今年もどうぞ、よろしくです。
では、どうぞ。
一誠とゼノヴィアが通っている駒王学園は夏休みに入った。それでも一誠たちの生活に変化は無かった。時間があれば一誠はゼノヴィアとヴァーリの修行を手伝っていた。
ゼノヴィアもヴァーリも順調に実力を付けていた。そんな日にヴァーリから会って貰いたい連中が居ると一誠は家で待っていた。
「すまないイッセー。待たせたな」
「来たかヴァーリ。そいつらがお前が俺に会わせたい連中か?」
「ああ。そうだ」
ヴァーリの後ろには男女四人が居た。
(二人は人間で残りが妖怪と妖怪の転生悪魔か。それにあの男の持っている剣から感じるのは……)
一誠は気配で四人がどのような種族なのか見抜いていた。そして人間の二人の男女の内、男が持っている剣から聖なる力を一誠は感じていた。
「なあ、お前が持っているのは聖剣か?」
「ええ。『支配の聖剣』と『聖王剣コールブランド』です。これはヴァーリのおかげで見つける事が出来たのですよ。それと私の名前はアーサー・ペンドラゴンです。どうぞ、よろしくお願いします。北欧の魔神イッセー殿」
「ああ。こっちこそな。それでそっちは?」
一誠はアーサーの隣に居る少女に視線を向けた。少女の格好はマントにとんがり帽子を身に付けておりまさに魔女と言える人物だ。
「はい!私はルフェイ・ペンドラゴンです!どうぞよろしくお願いします!」
「ペンドラゴン?兄妹なのか?」
「はい!兄ともどもお世話になります!」
ルフェイは勢いよく一誠にお辞儀をした。しかし一誠には色々と聞きたい事が出来たので質問する事にした。
「兄妹でテロリストだったのか?」
「えっと……お兄様は強い方と戦いたいだけで私はそれが心配で付いて行っているようなものです。それにお父様もお母様も心配なようで……」
「なるほどな……戦闘狂なのか」
一誠はどこか納得した。それはアーサーから感じられる気配なようなものがどこかヴァーリと似ている事を感じたからだろう。
そしてアーサーやルフェイの後ろに視線を向けた。
妖怪の気配を感じさせる二人。男の方の格好は赤い鎧を着て長い棒を持って顔つきはどこか猿を思わせた。
「始めましてだな、真神一誠。俺っちの名は美猴だぜ。よろしくな」
「ビコウ?……もしかして孫悟空の身内か?」
「おっ!よく気がついたな。そう俺っちは孫悟空の末裔なのさ。ヴァーリが『禍の団』を抜けるって聞いた時は驚いたがお前さんのような怪物の下につくとはな。爺以外でこんな奴が居るなんてな……」
美猴は一誠から漏れていた魔力を感じていた。それは彼がこれまでに感じてきた気配の中でダントツで一番だろう。
敵だったら真っ先に逃げ出していただろう。
「アーサー王と孫悟空の末裔が揃ってテロリストだったとは世も末だな」
「俺っちは初代と違って自由が好きなのさ」
美猴は悪べれる事無く答えた。そして一誠は最後の黒い着物を着た獣耳の女性に視線を向けた。するとその女性が一誠の腕に抱きついてきた。
「黒歌だニャよろしく♪」
「お前は妖怪の転生悪魔だな。それにお前と似た気配の奴を知っている。グレモリー眷属の塔城小猫だ。身内か?」
「……そうニャ。妹だニャ……」
黒歌はどこか暗い表情を浮かべて先ほどとは違って元気が無くなっていた。一誠は聞いては不味い事を言ってしまったのか何とも言えない顔になっていた。
「……とりあえず、家の中に入れよ」
「い、イッセー!そ、その前にいいか?」
「ゼノヴィア。どうした?」
家に入ろうとした所でゼノヴィアが何かを言いたげな態度を取っていた。それはまるで子供が新しいオモチャを貰うような心境だろうか。
そして一誠は気づいた。ゼノヴィアの視線はアーサーの二本の聖剣に向けられていた。
「ああ。なるほどな……アーサー、良かったらゼノヴィアにその聖剣を見せてやってくれないか?」
「ええ、構いませんよ。その代わりに貴女のディランダルを見せてもらえませんか?」
「あ、ああ!全然、構わない!!これがデュランダルだ!」
「ええ。では、コールブランドを」
ゼノヴィアはデュランダルをアーサーに渡しアーサーはコールブランドをゼノヴィアに渡した。二人は互いの得物をまじまじと見ていた。
他は完全に蚊帳の外でその光景をただ黙ってみていて。
「……入ってくれ」
「そうだな」
一誠に促されてヴァーリに美猴に黒歌、ルフェイが続いて家の中に入っていった。
一誠はヴァーリ達に一先ず麦茶をだした。一誠から話を切り出した。
「それで、ヴァーリ。お前とこいつらとの関係ってのは何なんだ?」
「彼らは俺の『禍の団』で集めた仲間だ。アーサーとルフェイは別の派閥に居たが俺が勧誘した。それと周りは白龍皇眷属もしくはヴァーリチームと言っていたのさ」
「『禍の団』って団結した組織では無いんだな」
「所詮、寄せ集め集団だからな」
ヴァーリはざっくりと前まで居た組織の事を言った。本来なら色々と聞いたりするところだが、一誠は特に聞く事は無かった。
「後でオーディンの爺さんに報告しておくか。お前らの事を」
「それで俺っち達はイッセーちんの命令に従わなくちゃいけないのか?」
美猴は一誠に質問した。ヴァーリが一誠の下に付いた以上、自分達を従わせようとしているのかが気になっていた。
「いや、そんな事をする必要は無いが?」
「え?無いの?」
「ああ。無い」
一誠は「何を言っているんだ?お前は」と言わんばかりの顔をしていた。それは美猴はもちろん、黒歌もルフェイも驚いてた。
まさか従わなくいいなんて言われるとは思っていなかったのか三人はあ然としてしまった。
「意外だぜ。てっきりヴァーリが部下になったから俺っちらも従うものかと思ったぜ」
「生憎、ヴァーリを部下にしたつもりは無い。どっちかと言うと弟子?……まあ、俺としてはヴァーリを強くしているだけで、特に縛り付けるつもりは無いから好きに動いていいぜ」
「いいのか?そんな事を言って……」
美猴まるで毒気を抜かれてような気持ちになっていた。だが、一誠は先ほど言った通り彼らを縛るつもりは毛ほども無い。
アーサー達が従ってくれるならそれでいいと思っている。それに一誠の興味はヴァーリだけなので他はおまけとしか考えていた無い。
「まあ、お前らは元テロリストだしある程度は言う事を聞いて貰うがそれ以外は好きにしてくれ」
「そう言うことなら好きにさせて貰うぜ!」
美猴がそう言うと黒歌は一誠の腕に抱き付き胸を押し付けていた。ルフェイは一誠の前に行くといきなり頭を下げた。
「い、イッセー様!」
「イッセーで構わないぞ。ルフェイ」
「は、はい。イッセーさんにお願いがるのですけど……」
「お願い?」
一誠はルフェイが言ったことに首を傾げた。
(もしかして魔女的なお願いだろうか?)
一誠はルフェイのお願いを魔女と関係しているものと考えた。悪魔と契約してその魔力を使い研究などをする魔法使いや魔女と一誠は聞いていたのでそう考えていた。
ルフェイはヴァーリから一誠の話を聞いてからずっと気になっていた。魔力を持つ人外のどれとも違う魔力を持つ一誠はルフェイにとって興味津々だった。
(この人の魔力は一体何なんだろ……)
ルフェイは一誠が何故、魔力を持っているのかずっと疑問に思っていた。一誠は純潔の人外でもハーフでも転生悪魔のどれでも無いから一誠が持っている事は本来無い筈だった。だが、一誠はそれを持っていた。
それは……魔力だ。
本来、それは人間が持つ事は無いものだ。一誠は純潔はおろかハーフですら無い。一樹はリアスが『悪魔の駒』を使い転生させたから魔力を持つ事が出来たが、一誠は悪魔に転生してはいない。
そして今現在に悪魔以外に『転生システム』を持っている勢力は無い。
仮にあったとして神―――魔神に転生させるなど出来るはずが無い。
「は、はい!この水晶に魔力を入れてくれますか?」
「ああ、いいぞ」
一誠はルフェイが取り出した水晶に手を触れて魔力を入れた。しかし水晶は「ピキッ……」と音を立てた後、そのまま砕け散った。
「……え?」
「ああ……なんか済まないな」
「い、いえ!気にしないでください!」
ルフェイは気にしなくていいと言っていたが、一誠は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
(どうして砕けたんだ?)
一誠はただルフェイに言われたとおりに触れて魔力少し入れただけで特に何もしていないのに水晶は簡単に砕け散った。
だが、それこそが問題だった。一誠にとって少しでも他の者からしたら相当量の魔力になるのだ。
つまり水晶は許容量を軽く突破して砕けたのだ。しかしそれに一誠もルフェイも気づいてはいない。
「『フェニックス・ボーン』」
一誠はすぐに『フェニックス・ボーン』を使い壊れた水晶を元通りにした。今度は細心の注意をしてルフェイに水晶を渡した。
「俺が魔力を込めると壊れるようだな」
「そうですね……イッセーさんの魔力が大きいのか、もしくは別の理由があるんでしょうか?」
「さあな……それは俺には分からない」
こればかりは一誠にも謎だった。するとヴァ-リが近づいてきた。
「イッセー。そろそろ始めよう」
「ああ。そうだな」
「始めるって何ですか?」
ルフェイは思わず首を傾げた。二人が何を始めるのか気になっていた。
「まあ、一言で言えば……命がけの修行だな」
「しゅ、修行ですか?」
「ああ。ヴァーリにはもっと強くなってもらわないと俺が困るからな。俺が戦いを楽しむためにな」
一誠はルフェイにそう笑って答えた。それと同時にヴァ-リも少しだけ笑っていた。ヴァーリにとって一誠との修行は日々の楽しみの一つだ。
強者と戦いは彼が望むものだ。だからヴァ-リは毎日が楽しくてしょうがなかった。
「『コクーン』展開」
一誠は『コクーン』を展開してヴァ-リと共に消えた。二人が再び現れたのはそれから三十分後だった。
しかもボロボロになったヴァ-リを一誠が引きずりながら現れた。一誠は『クジャク・ボーン』でヴァーリを治療した。
「ま、毎日こんなになるまで戦っているのですか?ヴァ-リ様……」
「ああ……彼との戦いは実に楽しい!!」
ルフェイは苦笑するしかなかった。ヴァーリの性格は知っていたがそれでもその戦闘凶の顔は誰もが引くほどだろう。
だが、それが彼―――ヴァーリ・ルシファーだ。
人、悪魔、龍。この三つが彼を構成している。人、最弱ゆえ最強をも倒せる可能性がある。悪魔、長い寿命と魔力を持つ人外。
龍、神と並ぶ強大な存在であらゆる者が恐れる最強。
この三つがあるからこそヴァーリは最強を目指すのはもはや本能と言ってもいいだろう。
ピンポーン!!
一誠が休んでいると家のチャイムが鳴った。しかしこの日の来客はヴァ―リの仲間以外はいなかった。
(誰だ?それにこの気配は……)
一誠は来客の中に妙な気配を感じていた。とりあえず来客の相手をする事にした。玄関に向かい扉を開けてみるとそこには男女五人が居た。
「お前らは……」
一誠が来客を家に入れる少し前、駆王町を歩く男女五人が居た。一人は学生服に甲冑をしており一人はローブを着ている魔法使いに一人はまだ十歳前後の子供だが、その目はどこか年頃の少年とは思えなかった。
一人は白髪でその腰には五本の魔剣があった。最後の一人は女性で金髪で自身に満ち溢れた顔をしていた。
彼らはどこから発生したのか分からないが霧から現れた。
「それでこれから彼の家に向かうのか?」
「ああ。間近で会ってみたくなってな」
ローブの青年に甲冑の青年は楽しみだと言っている顔をしていた。それを見て少しだけため息をついてしまった。
そうしていると目的の場所に着いた。チャイムを鳴らすと目的の人物が現れた。
「やあ、お邪魔していいかな?」