ハイスクールD×D  一誠の魔神伝説    作:新太朗

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帰国と記憶

オーディンからの『リアス・グレモリーとその眷属の監視』を言い渡されて五日が経過していた。

一誠は今日、北欧から日本に到着した。

 

(この地―――日本に戻ってくるとはな……さっさと任務を終わらして北欧に帰りたい……)

 

一誠は空港に着いてから任務を早く終わらして北欧に帰りたい事をずっと考えていた。

しかし一誠は気付いていなかった。

任務は『リアス・グレモリーとその眷属の監視』なのだから少なくともリアスの眷属が全員が学校を卒業するまで続く事にまったく気付いてはいなった。

 

そんな一誠は空港でタクシーに乗り、オーディンが購入した家に向かっていた。

荷物は空間属性のボーンの能力ので作った『異空間』に収納して運んでいるので、一誠は手ぶらでいた。

 

「それじゃ、お客さん。行きますよ」

 

「……ええ、お願いします。ふぁ~……」

 

「寝不足ですか?お客さん」

 

「ちょっと、時差ぼけ気味で……すいませんが着いたら起こしてくれますか?少しだけ寝るんで……」

 

「分かりました。着くまで寝いていて結構ですよ」

 

時差ぼけ気味の一誠の頼みをタクシーの運転手は心優しく応じてくれた。

寝る前に一誠は思う。

 

(今度はいい夢が見れるといいな……)

 

少し前に見た夢はまさに悪夢と言う他ないものだったからと一誠は自分の願いが叶うように寝てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――さん!お―――ん!お客さん!起きてください。着きましたよ」

 

「ん?……もう着いたのか?どうも、すいません……起きこして頂いて……」

 

「いいですよ。それではお会計は5890円になります」

 

「はい。……これで」

 

一誠は財布から6000円取り出して運転手に渡した。

 

「はい。ではこちらがお釣りになります」

 

「どうも」

 

一誠はタクシーから降りて家を見て、驚いた。

そこに建っていた家は一般的な一軒家などではなく、『邸宅』と言っていいくらいの大きさの家だった。しかも蔵付きで。

 

「オーディンの爺さん……いくらなんでも一人でここに住むのは広すぎだろ…………うん?何だ?」

 

一誠の目の前に一枚の『ボーン・カード』が現れた。

 

(これはどういう事だ?『ドラゴン・ボーン』が何かに反応している?)

 

『ドラゴン・ボーン』

火属性のボーンだ。一誠が持つボーンの中では1、2を争う攻撃力を持っている。

 

その『ドラゴン・ボーン』が赤い光を放って、まるで何かに反応しているように脈打っていた。

この時、一誠は気が付いていなかったが、近くの家に一樹が『悪魔の仕事』で来ていのだ。

『ドラゴン・ボーン』は赤龍帝に反応していたのだ。

 

(一体?『ドラゴン・ボーン』は何に反応しているだ?……あ、反応しなくなった)

 

一誠がカードを注意深く見ていると、反応しなくなった。

一樹が離れたために反応しなくなったのだが、一誠はまったく気が付いてはいなかった。

 

「……まあ、いっか。まずは荷物を出して整理しないと」

 

一誠は一先ず家に入り荷物の紐解きをすることにする事にした。

と、言ってもそんなに荷物はないので、そんなには時間は掛からなかった。

それでも夜の七時になろうとしていた。

 

(今日は作らずに外で食べるか。それにやっておかないといけない事もあるかならな)

 

一誠は帰国した際にやっておきたい事があった。

過去の清算を―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外でラーメンを食べた、一誠は『清算』をするためにある場所に向かっていた。

住宅街を歩いていた一誠はふと周りを見て思った。

 

(あんまり覚えてはいないが、どことなく懐かしいと思うな……十年も経てば、記憶はおぼろげになっていくよな……でも家はこの方向にあるのはなんとなく分かる)

 

風景は忘れてしまったが、それでも自分が生まれ育った家の方向は分かっているようだった。

生物の帰巣本能が働いたためかもしてない。

 

「あれ?カズキか?」

 

「お、カズキだ」

 

「…………」

 

歩いていると後ろから二人組みの男が声を掛けてきた。

 

「……俺は一誠。真神一誠と言う者だ。お前らが言うカズキではない……」

 

「え?マジか!?それはすまんかった!元浜、違うじゃないか!?」

 

「すまんって、お前だってあの後ろ姿を見たらカズキと間違えただろ?松田!」

 

(一樹のクラスメイトか学校の知り合いか?)

 

一誠は二人が一樹の知り合い、もしくはクラスメイトだと思った。

後ろ姿を見ただけなのに間違えたと言うことはそれだけ一誠と一樹の二人が似ていると言う事だろう。

 

(あの憎たらしい男と間違えられるとはな……!!だが、こいつらに悪気はない……はずだ。もし有ったなら腕でもへし折ってやろうかと思っていたんだがな……)

 

考えている事がすでにヤンキーになっている一誠であった。

 

「……そんなに似ているのか?俺とお前らの言う人間は?」

 

「おう。もうスゲー似ている!顔もどことなく似ているな。元浜もそう思うだろ?」

 

「ああ、ホント。似ているな……双子じゃないかと思ってしまう程似ているな」

 

「……そんなに、か……悪いな二人とも俺はこれから向かわないといけない所があるからこれで失礼する。機会があれば、また会おう」

 

「おう、またな!」

 

「また会おうぜ」

 

一誠は二人から離れて目的の場所に向かって歩き出した。

 

(俺がもし……普通の一般人だったら、あんな二人のような友人を持つ事が出来ていたかもしれなかったのか……?……考えてもしょうがないか……今は目的を果そう……)

 

一誠はさっき会った二人の事を思い出して考えていた。

しかしそんな現実はどこにも存在しないし、無いものを求める事は出来ない。

そんなのは考えるだけ虚しいだけだ。

一誠もその事は十分理解していたが、それでも諦めきれない部分というのはあるものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……十年前となんら変わっていないな……てっきり引っ越したものかと思ってが、そんな事はなかったな……」

 

一誠が目指していた場所は生まれて数年間だけ育った兵藤家だ。

引越していると思っていた一誠は思わず呆れていた。

一誠が戻って来て復讐をする事を考えなかったのか?自分達が『バケモノ』と呼んだ存在が居た家によく住んでいられるな?など考えていたが、それ自体がバカらしく思えていると一誠は考えるのを止めた。

 

「まあ、引っ越していないなら好都合だ。さっそく行くか……」

 

ピンポーン!

 

一誠は家のチャイムを鳴らした。

 

(ここは正面から堂々と行った方がいいな。隠れる必要はないかな。……家からは気配は二つだけだ。なら両親しかいないのだろう)

 

一誠は気配を探って、家に二人だけなのを確認した。

この家には一樹の主のリアスと眷属の少女がホームスティしていると資料に記さしてあったので、二つだけという事はリアス達は今は家にはいないという事だ。

 

『はい。どちら様でしょうか?』

 

「……どうも僕、兵藤君のクラスメイトの者ですが、兵藤君が学校に忘れ物をしてので届に着ました」

 

『そうなの?でもごめんなさい。一樹はまだ帰っていないのよ』

 

「そうですか。じゃあ物だけ渡しておいてください」

 

『ええ、ちょっと待ってね。今玄関を開けるか』

 

一誠の訪問に応対した女性が玄関から出てきた。一樹、そして一誠を生んだ母だ。

 

「おまたせしてごめんなさい。それで忘れ物って何かしら?」

 

「…………俺の顔を見て何も思い出さないんだな?」

 

「え?……あ、あ……そ、そんな事って―――――!」

 

「『バジリスク・ボーン』『マインド・コントロール』」

 

女性が悲鳴を上げる前に一誠は木属性の『バジリスク・ボーン』を着装して精神支配を女性に掛けた。

女性の瞳からは光が消えてまるで人形のようになっていまった。

 

『バジリスク・ボーン』

木属性のボーンだ。両肩にある大きな目のようなものを見たものを幻覚・精神支配するなどの能力を使う事が出来る。

 

「どうしたんだ?母さん」

 

「あんたも少しの間、俺の人形になっていろ!『マインド・コントロール』」

 

「―――――!」

 

女性が何時までも戻らないものだから家の中から男性が出てきた。一樹の父だ。

男性にも同様に精神支配の能力を使い人形にした。

これから一誠がやる事に二人は邪魔でしかないので暴れたりしないように操る事にしたのだ。

 

「命令だ。俺の用が済むまでリビングに行き、椅子にでも座っていろ」

 

「「……はい。分かりました……」」

 

二人は一誠の命令のまま、リビングに向かい椅子に座った。

そんな二人が椅子に座るのを見て一誠は二階のある部屋に向かった。

扉には何もない、部屋の扉を開けて入った。

 

「……十年間、放置していたのか……ホコリ臭いな……」

 

一誠が入った部屋は追い出されるまで自分が使っていた部屋だ。

十年間、放置していたようでホコリ塗れになっているが……。

 

「ふうー……ノートまでそのままなのか……」

 

机の上を軽く息を掛けたらホコリの下から一冊のノートが有った。

そこには『兵藤一誠』と書かれていた。

そのノートの字を見て昔、両親から小学校に入学する自分の名前だけ漢字で書きたいとだだをこねた事を思い出した。

 

(まったくホント……懐かしいな……戻ってきたんだな、俺は)

 

部屋の窓を開けて換気をしてホコリを外に出して部屋を改めて見渡した。

一誠が追い出された当時のままにして―――いや、部屋には一切入らなかったのだろ、この十年間。

 

(俺の存在は二人からしたらゴミと同列もしかしたらそれ以下かもしれないな……)

 

自分は両親からしたらどのよな存在だったのだろうと考えていたが、考えるのを途中で止めた。

 

(考えてもしょうがいない。どうせ、ここにはもう二度と来る事はないからな……)

 

一誠は部屋に有った物を全て纏めて部屋を出た。

一階に戻り両親の様子を見たが、一誠が命令したまま椅子に座っていた。

 

「父さん、母さん。……俺を産んで育ててくれて……ありがとう。もう会う事はないから言っておきたかったんだ。それじゃさようなら……命令だ。『兵藤一誠に関する記憶を全て封印して、もしそれを解こうとした者がいても決して封印を解くな。俺がこの家から出たら催眠状態は解除』だ」

 

「「……はい。分かりました……」」

 

記憶を消し去る事を考えたが、出来なかった。一誠は例え両親が自分の事を思い出さなくても頭の中に有る事を望んだ。

そこで一誠は記憶を封印する事にした。

しかも念のために記憶の封印を解こうとした者が現れた際の事を考慮してもう一つの命令を出した。

 

一誠は兵藤家から出て最後に家を見て歩き出した。

その顔には涙が流れた痕があった。

 

(これで両親に対しての『清算』は終わった。次はお前の番だ!……一樹!!)

 

二人の『清算』を終えた一誠は次のターゲットである一樹に殺意を向けていた。

もうすぐ駒王学園へ編入する日だ。

 


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