武林の誉れに恋しなさい!   作:水華

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ね、眠い...最近仕事が忙しくて妄想の世界に行く時間がなかなか取れない。


東方より改め北西より来る男
西より来る佳人


休日の夜、九鬼財閥極東本部はいつもと違う静寂に包まれていた。

その主な理由は二人の人物が放つ威圧感にあった。

 

九鬼家従者部隊の序列0位ヒューム・ヘルシングと() 翠蓮(すいれん)、共に壁を越えた実力者の中でも上位に入る。

それらが対峙し、睨み合い、隙を伺っているのだ、空気が重い所の話ではない!

なぜそのような事になったのか?それを知るには少し時を(さかのぼ)る必要がある。

 

◆◆◆◆◆◆

 

英彦山(ひこさん)に建てられた(いおり)、その門前(もんぜん)にて二人の女性が話をしていた。

天衣(たかえ)、準備は出来ましたか?」

「はい、いつでも行けます。ところで次の拠点はどんな感じですか?」

「ふむ、九鬼が用意する手筈(てはず)になっていて私も知りません。」

「えっ!?、じゃあ今から向うのは?」

「九鬼です。すでにクラウディオなる者と話しもついております。」

「成程、九鬼ですか・・・んっ?」

「では行きますよ」

首を傾げて何かを考える天衣だったが、翠蓮が腰に手をまわし抱き寄せ気を高め始めた。

縮地神功(しゅくちしんこう)神足通(しんそくつう)!」

「!?まって翠蓮!」

何かに気付き(あわ)てて静止の声を掛ける天衣だったが間に合わず、二人はその場から消えるのだった。

 

―翠蓮side―

 

大扇島(おうぎしま)にある九鬼財閥極東本部ビルの前に広がる空き地に膨大な気が渦巻き(はじ)ける。

その場所には二人の女性が立っていた。

「うむ、着いたようですね、ん?天衣(たかえ)頭を抱えて如何(どう)したのです?」

翠蓮が周囲を見渡している横で天衣は頭に手を当てて溜め息を()いていた。

 

「翠蓮、此処(ここ)何処(どこ)だか分ってます?、いや分ってたら直接転移なんてしないな!」

「え、え~と天衣?」

雰囲気の変わった天衣に戸惑う翠蓮、しかし天衣は止まらない、先程まで(はら)ってた敬意も捨てて説明する。

「いいですか翠蓮、九鬼は世界有数の大財閥!その敷地内に突然人が現れたらどうなります?、答は侵入者として迎撃(げいげき)するだ!」

天衣の叫びとほぼ同時に二人はその場から()ぶ、すると先程まで居た地面が()ぜる!!

どうやらビルの屋上から狙撃されたようだ。

 

そして周囲を武装した執事やメイドに囲まれてしまった。

「なるほど、そのようですね。」

「は~翠蓮はもう少し周りの反応を考えてください。」

「ふむ、善処(ぜんしょ)しましょう」

状況とは裏腹に二人はとても落着いたものだった、そしてリーダーらしき執事が二人に告げる。

「何の用かしらんが、九鬼に侵入したんだ拘束(こうそく)させて貰うぞ!」

 

その物言いに天衣が待ったをかける。

「まってくれ、侵入に関しては此方(こちら)の手違いだ、謝罪(しゃざい)する。だが、危害を加えるつもりは『捕縛(ほばく)しろ!』・・・」

どうやら話を聞く気は無いようだ。

 

問答無用(もんどうむよう)ですか、調教(ちょうきょう)が必要なようですね。」

「あぁもうなるようになれだ!」

 

最初に突っ込んで来るメイドの拳を裏掌(うらしょう)で上に弾き()いた脇腹を表掌(おもてしょう)で打つ。

「カハッ」

そして走圏(そうけん)で後に回りメイドの影から近付いていた執事に黒虎出洞(こっこしゅつどう)を叩き込んで吹き飛ばし跳躍(ちょうやく)、後続の従者達の中心に軽功(けいこう)で入り。

八路迅猛(はちろじんもう) !」

翠蓮の姿が八方向(はちほうこう)にブレ、追随(ついずい)する様に衝撃が走り抜け従者達は吹き飛ばされた。

 

その様子を眺めながら『これ私、必要なくないか?』等と(つぶや)いていたが、二人の従者が天衣に襲い掛かる。

「ハァ!」「オラッ!」

しかし、彼等の拳は空を切った、天衣の姿が消えたからだ。

「遅い!」

ドドンと打撃の音が響き気を失ったのか二人はゆっくりと崩れ落る。

 

「くっ!?、こいつらかなりの手練(てだれ)だ、応援を呼べ!」

だが精鋭揃(せいえいぞろ)いで有名な九鬼の従者部隊も奮闘し、絶妙(ぜつみょう)な連係で時間を稼ぎ応援が来るのを待つのだった。

 

◆◆◆◆◆◆

 

九鬼のビル内では緊急時のマニュアルに沿()った対応が行われていた。

要人の避難、主要施設の閉鎖、迎撃システムの起動等に従者達が動き回る。

 

「いったい何事だ!?」

要人として避難を(うなが)された額に「×」を持つ銀髪の美女、九鬼揚羽(くきあげは)が問う。

「侵入者です、揚羽様」

「何?それでこの騒ぎか?」

「はい、捕縛に向かった部隊が壊滅的な状況で突破も時間の問題かと思われます。」

「なんと!?」

「あ、揚羽様ぁ直ぐに避難しましょう!」

メイドの説明に驚く揚羽と(さわ)ぐ小十郎だが。

「落ち着けたわけ!」「グハッ!!」

揚羽に殴られるのだった。

「も、申し訳ありません揚羽様ぁ~」

「それで侵入者の特徴は?」

「はい、二人組の女性で漢服を着た黒髪と黄色いチャイナの銀髪だそうです揚羽様」

「フム・・・よし!我が相手をしよう。」

「!?そんな、危険です!我々に任せて避難を」

「そうですよ揚羽様ぁ!」

突然の主の言葉に危険な事を進言(しんげん)するメイドと小十郎。

「フハハハ、我は九鬼揚羽であるぞ、問題などない!行くぞ小十郎!」

「お待ち下さい揚羽様ぁ~」

しかしその進言は却下されるのだった。

 

◆◆◆◆◆◆

 

紫燕抄水(しえんしゃすい)貼身近攻(てんしんきんこう)遊龍衝天(ゆうりゅうしょうてん)!」

空き地では翠蓮が従者相手に無双し、ただでさえ少ない隙を天衣の遊撃がカバーしていた。

 

「くそ!増援はまだか!?このままでは全滅だぞ!」

リーダー格の従者が怒鳴っていると連絡が入った。

「まもなく来るそうです!」

「よし、援軍の到着まで()たせるぞ!!」

 

そして其の時が、援軍が到着した。

「はぁぁぁ九鬼雷神金剛拳!」

「!?翻転鴛鴦脚(ほんてんえんおうきゃく)

突っ込んで来る何者か、その気が()められた正拳突きを直前で気付いた翠蓮が身を(ひるがえ)し背中越しに蹴り上げる事で迎撃した。

 

「フハハハ、我、降臨である!」

そこに居たのは九鬼家の長女、九鬼揚羽だった。

(あるじ)の登場に劣勢(れっせい)だった従者部隊の指揮も高まり始める。

「我の拳を防ぐとはやるな、おぬし何者だ!」

「...名を問う時は自身から名乗るものです。」

「なに、我を知らぬのか?」

その返しに揚羽は驚く、仮にも九鬼に侵入したのだ、九鬼一族については知っているものだと思っていたからだ。

そして自身を知らない侵入者に疑問を持った時。

 

「待ってくれ翠蓮、話しの通じそうな奴が出て来たんだ、私に任せてくれ!」

天衣が両者の間に割り込んだ。

「ん?、なんと!おぬし天衣(たかえ)ではないか!」

「ああ、久しぶりだな揚羽」

揚羽は天衣に気付いた。

「侵入者とはおぬしらだったか、して九鬼に何の用だ?」

警戒しながらも構えを解く揚羽に天衣と翠蓮も構えを解くのだった。

「クラウディオさんに会いに来たのだが侵入した形になったのは申し訳無い」

ペコリと頭を下げて続ける。

「少々手違いが有ってな、そして説明しようにも聞く耳を持ってくれず今に至る分けだ。」

天衣の説明を聞いた揚羽は溜め息を()いた。

 

「そうかすまなかったな、おいお前達もう大丈夫だ警報を解除せよ!」

揚羽の言葉に周りの従者達が驚く。

「えっと揚羽様?」

「こやつ等は我の知り合いだ、危険は無い!」

「ハッ、かしこまりました。」

数人を残して従者達は負傷者を運び始めた。

 

「まったく、大騒ぎだったぞ」

「あぁ、本当にすまない」

ひと段落した事を感じ取り天衣は改めて謝罪する。

「それで其処(そこ)に居るのは誰だ?」

揚羽は翠蓮に視線を向けながら天衣に問う。

「えっとこちらは『いいのです天衣』」

紹介しようとした天衣を(さえぎ)り前に出る。

「姓は()(あざな)(ごう)、名は翠蓮(すいれん)です」

「我は九鬼揚羽である。」

「九鬼?と言うことは今回の依頼は?」

「いや、我は知らぬ、おそらくは家族の誰かだろう(しば)し待っておれ」

 

◆◆◆◆◆◆

 

「姉上~」「おぉ紋ではないか、久しいな」

「はい、姉上もお変わり無いようで何よりです。」

暫し雑談をしていると九鬼紋白と二人の執事、ヒューム・ヘルシングとクラウディオ・ネエロが向かって来て揚羽と言葉を交わす。

 

「あぁそれとクラウ、おぬしに客だ。」

そう言って翠蓮達を指し示す。

「おぉ待っておったぞ!、ん?何故(なぜ)此処(ここ)におるのじゃ?」

紋白が首を傾げていると横からクラウディオが説明する。

「紋様、おそらく今回の侵入者騒動は彼女達かと」

「なんと!そうであったか・・・姉上の手を(わずら)わせてしまい申し訳ありません。

紋白は状況から大好きな姉が此度(こたび)の騒動を(おさ)めた事に気付き謝罪する。

「フハハハ、気にせずとも良い!それに久々に全力を出せて良い気分転換になったわ!」

豪快に笑い許す揚羽だった。

 

「羅濠様、依頼を受けて頂きありがとう御座います。つきまして今後このような事が無いように連絡手段を用意して頂けないでしょうか?」

今回の騒動が二度と起こらない様に進言するクラウディオ、っと言うのも機械の苦手な翠蓮と昔の癖で携帯電話を携帯しない天衣に連絡をとる手段が無いからだ。

 

「ふむ、ならコレを渡しておきましょう。」

そう言って(ふところ)から数枚の護符(ごふ)を取出して渡す。

「これは?」

当然、疑問に思ったクラウディオは質問する。

「方術による簡易念話(かんいねんわ)です、気を()めると起動します。」

「なるほど、頂きます。」

 

「おぬしが羅翠蓮か、我は九鬼紋白、紋様と呼ぶが良い!」

「紋白ですか、貴女が今回の依頼人ですね?」

しかし短気なとある執事が我慢できなくなってしまう。

「紋様と呼ばんか、赤子!ジェノサイド・チェ!?」

覇空断掌(はくうだんしょう)!!」

ドーン!ビジビキビキ

序列0位のヒューム・ヘルシングが体力を十割削る技を繰り出した時、いつのまにか翠蓮の(てのひら)がヒュームを(とら)えていた。

危険を感じたヒュームは技をキャンセルして全力で防御、直後に空間に(ひび)が入り吹き飛ばされた。

『『『!?』』』

周りが驚愕(きょうがく)する中、翠蓮は語り掛ける。

「いきなりですね、加減が難しいので止めなさい!」

「フン、赤子が言ってくれる...いや翠蓮!!」

「貴方に名を呼ぶことを許した覚えはありません!」

二人の威圧感が高まり、冒頭(ぼうとう)での状況へと(いた)る。

 

「やめよヒューム!」「翠蓮も落ち着いて」

だが揚羽と天衣が制止する、この二人に暴れられると甚大(じんだい)な被害が発生するからだ。

 

「...申し訳ありません揚羽様。」

「・・・」

ヒュームは謝罪し翠蓮も無言で構えを解く、どうやら災害の発生は回避出来たようだ。

 

「それでは私がご案内します、羅濠様、(たちばな)様、どうぞこちらに」

そして一段落した所を見計らい、クラウディオが切り出してその場はお開きとなるのだった。

 

◆◆◆◆◆◆

 

時は流れて週明け。あの後、クラウディオによって今後の拠点と依頼内容の詳細を聞く事が出来た翠蓮達は早速(さっそく)生活の基盤(きばん)(ととの)える。

そして・・・

 

「この(たび)交換留学生として来た、姓は()(あざな)(ごう)、名は翠蓮(すいれん)、羅濠と呼ぶことを許しましょう!」

川神学園、3-Sの教室では藍色(あいいろ)漢服(かんふく)を着た絶世の佳人(かじん)が挨拶をしていた。

 

「え~と、じゃあ何か質問のある人は?」

シーン・・・静まり返る生徒達、質問する者は居なかった。

「じゃあ、席に着いて~授業を始めます。」

そして1限目の授業が終わって休み時間。

 

「羅濠ちゃん、初めましてかな葉桜清楚(はざくらせいそ)です」

話し掛けたのは武士道プランの申し子が一人、葉桜清楚だった。

「そうですね、何か用ですか?」

「いや、そういう分けじゃ、同じクラスだし仲良くしたいなって...」

「そうですか、ふむ、よろしく清楚」

「うん♪」

満面の笑みで嬉しそうに返事をする清楚に釣られて微笑む翠蓮、その美貌(びぼう)(あい)まってまるで絵画の様な光景に生徒達は見惚(みと)れるのだった。

 

「さっそく仲良くなった様だな」

「久しいですね彦一」

そこに話し掛けるのは京極彦一(きょうごくひこいち)、東西交流戦での戦いで翠蓮も一目置(いちもくお)いている為、話の()にすんなり入る。

「この間は良いものを見せて貰った、言霊にもまだ上の段階が在ることを知れた。」

「礼には及びません、また言霊比べをするのも良いでしょう」

「ハハ、その時はお手柔らかに頼む」

「えぇ心得ています。」

「え~と、二人は知り合いなの?」

話に着いて行けない清楚が問う、交流戦での事を知らない清楚からすれば当然の反応と言えた。

「あぁ葉桜君は知らなかったな、この間の交流戦で羅濠と言霊を競い合ってな」

京極は交流戦での事を清楚に語り聞かせるのだった。

 

◆◆◆◆◆◆

 

そして時同じくして、3-Fの教室では

「なぁなぁSクラスに留学生が来たらしい」「あぁ聞いた飛びっきりの美人だってさ」「へ~後で見に行くか?」

等と交換留学生の話題で盛り上っていた。

 

「最近転校生や留学生などが多いで(そうろう)

「だな、でも可愛い()ちゃんか~後で見に行くかな?」

その様子を見ながら呟いたのは矢場弓子(やばゆみこ)、語尾に候と付ける独特な(しゃべり)り方をするが、キャラ作りであり本人はミーハーな女学生である。

百代も多いと感じつつもどんな娘が来たのか気になっていた。

そんな二人の所に一羽の燕が舞い込む。

「二人とも何の話してるの?」

「ん、転校生その3だな」

「3番目の9人目で候」

「???ん?」

二人の話の内容が分らず頭の上に大量のハテナマークが浮んでいる燕だった。

「あぁすまん、最近転校生なんかが多いって話をしていてな」

「今日も留学生が来たそうで候」

「成程ね、ソレで3番目なんだ、でも留学生ってことはとうとう来ちゃったか~」

腕を組んで(うなず)く動作、まるで誰が来たのか知っているような口振(くちぶり)に視線が殺到する。

「燕は留学生のことを知っているで候?」

「うん、来るって聞いていたしね」

「へ~どんな娘なんだ?」

 

百代の質問にキョトンとする燕だったが続いて意味深に微笑む。

「あ~そっか学園長は(あえ)て教えなかったのか~」

「?如何(どう)言うことだ?」

「百代ちゃんも知ってるハズだよ?前戦ったてたし」

「ん、誰のことだ?」

武神として多くの挑戦者に(いど)まれる百代には昔闘ったと言われても個人を特定することは出来なかった。

「じゃあ交流戦で百代ちゃんを吹飛ばしたって言えば分る?」

「!翠蓮ちゃん!?」

「うん、正解!羅濠ちゃんが留学生だよ」

驚きも一瞬、すぐに満面の笑顔を浮かべると。

「ちょっと行ってくる!」

「なっ!もうすぐ授業が始まるで候」

弓子が呼び止めるも其処(そこ)に百代の姿はもう無かった。

 

◆◆◆◆◆◆

 

「へ~そんなことがあったんだ~」

場所は戻って3-Sの教室、そこでは交流戦での出来事を聞き終えた清楚が(あい)づちをうっていた。

「あぁ、あの一戦のお(かげ)で言霊の可能性を知る事が出来た」

「ふ~ん」

「・・・やはり来ましたか」

「「?」」

突然呟いた翠蓮に不思議そうにする二人だが次の瞬間に納得することになる。

「羅濠よ、それは一体ど...」ガララ、ピシャンΣ

教室のドアが勢いよく開けられ、皆の視線が殺到するも、その人物は教室を見渡して目的の者を見付けるとそこに向かって歩きだす。

「は~」

「翠蓮ちゃん、た・た・か・おう♪」

大きな溜め息を()く翠蓮に満面の笑みで決闘のお誘いをするのは武神・川神百代だった。

以前(いぜん)にも言いましたが私に勝てば名を呼ぶ事を許します。」

「はは、そうこなくっちゃ♪」

「えっと百代ちゃん、羅濠ちゃんもう授業が始まるよ?」

清楚の言葉と同時にチャイムが鳴る。

「む~昼休みに()ろう!グランドで待ってる!!」

そう言って百代は自分の教室へと戻っていった。

 

―武神side―

 

迎えた昼休み、グランドには決闘の情報を聞き付けた野次馬が集まっていた。

【フフフ、とうとう来たぞ、この時が!早く来ないかな翠蓮ちゃん♪】

 

その中心に立っているのは武神・川神百代、交流戦でのリベンジマッチ(※っと本人は思っている)に彼女は物凄くワクワクとしていた。

そして翠蓮がグラウンドに現れる。

「待たせましたね」「ああ、ずっと待ってたさ、この時をさぁヤろう♪」

二人はゆっくりと構えを取って見詰め合い隙を探る。

 

覇空断掌(はくうだんしょう)!」

「川神流、無双正拳突き!」

「やめんかー!!」

ドカーン!!! パキンビシビキ

羅濠と百代は必殺の一撃を示し合わせたように上空への放つと鉄心が放った顕現の参・毘沙門天の踏み潰しと激突、衝撃波をばら()き、当然周囲で観戦していた生徒達は吹飛ばされ阿鼻叫喚(あびきょうかん)様相(ようそう)()していた。

 

「ぬぅ防ぎよったか」「はは、ジジイ同じ手は食らわんぞ!」

百代は鉄心の攻撃を防いだことでテンションが()がっているが翠蓮は何かを思案していた。

(やかま)しい!、そもそも決闘など始めようとしおって、許可は出しとらんぞ!」

「えー良いじゃん()ったって」

「お主等に暴れられると学園が持たんじゃろうが!ソレに今でも此処(ここ)までの被害が出ているんじゃ」

周りでは吹飛んだ生徒達の救護(きゅうご)が行われていた。

「いや、ジジイも原因の一人だからな?」

百代のツッコミに鉄心は『むぅ』と(うな)る、事実だから言い訳は出来ないのだ。

「なぁ翠蓮ちゃんからも言ってくれ」

「ん?まぁ初日で迷惑を掛ける訳にもいきません、此処は退()きましょう」

考え事をしていた翠蓮だが、話は聞いていた様で返事をする。

しかし百代は納得がいかない様で鉄心に抗議するが

【くっそー、あとちょっとで()れたのにジジイめ!!】

鉄心に言負(いいま)かされてしまったようだ。

 

◆◆◆◆◆◆

 

空港から一人の青年が出て来た。

「此処がジャパンか、確か川神って所に行けばよかったね」

その青年は金髪にアロハシャツを着てサンダルを履き、頭にはサングラスが乗っている、夏を全力でアピールした格好(かっこう)をしていた。

「でも、その前に腹ごしらえかな?」

円筒状の荷物を肩に掛けて歩き出す青年は空港を後にするのだった・・・

 




遊龍衝天(ゆうりゅうしょうてん)貼身近攻(てんしんきんこう)八路迅猛(はちろじんもう)翻転鴛鴦脚(ほんてんえんおうきゃく)はカンピにて羅濠教主が使っていた技を漢字から判断して状況に当て()めてみました。

覇空断掌(はくうだんしょう)はオリジナルですが羅濠教主の至高の一掌ってなんだろうと考えた時、ワンピのグラグラの実が思い浮んでこうなりました。
空間震や空間断層を起す掌打、気に入っているので何処かの不良執事みたいに奥義でも使いまくるかもです。
「ジェノサイド・チェーンソー!」「ジェノサイド・チェーンソー!!」
「この一蹴りは体力を十割削る、ジェノサイド・チェーンソー」

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