし一誠は特に構える事は無かった。

それでも手には一枚の『黒色のカード』が握られていた。

 

「……(逃げた方がいいかと思ったがこれは戦って『格』の違いを見せた方がいいかもしれないな)……盛り上がっているところ、すまないが……話を勝手に進めないでくれ。まあ、俺がここで暴れたら色々と面倒なんで……『コクーン』展開!」

 

一誠が持っていたカードから闇が広がって、リアス達を飲み込もうとした。

 

「朱乃!」

 

「はい!部長!」

 

朱乃はリアスが何を求めているのが、すぐに理解してリアスと同時に魔法障壁を展開したが、カードから出てきた闇はそんなの関係ないようにリアス達を飲み込んだ。

 

「「「「「「!?!?!」」」」」」

 

リアス、朱乃、佑斗、小猫、一樹、アーシアの六人と一誠は廃教会から忽然と姿が消え去った。

そこに居た痕跡すら残さずに……


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