武林の誉れに恋しなさい!   作:水華

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プロローグの後編です。

武神では在りませんが、猿神 VS 神殺しのバトルです。

尚、8歳児のバトルですので本編での強さとイコールで無い事はご了承ください。


掌握ープロローグ

各々の自己紹介が終わった後、我慢出来なく成った悟空が切り出した。

「なぁジジイまだかよ、我は今すぐにでも始めたくて仕方ないのじゃ」

「やれやれ、少しは落ち着かんか猿!蓮明総帥見ての通り何じゃが小翠蓮とこの悟空で模擬戦をさせてはくれまいか?」

悟空の態度に溜息をつきつつも宋江は蓮明に模擬戦を提案する。

「模擬戦ですか、確かにその子もなかなかの強者、翠蓮の為にも成るでしょう」

「おぉ、では?」

「その申し出、承りましょう、翠蓮も良いな?」

「・・・承知しました、父上!」

【話しの流れ的に断れないじゃん!まぁ私の武術が何処まで通用するか気になってたし良いけどさ~】

自身の意志とは関係なく進む話に釈然(しゃくぜん)としないものの悪い話でも無いため承諾した翠蓮だった。

 

「へ~馬鹿猿が闘うのか、あの子ってそんなに強いの?」

「かなり気を抑えているのでおそらく」

「そうなんだ~良い技見れるかな?」

聴勁(ちょうけい)がそれ程得意でない史進(ししん)が疑問を呈し林冲(りんちゅう)がそれに答えた。

そして楊志(ようし)は翠蓮の技に思いを馳せる。

 

◆◆◆◆◆◆

 

場所を梁山泊の敷地内に有る広場に移して翠蓮と悟空の二人が対峙する。

翠蓮は八卦掌の基本的な構えの椅馬問路(いばもんろ)、対する悟空は左手に持った(こん)を左の脇に挟み、右手をだらんと脱力した独特の構えをとっていた。

「「・・・・・・」」

 

最初に仕掛けたのは悟空だった、翠蓮に向かって一足飛びで接近し(こん)による突きを放つ、それを翠蓮は青蛇伏草(せいじゃふくそう) 、前に出した左手の掌を返す動作で突きを左に受流し自身に向けた掌を戻す動作の手刀で首を狙うも悟空は側転の要領で避け右手を地面に着き蹴りを繰出したが、右腕の側面を滑らせるように蹴りを上に流し腕を外側から大きく回して脇腹に手刀を叩き込む野馬回槽(のまかいそう)で反撃したが、当る前に脚の振りと右腕の屈伸で後に跳んで躱したのだった。

「はははっ、八卦掌とはこうも厄介なものじゃったとはの~攻め切れんわい」

「そちらも素早い身のこなし、まるで猿ですね」

「いや~///」

【なぜ猿と言われて喜ぶ!】

翠蓮に猿と言われて嬉しそうに照れる悟空に内心でツッコミつつ構えを獅子抱球(ししほうきゅう)、左掌を返して上に向け右手の指先を相手に向ける様に頭上に掲げた攻めの構えにする。

「次は此方の番です!」

宣言と共に翠蓮が地を滑る様に進む哨泥歩(しょうでいほ)で近付き掌低を放つが棍で受止められるも其処で終らずに反対の掌で推し出すように放たれた黒虎推掌(こっこすいしょう)が悟空を捉えた。

「カハッ!?」

好機と見た翠蓮は震脚(しんきゃく)を踏み両手を掻き分ける様な動作の猛虎坐洞(もうこざどう)で悟空を懐を抉じ開け縦拳の黒虎出洞(こっこしゅつどう)を数発叩き込み左右の指を向い合せ掌を相手に向けた形の懐中抱月(かいちゅうほうげつ)で胸を強打し吹飛ばした。

「ハッ!!」

ドゴーン、と轟音と土煙を上げて吹飛んだ悟空だったが、手に感じた感触に違和感を覚えた翠蓮を油断無く懐中抱月の構えで立っていた。

 

『『『ポカーン・・・』』』

悟空が吹飛ばされたのを見て梁山泊の面々は呆けた顔をしており、蓮明に至っては翠鈴と重なって見えたのか冷汗を流していた。

「蓮明総帥、あの子は翠鈴の娘じゃな・・・翠鈴と重なって見えたわい」

そして、翠鈴と重なって見えたのは宋江も同じだった様だ。

 

「馬鹿猿が吹っ飛ばされたの始めて見たかも...」

「はい・・・とっても強いです」

「技は覚えられても、アタシに同じマネは無理だと思う...」

悟空に勝てた事の無い史進は未だに信じられない様だが、林冲は素直に賞賛し楊志も賞賛はするものの同じ技で同じ事が出来ない事実に悔しさを(あら)わにした。

 

暫くして土煙から飛出す何かがあった、それは空中に静止し笑い声を上げた。

「ははははははは!、ここまでやられたのは久々じゃ」

影の正体はやはり悟空だった、ただしその足元には金色の(もや)が漂っていた。

 

(くう)さんが本気になりました。」

林冲が空中に静止した悟空を見て呟いた、因みに(くう)とは悟空の愛称である。

「うん、金の雲(きんとうん)如意金箍棒(にょいきんこぼう)を使われたら空でも飛べない限り勝負にならないね。」

「なんだ、馬鹿猿の勝か~負けたらからかってやろうと思ったのに」

楊志が解説し史進は普段弄られる仕返しが出来ない事に残念がるが、どんな結果で在ろうと仕返ししても返討ちになるのはこの際置いておくとして、悟空の使った金の雲(きんとうん)は伝承に(なぞら)えた権能で足元に気で編まれた雲を作り縦横無尽に飛び回れる便利な技、錬度が上がればその加速度は神速に至が現時点では高速が限界だった。

 

「仕留めきれていないとは思っておりましたが・・・」

【何あれ!?、権能が使えるとか反則だよチートだよチート!】

感じた手応えから仕留めていない事は予想していたが、権能らしきものを使う悟空に内心で慌てる翠蓮だった。

内心が表情に出ないのは日頃の成果だが翠鈴には何故かバレるため余り意味が無いのだが・・・

 

「さて、翠蓮よ続きと行くかの」

悟空は棍を頭上でくるくると回してから振り下ろした。

「伸びろ如意金箍棒(にょいきんこぼう)!」

「!?」

危機感を抱いた翠蓮は直感に従い横に跳ぶ、その直後に先程までいた場所に衝撃が走った、見ると悟空の手に有る棍が伸びていた。

「ほう、初見で躱すとは思はなんだ」

「・・・何です、それは?」

【今如意金箍棒って言って無かった?如意棒かよ、何でそんなのが有るんだよ!!】

 

「我の武器じゃが?、あぁ伸びた事か気を使っただけじゃ、気にするな」

「...そうですか...」

【気って便利~、それと今の駄洒落かな?気にしないでおこう】

 

『『『・・・・・・』』』

「ゴホン、それにしてもあの悟空って子の気の量は異常ですね」

『『『無かった事にした!?』』』

本人が気付いているか分からないが、外野は駄洒落を無視して話を進めた。

「開放しているから分かるのですが軽く我々の10倍は有りそうですし、あの技に消費する気も相当なものになるはずでは」

「蓮明総帥のご慧眼どおりじゃ、猿・・・悟空は生れつき膨大な気を宿しておって体が石のようになっとった時期もあるが、今では有る程度制御出来とる、そしてあの技を使えてのぉまるでかの猿神じゃ」

「成程、それで孫悟空ですか」

「左様」

話を終えた蓮明と宋江は戦場へと目を向けた、其処では金の雲(きんとうん)で飛び回り如意金箍棒(にょいきんこぼう)を振回す悟空と回避に専念する翠蓮の姿があった。

 

「そらそら、逃げてばかりでは我は倒せんぞ!」

【くっ、何とか隙をつければ・・・】

痺れを切らした悟空が大きく振り被った。

【勝機!】

大技を出す動作に隙を見た翠蓮は軽やかな足取りで跳び上がり悟空の目前へと迫る。

「なっ!」「ハァ!」

そのまま黒虎出洞(こっこしゅつどう)の縦拳を腹部に放ち直撃するも悟空には効かず、今度は翠蓮が驚愕する番だった。

「!?」「なんてな、軽功(けいこう)には驚いたが此処(空中)では我の鋼の守り(はがねのまもり)は抜けまいて」

悪戯が成功した子供の様な笑顔で悟空は翠蓮の腕を掴み其のまま放り投げた。

 

ドゴーン、今度は翠蓮が土煙を揚げながら地面に激突した。

【くそ、先程の違和感はこれか!】

最初に吹飛ばした時に感じた違和感、その原因が判明し納得するが状況は(かんば)しくない、金の雲(きんとうん)で飛び回り中距離に対しては如意金箍棒(にょいきんこぼう)を伸ばして打撃を打ち込み、接近されても鋼の守り(はがねのまもり)にて防がれる。

これが地上であれば十分に発勁(はっけい)を練り上げて鋼の守り(はがねのまもり)を破ることも可能だが空中ではそれも叶わない。

【せめて、守りを突破出来るものが在れば・・・】

その時、パズルの欠けていた1ピースが嵌るように、ズレていた歯車が噛み合うかのような変化が翠蓮の中で起り、それの使い方を理解させられた。

【!?これは、何でこんなものが?いや、考えるのは後だな】

腕の力でその場から飛退き迫り来る棍を避けると軽功で土煙から出て其のまま悟空に迫り拳を振り被る。

「?それは効かんと言うたじゃろう」

再び殴り掛かる翠蓮に呆れながらもその腕を掴もうと手を伸ばしたが、掴む事は出来なかった。

「ハッ!」

ズドン!、大砲の一撃のような轟音を響かせ悟空は吹飛んだ、後に残された雲は空気に溶け込む様に消えて行く。

翠蓮は音も無く着地し両手を左右に広げ、掌を上に向けた構え大鵬展翅(たいほうてんし)にて悟空の跳んで行った方を睨む。

 

◆◆◆◆◆◆

 

二人の攻防、その一部始終を見ていた外野はまたしても大口を開けて唖然としていた。

『『『・・・・・』』』

 

「リン、今のって何が起きたの?」

「え、え~と、そのあの」

「あ、うんやっぱり良いや変態は?」

現状が理解出来ずに質問した史進だったが、てんぱる林冲を見て楊志に質問先を変えた。

「・・・判るけど解らない」

「それって...」

「うん、(くう)と同じ権能、模倣出来そうにない」

「「!!!」」

楊志の言葉に息を呑む林冲と史進、彼女達も常人には持ち得ない異能を持っているがその上には権能と呼ばれる神にも匹敵する力が存在していた。

そして楊志の持つ異能、模倣(もほう)は相手の技を理解し使用する事が出来るが、当然格上の権能を模倣することは出来ないのだ。

 

「ちょっと待ってくれ、家の翠蓮が権能持ち!?」

「なんじゃ蓮明総帥、その口振では小翠蓮は権能を持っていなかったか隠しとったようじゃのぉ」

権能の事で驚愕する蓮明に宋江が疑問を呈した。

「あぁ、翠鈴からは聞いてないし娘からも・・・」

「そうか、後で聞いてみる事じゃな、権能ともなると欲しがるやからも多いじゃろうしの」

「...そうします。」

 

◆◆◆◆◆◆

 

土煙が晴れ其処には多少ダメージはあるが、悟空が健在していた。

「カッカッははははは、我と同じ権能持ちで有ったか、油断したわい」

一頻り楽しそうに(わら)うと棍をくるくると振回して軽く演舞すると右手に持って地面に突き立てて名乗りを挙げた。

「姓は孫、名は悟空、字を美猴、斉天大聖の力と名を継ぐものなり!」

【なんかスイッチ入っちゃった!?、流的に名乗らなきゃかな?あとやっぱり権能だった!そして私も晴れてチート扱いかな、はぁ~】

「姓は羅、字は濠、名を翠蓮、飛鳳門(フェイフォンイェン)を継ぐものです。」

「ははっ、いざ尋常に」

「えぇ、参ります。」

どちらからともなく両者は前に出て交差した、悟空は気を巡らせ膂力を強化した棍と鋼の守りを駆使し翠蓮は権能によって上がった膂力と硬功(こうこう)によって固めた肉体で迎撃する。

しかし、ほぼ互角の応酬となるも技の衝突よりも威力で勝る権能の衝突による結果が重要になっており、翠蓮の拳が鋼の守りを抜けてダメージを与えた様で苦悶の表情を浮べほんの少し硬直してしまった。

そして、翠蓮もそんな隙を見逃すハズもなく勝負を仕掛ける。

赫々揚々(かくかくようよう)電灼光華(でんしゃくこうか)大力金剛神功(だいりきこんごうしんこう)!」

言霊により翠蓮の体が黄金に光るとそのまま、黒虎出洞(こっこしゅつどう)の拳を叩き込んだ。

「カハっ!」

数メートル程、悟空は地面に2本の線を描きながら後に追い遣られた。

「はーはー、クッ我のはぁはぁ、鋼の守り(はがねのまもり)を破るか、フー大したものじゃ」

「・・・・・・」

息を整えながらも賞賛する悟空を翠蓮は油断なく左手を右の腰付近に右の脇を締め掌を上にし指先を悟空に向けた天馬行空(てんまこうくう)の構えをとった。

「今ので仕留めるつもりでしたが、やはり美猴王は伊達ではありませんね」

「カカッ、成るのはこれからじゃがな」

翠蓮の賞賛に快活に笑い気を高める。

「さて、我はそろそろ限界じゃ次で決めるとせんかの?」

「...良いでしょう、最高の技を持って打砕(うちくだ)いて差上げましょう。」

悟空の提案に答えて気を高める、どうやら次の一撃で勝敗を決するつもりらしい。

「「・・・・・・」」

両者の気の高まりが最高潮に達した時、先に仕掛けたのは悟空だった。

 

「行くぞ翠蓮、巨身の法(きょしんのほう)!」

徐々に悟空の威圧が増して行き輪郭も大きくなって・・・とゆうよりも実際に大きくなっていた。

【え?、え~~~~!!、いやいや何でもありか!!】

5メートル程に巨大化したのを見て内心でツッコミんでいるが人の事はあまり言えない翠蓮だった。

「行くぞ~、龍穿棍(りゅうせんこん)!」

棍をドリルの様に回しながら突きを放つ、巨大化していることもあり穿(うが)つというよりは押し潰す様に迫るが翠蓮に届く事は無かった。

「な、なんじゃ~!」

悟空の突きは翠蓮が召喚した顕身、仁王尊の黄金に輝く腕に掴れていた。

大力金剛神功(だいりきこんごうしんこう)阿形(あぎょう)そして吽形(うんぎょう)!」

「くっ、離すのじゃ~」

悟空の棍は仁王尊が片割れ阿形(あぎょう)の両手でガッチリと掴れ微動だにしない。

「まだ完全に掌握しきれませんね制御が不安定です、しかし貴女を(ほふ)るには十分の様です。」

そして吽形(うんぎょう)が翠蓮の動作に合せて腰を落し右腕を引絞る。

崩拳(ほうけん)(とお)し!!」

人体の急所が1つ鳩尾を黄金の拳が貫く、凄まじい衝撃が悟空の背後に発生し付近を蹂躙(じゅうりん)する。

そして巨体は空気に溶け込むように霧散し通常サイズに戻った悟空が横たわっていた。

「フム勝負ありじゃな、勝者小翠(しゃおすい)・・・いや、勝者翠蓮(すいれん)!」

宋江は言い掛けた名前を言い直し勝者を告げた、翠蓮は気絶する悟空に向けて包拳礼をする、後に親友(ライバル)になる二人の初戦、その勝利は翠蓮が手にした。

 

◆◆◆◆◆◆

 

―蓮明side―

 

孫悟空 VS 羅翠蓮の戦い(※権能を駆使した大規模なもので決闘とは一線を(かく)す)が翠蓮の勝利で幕を閉じた後の出来事。

「林冲、史進、楊志、悟空の介抱をしてあげなさい。」

「はい、分かりました。」「たく、仕方ないわね~」「とか言って本当は心配な癖に」「ちょっと変態!」

宋江が3人組みに悟空の介抱を頼み林冲が快諾(かいだく)、史進もいやいやの様に振舞うが楊志にツッコまれていた。

 

「翠蓮、少し良いかね?」

「はい、何ですか父上?」

そして此処では宋江と蓮明による翠蓮への質問が始まっていた。

「先程の権能・・・恐らく金剛力士の仁王尊だと思うが何時から使えたんだね?」

「先程、悟空に吹飛ばされて倒れて居た時に頭に使用方法が流れて来ました。」

【なっ!?あの時に覚醒した?】

翠蓮の回答が予想外だったらしく蓮明は暫し硬直しており代わりに宋江が質問する。

「ほぉ、流れて来たとな?どの様な感覚じゃったかの?」

「そうですね・・・歯車が噛み合う、いやまるで忘れていた腕の使い方のような出来て当り前といった感じでしょうか?」

「成程の~、因みに他にも有るかね?」

宋江の目が怪しく光る、しかし其処で何かに気付いた蓮明が間に割って入る。

「宋江総頭領!」

「ほっほっ、ちょっとした興味本位じゃ、他意は無いわい」

胡散臭(うさんくさ)く笑う宋江に(いぶか)しげな視線を送りつつも蓮明も気にはなる様で翠蓮に視線を向ける。

「えっと、言っても良いのでしょうか、父上?」

「・・・あぁ、悟空ちゃんの権能を知って此方が秘匿(ひとく)する訳にもいくまい」

「なんじゃ、堅苦しいのぉもうちょい肩の力を抜かぬと禿るぞい」

「なっ!?、(やかま)しい!」

【まだまだ大丈夫・・・なハズ】

「クスクス、父上心配しなくともこの翠蓮、例え薄くなっても尊敬してますよ。」

「す、翠蓮!?」

「ほっほ、良かったじゃないか蓮明総帥」

蓮明が宋江と翠蓮に弄られたことで場の空気が和らいだ。

「さて、父上先程の回答ですが、恐らく先の大力金剛神功(だいりきこんごうしんこう)を含めて4つの権能を保有していると思います。」

「4つもか・・・ん?他の3つは如何した?」

「それが掌握出来ていない為か有るのは感じるのですが、使用は出来そうにありません。」

「成程のぉ、権能についてはワシ等よりも悟空に聞くのが良かろうて」

「良いのですか?宋江総頭領」

「なに、同盟相手への友好の印じゃ気にするでない」

謝謝(シエシエ)、宋江総頭領」

「何じゃ親子揃って堅いのぉ、わしの事はお爺ちゃんと呼んでもえぇんじゃよ?」

謝意を伝える翠蓮に朗らかに笑いながら話す宋江を見て蓮明は内心で関心と悔しさが渦巻いていた。

【さすがは梁山泊の古狸、何気ない会話で同盟の強化と恩を売ってきた!しかも知らなかったとは言え飛鳳門の最高戦力に好印象を与える狡猾さ】

宋江の計算され尽した会話に戦慄(せんりつ)を覚える蓮明だった。

 

◆◆◆◆◆◆

 

―悟空side―

 

そして時は経ち翠蓮達が17歳の頃の梁山泊にて、悟空が一人木の上で寝ていると中央の広場から大きな気の波動を感じて飛び起きた。

【おっ、来た来た♪】

嬉しそうな笑顔を見せて悟空はその場から消えた。

 

―広場side―

 

梁山泊の広場にて突如一人の絶世の佳人(かじん)が虚空より現れた。

「うむ、移動に掛かる時間も大分短縮出来ましたね。」

使用したのは縮地神功(しゅくちしんこう)神足通(しんそくつう)、父親に習った方術の縮地を翠蓮の馬鹿げた膨大な気で瞬間移動や長距離転移を可能とした武神の瞬間回復と同じ様な経緯で出来た技である。

 

「これは!?、竜吟虎嘯大法(りゅうぎんこしょうだいほう)!」

何かに気付いた翠蓮はその方向に向けて躊躇(ためら)い無く権能を放った。

「ス~イ~、ぶべら!?」

その方向から何かを叫びながら翠蓮に向っていた何者か・・・ぶっちゃけ悟空は翠蓮の放った権能の衝撃波を含む魔風に吹飛ばされてしまったが、これが彼女達の挨拶(あいさつ)なので気にしない事にする。

 

羅翠蓮の権能が1つ、竜吟虎嘯大法(りゅうぎんこしょうだいほう)、衝撃波と風を操る権能、其のままでも強大な威力を誇るがさらに(うた)にのせた言霊を唱えることで絶大な威力に強化される凶悪な仕様となっている。

 

(すい)~、いきなり吹飛ばすなんて酷いのじゃ」

何事も無かったかの様に起き上がって来た悟空に溜め息をつきつつ答えた。

「あの程度で(くう)、貴方の鋼の守り(はがねのまもり)()けるとは思っておりません、それに仮にもこの羅濠の親友(ライバル)たる者、常在戦場(じょうざいせんじょう)と心得なさい。」

「ぶぅ~翠は最近我に厳しいのじゃ~」

「・・・・・・」

8歳の時に出会ってからの9年間、翠蓮と悟空は事在る毎に模擬戦を重ねお互い高め合ってきた。

翠蓮は4つの権能を完全に掌握し、自身の武術との統合も出来ている。

悟空は美猴王の伝承に(なぞら)えた権能をほぼ掌握した。

そして二人は互いに愛称で呼ぶ様になっていた。

 

「うむ、来ましたか」

「へ?何がじゃ?」

「・・・(くう)よ、もう少し聴勁(ちょうけい)を鍛えてはどうです?私が指導してあげましょう」

そう言って両手に魔風を纏った翠蓮に悟空は言い訳をする。

(すい)落着いてくれ、鍛えて無い訳じゃないぞ、ただちょっと遅咲きなだけじゃ」

「...まぁ良いでしょう」

両手に纏っていた魔風を霧散させたのを見て安堵の溜め息をつく悟空に翠蓮が告げた。

「次に会う時にはきっと咲誇って居るのですね、とても楽しみです。」

【な、なんじゃと~!!】

悟空は内心で悲痛な叫び声を上げていた。

そして暫くして梁山泊の面々が姿を現した。

「あっ!やっぱり翠さんです。お~い」

「あっ馬鹿猿はもう着てる!?」

「フフフ、今度こそ翠のパンツを手に入れる!」

「この変態はまた無謀な事言ってる、そんな無駄に疲れること良くやるよ~」

「来ましたか、翠蓮!さぁ拳で語らいましょう♪」

上から林冲、史進、楊志そして面倒臭がり末っ子キャラの公孫勝(こうそんしょう)と口数が少なくクールに見えて内心熱血の武松(ぶしょう)の5人だった。

 

「皆、壮健でなにより、それと武松よ語らいは後です。」

「ムッ何か有るのか?ならば仕方ない」

「あぁ、(くう)そして皆よ私は暫く倭国(わこく)の天神館に行って参ります。」

『『『!?』』』

突然の翠蓮の報告に少し驚く面々だが、直に悟空が質問する。

「翠よ、出立は何時(いつ)じゃ?」

「来週になる、期間は1、2年ですね」

「そうか、まぁ寂しくなるが来る頻度が下がるだけじゃろ?」

「ふふ、えぇその通りです。」

朗らかに微笑む翠蓮、事実、翠蓮の縮地神功(しゅくちしんこう)神足通(しんそくつう)は自身の気を3分2程消費する事で日本と中国の間を渡る事が出来る準権能とも言えるものだった。

 

「だが暫くは会えないんだな、翠!行く前に私と勝負だ!」

改めて勝負を申し込む武松に苦笑いをしながらも応じる翠蓮しかし...

「じゃあアタシには翠のパンツを」「この痴れ者が!!」

隙在らばとパンツを付け狙う変態(楊志)折檻(せっかん)する。

【ダメだこの変態、早く何とかしないと】

「良いな~日本のカルチャーは進んでるんだよね、でも機械音痴の翠に頼むのは無理だろうし...」

面倒臭がりでニート予備軍の公孫勝は日本のカルチャーに思いを馳せていた。

 




やっぱり権能の掌握は格上との戦闘中ですよね~

それとマジ恋とカンピの世界をクロスさせた設定を軽くまとめます。
まずは権能!これは異能の上位互換としました。

次に神と神殺し、これは神の伝説や逸話などの伝承に準じる権能を保持して産まれる者を指し、神殺しは伝承とは関係なしに複数の権能を保持する者を指します。
造語(ぞうご)を作るなら神話伝承者と神話殺し?

それと原作キャラも一部設定を雑ぜます。
例えば林冲の異能が霊視(れいし)だったり史進が禍払い(まがはらい)だったりですね。

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