トニー・スターク が あらわれた ! 作:クレイジー松本キヨシ
「ここが……トニー・スタークの
「大した物は置いてないぞ?」
束は部屋のあちこちを見る。
あの後、何事もなく千冬を連れて自宅へと戻り、束も向かえに行って、今に至る。
千冬はISは待機状態になっているものの、未だに気絶している。
トニーもスーツを脱いでいる。
「さて、まずは君の質問から答えてあげよう。篠ノ之束」
「束で良い」
「なら束と呼ぼう。僕のこともトニーで良い」
適当な作業台の上にトニーは座り、束は用意された椅子に座る。
「トニーが着ていたのは……何?」
「早速その質問か。まぁそう来るとは思ってたけど」
トニーはそう言うと、作業台の上に置かれていたケータイのボタンを押す。そのケータイは時代を先取りしているようなデザインをしている。
すると、トニーがスーツを装着したサークルの中から、組み上がっているマークIIIが現れる。
「パワードスーツだ。君の造ったISと同じようなね」
トニーはマークIIIを視界に入れつつ、説明をした。
「……名前は?」
「……アイアンマン。そう、アイアンマンだ」
名前を変えようとも思ったが、随分と慣れ親しんだ名前を今更変えることもどこか面倒くさいと思い、アイアンマンと言った。
「鉄の男?」
「実際には鉄は使ってないぞ?金とチタン合金を使っている」
3Dホログラフィックモニターを出し、設計図を見せる。
束はそれを穴が空きそうなくらい、見始めた。
「すごい……量子格納を使ってないのに……あらゆる通信網の傍受……。本当にすごいや……」
「おいおい、そんなに褒めても何も出ないぞ?それと、君は僕に聞くことがあるんじゃないのか?」
そう言って設計図をしまい、スーツも格納庫に戻した。
「そうだね……。あのミサイルや戦闘機は誰の差し金?」
「少なくとも後者は前者の結果を受けた各国家のものだろう」
「前者は?」
「F.R.I.D.A.Y.」
『かしこまりました』
F.R.I.D.A.Y.の名を呼ぶと、モニターに映像と情報が映し出される。
「これは僕がアメリカ軍事基地に行った時の映像なんだが……」
「トニーがアメリカ軍事基地に行ったからアメリカからミサイルと戦闘機が飛んで来なかったのか」
「そういうこと。それでこの人物が各国のミサイルの砲台を日本に向け、アメリカのミサイルキーを押そうとしたところで僕が捕らえた訳だが」
「でも各国のミサイルは飛んだ。つまり、各国の軍事基地にもミサイルキーを押した奴らがいる」
「そう、話が早くて助かるよ」
ミサイルなんてものは普通に考えてネットワークで管理なんてしない。せいぜい砲台の向きを変える程度のことしかネットワークで管理しない。もしミサイル全体をネットワークで管理していたら、それこそアメリカのミサイルも飛んでいた。つまり、ミサイルを撃つ時には物理的な操作が必要なのだ。
トニーが行き着き、束も辿り着いた結論はこうだ。
それをトニーが代表して口にした。
「今回のこの世界を巻き込んだ事件。何かの組織が動いているんだろうな。目的はわかっているんだろ?」
束にそう言うと、首を縦に振る。
「私のISを使わせるため……」
「そう。ISが宇宙活動の為の物ではなく、
それを聞いた束は歯軋りし、拳を強く握る。
それはそうだろう。凡人を見返す為とは言え、まんまと誰かの策に溺れたのだから。
それに束がISを造った理由。それは人類の宇宙進出のためだ。
それが兵器として見られるように使われたのだ。造った者からしたら堪ったものではない。
「あの発表会にその組織の関係者がいたんだろ。そして思った。今までにない、強力な兵器として使えるのではないか、と」
「……ッ!」
トニーは皮肉で言ってるのではない。事実を言っているのだ。
「……時代が動くぞ。各国がISについての説明を求め、各国はそれを欲しがる。あの手この手を使って日本は承認せざるを得ない。日本はそこまで強い国ではないだろうしね。そして、例え君が戦争の為に使うなと言ったところで、自衛の為と言って軍にISを設置するだろうな」
そこまで言って、トニーは一息いれるために、コーヒーメーカーがある場所に向かい、自分と束、千冬の分のコーヒーを淹れる。
千冬の分はロボットアームのダミーに持って行かせ、束の分はトニーが持って行く。
「……そうしたら君のアイアンマンだって」
束はトニーに聞こえるように呟く。
「そうだな。しかし置かれている環境が違う。アイアンマンは正体不明。映像はF.R.I.D.A.Y.が全て別の物にすり替えるか消去している。もし僕だとバレたところで軍がスーツを寄越せと言ってきたとしても、僕は渡さない。無理矢理奪うものならスーツは爆発させる。それにアメリカだ。各国からの圧力も耐えれるだろうな」
トニーは自分のコーヒーを呑み、束の分は彼女に渡す。
束はコーヒーを両手で包み、顔を伏せる。
「じゃあ……」
そして勢いよく顔を上げ、怒りの表情でトニーに言う。
「じゃあどうしたら良いのさ!私はただ、ISによって宇宙活動が活発になれば良いなって思って……!」
「それだよ」
「えっ?」
トニーはコーヒーを作業台の上に置き、言った。
「元々ISは宇宙活動の為の発明だ。それが今後、兵器として使われるようなことになってしまったら、それを止めることはできないだろう。しかし宇宙活動の為の発明だということを君は忘れてはいけない。兵器というイメージを、宇宙活動の為の発明というイメージに戻していくんだ。その為なら僕も協力しよう」
そしてトニーは束の前まで向かい、手を差し伸べる。
握手だ。
「できるのかなぁ……」
「君と僕ならできるだろ。僕は既に宇宙活動の為のアイアンマンも造ってる」
「えっ」
「それに僕は天才だ。君も天才と呼ばれているんだろ?」
「うん」
「
その言葉、発表会でも言った言葉を、束に投げかける。束はそれ聞き、目を大きく見開き、何かに気付いた。
目には涙が溜まっていく。
そして、トニーの握手に応えた。
「うん、そうだね」
片手で溢れそうになる涙を拭う。
「そういうことだ。よろしく、束」
「よろしくね、トニー」
ここに天才と
「んん!私のことを忘れていないか?」
――そこで、今の今まで気絶していた千冬が目を覚ました。
「ち、ちーちゃん!」
「おや、お目覚めか」
いきなり目覚めた千冬に束は驚く。トニー然程驚いてはいないが。
「大分前から起きてはいたんだがな……。そんなことよりも、トニー・スターク「トニーで構わない」……トニー、束をよろしく頼む。わかるように、彼女は不器用でな」
「ちーちゃん!」
束は恥ずかしそうに千冬に怒鳴る。
「不器用な女性というのもそれはそれで良い。それと、君にも手伝ってもらうぞ。えーと、ちーちゃん」
「織斑千冬だ。千冬で構わない」
「そうか。千冬は宇宙でISに乗ってもらうことになるだろうからな」
「その時は任せてくれ」
千冬は少し笑い、そう答えた。
『トニー様、大変申し訳ないのですが』
「なんだF.R.I.D.A.Y.」
すると、F.R.I.D.A.Y.が話しかけてくる。
千冬は何処から声がするのかがわからず、辺りを見回しており、束は束で目をキラキラさせている。……研究者の
『犯人が所属している組織が判明しました』
しかし、F.R.I.D.A.Y.の言葉によって、空気は緊迫したものになる。
そして、F.R.I.D.A.Y.は続けて言った。
『
次回は少し飛ぶゾ〜。