武林の誉れに恋しなさい!   作:水華

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分割した話しの後半です。


水上体育祭-午後の部、後半

4つのグループによる睨み合いは長くは続かなかった。

やはり最初に動くのは武神・川神百代、燕へと仕掛けたい気持ちも有るが、それよりも翠蓮への思いが(まさ)った。

 

「ハッ!」

先ずは開幕の一撃として正拳突きを放つが、翠蓮は防御の型、猛虎下山(もうこげざん)にて攻撃を受流す。

 

「まだまだー」

そのまま、ラッシュに入る、翠蓮も猛虎下山(もうこげざん)青蛇伏草(せいじゃふくそう)青龍返首(せいりゅうへんしゅ)などの多彩な八卦掌の技で迎撃するが。

 

「クッ!!」

左手の迎撃が追い着かずに、僅かに隙が生まれる。

 

「此処だ、蠍撃(さそりう)ち!」

黒虎推掌(こっこすいしょう)!」

百代の浸透勁を含む正拳突きを翠蓮は黒虎推掌(こっこすいしょう)で迎撃し、2人は同時に後方へと飛ばされた。

 

【内臓が少しやられましたか、全ては逃しきれなかったようですね】

「さすが羅濠、川神流蠍撃(さそりう)ちは内臓にダメージを与えるんだけどな~地面に逃した?」

 

「えぇ、その通りです」

受けたダメージを隠して、平然(へいぜん)(よそお)う。

 

「ハハハ、でもその左手、アテナちゃんにやられたな?」

「・・・何の事です?」

翠蓮は(とぼ)けてみせるが。

 

「うまく隠しているが、右より僅かに反応が鈍ってる、気の制限がルールだから回復も無い、さっきまで羅濠の相手はアテナちゃん、な?」

ドヤ顔をする百代に翠蓮は呆れる。

 

「戦闘には頭が回りますね、それを勉強でも発揮なさい」

「うっ、それは今は関係ないだろ!」

苦手な勉強の話が出て百代はたじろいぐも、(すぐ)に気を取り直し。

 

「さぁ2回戦と行こう!」

獰猛(どうもう)な笑みを浮べて()ける。

 

―燕side―

 

少し(さかのぼ)って、百代が翠蓮に仕掛けた直後。

 

【ん~モモちゃんは羅濠ちゃんの所に行ったか~じゃあ私は大和君かな?】

「アテナちゃんは少しの間、由紀江ちゃんを抑えてて、私は弁慶に行くよ」

「フム、心得た」

此処(ここ)からは回避しか出来ない大和を後回しにして、先に由紀江と弁慶を仕留める事にした燕はアテナに指示を出して自身は弁慶と対峙する。

 

「良いんですか、大和を放置しちゃっても?」

「ん~ホントは直に行きたいけど...見逃してくれないよね?」

 

「まぁ、そういう契約だし・・・けだるいけどね」

溜め息を吐きつつ、肩を(すく)めて見せる弁慶。

 

「因みに契約内容は聞いても良いかな?」

「!へ~、でも残念、契約について話さないっての条件に有るんだよね」

「・・・」

【ありゃりゃ、さすが大和君、封じて来たか】

弁慶は大和の提示した条件の中で、意味が有るか分らなかった条件の意味を理解して関心し、燕も寝返り防止だと判断して関心していた。

 

「まぁ良いや、今のアテナちゃんに由紀江ちゃんの相手は厳しいだろうからさっさとやるよん」

「・・・余り()めないでくださいね、先輩」

 

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■   弁燕 百  ■

■  大黛ア 羅  ■

■         ■

■■       ■■

■■       ■■

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―由紀江side―

 

(わらわ)の相手はお(ぬし)じゃな、黛」

「は、はい、アテナ様!」

「そう固くなるな、同じ1年なのだ」

「え、え~と」

由紀江は困惑する、直ぐに戦闘になるかと思えばアテナに戦意が無くフレンドリー(※無表情だが由紀江にはそう見える)に話し掛けて来たのだ。

 

【あわわ、どうしたら良いのでしょうか松風『今までに無い状況だぜ~』】

 

「警戒するのも分かるが、妾はただ黛と話してみたいと思って居ったのだ」

「...えっ?」

 

「まぁ端的(たんてき)(もう)せば、仲良くしたいと考えておるのだが、嫌か?」

悲しそうな表情(少なくとも由紀江にはそう見える)を浮かべたアテナに由紀江は慌てて否定する。

 

「そ、そそそ、そんな滅相もない、(むし)ろ私ごとき等で本当に良いのですか?」

「そう自分を下卑(げひ)する物ではないぞ、少なくとも妾はお主を評価しておるし他にも居るはず、その行為は評価してくれる者達を(さげず)む事と同義だ」

 

「あう、すみません...」

みるみるテンションが下がって行く由紀江だったが。

 

「勘違いするで無い、妾は自信を持てと言うておるのだ、改めて問おう、妾と仲良くするのは嫌か?」

 

「!い、いえ、寧ろ嬉しいです!!」

由紀江の返事に満足そうに(うなず)いたアテナは。

 

「ならば、友となる為、お互いを知る為に今は語り合おうではないか」

「は、はい♪」

【や、やりました松風、友達ゲットです!『良かったな~まゆっち、オラァ嬉し涙が止まらね~』】

 

時間稼ぎが目的のアテナの戦略に由紀江はものの見事に()まってしまった。

 

―大和side―

 

【ヤバイ、ヤバイ、クソどうする?】

大和は内心凄く焦っていた、弁慶は燕と戦闘しているが姉の百代と同格の燕が相手()つステッカーの位置も悪く本気が出せない為、由紀江の援護を期待していたが、手負いのアテナはまさかの話術で由紀江を無力化してしまっており、大和自身が行くのは足手まといにしかならない。

 

【クソ、何か手は無いか?】

策略家の松永燕、智慧の女神パラス・アテナ、彼女達を上回る策が必要だ、軍師大和、絶賛ピンチです。

 

そして時は刻一刻(こくいっこく)(きざ)まれて行く。

 

◆◆◆◆◆◆

 

「ホォヤッナットォ!」「クッ」

燕の猛攻に防戦一方の弁慶、しかし無情にも。

 

「そこだ!」「!?」

ベリッ!と何かが(はが)がれる音、弁慶の右腕に有ったステッカーが奪われていた。

 

「あ~あ、負けちゃったか~」

「弁慶ちゃんも強かったよ、まぁくじ運は無かったみたいだけど」

「ハハハ、そうですね」

勝負が終れば敵対する理由も無い、二人は軽やかに談笑(だんしょう)する。

 

『うむ、松永の手にステッカー、どうやら決着の様だな武蔵坊弁慶失格!』

 

「松永先輩、私に勝ったんですから頑張ってください」

「うん、ありがとう♪」

 

―由紀江side―

 

「それでアテナ様」

「ウム、先程から思ったがアテナで良いぞ、妾も由紀江と呼ばせて貰う(ゆえ)な」

 

「は、はい、えっとアテナ?」

「フム、何だ由紀江?」

 

【あ~松風、私は夢でも見ているのでしょうか?】

 

由紀江は幸福な時間を味わい、競技の事をすっかり忘れていた。

 

「アテナちゃん、お待たせー」

「問題無く済んだ様だな?」

「うん、バッチリだよ♪」

「えっあれ?」

燕が現れてアテナと話しているのを見て由紀江は現実に引き戻される。

 

「すまぬな、時間を稼がせて貰った。」

「そ、そんなぁ...」

先程までの幸福が全て幻で有った、由紀江は絶望に包まれかけるが、アテナが近づいて来る。

 

「だが楽しかったぞ由紀江、また後で話したい、妾と友達になってはくれぬか?」

最初は何を言われたか分からなかったが、内容を理解し、絶望からの落差も(あい)まってキレイな笑顔となった。

「・・・は、はい!」

 

由紀江の腹部からステッカーが無くなった。

 

『こう言う友情の芽生え方も有るのだな面白い、それと黛由紀江失格!』

 

―大和side―

 

「すみません、ヤマト先輩、お力になれず。」

由紀江は大和に対してすまなそうに頭を下げる。

 

「いや、まぁあれは俺も仕方ないと思う、それより良かったな、まゆっち」

「は、はい、ありがとうございます♪」

大和は、いや風間ファミリーの面々は由紀江のこれまでの経緯を知っている為、責める事など出来ず寧ろ祝福したいのだが、それは帰ってからと割り切る。

 

「さて、後は大和君だけどどうする?降伏するなら大和君へのお願いは軽くするよん」

燕の問い掛けには無駄に回避能力の高い大和に時間を掛けるのを避けたいとの意図が有るが、決定力のない大和には選択の余地は無い。

 

「分かりました、その代わり絶対勝てくださよ」

そう言って大和は首筋のステッカーを自身の手で()がす。

 

『これは、何やら駆引きが有ったようだな直江大和失格により残り4名!』

 

存 参加者名  ステッカー位置

× 風間 翔一 左胸

× 葉桜 清楚 右足の(すね)

□ 川神 百代 背中

□ 松永  燕  左脇腹

□  羅  翠蓮 右胸

× 武蔵 小杉 左肩

□  アテナ  額

× 直江 大和 左首筋

× 武蔵坊弁慶 右腕

× 島津 岳人 左太腿

×  黛  由紀江 腹

 

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■■    羅百 ■■

■  燕      ■

■   ア     ■

■         ■

■■       ■■

■■       ■■

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一方その頃、翠蓮と百代の闘いは熾烈(しれつ)を極めていた。

 

「川神流、空衾(そらぶすま)ぁ!」

猿猴爬杯(えんこうははい)!」

百代の仮面ライダーのライダーキックの様な技を翠蓮は綱引きの(つな)を引く様に足を掴んで地面に叩き付ける。

 

蛇屠(へびほふ)り!」「挫腿外蹂(ざたいがいじう)!」

地面に叩き付けられるより先に手をついて、足を鎌の様に回して翠蓮の足を()りに行くが、足刀での踏付けに止められる。

 

しかし百代の猛攻はまだ終らない、即座に地を蹴り。

「鳥落としぃぃ」「猛虎下山(もうこげざん)!」

サマーソルトキックを放つも防御の型で受流されて二人は後方へと跳ぶが着地と同時に反転、一気に距離を詰めて。

 

「川神流、無双正拳突きぃぃ!」

黒虎出洞(こっこしゅつどう)ぅぅ!」

百代の正拳と翠蓮の縦拳が激突し、暫し拮抗(きっこう)して弾けた。

 

二人は吹飛んだあと着地して構える。

百代は右手を引いて腰に、左手を前に突き出した空手で良く見る構え、翠蓮は(てのひら)を上に向けて前後に大きく広げた大鵬展翅(たいほうてんし)にて相手を見据(みす)える。

 

「アハハハ、(たの)しいな羅濠ぉぉ♪」

「はぁ、狂気に()まれましたか、未熟ですね」

 

「さぁもっと、もっとだ!愉しませてくれ♪」

「その(おご)り、矯正してあげます!」

 

二人は再度、激突する。

 

―燕side―

 

【うわ~二人ともはっちゃけてるね~放置しちゃダメかな~】

気を使っていない為、周りへの被害は少ないが、それでも壁を越えていない者には耐えられない領域だ。

 

ジーーーっと自身を見詰めているアテナの視線に気付いた燕は言い訳をする。

「わ、分ってるって」

怖気(おじけ)づいたのなら、妾は止めぬが?」

 

その挑発染みた問に燕は少し『ムッ』としながら

「全然余裕だよ、じゃあ手筈通りに」

「ウム、承知した。」

アテナと一旦別れて燕は戦場を見据える。

 

「さ~て、納豆小町、いっちょ(ねばって)ってきますか」

 

◆◆◆◆◆◆

 

「川神流、天の槌ぃ!」

遊龍衝天(ゆうりゅうしょうてん)!」

百代の空中での踵落(かかとおと)しを翠蓮の掌による突上げ、所謂(いわゆる)アッパーで迎撃すると。

 

「今度は此方からです、翻転鴛鴦脚(ほんてんえんおうきゃく)!」

(かかと)での蹴り上げを百代が腕をクロスして防ぐが打上げられ、空中に留まる。

 

青龍翻身(せいりゅうほんしん)!」

右手を伸ばし自身を弾丸の様にジャイロ回転させながら百代のガードの上から(しょう)を触れる。

 

「!?グッ!」

衝撃が体を駆け抜け、百代は吹飛ばされた。

 

「トォウ!」「ハッ!」

技後硬直(ぎごこうちょく)を狙った燕の蹴りは椅馬問路(いばもんろ)を構える動作にて防がれる。

八卦掌は一見すると舞の様にも見えるが、その動きには全て意味があり、数多(あまた)有る套路(とうろ)の組合せで攻防一体の武術となるのだ。

 

技後硬直(ぎごこうちょく)を狙ったつもりなんだけどな~」

「武林の誉れたる私に、その様なものはありません!」

 

翠蓮の堂々たる宣言に燕は『え~』っと不満を(あら)わにする。

 

【ん~不意打ちは無意味か~やはりステッカーしか無いかな?場外と反則を使()()()()のは無理そうだね】

燕は即座に考察し、策を(ろう)する。

 

「モモちゃん、大丈夫?助太刀要る?」

「ハッ、誰に向って言っている、この位平気さ」

百代は何とか立ち上がるが、ダメージが残っていそうだった。

 

「でも、辛そうだし、休んだ方が言いと思うよ?」

 

ベリッと何かを剥がす音が響く。

「!?」「競技終了までね♪」

ニヤリと笑う燕、百代が慌てて後を振り返ると手にステッカーを持ったアテナが立っていた。

 

「なっ!?」「フム、ご苦労であった」

 

『なんと、松永に意識を向けさせておいて川神の後にまわったアテナ君がステッカーを奪う、見事に策に嵌ってしまった様だな、川神百代失格!さぁ残りも3名と成った、どうやら次で勝者が決まりそうだな』

『『『ウォーー!!!』』』

実況と外野の歓声があがる、浮島バトルロイヤルも終盤、次が最後の攻防と成りそうだ。

 

「・・・」

ヒートアップしていたのに終ってしまった百代は、茫然(ぼうぜん)(たたず)んでいた。

 

存 参加者名  ステッカー位置

× 風間 翔一 左胸

× 葉桜 清楚 右足の(すね)

× 川神 百代 背中

□ 松永  燕  左脇腹

□  羅  翠蓮 右胸

× 武蔵 小杉 左肩

□  アテナ  額

× 直江 大和 左首筋

× 武蔵坊弁慶 右腕

× 島津 岳人 左太腿

×  黛  由紀江 腹

 

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■■       ■■

■■    燕  ■■

■   ア  羅  ■

■         ■

■         ■

■■       ■■

■■       ■■

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「先ずは、見事と賞賛(しょうさん)しましょうか」

「ハハ、ありがとうね羅濠ちゃん、でも次は羅濠ちゃんの番だよ」

(わらわ)も先程のダメージは()えた(ゆえ)、続きと良くか?」

 

現在、羅翠蓮、松永燕、パラス・アテナの3名が睨み合っているが、燕とアテナは同盟関係の為、3つ(どもえ)では無く対峙となっている。

 

「良いでしょう、貴女達ならこの羅濠、全身全霊でお相手しましょう」

そう言って翠蓮は先天八卦(せんてんはっけ)獅子抱球(ししほうきゅう)を構えると同時い雰囲気が変わる。

 

「「・・・」」

それを感じた二人も構えをとる。

 

まず動いたのは珍しく翠蓮、哨泥歩(しょうでいほ)で接近し掌形を威力重視の鳳爪掌(ふぉんそうしょう)にて黒虎推掌(こっこすいしょう)を放つ、狙いは燕だ。

 

しかし、正面からの攻撃を燕は当然回避する、横に跳び翠蓮の側面より回し蹴りを放つ。

 

「ヤァッ!」

拔雲見日(ばつうんけんひ)

その蹴りを雲間から差し込む日の光を見る時の眩しさから手を(かざ)す動作で防ぐと掌打を打ち込もうとするが

 

「ハッ!」「青蛇伏草(せいじゃふくそう)そして」

反対側から回り込んだアテナの拳を防ぐと同時に

烏龍擺尾(うーりゅうはいび)!」

まるで龍が身をくねらせるに似た動作で二人を吹き飛ばした。

 

「ハハ、二人がかりで此処(ここ)まであしらわれると自信無くしちゃうな~どうしよっかアテナちゃん?」

【気と震脚(しんきゃく)は禁止されてるけど、八卦掌って全身の動作で発勁(はっけい)を増幅してるんだったかな?しかも多彩な技・・・こんなに厄介だったんだ】

しみじみと思う燕、過去の挑戦者に八卦掌の使い手は居たがすんなり勝てたのでそこまで警戒して居なかった。

 

「妾達のする事はもとより変わらぬよ、お主は左を攻めよ、幾分か隙も出来よう」

「そっか、了解だよん♪」

アテナと燕は左右に展開して翠蓮を挟撃するべく動くが

 

「やれやれ、面倒ですね」「なっ!!」

驚愕する燕、それもその筈、ずっと()ていた翠蓮が消えたのだ。

 

「燕ぇ!?」「弯弓射虎(わんくしゃく)」「グフッ!!」

アテナの警告するような叫びが聞こえた次の瞬間、自身の(ふところ)より聞こえた鈴の音の様な声を最後に意識を失った。

 

―アテナside―

 

それは唐突(とうとつ)に起こった、翠蓮の厄介さを再認識したアテナと燕は挟撃しようと行動した。

 

翠蓮は軽功(けいこう)にて燕に接近し空手の山突きに似た、だが異なる技で攻撃した。

 

そして反対側に居た為、全てを見ていたアテナが叫ぶも間に合わず燕は倒れた。

 

「さて、残すはアテナ貴女だけですよ?」

「フム、燕が落ちた時点で妾に勝ち目は無いな」

 

「それでは諦めると?」

翠蓮から落胆した様な声が上がるが、しかし

 

「万に一つとて可能性が無い訳でも無し、まだ負けておらぬのに妾が退く理由にはならぬよ」

 

構えを取るアテナを見て翠蓮は嬉しそうに賞賛する。

 

「流石は女神、この羅濠最後まで付き合いましょう」

「行くぞ羅濠!」「来なさいアテナ!」

 

そして5分後・・・

 

『フム、浮島バトルロイヤル、勝者3ーSの羅濠!』

『『『ワーーー!!!』』』

 

浮島バトルロイヤルは翠蓮の勝利で幕を閉じた。

 

―翠蓮side―

 

歓声の中、翠蓮はステッカーを奪われて倒れるアテナに近づいて手を差しのべる。

 

「立てますか?」「少し厳しいな」

アテナはダメージが大きく暫くは動けそうに無かった。

 

「仕方が有りません、この羅濠を認めさせた、これはその褒美です」

そう言って翠蓮はアテナを抱き上げる、所謂(いわゆる)お姫様抱っこだ。

 

「・・・羅濠!これは何の真似だ?」

「救護のテントまで運びます、それとアテナ、貴女には名を呼ぶことを許しましょう」

アテナは目を見開いて翠蓮を見詰める。

 

「...良いのか?」

「構いません、貴女を認めた、それだけです」

暫し無言で(たたず)む、そして。

 

「なら宜しく頼む翠蓮よ」

「では行きますよ、縮地神功(しゅくちしんこう)!」

二人はその場かた消えた。

 

幸いにも嫉妬に狂うだろう某ロリコンは未だに気絶中でこの事を知らない。

 

◆◆◆◆◆◆

 

そうこうして最終競技・怪物退治が始まった。

 

怪物は川神鉄心が東西交流戦で天神館の生徒が見せた組体操を素に考案、川神院の修行僧で出来た巨大なクジラだった。

 

その額には時価10万の川神水晶が有り、これを()れば勝利となる。

 

果敢(かかん)(いど)む川神生達だが、怪物の身動(みじろ)ぎと川神流・濁流槍によって薙ぎ払われた。

 

だが、源義経(みなもとよしつね)が海に漂う障害物を八艘飛(はっそうと)びで進み、怪物の近くに漂っていた武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)の怪力で怪物の頭に取り付き、濁流槍を掻い潜って川神水晶を採ったのだった。

 

「なぁ弁慶、義経の活躍が雑に扱われた気がするのだが?」

「そんな事ありません主」

【ちゃんとフィルムに(おさ)めてますから♪】

弁慶の視界の隅に黒い何かを持った(ふくろう)が横切ったのだった。

 

そして、水上体育祭の全プログラムが終了した。

 

「これにて川神学園、水上体育祭の終了を宣言する!、それと帰るまでが祭りじゃハメを外し過ぎぬようにするのじゃぞ!」

 

川神学園の学園長の宣言により、水上体育祭が終了した。




大和君、契約内容に道連れが有るのに使いませんでしたね。
元々は百代を道連れにする為に用意したカードだった為、燕への使用を躊躇ってしまい、気が付いたら手遅れ・・・これがアリスや葵冬馬なら直に切ったでしょうが、大和は姉への絶対的な妄信が有るので仕方無いです。

それと、アンケート期間が終っていない為、続きを書き難いと言うジレンマ、まぁ暫くは別の小説に力を入れますか。
または八卦掌等の技解説を書くか...需要あるのかな~?

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