ハイスクールD×D  一誠の魔神伝説    作:新太朗

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新年明けましておめでとうございます。

今年も頑張って更新していきますのでどうぞよろしく。

では、どうぞ。


驚愕と真実

コカビエルは恐怖していた。かつてこれほどの恐怖を感じた事がなかったと言えるだろう。目の前の少年が放つ魔力は自分すら簡単に超えていた。

一歩、一歩と近付いてくる一誠にコカビエルは後退りをした。

 

(俺が恐怖しているだと!?)

 

コカビエルは自分が後退りした事に怒りを覚えた。コカビエルは一誠を睨み付けた。それは鬼の形相と言ってもいいくらいの顔をしていた。

 

「どうした?来ないのか?大口を叩いていた割には小物だなコカビエル」

 

「っ?!黙れ餓鬼が!!調子に乗るなよ!!!」

 

コカビエルは一誠に向けてまたしても光の槍を投げた。先程のとは一回り大きい槍だった。

一誠は手を前に突き出して魔法陣を展開した。槍は魔法陣に飲み込まれた。

一誠は出口をコカビエルの背後に展開した。このままいけば、槍が背中から刺さりコカビエルは死んでしまう。

 

コカビエルは一誠が自分の背後に魔法陣を展開すると予想して……避けた。槍はそのまま一誠に再び向かっていた。コカビエルはニヤついていた。

このまま行くと槍は一誠に直撃してしまう。だが、一誠は避けるわけでも魔法陣を展開して別方向に飛ばそうともしなかった。

 

「そのまま死ねぇ!!クソ餓鬼がっ!!」

 

槍は一誠を直撃した。身体は仰け反り、そのまま倒れるかと思われた。しかし上半身が仰け反っただけで一誠の位置は動いてはいなかった。

一誠は身体を起こしコカビエルを見て、先程の槍が当たった辺りを触って確認した。

 

「なるほど、コカビエルでは俺に傷一つ付けられないか。まあ当然、か」

 

「な、何だと……?!」

 

コカビエルはそれ以上言葉が出なかった。自分の最大力で放った光の槍が無傷に終わったのだ。これほどの出来事は過去に例がない。

 

「真神君……」

 

「木場か。何だ?その剣は」

 

コカビエルと向きあっている一誠に佑斗は近付いて来た。一誠は佑斗が持っていた剣に興味が湧いた。白と黒の二色が混ざり合ったそんな剣をしていた。

 

「これは僕の『禁手』の『双覇の聖魔剣』だよ。これのおかげでみんなの仇が取れたんだ」

 

「そうか。お前の復讐は終わったのか」

 

一誠は近くで倒れているフリードとバルパーを見た。フリードは剣で斬られていたが、バルパーは身体を何かで貫かれた跡が見られた。

フリードは佑斗が、バルパーはコカビエルが殺していた。

 

(ああ……肝心な所を見逃したな)

 

一誠としては佑斗が二人を斬った場面を見逃した事を後悔していた。気持ちを切り替えてコカビエルを倒そうとした時、イリナとゼノヴィアの二人が一誠の隣に立っていた。

 

「イリナ、ゼノヴィア。あまり無茶をするな。傷だらけじゃないか」

 

「そんな事を言ってられないわ。私達は教会の使徒!主が見ている中、敵を前に無様な所なんて見せてられないわ!」

 

「ああ、イリナの言う通りだ!主が見守っている限り我々は戦う事が出来るのだ!!」

 

イリナとゼノヴィアは一誠の心配を気にせずにコカビエルに自身の得物を向けていた。イリナはゼノヴィアから借り受けた「破壊の聖剣」をゼノヴィアはエクスカリバーではない聖剣を向けていた。

ゼノヴィアが向けている聖剣はデュランダルだ。英雄ローランが持っていた聖剣でその切れ味はエクスカリバーを凌駕する。

 

(奥の手がデュランダルか……まあ、エクスカリバーよりかはマシか)

 

エクスカリバーより切れ味のあるデュランダルならコカビエルを斬れると考えたようだ。しかし魔物や悪魔なら兎も角、堕天使にはあまり期待できない。

それでも単純な攻撃力はエクスカリバーより上だろう。

 

「ハハハハハハッ!!……貴様達の信仰か……仕えるべき主を失ってもよく戦うものだな?」

 

「何?……コカビエル!主を亡くしたとはどういう事だ!!」

 

コカビエルの言葉にゼノヴィアは声を荒立てた。

 

「なんだ、知らないのか?いや、知らないのも無理はない。『神の不在』など信奉者であるお前達、教会の者に聞かせられないからな!」

 

「……そんな、主はお亡くなりに、なったの?私達の今までの信仰は?奉仕は?何だったの?違う、違う、違う……」

 

コカビエルが語った真実に一番衝撃を受けたのはイリナだった。彼女の心は神への奉仕または信仰によって出来ていた。

そこに主―――『神の不在』を知れば、その心は壊れるのは必然だろう。その場に座りこんで小さい声で『神の不在』を否定していた。

 

「イリナ!貴様のような穢れた存在の言葉など私は信じないぞ!!コカビエル!」

 

ゼノヴィアはコカビエルの言葉を否定する事でなんとか精神を保っていた。コカビエルは一誠を見て、嗤った。

 

「ならば、お前の隣の男にでも聞いたらどうだ?オーディンの私兵なのだろう?もしかしたら聞いているかもしれないぞ?」

 

「真神一誠。先程のコカビエルの言った事は真実なのか?主は……神がお亡くなりになったのは……」

 

ゼノヴィアは今にも泣きそうな顔を一誠に向けた。一誠は『ボーン』を纏っているので表情は分からないが視線をゼノヴィアに向けた。

 

「……ああ。コカビエルの言っている事は事実だ。お前らの言う、『聖書に記されし神』は先の三大勢力の戦争中に二天龍を封印する際に魔王共々死んだらしい」

 

「……そんな、主は居られないのか……だったら私の信仰は、なんだったのだ……」

 

一誠から『聖書に記されし神』が死んだ事を聞いたゼノヴィアはイリナと同様にその場に座り込んでしまった。

その目からは生気が無くなっていた。

 

「それで、コカビエル。俺はまだお前の目的を聞いてはいないんだが?何の為にここまでのことをした?」

 

「ふんっ!そんなのは簡単だ!先の古の大戦の再現よ!次こそ我ら堕天使が最強であると示すのだ!魔王の妹が二人も殺されれば、魔王も黙ってはいる事はないだろう!」

 

「―――最強だと?堕天使風情が!調子に乗るなよ!」

 

「ぐはっ?!」

 

コカビエルは顔面を殴られ校舎に吸い込まれるように飛んで行った。飛ばされたコカビエルは瓦礫の中から出てきて一誠を見た。

 

「クソ餓鬼がっ!!だが、貴様といえどバルパーが仕込んだ魔法陣で死ぬがいい!!!」

 

「ふ~ん……あらよっと!」

 

今まさに術が発動しそうな魔法陣を一誠は地面から引っぺがした。しかも片手でだ。

 

「……な?!」

 

「そんな!?魔法陣を引き剥がすなんて!!」

 

コカビエルとリアスが驚いている間に一誠は魔法陣を完全に引き剥がしてしまった。一誠はそのまま『ウロボロス・ボーン』の空間転移で亜空間に仕舞った。

 

「これでこの街が消える事はないな」

 

「き、貴様!!よくも俺の計画を台無しにしてくれたな!!」

 

コカビエルは一誠に突撃したが、一誠はコカビエルの後ろに転移して頭を掴んでそのまま地面に叩きつけた。

 

「がはっ?!……き、さま……がっ?!」

 

一誠はコカビエルを地面に何度も何度も叩きつけた。それこそ、喋る暇さえ与えずに。

 

「クソがっ!!」

 

「おっと……」

 

コカビエルは一誠が地面に叩きつける瞬間を狙って、一誠の拘束を強引に引き剥がした。

拘束を解いたコカビエルは一誠に攻撃しようとしたが、一誠はどこにも見当たらなかった。

 

「ど、どこだ!?」

 

「―――一体、どこを見ている?コカビエル」

 

「何っ?!」

 

一誠はコカビエルの翼を両腕で抱え込むように掴んでおり、右足を背骨に合わせて乗せていた。

 

「お、おい。貴様、まさか……」

 

「どうやら、これから起る事はある程度分かっているようだな。せーの!」

 

一誠は声に合わせてコカビエルの翼を思いっきり引っ張った。

 

ぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶち……!!

 

「ぎあぁぁぁぁあぁぁぁ!?!?」

 

翼が引き千切られる音はコカビエルの絶叫でかき消えた。いかにコカビエルと言えど十翼が同時に引き千切られたら絶叫を上げざるをえない。

一誠はコカビエルから引き千切った翼をその辺に捨てた。するとクロがやってきてコカビエルの翼を食べ始めた。

 

「クロ。そんなゲスなカラスの翼を食べると腹を壊すぞ」

 

「クゥ~ン。……ウォン!」

 

「いい子だ。ケルベロスを全部倒したのか。流石だな、クロ。後で亜空間に入れておいてやるからな」

 

「ウォン!」

 

グラウンドにいたケルベロスを全て倒したクロは元気良く返事をした。そんなクロを一誠は優しく撫でた。クロも主人に撫でられるのを求めるように身体を寄せた。

 

「さて、コカビエル。お前の戦力はこれでお前だけになったな。それでも続けるか?今なら命だけでも見逃してもいいぞ」

 

「クソ餓鬼がっ!!この俺がっ!!『神の子を見張る者』の幹部のコカビエルが!お前程度の餓鬼に命乞いだと……!!舐めるなよっ!!!」

 

「……そうか。なら遠慮はいらんな。ここで死ね!」

 

「―――それはこっちが困るな」

 

一誠がコカビエルにトドメを刺そうとした、その時に空から声がした。その場にいた全員が空を見上げて見るとそこには白い全身鎧がいた。

そして一誠の目の前に『ドラゴン・ボーン』のカードが現れた。

 

(『ドラゴン・ボーン』がどうして?そう言えば、前にも似たような事があったな。もしかして白龍皇に反応しているのか?だとしたら前、反応したのはもしかして……赤龍帝か?)

 

一誠はこの街に戻ってきた日の事を思い出していた。そして何故、『ドラゴン・ボーン』があのような反応を見せたのかが分かった。

 

「……『白い龍』か。赤に惹かれたか……邪魔をするな!!」

 

コカビエルは満身創痍だと言うのに白龍皇に強気だった。

 

「邪魔?そんな死に掛けで何が出来るんだ?それにアザゼルからお前を連れ帰るように言われているんでな。一緒に来てもらうか」

 

「白龍皇。そいつは俺の獲物だ。勝手に連れて行かないで貰いたいが」

 

一誠はコカビエルを勝手に連れて行こうとしている白龍皇に殺気をぶつけた。

白龍皇も一誠の殺気を感じて危険だと判断したのか。少し距離を取った。

 

『無視か?白いの』

 

どこからか声が聞こえてきた。声の発生源は一樹の左腕からだった。そこには赤い篭手が見えた。

 

『なんだ。起きていたのか?赤いの』

 

先程の声に応えるかのように白い鎧―――白龍皇の鎧からも声が聞こえてきた。

 

『まあな。それにしても白いの。お前から感じていた殺気がまったく感じられないな?』

 

『何、お前以外に興味を持てるものを見つけただけだ。そう言う赤いのも感じられないが?』

 

『お前同様、俺も別の事に興味を持っただけだ』

 

『そうか。ここで我ら二天龍の戦いを始めたいが、どうもそういうわけにも行かないようだな』

 

『決着はまた、いずれと言うわけだな。白いの』

 

『そうなるな。赤いの』

 

赤い龍ドライグと白い龍アルビオンはまるで久し振りに会った友人なような会話をしていた。

それを聞いていた一誠は放心状態のイリナをお姫様抱っこで抱えた。

 

「ゼノヴィア。帰るぞ」

 

「か、帰るのか?」

 

「ああ、俺は白龍皇と戦う理由が無いからな。それに後の始末は向こうがしてくれるようだしな」

 

一誠はイリナを抱えて帰ろうとした。だが、コカビエルがそうはさせまいと行動をおこす。

 

「逃げるなっ!!餓鬼がっ!!」

 

「だから大人しくしていろ。コカビエル」

 

「がはっ!?」

 

しかし、コカビエルの攻撃は白龍皇に阻止された。一誠はそれを確認してゼノヴィアと共にその場から消えた。

白龍皇は気絶させたコカビエルとフリードを抱えて飛び去った。

残されたリアス達は暫くの間、ボケッとしたが、魔王の増援が来てからは学校の修復作業を手伝っていた。

後にこの事件を「聖剣事件」と呼称するようになって、一先ずの決着がついた。

 

 

 

 

 




次回更新は2月7日です。

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