ハイスクールD×D  一誠の魔神伝説    作:新太朗

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捜索と遭遇

真神家でカレーを食べていた、佑斗、イリナ、ゼノヴィアの三人は一誠の話を聞いて開いた口が塞がらなかった。

「不動」の存在である無限の龍神オーフィスと真正面から戦い引き分けたのだ。そもそもそんな事が出来る存在は「夢幻」を司る赤龍神帝グレードレッドだけだ。

 

「……オーフィスと引き分けたって……イッセー君って、何者?」

 

「何者と言われてもな」

 

イリナの問いに一誠は首を傾げるしかなかった。実際、「魔神」と言っている一誠ですら自分の正体を掴めないでいた。

一誠が「魔神」と言っているのは、ただオーディンに言われたからだ。一誠を保護した時にオーディンが一誠から出ている「オーラ」を見てそう判断したのだ。

だからこそ、一誠は自分が「人間」なのか「魔神」なのかは分からないでいた。

 

「……イッセー。我、帰る」

 

「そうか。また来いよな。次はハンバーグを作るからよ」

 

「……そう。分かった」

 

オーフィスはそれだけ言って立ち上がり家から出て行った。佑斗、イリナ、ゼノヴィアの三人はそれを黙って見ていた。

 

「それでお前ら二人はこれからどうするんだ?」

 

「え?何が?」

 

イリナはいきなりの一誠の話の切り替えについていけていなかった。

 

「お前ら二人の任務だよ。どう行動するんだ?」

 

「とりあえずは街の散策だな。恐らく我々を目にしたら向こうから出てきてくれるだろう」

 

一誠の問いかけに答えたのはゼノヴィアだった。一誠は首を傾げた。

 

「向こうから?ずいぶんと自信があるな。敵に心当たりでもあるのか?」

 

「ああ、向こうにはフリード・セルゼンがいる」

 

「フリードだって?!」

 

ゼノヴィアの心当たりに佑斗は思わず叫んでしまった。叫ばすにはいられなかった。

 

「木場。そいつに心当たりがあるのか?」

 

「あるも何も……真神君と会う直前まで戦っていたんだよ。そのフリード・セルゼンと」

 

「それは本当なの?!」

 

「間違いなのだな?」

 

イリナとゼノヴィアの問いに佑斗は首を縦に振った。その瞬間、イリナとゼノヴィヤの顔は険しくなった。

 

「それでそのフリード?って奴は何者なんだ?」

 

「……フリードは、はぐれエクソシストなのよ」

 

一誠の質問に答えたイリナの顔は少し暗くなっていた。イリナは一誠の顔を見て続けた。

 

「……フリードはとても優秀なエクソシストだったわ。でも任務中に一般人を殺害してしてしまって、教会から追放されたの」

 

「その後、奴は堕天使側に行ったと聞いている。そこでも色々と問題を起こしていることもな」

 

イリナとゼノヴィアはどこか暗い表情をしていた。

 

「そんな奴が今回の事件に関わっていると?」

 

「ああ。我々より先に日本に行った使徒と連絡が取れなくなる前にフリードを見たと言っていたらしい。それにそこの悪魔は戦ったと言っている以上間違いはないだろう」

 

一誠の問いにゼノヴィアは力強く頷いた。それから一誠達は明日の具体的な行動を話し合って明日のために眠る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、一誠は学校を休み佑斗と共に廃教会近くに集まっていた。一誠は佑斗の格好に心配そうな視線を送っていた。

 

「……何かな?真神君」

 

「いや、悪魔のお前が神父服を着て大丈夫なのか?消滅したりしないのか?」

 

「しないと思うけど……」

 

一誠と佑斗はイリナが用意した神父服を着ていた。これでフリードを誘き寄せる事になっている。

そして今いるのは一誠と佑斗の二人だけだ。イリナとゼノヴィアは一先ずリアス・グレモリーと今回のことを話し合ってから捜索する事になっている。そして効率を考えて二手に別れて探す事になっている。

 

(何と言うか金髪に神父服って、似合っているな)

 

一誠は佑斗の神父服を見た感想を言わないで心の中だけにしまった。今後も佑斗とは行動を共にする可能性があるので、一誠なりの配慮だ。

 

「それで僕らはどう探そうか?」

 

「そうだな……『聖剣』の気配を探しているんだが、この街には今、イリナとゼノヴィアが持つ三本しか感じないからな」

 

「……三本?ちょっと待ってくれ。君には『聖剣』の気配が分かるのかい?この街のどこにあるかどうか?」

 

「分かるが?それがどうかしたのか?」

 

佑斗は一誠がとんでもない事を言っている事に思考が追いつけないでいた。『聖剣』の気配を捉える事は佑斗でも難しくはない。

しかしそれはあくまで近くにある場合だ。佑斗でも街全体までは流石に分からない。

だと言うのに一誠はあまつさえ「明日は晴だな」と言うように言ったのだ。

 

(彼は自分が何を言っているのか、分かっていないのか?)

 

佑斗は一誠の発言に頭が痛くなるのを覚えた。これで大丈夫なのか心配になってきていたと思うほどに。

それから一誠を先頭に佑斗は街を散策した。

 

(こっちの方だな。妙な気配がするのは……)

 

しばらくしていると前から見覚えがある少年が近付いて、いや佑斗と一誠の方が近付いていると言った方が正確だろう。

 

「お~や~?そこにいるのは昨日俺っちがボコッボコッにした悪魔く~んじゃないですか!また、ボコッらにきたのかな?ギャハハハッ!」

 

「……フリード!!」

 

「ちょっと待て、木場」

 

「―――な?!」

 

フリードに斬りかかりそうだった佑斗を一誠は頭にチョップを喰らわして沈めた。あまりの威力だったのか佑斗は倒れてから起き上がる様子が見られなかった。

 

「……木場、すまん。強すぎた」

 

「…………」

 

佑斗が起き上がる様子がないので一誠は目の前の人物であるフリード見た。

 

(あれが『聖剣』か……まったく気配を感じないな。どうなっている?)

 

一誠はフリードが腰に帯剣しているのが『聖剣』だと見て判った。なのに『聖剣』の気配が掴めないでいた。それが何より一誠はそれが気になっていた。

 

「あれあれ~?君は~カズキきゅん―――ぐはっ?!」

 

「……あ、すまん。だが、お前が俺の事を一樹と言うものだから、つい」

 

フリードが一誠の事を一樹と言った瞬間に一誠はフリードに近付き顔面を殴った。一誠にとって禁句と言ってもいい事をフリードは言ってしまった。

一誠にとって一樹と間違われる事は何より屈辱的な事なのだ。だからフリードが一誠の事を一樹と間違えた時に思わず顔面を殴ったのだ。

 

「……マジ、か…………」

 

フリードは一言だけ言って佑斗と同じく気絶した。一誠はそれをぼう然と見ていた。

 

「……もしもし。イリナか?フリードを見つけたからこっちに合流してくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イッセー君!大丈夫?!」

 

「無事か?」

 

一誠がイリナに連絡して数分後、イリナとゼノヴィアは一誠に合流した。そして気絶しているフリードと佑斗の姿を確認した。

するとゼノヴィアが一誠にこの状況の説明を求めた。

 

「フリードが気絶しているのは分かるが、何故木場は気絶しているんだ?」

 

「ああ、木場もフリードも俺が気絶させた。木場は怒りで我を忘れていたからな。このままだと勝てないと思ってな。フリードは俺の事を一樹だと勘違いしていたようで、俺の事を一樹と呼ぶものだから顔面を殴ったら気絶した。以上」

 

「そ、そうだったのね」

 

「ふむ。中々、やるな。これで聖剣は回収できた」

 

「―――勝手に私の聖剣を持って行こうとしないで貰いたいね」

 

ゼノヴィアがフリードの聖剣を取ろうとした所、後ろから声を掛けられた。振り返ってみるとそこには一人の年配の男性が立っていた。

教会の関係者なのか白い服に身を包んでいた。

 

「な?!あなたは!」

 

「どうして貴様がここにいる!バルパー・ガリレイ!!」

 

イリナとゼノヴィアの驚きようは尋常ではなかった。一誠も男を見た。

 

(さっきのフリード?って奴と同じではないが、この男からも妙な気配がするな。数人の魂の欠片が集まったような?)

 

一誠がフリードを見つける事が出来たのはフリードの気配が妙だったからだ。そして目の前の人物からも似たような気配を感じていた。

一誠はイリナとゼノヴィアの驚きようから相手の相手の事を知っていると判断した。

 

「誰なんだ。この男は?」

 

「……この男はバルパー・ガリレイ。教会で昔、聖剣使いを生み出す計画の最高責任者だった男で『皆殺しの大司教』と呼ばれている」

 

そう、彼かこそが教会でかつて行われていた人工的に聖剣に適性して者を生み出す『聖剣計画』の最高責任者だ。

ゼノヴィアはバルパーを強く睨め付けていた。イリナも同様に睨んでいた。

 

「……そうか。その男が……!!」

 

「木場。起きたか」

 

気絶していた佑斗が目を覚ました。一度一誠を睨め付けたが、すぐにバルパーを睨め付けた。

そして『魔剣創造』で一本の魔剣を作りバルパーに先を向けた。

 

「誰だ。お前は?」

 

「昔、お前が殺し損ねた者さ」

 

「殺し損ねた……そうか!まさか生き残りがいるとはな!こんな極東の地で出会うとは驚きだな」

 

バルパーは佑斗が『聖剣計画』の生き残りであると分かると納得したのように何度か頷いた。そして視線をフリードに向けた。

 

「いつまで寝ている、フリード。さっさと起きろ」

 

「……へいへい。そんなに怒鳴んないでよ~バルパーのおっさん」

 

いつの間にか目を覚ましていてもフリードはふざけた態度をとっていた。だが、手にはいつの間にか抜かれていた二本の『聖剣』があった。

 

「それじゃ~これからクソ悪魔くんと教会のクソビッチ達をこの聖剣ちゃんでズタズタに切り裂いてやるよ~ギャハハハッハ!」

 

「フリード……!!」

 

佑斗は魔剣をフリードに向けて警戒していた。しかし目の前のフリードよりバルパーの事が気になって仕方なかった。

だが、それでも佑斗はフリードを警戒していた。

一度、負けてしまったのが大きいようでバルパーから視線をフリードに変えてからはフリードだけを見ていた。

 

「木場。そいつがお前の復讐するべき人間か?」

 

「……ああ、そうだ。あの男が僕の同士達を殺した。ここで同士の無念を晴らす!!」

 

「……そうか。だったら俺はそれを見届けないとな。見届けた先に俺の求める答えがあると思うからな」

 

一誠は佑斗の隣に立ちフリードとバルパーを対峙した。バルパーは一誠を見た。

4人の中で自分に関係があるとは思えなかった。聖剣計画の生き残りの佑斗、教会からの使徒のイリナとゼノヴィア。

その3人とは明らかに立場が違う事は見てすぐに分かっていた。

 

「ところで、そっちの少年は何者かね?聖剣計画の生き残りと言うわけでもないし、教会の使徒でもないのだろ?」

 

「ああ、俺は真神一誠。ユグドラシルの主神、オーディンの私兵をしている。よろしく」

 

この場において一誠ほど場違いな人物はいないだろ。まるで友人に挨拶するように気軽な挨拶をバルパーにしたのだ。

それが挨拶前の内容を分からなくしていた。

 

「……待て。お前のような餓鬼が北欧の主神の私兵だと……?」

 

「そうだけど?信じられなって顔だな、おっさん」

 

「ふん!そんなすぐにバレる嘘を言いおってからに……フリード!そこの餓鬼もまとめて始末しろ!」

 

「へいへい。分かったよ、バルパーのおっさん。それじゃあ、さっそく死ね!!」

 

バルパーは一誠の発言が気に入らずフリードに一誠もろとも3人を始末するように指示を出した。

フリードは自分が仕留める獲物が増えて、心底嗤っていた。

 

(あの顔は気に入らないな……)

 

フリードの嗤った顔を見て一誠は不快な気分になっていた。かつて一樹が自分に向けていた顔と同じだからだ。

一誠は気持ちを切り替えて迎え撃った。




次回更新は11月1日の予定です。

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