ハイスクールD×D  一誠の魔神伝説    作:新太朗

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買い物と白龍皇

「ここがデパートか。大きいな!」

 

「そうだな。俺はここには滅多に来ないからな」

 

天使、堕天使、悪魔、ユグドラシルの四つの勢力が会談をする日が数日に迫ってきている日に一誠とゼノヴィアは駒王町の大型デパートに来ていた。

二人はあるものを買いにこの大型デパートに来ていた。

 

「しかし二人揃って水着を持っていないとはな」

 

「イッセーはてっきり持っているものかと思ったのだな?」

 

「俺はユグドラシルに居た時から空いている時間は『ボーン』の使い方や料理の勉強していたな。そういうゼノヴィアは何していたんだ?」

 

「私か?私は鍛錬だな。魔獣や悪魔などに負けないような」

 

「そうか」

 

二人が話していると目の前から一組の男女が近付いてきた。どちらも金髪の持ち主だ。

 

「ゼノヴィアさん!」

 

「待たせたな。アーシア」

 

「やあ、イッセー君」

 

「よお、木場」

 

近付いて来たのはアーシアと佑斗の二人だった。一誠としても好んでグレモリー眷属と関わろうとは思わなかった。

 

(……でもこの二人は別なんだよな。残りがな……)

 

一誠の中でアーシアと佑斗だけはそれなりに仲良く出来ると考えていた。主であるリアスと一樹、朱乃の三人とは仲良く出来ないと分かっていた。

しかし小猫だけがどちらでもない位置になっていた。

 

一誠は水着を買うに当たって自分ではどう選べばいいのか分からなかった。しかしそれを相談する友人は一誠にはいなかったので木場に頼んだのだ。

その話を聞いていたゼノヴィアが『ぜひ自分も』と言ってきたのだ。

しかし佑斗は男性だ。女性の水着を選ぶ事など出来ない。そこで佑斗はゼノヴィアと接点のあるアーシアに協力を求めたのだ。

 

「それでイッセー君はどんな水着がいいか、聞かせてくれないかな?デザインとか」

 

「ゼノヴィアさんも言ってくださいね。がんばって選びますから!」

 

「そうだな……とりあえず、丈夫なので」

 

「うん。私もイッセーと同じで丈夫なのがいいな。コガビエルが攻撃して破れないくらいのを」

 

「「…………」」

 

佑斗とアーシアは二人が求めている水着のリクエストを聞いてあ然としていた。最初の要求が丈夫な事となのだから仕方がない。

まさか二人がデザインよりも丈夫なものと言うのを予想していなかったからだ。

 

「……うん。アーシアさん、頑張って選ぼうか」

 

「……はい。ゼノヴィアさんが言う丈夫な水着があるといいのですけど……」

 

佑斗とアーシアはある種の脱力感に悩まされていた。このデパートに二人が求めているものが果してあるのかどうか。

 

 

 

 

 

「それじゃここで一端、別れてから後で合流と言う事で」

 

「ああ、分かった。ゼノヴィア、また後でな」

 

「ああ。それではアーシア、期待しているぞ」

 

「は、はい!任せてください!」

 

四人は男女に別れてそれぞれの水着を見ていた。

 

「イッセー君。聞いてもいいかな?」

 

佑斗は気になった事を一誠に質問した。一誠は首を傾げた。

 

「?別にいいぞ。何が聞きたい」

 

「どうして急に水着を買おうと思ったんだい?」

 

「実はオーディンの爺さんが日本の夏がどんなものか知りたいとメールが着たんでとりあえず水着の写真でも送っておけばいいかと思ってな」

 

「そ、そうなんだ……」

 

佑斗はそれが間違っていると気付いていた。水着の写真を送っただけで日本の夏を教えられる訳がないと。

しかし佑斗は指摘しない。真剣な表情で水着を選んでいる一誠に言うのが馬鹿馬鹿しくなったからだ。

 

「……どうした?」

 

「え?あ、いや……何でもないよ。それで気に入ったのはあったかな?」

 

「ああ、これが一番いいと思うな」

 

一誠が選んだ海パンはオーソドックスで特に変わった物ではなかった。

 

「いいと思うよ」

 

「ああ。それじゃ買ってくるか」

 

「いいのかい?他にも色々あるけど?」

 

「……ああ。『あんまり待たせる』と悪いからな」

 

一誠の言葉に佑斗は首を傾げた。一誠は一体誰を待たせているのか。その言葉は佑斗に向けてでない事だけ分かった。

その後、ゼノヴィアとアーシアと合流してからファーストフード店に入り軽く昼食を済ませた。

 

「今日はありがとな。木場」

 

「これくらい構わないさ」

 

「アーシアもありがとう。私だけではどう選べばいいか分からなかったからな」

 

「そ、そんな私もゼノヴィアさんとお買い物が出来て、すごく嬉しかったですから」

 

一誠とゼノヴィアは佑斗とアーシアにそれぞれお礼を言った。そして一誠は佑斗とアーシアの後ろにあるデパートの柱を見ていた。

気になって佑斗は後ろを見たが誰もいなかった。

 

「いい加減、隠れていないで出て来たらどうなんだ?」

 

一誠がそう言うと柱の影からリアス、一樹、朱乃、小猫が現れた。

 

「部長……どうして?」

 

「カズキさんも……」

 

佑斗とアーシアは驚きを隠せなかった。まさか、自分達の主や仲間達がコソコソ隠れて自分達を監視していたとは思ってもいなかったからだ。

 

「……どういうつもりかしら?真神一誠。私の可愛い眷属を勝手に連れまわすなんて!」

 

「きっと、アーシアと木場はこいつに洗脳されているんだ。待っていろ、二人とも。すぐに解放してやるからな!!」

 

「確かにカズキに言う通りね。でないと二人が彼と行動するはずがないわ!」

 

リアスと一樹は自分達に都合がいいように解釈していた。佑斗は違うと言うとしたが止めた。

 

(今の二人に言ってもダメだなね……)

 

リアスと一樹の二人は誰が何を言っても聞く耳を持たない事は誰から見ても明らかだった。それからも二人は一誠に罵倒暴言を吐いたが、一誠はまったく聞いていなかった。

それどころか一誠はリアス達など見てはいなかった。さらにその後ろを見ていた。

 

「俺は別にお前らに言った覚えはない。お前らの後ろの奴に言っただけだ」

 

「―――はぁ!?後ろだと!?」

 

一樹は後ろを振り返って見るとそこには一人の少年が立っていた。一樹は彼が誰か知っていた。

 

(どうして!?こいつとは学校で会うはずなのに!?)

 

少年は不敵に笑いながら近付いて来たが、一樹の横を素通りして一誠の前に出た。

 

「こうして会うのは初めましてだな、真神一誠。それとも『魔神イッセー』と呼んだ方がいいのかな?」

 

「どっちでも好きに呼びな、白龍皇。そう言えば、名前を聞いていなかったな」

 

「俺の名前はヴァーリだ」

 

少年―――白龍皇のヴァーリは周りの者達など気にしていないように一誠に話し掛けていた。実際にヴァーリの目には一誠しか映っていなかった。

 

(ふざけるなよ!?またも『原作』に無い展開だと!?)

 

だが、一樹はそれが許せなかった。本来なら赤龍帝の自分を見ているはずのヴァーリが自分が一番嫌う一誠しか見ていないのだ。

 

「俺を無視するな!?ヴァーリ!」

 

「―――黙っていろ」

 

「っ!?」

 

一樹はヴァーリの肩を掴み振り返そうとした瞬間、ヴァーリが一樹に殺気をぶつけた。それだけで一樹は動けなくなった。

それだけ一樹とヴァーリの差があるという事だ。

 

「ここじゃ、まともに話せ無いな。ゼノヴィア」

 

「ああ」

 

ゼノヴィアは一誠の肩に手を置いて、アーシアの方に顔を向けた。

 

「アーシア。今日はありがとう。君との買い物はとても楽しかった。よかったらまた付き合ってもらっていいか?」

 

「は、はい!もちろんです。私もゼノヴィアさんとまた買い物したいです!」

 

一誠はゼノヴィアが別れの挨拶を済ませたのを確認してからヴァーリの腕を掴み、『ウロボロス・ボーン』を出した。

 

「転移」

 

「―――待ちなさい!」

 

一誠とゼノヴィア、ヴァーリはリアス達の目の前から消えた。一歩、遅くリアスの手は一誠を掴む事は無かった。

リアスは拳を握り締め、佑斗とアーシアから事の経緯を聞き出した。そして二人に強めの口調で言い放った。

 

「―――今後、彼との接触を固く禁じるわ!これは命令よ!!」

 

アーシアは悲しい顔になり今にも泣きそうになっていた。元教会に属していた事もありゼノヴィアとは話が合うと分かったからだ。

それにまた買い物の約束をしたが、それが出来ないと思うと泣きそうになったのだ。しかしアーシアはグッと泣くのを堪えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠は『ウロボロス・ボーン』でゼノヴィアとヴァーリを連れて自宅まで転移した。

 

「……ここは?」

 

「俺達が暮らすしている家だよ。まあ、上がって行けよ。飲み物くらい出すぜ」

 

ヴァーリはいきなり転移したのに驚いたが、一誠の後に続いて家に上がって客間に通された。

ゼノヴィアは中庭に出てデュランダルを出して素振りを始めた。

 

「ヴァーリ。お前、コーヒーは砂糖とミルクはどうする?」

 

「どちらとも貰おう」

 

一誠はヴァーリの前にコーヒーを差し出した。一誠とヴァーリはコーヒーを飲み始めた。そして一誠の方から話を切り出した。

 

「それにしても良かったのか?」

 

「何がだ?」

 

「赤龍帝との戦いだよ」

 

「……ああ。その事か」

 

一誠の質問にヴァーリは素っ気なく答えた。その事に一誠は疑問に思った。

 

(興味がないのか……?)

 

本来、二天龍はお互いを求めて殺し合うものだ。どちらが強いかを競うように。だが、ヴァーリは今代の赤龍帝の一樹にまったく興味が無い様に一誠には見えた。

実際にヴァーリは一樹に興味は無い。

 

「今代の赤龍帝はあまりにも弱い。あれは一般人が悪魔に転生しただけで、特に興味は無い。俺の興味は君くらいだよ」

 

「俺にな……」

 

「アザゼルや他の幹部達から噂は聞いていたからな。『北欧最強の魔神イッセー』と言う噂が出回った時、幹部共はオーディンの流したデマと言っていたが、アザゼルだけは違った。『あのオーディンがそんなデマを流すはずが無い』と……」

 

「アザゼル総督が……」

 

『神の子を見張る者』でこの噂を信じているのはアザゼルと副総督のシェムハザだけだった。

幹部の見解は半分がデマ、残り半分が興味が無いと言うものだ。

 

「それで?お前はどうなんだ」

 

「俺も始めはデマだと思ったが、アザゼルの話を聞いても半分はデマだと……だが、コカビエルの一件でそれは本物に変わったよ。君は間違いなく強い!俺よりもな!アルビオンもこれほど強い者は神でもそうはいないと言っている」

 

「『白い龍』が……それは光栄だな。伝説の二天龍の片割れに絶賛されるとはな」

 

「アルビオンは戦うなと言うが俺は今すぐ君と戦ってみたいと思うが、君はどうだろうか?」

 

「ほう……」

 

ヴァーリはギラギラとした目を一誠に向けた後、自分が出せる殺気を一誠にぶつけた。それだけで家が軋み始めた。

それはヴァーリから一誠に向けての挑発だった。

しかし一誠にとってヴァーリの殺気でも恐れる必要が無かった。それでもヴァーリは一誠と戦ってみたと思っていた。

『白い龍』アルビオンがどんなに止めようともだ。

 

「くくくっ……いいね」

 

一誠は思わず笑ってしまった。一誠はこれまで悪魔、堕天使、吸血鬼、魔獣と様々な存在と会って来たが、そのどれもが一誠の『力』の一端を感じただけで尻込みして自分から戦おうとするものはいなかった。

 

(挑戦されているのか……意外に悪くは無いな)

 

挑まれる事、その心地よさに一誠は更に笑みを浮かべた。

そして今、北欧最凶の魔神と歴代最強の白龍皇の戦いの幕が切って落されようとしていた。

 


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