You Only Live Twice の奇想曲 作:飛龍瑞鶴
その力は本来、任務で幅広く使われるものであるが。
では、限られた場所での戦闘力はどうなのだろうか?
昼休みになると同時に私は武藤と不知火と共謀して、キンジを食堂に拉致する事に成功した。
三人でキンジを教室から連れ去る時に、一部の女子が「遠山くん総受け!」等と興奮気味に呟いていたが無視する。
食堂に向かう途中に、美香に連絡をして。菊代嬢の愚痴等を聞くようにお願いしておいた。
食堂についた我々は、思い思いの注文をしていく。
キンジは私の奢りと言う事で、食堂で最も高値で豪華な『武偵校御膳』を注文してきた。
私も美香が作ってくれた弁当を食べるだけでは気が引けるので、ウーロン茶とBLTサンドを注文する。
「笠原くん。その御弁当がいつもより手が込んでるね。もしかして、蒔田さんお手製?」
席に座るなり不知火が尋ねる。
確かに、蛸さんウインナーや、スモークサーモンの花など小技が尽くされた弁当は自作の弁当より豪華に見える。
「まぁ、そう言うこと」
少し、照れながら答える。自慢げに答えないのは、この手の事を見せびらかす感覚がないからである。
「もげろ。いや、轢いてやる」
「轢けるもんなら、轢いてみろ。その前に車ごと火星に吹き飛ばしてやる」
武藤の口癖に、こちらも
不知火は笑顔で何も言わず。ツッコミ役として、ほとんどの場合ツッコミを入れるキンジは朝飯も食べて無いらしく、素早く『武偵校御膳』を腹に詰め込んでいた。
武偵なら早飯が推奨されているが、にしてもその表情が必死なのはこの後も逃げ回る為にエネルギーを貯め込んでいるのだろう。
午後の授業で一番最初に遭遇しそうなのが、同じ
この辺りが遭遇の可能性があるんじゃないかと思うのだが、神崎嬢の行動を予測するには少し情報が足りない。
あと十数分の事であまり神経質になる事も無いので、友人たちと馬鹿話をしながら潰す事にする。
「笠原、お前昨日死んだんじゃないのか?死ね」
「死に損なってるなら。早く死ね!」
入るなり、
こういう風にマインドセットである種の感覚を麻痺させるのは個人的に気に入らない。
アフリカや中央アジアでの少年兵育成より遥かにマシだが。このマインドセットと法的拘束により、学生の段階で死者がでるんじゃないかと思う。
いや、『どんな精兵、雑兵でも弾は平等に当たり。何れ、弾に当たる』と言う話しもあるので、深く考える必要はないかもしれない。
それより、弾に当たる確率を低くする努力をするべきだろう。
―まぁ、ここの慣例だし―
「生憎、死神には嫌われてるんだ。お前たちの方が威勢がいいから。早く死んで
様々なバリエーションの『
美香はまだ来てない様なので、自分のガンケース入れた得物類の調整に時間を使おう。
ガンケースを開ける。
中身は結構な種類の銃が詰め込まれている。
・ワルサーMPL
・トルコのMKE社で生産されたG3A7
・アルゼンチン軍の元制式拳銃システマ・コルト・M1927
・ブラジル軍の元制式拳銃インベルM911
・スペインのスターモデルPD
・カナダのパラ・オーディナンス社製のパラ・オーディナンス P14
・米国コルト社純正、コルト・オフィサーズ
私の収集癖の為に色々な銃が詰め込まれている。使い慣れたのは、これとは別に携行している。
今回、コルト社の
それ以外にも、.45口径弾の
「おい笠原。お前指名で、上勝挑戦者や。早う来い!」
M1911系列の持ち込んだ銃を撃ち終わり。
いよいよ、MPLを試射をしようとしていた所に、
上勝とは、腕に覚えがある下級生が、上級生に勝負を挑むことである。
防大の事を『向こう側』に記憶から思い出されるほど、封建制な学校である武偵校は上級生は下級生に負ける事は許されない空気がある。
携帯している銃に二度の再装填分の訓練弾と、一回分の実弾を上着に仕込み。
シューティンググラスと耳栓をしたまま駆け足で
今回は銃撃戦が主体の様で、遮蔽物となるバリケードが各所に配置されている。
「早う、入れ」
着くなり、蘭豹に訓練場に押し込まれる。
「
なんとも威勢がいい。銃はもう抜いている、気が早い事で………右腕に持ってるのは…SIG Sauer P226。特殊部隊や警察でも採用されている良い銃だ。
「
ハリウッド制の映画の名台詞を吐き、銃を抜く。
引き抜いたのはS&W M360.M36を最新の素材工学技術で.357マグナム弾を撃てるようにしたものであり。日本警察では、材質を変更したM360J SAKURAを導入している。
「さぁ、存分に殺しあえ!」
蘭豹が愛銃のS&W M500を天井に向かって発砲。
それを合図に私と一年生は走り出した。
「うぉら!」
一年生に先に発砲させよう。上半身を上手く狙っている、しかし、P226の欠点を忘れている。
私は相手が銃を握る方向―つまりは右の遮蔽物に走りながら、相手の発砲タイミングと同時に、二発を相手が銃を握る腕を狙い撃ち遮蔽物に滑り込む。動きが止まると同時に、シリンダをスイングアウトさせ、撃針痕のある銃弾を排莢する。
ミリタリーグローブをしてなければ火傷をするところだった。
熱を持ったままの薬莢を遮蔽物から放り投げると、同時に遮蔽物から滑り出し。素早く膝撃ちの姿勢を作る。
投げられた薬莢が遮蔽物から飛び出すと、一年生のP226の銃口から発砲焔の舌が伸びだ。
薬莢に9ミリ弾が命中する音がする同時に、一年生の右手を狙いM360を撃つ。発砲と同時に一気に駆け出し距離を詰める。
「糞!」
M360の弾を避けようと一年生が姿勢を崩した瞬間、私は距離を詰める速度を殺さず。乱れた足の間に勢いよく伸ばした足を挟み込み、引き倒す様に足を引き寄せる。
一年生の手がM360を握る。
相手を引き倒す瞬間に銃把から手を放し、逆の手で特製のヒップホルスターに手を伸ばす。これには先端に鉄板が内蔵され、とっさにプッシュ・ロッディングができるように工夫されている。
ホルスターか内部に収められた。
そのまま一気に引き抜き、轢き倒れそうになった一年生の両膝裏に発砲する。
俯せに倒れた一年生の肩甲骨の間を強く踏み込む、降伏を促すために体重を一気に乗せる。
「ギ、ギブ」
「そこまでや。なんやつまらんな」
蘭豹が展開のあっけなさに不満げに試合の終了を宣言した。
「お疲れ、腕を磨いて出直してくれ。移動目標への命中率は中々だ。でもな、使ってる銃をもう少しよく知るべきだ。P226はトリガーが重い。それを体感で理解するまで撃つ必要があるな」
私はそう言うと、訓練場を後にする。
「良い動きだった」
「片山先輩ありがとうございます」
片山健二。
「今夜のクエストにお前の恋人同伴で参加しろ。伊達、星島、西城、小島、朝倉が参加する。詳細は放課後にメールで送る」
「わかりました」
返事を返す。片山先輩が招集しているメンバーは、
「激しい、討ち入りになるな…」
経験から来る確信が私にそう告げていた。
それなりに実力がある主人公。
その先輩方は規格外です。
次回もベストを尽くして書きますので、よろしくお願いいたします。