トニー・スターク が あらわれた ! 作:クレイジー松本キヨシ
それと記者会見直後までをダイジェスト形式?でお送りします。
前話でオータムがアイアンマンと呼んでいましたが、トニーがアイアンマンだと言ったのは束しか知らないので、セリフの一部(アイアンマン)を消去しました。
ある意味サプライズ演出があると思います。
第2回モンド・グロッソで起きた誘拐事件の後。
誘拐事件の後始末をドイツ軍がする代わりに、千冬が1年間ドイツ軍の特別教官になった。
千冬がいない間の織斑兄弟は、日本の重要人保護プログラムによって、厳重に守られていた。
トニーと束は2人に何かあったらすぐに駆けつけられるように、準備をしていたが、杞憂に終わった。
○○○
その1年後。
千冬は特別教官の職務を終え、日本に帰国。
今度はIS操縦者育成機関の"IS学園"の教師として、教壇に立ち、鞭を振るう。
その時、トニーが「前々から疑問に思ってたんだが、千冬は人に教えることが出来るのか?」と言ったところ、千冬がキレた。その後は喧嘩となり、仲裁人はまさかの束である。
ドイツ軍では1人の落ちこぼれ兵士が部隊最強にまで上り詰めた。それをやってのけたのはその兵士だが、特訓を行ったのは千冬である。
なので千冬の人に教える才能は、
束は相変わらず世界中を飛び回っては帰宅を繰り返している。
クロエはそれに付いて行き、世界を見て学び、スポンジのように知識を吸収している。
ナタルは、やっとスターク・インダストリーズ製のISが出来たからか、忙しい毎日を送っている。
ナタルは四苦八苦しながら、操縦技術を磨いている。
トニーは相変わらず社長業の傍ら、アイアンマンとして活動している。
最近では束から貰ったISコアの研究が順調のようで、アイアンマンに取り入れられるかどうか考えている。
○○○
そして更に1年後。
世界は激震する。
"世界初、ISの男性操縦者見つかる"
社長室。
高価な椅子に座り、優雅にコーヒーを飲みながら、見出しでそう書かれた新聞をトニーは読んでいた。
「織斑兄弟がISに乗れるようになったのか」
『そうみたいだねー。予想はしてたけど、まさか本当にこうなるとは思ってなかったよー』
パソコンのモニターには束が映り込んでおり、そう言っている。
トニーと束は独自のネットワークで通信している。
なので、世界各国に束の足は掴めない。
まぁ、既に半分の国は諦めているが。
「最初の搭乗者が千冬だからか……」
『多分ね。全ての元となったISコアにちーちゃんの情報が登録されたからね。そこを基準にした結果、女性にしか乗れなくなっちゃった』
「しかし、遺伝子が最も似ているその家族。織斑兄弟はISに乗ることが出来た」
この場合、ISコアが織斑兄弟を
『でも、今ならトニーもISに乗れるんじゃない?』
「まぁ確かにそうかもな」
トニーは束から受け取ったISコアの研究を続けた結果、ISコアの初期化に成功した。
要は千冬が白騎士に乗る前の状態にすることができたのだ。
「だけど僕にはアイアンマンがあるからね。保険程度に考えておくよ」
常に持ち歩いているISコア。
以前トニーが胸に埋め込んでいたアークリアクターと同じ形に加工した物を手に取り、眺めていた。
『そういえば、アイアンマンもそろそろ正体バレそうだね』
「人気者は辛いな。……やっぱりそろそろ潮時か」
『ということは……』
「あぁ。束はF.R.I.D.A.Y.と協力して全国ネットに配信してくれ」
トニーは椅子から立ち上がり、ネクタイを軽く締める。
『あいあいさー!面白いものが見れそうだ!』
「そうだな。僕には記者達が鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているのが目に浮かぶよ」
トニーは束との通信を切り、社長室を出る。
社長室の側にはナタルがいた。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
2人は記者会見場になっている1階のエントランスまで、並んで歩く。
「ついに私達の
「それ自分で言ってて恥ずかしくないか?」
エレベーターを待っている間に、2人はエレベーターの扉で身だしなみをチェックする。
「サプライズを用意しているから、楽しみにしていてくれ」
「それ今言ったらサプライズじゃない気がするんですが」
「……そうだな」
特に悪びれる様子もなく、トニーはエレベーターに乗る。それに続いてナタルも乗った。
今回行われる記者会見では、スターク・インダストリーズ社が初めて開発したIS、"スカイファルコン"のお披露目会となっている。
しかし、それ以上の発表があることを、ナタルは知らないのであった。
○○○
エントランスに着くと、トニーはすぐにマイクがある所まで行く。ナタルはすぐ近くで控えている。
「諸君、おはよう。今日はすまないね、こんな所での記者会見で。何せかなりの数の報道陣が詰め寄っていて、その、会議室とかだと入りきらない」
その言葉を聞いた記者達は苦笑する。
エントランスを急遽、記者会見場にしているが、それでもギリギリと言ったところだ。
「さて、早速始めるとしよう。我が社唯一のIS操縦者、ナターシャ・ファイルスだ」
トニーは手をナタルの方に向けると、ナタルは記者達に向かって、一礼する。その際、大量のフラッシュが焚かれる。
「おいおい、まだ撮って良いなんて言ってないぞ?……まあいいんだけどね」
トニーは苦笑し、続けて喋る。
「今回、我が社が開発したIS。機体名は"スカイファルコン"。わかるように、空をファルコンのように飛ぶ、というのがテーマだ」
トニーは説明し終えると、ナタルへ目配せする。
ナタルはそれを待ってましたと言わんばかりに、スカイファルコンをコールした。
一瞬の光がナタルを包み込む。
そして、光が収まってきて、ISの姿が見えるようになる。
全体的に見ると、他のISよりもひと回り小さい。
突起部分は全くなく、装甲は丸みを帯びた印象を受ける。
脚にスラスターが2つ付いていて、1番特徴的なのは背中部分だろう。
背中にスラスターが付いているが、それに隣接するような形で翼が付いている。
ナタルはその翼を自由自在に動かす。前に持ってきたり、収納したり。
伸縮性のある翼だということを示した。
「武装はサブマシンガン2つと自律型索敵機"スカイウィング"。"スカイウィング"は背中部分に収納している」
ナタルが背中を向き、スカイウィングを飛ばす。
記者達はオォ、と感嘆の声を上げ、記者達の頭上を飛び回る"スカイウィング"に目を向ける。
スカイウィングがナタルの元へと戻った時に、記者1人が質問した。
「スカイファルコンは第3世代の機体ですか?初めての開発にしては随分と挑戦しましたね」
トニーは答えた。
「勿論だとも。初めて開発した割には上手くできてると思ってる。流石僕だ。他企業に遅れは取ってないと思う」
スカイファルコンを見たトニーは自分を賞賛し始めた。
トニーが自分1人で話していることに気付くと、咳払いをして、気を取り直した。
「これで今回の発表は終わりだけど、僕になにか聞きたいことある?」
すると、前にいた女性記者が手を挙げた。
トニーは指名すると、彼女は質問を始めた。
「トニー・スタークさん。ISの男性操縦者が現れましたが、それについてはどう思いますか?」
その質問を他の記者達も聞きたかったのか、トニーの言葉に耳を傾けようとする。
「これから大変なことになるだろうな。ハイスクールは決まっていただろうけど、IS学園に強制入学になるだろう。周りは女の子ばかり。男は兄弟ただ2人。いや、でも周りは女の子ばかりだから羨ましいな。僕もIS学園に入りたくなってきたな」
口元は笑いながら、質問に答えた。
トニーの願望を聞いた記者達は苦笑する。
「では、
先程と同じ女性記者が質問する。
トニーは少し間を空け、その女性記者に訊く。
「……メタルマン?」
「えぇ。赤と金の色をしたアーマーを身に纏っていてヒーローと呼ばれています」
「写真とかある?」
「こちらに」
自分の知らないところで新しいヒーローでも現れたのかと、トニーは思い、女性記者から写真を受け取る。
写真にはアイアンマンが写っている。
トニーは眉間にシワを寄せ、もう一度女性記者に訊いた。
今度は写真に写っている
「これが……、そのメタルマン?」
「はい。そうですが?」
トニーはそれを聞いて、片手で頭を抱えた。
何でそんな情けなさそうな名前になっているのか。
確かに
しかしトニー自身からしたら、やはり慣れ親しんだアイアンマンの方がいいし、メタルマンだと言い表せない感情が込み上げてくる。
「どこからメタルマンなんて名前出てきた?」
「日本の某動画サイトからだそうです。そこから世界的に広まっているようです」
「このヒーローの名前はアイアンマンだ」
「何故トニー・スタークさんがその方の名前を?」
思わず名前を訂正してしまい、墓穴を掘ってしまった。
女性記者の言葉に会場は騒めく。
ナタルも心配そうにトニーを見ている。
「わかった、静かにしてくれ」
トニーがマイクを使ってそう言うと、会場は静かになった。
「このヒーローについてだが」
トニーは写真に写っているアイアンマンを指差しながら、会場内にいる全員に見せる。
「このヒーローの名前はアイアンマン。何でアイアンマンって名前を知ってるかって?」
そして、トニーは言い放った。
「――私がアイアンマンだ」
このトニーのアイアンマン宣言は、束とF.R.I.D.A.Y.によって全世界に配信された。
そして織斑兄弟に次ぐ、世界を震撼させるニュースになった。
某動画とは一体何ニコ動画何だ!?
そして完全にアイアンマンに場を持ってかれたスカイファルコンとナタルさん。