ハイスクールD×D  一誠の魔神伝説    作:新太朗

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会談と襲撃

授業参観が無事に終わり、ついに天使、堕天使、悪魔、ユグドラシルの四つの勢力の会談が始まろうとしていた。

駒王学園の会議室で今回の会談をする事になっている。

時間は一般人の居ない深夜に会談を行う事になっている。すでに天使、堕天使、悪魔、ユグドラシルの代表が全員揃っていた。

 

天界の組織である「熾天使」を率いる天使長で、四大熾天使の1人の天使ミカエル。

 

堕天使の組織の「神の子を見張る者」の総督で神器などの研究者をしている堕天使アザゼル。

 

冥界を統べる四大魔王の1人で冥界最強の悪魔と称される魔王サーゼクス・ルシファー。

 

同じく四大魔王の1人で外交などを取り仕切っている女性悪魔でコスプレが趣味の魔王セラフォルーレヴィアタン。今は正装で来ていた。

 

そして最後にユグドラシルの全権代理者で北欧最凶の魔神、真神一誠。腕を組み、目を瞑っていた。

 

今夜の会談ではこの五人がメインで喋る事になっている。さらにリアスとソーナ。それに彼女達の眷属が揃っていた。

ただしグレモリー眷属は小猫だけがいなかった。

小猫は最近、封印解除されたグレモリー眷属とオカ研の部室で待機していた。

そして時間になりついに会談が始まり最初に口を開いたのはアザゼルだった。

 

「まずはこの会談に集まってくれて礼を言う」

 

「……まさかアザゼルの口から礼を聞けるとは、驚きです」

 

堕天する前からの知り合いであるミカエルが驚いた顔をしていた。

 

「おい、ミカエル。それはどういう意味だ?」

 

「そのままの意味ですよ」

 

「まったく、今夜はお前に嫌味を言われにに来たんじゃないぞ。まあ、コカビエルの件は済まなかったな。あれはあいつの暴走だったんだ……と、俺が言ってもそう簡単にお前らは信じないだろ?」

 

「ああ。あれは我々をここに集めるための罠ではないかと今でも怪しんでいるよ」

 

「うんうん。アザゼルちゃんは信用出来ないからね★」

 

サーゼクスにセラフォルーがアザゼルに疑惑の目を向けていた。

 

「まったくこれっぽっちも信用されていないんだな。それで北田舎のじじいの代理のお前はどうなんだ?」

 

アザゼルだけはなくミカエルもサーゼクスもセラフォルーも一誠へと視線を向けたが、一誠は腕を組んでいるだけでこれまで一言も喋ってはいない。

目を瞑りただ椅子に座っているだけだった。そして口がついに開いた。

 

「…………ぐぅ…………」

 

一誠はいびきをかいていた。そう、一誠は話を聞いていたのではなくただ寝ていただけのだ。

誰もその事に気が付いていなかった。誰もが唖然としていた。大事な会談で寝ていたのだ。それは唖然としてしまう。

 

「い、いい加減にしろ!?一誠!!!」

 

「……何だ?会談、終わった?ふぁ~……」

 

一樹の声で起きた一誠は腕を思いっきり伸ばして固まった筋肉をほぐしていた。

 

(ふざけるなよ!?)

 

一樹はそんな一誠の態度に今にも殴りかかろうとした。

 

「お前は分かっているのか!?この会談に来たんならふざけるなよ!!」

 

「……別にふざけてはいないさ。ただ、この会談は三大勢力同士の問題であってユグドラシルには直接的な問題はない。むしろこっちへの言い訳を聞きたいものだな?」

 

「な、何だと!?」

 

「―――それと下級悪魔風情が組織のトップの会談に口を挟むなよ」

 

「っ!?」

 

一樹は一誠が向けた殺気に後退りをしてしまった。そして一誠は他の勢力のトップに顔を向き直した。

 

「俺がここに居るのは三大勢力が今後、どのような対応を取るのかを見届けるためだ。ここでそっちから何かを提案しても受けるつもりは最初から無い」

 

「いいのか?お前がそんな事を決めて?」

 

アザゼルはもちろん、ミカエルもサーゼクスも思っていた。一誠のはっきりとした物言いに。

 

「ああ。そのために俺はオーディン様からこれを預かっているのだからな」

 

「そいつは……?」

 

アザゼルは一誠が置いたアタッシュケースに注目した。そのまま一誠はテーブルにアタッシュケースを開いた。そこには一本の槍が収められていた。

 

それは主神の槍、名をグングニル。

 

この槍は決して的を射損なうことなく、敵を貫いた後は自動的に持ち主の手もとに戻る。また、この槍を向けた軍勢には必ず勝利をもたらすと言われている。

一誠はロスヴァイセから授業参観前に渡されたのがこれだ。

 

「まさか北田舎のじじいがそれを誰かに預けるなんてな……それだけお前さんを信頼しているんだな」

 

「私も驚きです。主神とは過去、何度か会った事がありますが、まさか自分の武具を少年に持たせるなど……」

 

アザゼルに続き、オーディンと何度か会っているミカエルも驚いていた。それだけオーディンがグングニルを一誠に預けた事が信じられなかったのだろう。

 

(ふざけるなよ!?ふざけるなよ!?ふざけるなよ!?)

 

その中で一樹だけは違う感情に支配されたいた。それは怒りだ。『原作』を知る一樹はこれから何が起るか知っている。だが、それが狂い始めていると最近、思ってきていた。

しかし本当に狂い始めていたのは随分昔なのだが、一樹はまったく気付いてはいない。

 

「……まあ、あのじじいもいつまでもそのままとは行かないか」

 

アザゼルは頭を軽く掻きながらそう言った。変わらないものなど無いと言うかのように。

 

「……なら我々も変わるべきだと?」

 

「そうだぜ、ミカエル」

 

ミカエルの質問にアザゼルは即答した。

 

「『神』がいなくても世界は回る……って、事だよ。だから俺はお前らに提案する。三大勢力の同盟を!」

 

「同盟、ですか?確かにこのままではいられない事は薄々、感じていました」

 

「それは確かにいいかもしれない。いがみ合ってもいられないからな」

 

「うんうん。同盟賛成だよ★」

 

アザゼルの提案にミカエル、サーゼクス、セラフォルーは乗り気であった。これまでに無い事が起こった以上、今のままではいられない。

それは三大勢力のトップして考えた結果だった。彼らは変わる事を選んだ。それがいいのか悪いのかはまだ誰にも分からない。

 

(変わるか……人外って存在は神も含めて面倒な……)

 

一誠は彼らの選択にそれと言って興味が無かった。それもそのはずだ。所詮、彼らの問題であって一誠の問題では無いのだから。

ぼんやりと一誠が見ていると不意にある方向を向いた。その視線の先には丁度、オカ研の部室があった。

 

(何だ?これは……『何者』かの力が膨れ上がっている?)

 

その瞬間だった、会議室に居た何人かの動きが完全に止まっていた。まるでビデオの一時停止をしているようだった。

 

「どうしたんだ?そいつらは?止まって見えるが?」

 

「見えるんじゃ無くて実際に止まっているんだよ」

 

一誠の疑問にアザゼルが答えてくれた。一誠は部屋の中をぐるっと見渡した。止まっていないのはゼノヴィアと三大勢力のトップとリアス、一樹、佑斗くらいしか動いてはいなかった。

止まっているのは朱乃、アーシア、ソーナとシトリー眷属が全員に部屋を警護していた三大勢力の兵士だった。

 

「これはどうなっているんだ?」

 

「襲撃だよ。俺達のやろうとしている事が気に食わない連中のな。それにこれはグレモリー眷属のハーフ吸血鬼の神器の『停止世界の邪眼』の力だな。こいつをどうにかするには本人をどうにかしないとな」

 

「なら部屋ごとそいつを消した方が早いな」

 

「止めろヴァーリ。同盟を提案しておいていきなりそれは亀裂を生むだろうが!」

 

ヴァーリの提案を即座にアザゼルが止めた。確かにその方法ならすぐに片付くが、それでは悪魔側との有益な関係はもう二度と築く事は出来無いだろう。

 

「イッセー。我々はこのままで良いのか?」

 

「ああ。これはどう見ても悪魔側の落ち度だ。向こうがしっかりと対処するだろ」

 

動かない一誠にゼノヴィアはどうするか聞くと、一誠は悪魔側の問題だからと動かないと答えた。

 

「貴方に言われるまでもないわ!行くわよカズキ!」

 

「はい!部長!」

 

リアスと一樹は『悪魔の駒』の力の応用の『キャスリング』で小猫ともう一人の眷属の下に行こうとしていた。

そして、リアスと一樹は準備が整うとすぐに眷属の下に向かった。

 

「面倒だがやっておくか……『フェニックス・ボーン』」

 

リアスと一樹が部屋から居なくなると一誠は『フェニックス・ボーン』を装着して『停止世界の邪眼』で動けなくなった者達に軽く触れて回った。

 

「『時よ』」

 

そう言って両手を合わせた。すると動けなくなった者達が動けるようになっていた。

 

「―――あれ?私は一体?」

 

「ソーナちゃん!」

 

何が起ったのか分からないソーナにセラフォルーは抱きついた。そんなソーナは困惑していた。彼女は自分や周りに何があったのか分かっていなかった。

そんな中でアザゼルは一誠に近付いた。

 

「おい、今何をしたんだ?お前さんは?」

 

「ハーフ吸血鬼がどんな時間停止の神器を持っていようと俺より格下なのは明白だからな。そいつの時間停止を俺の時間停止で上書きしてから解除しただけだ」

 

「だけって、お前さん……自分が凄い事をした自覚はあるのかよ?」

 

一誠がやって事は周りの者からすれば、とんでもない事なのだ。他者の力に干渉して上書き、そして能力の解除、と言った事は本来『理』に触れるという事なのだ。

ここに居る者でそれが出来るのは一誠以外居ない。

例え冥界最強の悪魔であるサーゼクスですらそんな事は出来ない。もちろんアザゼルにもミカエルにも出来ない。

 

「まったくオーディンのじじいはとんでもない奴を私兵にしたもんだ」

 

「そうですね。彼が敵になれば、我々に勝ち目は無いでしょう」

 

「悪魔側はまだ引き入れる可能性があるだろ?赤龍帝が兄らしいじゃないか」

 

「それは無理だよ。真神君はカズキ君の事を本気で殺そうとしたらしいから」

 

一誠の話を聞いたミカエル、セラフォルーは驚きを隠せ無かった。血を分けた兄弟で弟が兄を本気で殺そうとしていたのだ。どんな理由で兄を殺そうとしているか、と。

 

(あいつも身内を恨んでいるのか……)

 

その中、アザゼルだけは違った。一誠と似た存在が自分の近くに居るからこそ、アザゼルは一誠に複雑な感情を持った。

アザゼルはヴァーリと一誠を重ねて見ていた。

 

「ゼノヴィア。いつでも戦える準備をしていろ」

 

「戦うのか?イッセー」

 

ゼノヴィアは自身の得物であるデュランダルを構えた。その時一誠は外を見ていた。すると、外には無数の魔法陣が現れ、そこから童話の魔法使いのような格好の者達が次々と出てきた。

その中に一人、悪魔の翼を広げた褐色の女悪魔が居た。

 

「さあ!私から奪ったものを返してもらおうかセラフォルー・レヴィアタン!!!」

 

四大勢力の会談は更なる混沌へと進もうとしていた。


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