トニー・スターク が あらわれた ! 作:クレイジー松本キヨシ
※5月27日19:08
誤字修正
※5月27日23:14
誤字修正
あれから時が経ち、トニーは20歳。束と千冬は19歳になった。
あの事件の後、開発者が日本人ということもあり、日本がIS技術を独占的に保有していたことに危機感を募らせた諸外国はISによってISの情報開示と共有、研究のための超国家機関設立、軍事利用の禁止などが定められた条約、アラスカ条約が各国の間に結ばれた。
しかし、トニーが言った通り条約は建前であり、各国はISを軍に配備した。未だ国と国の闘いではISが使われたことはないが。
その際、束はISの心臓部分と言っても過言ではないISコアを世界各国に467個、配布した。
束は467個以上のISコアを各国に渡すことを拒んでいる。
その為、各国は限られたコア数で研究、開発、訓練をしている。
その数が表す意味があるのか、それとも単なる気まぐれなのか。それは束のみが知ることである。
ISコアは完全にブラックボックスと化しており、未だ束以外にISコアは造れない状況である。
ちなみに、467個以上造らないと束は言っているのだが、番外であるISコアを2つ、トニーに渡している。
1つはトニーと束の共同開発の為のISコア。
もう1つはトニーが興味本位でISコアを研究したいと言った為である。
閑話休題
世界各国にISコアが配られ、いざISを使おうとなった時に、1つの重大な欠陥が発見された。
それは女性にしかISを使えないことである。
そのことに一部の女性は過激に反応し、「自分達は特別な存在なのだ」と意識し始める。
それにより、世界は女尊男卑の風潮が出来上がってくる。
そしてそれに便乗するような形で、ISによる世界大会、第1回モンド・グロッソが開催される。
その大会の優勝者は織斑千冬。
女尊男卑の風潮は加速した。
○○○
僕が20歳になって、周りの環境が変わったことが3つある。
まず1つ目は、両親が亡くなった。
僕が20歳になってから暫くして亡くなった。ただ、死因は前世とは違う。
病で倒れて死んでしまったのだ。誰かに殺されたというわけではない。
僕は生まれてから一生懸命両親に孝行した。両親はそれに亡くなるまで応えてくれた。ある意味、というか少なくとも、僕は前世よりも両親との仲を深められただろう。
両親が亡くなった日、僕は初めて、この世界に生まれて涙を流した。
2つ目はアイアンマンとしての活動が世界的に認知されつつあることだ。
映像や情報を改竄したりしても、人が見たことを一々改竄できるわけではない。それのおかげかどうかは知らないが、世界中はアイアンマンのことを『正義の味方』『ヒーロー』と呼んでいる。嬉しい事には嬉しいのだが、最近はマスコミがアイアンマンの正体を嗅ぎ回っているので、非常に面倒だ。
そして3つ目は、僕が会社を起業したことだ。
その名もスターク・インダストリーズ。
前世とやっていることは同じ。ただ、軍事兵器の開発はしていない。
その代わりにISの開発を行っているのだが、あまり積極的に行ってはいない。
何故なら、僕が提示した条件に見合うテストパイロットが見つからないのだ。
テストパイロットがいないなら開発も進まない。
まぁ開発を始めたら、アメリカのIS企業トップになれる自信はある。
何て言ったって、アイアンマンを開発したノウハウがある僕と、協力者である束がいるのだ。
それはもう世界最先端のISができるだろう。
まぁテストパイロットが見つかるまではそんなことに興味はないけどね。
そうそう、束についてだが、現在は僕の家を隠れ家として暮らしている。
現在は僕と束、そして僕がある施設から連れ帰ってきた子と3人で暮らしている事になるのかな?
束とその子はたまに数ヶ月居なくなったりすることもあるが、ある程度定期的に帰ってきている。
千冬は日本のISの国家代表になり、第1回モンド・グロッソで優勝して多忙の毎日を過ごしているようだ。
たまに連絡を取ったり、会ったりはしている。
そして、僕が連れ帰ってきた子。名前はクロエ・クロニクル・スターク。名前からわかるように僕の養子だ。
僕がアイアンマンの活動として、非道な研究をしている研究所をつぶしている時に出会った子だ。
ふと、その出会いを僕は思い出した。
○○○
F.R.I.D.A.Y.の情報を受け、トニーはドイツのとある研究所にヘリで来ていた。
試験管ベイビーを造り、非道な研究をしているという情報だ。
トニーはそもそもドイツにはあまり良いイメージを持っていない。むしろ嫌悪していると言ってもいいかもしれない。
良いイメージがあったとしても、ビールとソーセージが旨い。その程度の良いイメージしか持っていないのだ。
トニーが研究をしている理由。前世ではナチスの流れを汲む秘密組織、『ヒドラ』がいた。
S.H.I.E.L.D.を内部から崩壊させたのはヒドラだし、マキシモフ姉弟を超人的な力を持つ人間にしたのもヒドラである。
そして何よりも、前世で両親を殺したのがヒドラなのだ。
ナチス、そしてヒドラが生まれたドイツを嫌悪してしまうのも無理はないのだろう。
トニーはドイツがヒドラと無関係とわかっているため、更に複雑な気分である。
「さてと、着いたぞ」
『生体反応は近くにありません』
「何だ?門番もいないのか?」
『そのようです』
トニーはそれを聞いて、呆れる。
それでも非道な研究所なのかと。
とにかく、トニーにとっては好都合なので、ずかずかと中へ入る。
「管制室はあるか?」
『あります。右を曲がったところに』
F.R.I.D.A.Y.の指示通りに進み、管制室の前に立つ。
『生体反応なし』
「ここもか……」
F.R.I.D.A.Y.の報告を受け、中へと入る。
中はモニターだけが映っており、電気は点いていない。
「どうやら地下があるようだな。恐らくそこで研究をしているんだろう」
『しかし地下への階段が見当たりませんが』
「それは僕も思った。恐らくこの部屋に隠し階段があると思うが……」
モニターに映し出されている施設内の地図を見て、トニーはそう言った。
トニーはスーツ、『マーク43』を前面から脱ぐ形で、外に出る。
ちなみだが、43以降のスーツはまだ開発途中である。
「F.R.I.D.A.Y.、お前は見張ってろ。誰か来たら睡眠ミサイルを撃っておけ」
『了解しました』
トニーは壁をノックしながら、隠し階段を探していく。
「隠し階段……、隠し階段……。ん?」
そして、壁の一面だけ音が違う事に気付き、その一面の壁を強く蹴り破る。
「うん、ビンゴだな」
その先には見事に隠し階段があり、トニーは下へと降りていく。
『トニー様、この研究所は廃棄された可能性が高いです』
「……あぁ。地下室を見て僕も思った」
下に降りたトニーの言う通り、地下室は研究所らしくなっていたが、所々が荒れており、悲惨な状況になっていた。
「とりあえずF.R.I.D.A.Y.も下に来い。……ん?」
『どうなされましたか?』
トニーがそう指示した途端、人の気配を感じる。
「……けて」
微かに声も聞こえる。
「……たすけて」
「たすけて」と言っている事に気付いたトニーは大急ぎでその場に向かう。
そこには、1人の少女が倒れていた。
「大丈夫か!?」
その少女を抱え、容体を確認する。
脈はあるが、かなり弱くなっている。
「……しにたく……ない」
「助けてやるから意識を手放すな!」
トニーは大急ぎで少女をヘリに乗せ、自宅へと連れ帰った。
少女――つまりクロエだが、かなりギリギリの状態であった。
自宅に連れ帰って来る間に一度、心肺停止状態になりかけた。
束と協力し、あらゆる手を尽くしたのだが、既に人の手では手遅れになっている状況だった。最終的にISコアを心臓の代わりに埋め込み、ISコアに搭載されているナノマシンによって、一命を取り留めた。
トニーは少女を見て、前世でアーク・リアクターを胸に埋め込んでいた自分の姿と重ねて見てしまった。
「この子、どうするの?」
極度の人見知りの束が珍しく、初対面である少女を心配している。
「僕が面倒を見ようと思う」
「私も手伝うよ」
「すまない、助かるよ。女性の事に関しては僕はできないからね」
その後、目を覚ましたクロエは、最初こそ混乱していたが、徐々にトニーと束のいる環境に慣れていき、今では家事を任せられるくらいには成長している。
裏設定集
・女尊男卑の影響と前世の記憶があるので、前世ほどトニーは女遊びをしていない。
・クロエの両目は普段は閉じており、生活するには杖を必要とするが、トニーがそれを良しとせず、生活補助の名目として、AIの『W.E.D.N.E.S.D.A.Y.』を与えている。そのおかげか、本来なら××××な料理も普通に作れるようになっている。
ということでオリジナルAIがクロエちゃんに実装です。
実際、エイジオブウルトロンでトニーがJ.A.R.V.I.S.の代わりになるAIを探していた時に、F.R.I.D.A.Y.の他にもあったぽいのでそれの1つとして考えてください。
また、クロエちゃんがどうなっているのかよくわからんちんなので、こうなりました。実際はどうなってるのか教えてくださると嬉しいです。