「大丈夫かい?」
カラオケからの帰り道、近道に通った路地裏で会った奴にそんな声をかけていた。
服が血まみれの奴が目の前にいてなんとも暢気なことを聞いているなぁと思いながらしゃがんで目線を合わせる。
「……」
「もうちょっと大きい声で言ってくれ、聞こえん」
ぼそぼそした声で何か言っているが聞き取れなかったので聞き返す
「……といて」
「あ?」
「ほっといて」
いや、無理でしょ、と内心思った。
血まみれの奴を最初から無視していたのならまだしも、もう話しかけちゃたし
それにこいつ声聞いてわかったけど女だ。
フェミニストって訳じゃないけど、ほうっていける訳がない
……
「はーなーしーて!」
「もう、放してますが 何か?」
所変わって自宅へ帰宅。
脇にあの女を抱えてで、今はソファーの上、俺は探し物を探索中
「ほっといてって言ったのに、なんで持ち帰るの!?」
「人聞き悪いことを口走るな」
お目当ての救急箱を引っ張り出し、彼女の元へ向かう
と、ここで初めて彼女の顔を正面から見た
第一印象としては美人というよりは美少女の類だ。
外国人の顔のパーツでいいとこ取りして全体に調和するようにするとこんな感じだろう。
もっとも、少女と呼べる理由としてはちっこいことが起因だが、
身長170の俺より頭一個分小さい、大体155だろう。
体重は多分30~50内だな。俺が脇に抱えてこれたんだし、ちなみに俺は82キロだ。
「なんか今、すんごい失礼なこと考えなかった?」
「なんのこと「具体的には人の体重とか?」…いやいや君の髪の色が珍しいと思って」
本当に珍しい緑色の髪だ、しかもただの緑色じゃない、たまにテレビで見かける海外の海で見かけるエメラルドグリーンだ。
「昔の人が髪を売り物にしていたのもわかるね」
「そう、ありがと」
どういたしまして、と返しながら互いの名前も知らないことに気づいた。
「俺は真藤 晶だ、そっちは?」
「……レイン、別に覚えなくてもいいわ」
人に名前を聞く時は自分からという格言に従いながら自己紹介をしながら救急箱から包帯と消毒液を出す。
「はい、っとそれじゃ治療するぞ」
「へ?」
「脇腹、怪我してんだろ?さっさと見せろ」
彼女ーーレインの着ているシャツの脇腹には大きな切傷の跡がある。
どうみても怪我もしてるだろう服の血もそこから出たようだ。
「ほら、服上げろ」
「あー、大丈夫だからほっといて」
「……はぁ」
ため息をつくと、同時にすばやくシャツをたくし上げる。
「ちょ!?」
「はいはい、さっさと終わらせる…ぞ?」
シャツをたくし上げた俺は奇妙な物を見た
まず、俺はシャツの傷跡からナイフ辺りで切られたと、思っていた。
しかし、シャツの下の傷は釘でも引っ掛けたのか?それぐらい小さい傷だった。
そして、その傷が目の前で塞がっていき、5秒ほど見ていると傷は完全に消えてしまった。
「……今のはぁ!」
目の前で起きた事を聞こうとした瞬間、衝撃が走った。
「いつまで、乙女の柔肌みてんのよ!」
勢いのいいアッパーが顎にヒットしたらしい。ひっくり返る俺の視界にレインの横になっている状態から天に突き上げる拳が見えた。
乙女はグーパンチしねぇよと思いながら、身を起こす。
レインも横になっていた体を起こし、シャツを調えている。
「……見たのよね?」
「……見た」
「……そう」
「がんばれよ、あとちょっとでCにいけ「ふん!」」
メキィとすごい音が鳴る。今度は座っている体勢から回し蹴りがこめかみを捕らえた。
「ちょ、ちょっとした場を和ませるジョークなのに……」
「口は災いの元、次で身も滅びるわ」
もうグロッキー寸前です。ていうか災いが目に見える形で目の前にいます。
で、
「さっきの怪我の直り方は?」
「……あなた、------って信じる?」
「……なんだって?」
いま彼女はとんでもない言葉を言ったような気がした。
あまりにも、とんでもなさ過ぎて我が目ならぬ、我が耳を疑いもう一度聞き返した。
「だから“魔法”って信じるのか聞いたの」
魔法?、一瞬?マークが頭の中に浮かんだ。次に頭の中には驚きと歓喜、興奮が入り混じっている状態だった。
本物?マジか?うそだろ?そんな言葉が浮かび、先ほどの怪我の治り方を思い出す。
「……本物なの?」
「そうよ」
ようやく、搾り出すように出てきた質問もレインは即答してくれた。
俺のテンションはうなぎ昇りだやばい域に達しそうなぐらいだ。
すごい、最初にそう思い、次には面白くなりそうだ。そう思っていた。
「盛り上がっている所、悪いんだけどさ」
「ん、ああなんだい?」
いけない、いけない彼女のことを一瞬忘れていた
「なんで、この世界で魔法のことが知られてなかったか、わかる?」
「……隠してきたからじゃないの?」
……なんでか、嫌な予感してきた
「それもあるけど、正解は……」
すっと、レインが手をこちらにかざすと、その手から青白い光が灯される。
「知った人の記憶は消されるからよ」
バッと青白い閃光が俺の視界を埋めつくされた
全部、忘れちまうのか?
嫌だな……そう思いながら、
俺は意識を……
「……ん?」
「あれ?」
失わなかった。
次話はできれば2週間以内にというよりも、がんばれ俺というセルフ声援と共にがんばります。