NEXTに入る際、U20でオリジナルチーム、オリジナルの予選などを考えているので、早くやってみたいという衝動に毎日駆られています。
それでは今回は神崎との再会の回です。
それではどうぞ!
ユナイテッド・サンクチュアリ支部の半壊した翌日、クロノとユイはタイヨウからの誘いで現在電車でとある場所に向かっている。
「すみません。無理を言って一緒に来てもらって」
「何言ってるの?むしろありがたいよ。1人より心強いしね」
「そっちこそ、よく信じてくれたな。惑星クレイが実在するとか、そっからユニットが、俺たちの世界から呼び出されたとか・・・」
クロノたちはユナサン支部の出来事の後、タイヨウに惑星クレイが実在する話など、知っていることを全て話したのだ。
「・・・正直、まだ実感はわきません。でも、ユナサン支部で僕が見たあれは・・・何かとんでもないことが起きているのは感じます」
「タイヨウ君が見たそれが、ディペンドカードだよ」
クロノはタイヨウに自分の持っているディペンドカードを見せる。
「クレイのユニットを、こっちでどうにかするためのものらしい」
「これも・・・」
「使い方とかさっぱりなんだけどな。俺のイメージで呼ばれたユニットだって、伊吹は言ってた」
「こんな大事なものを・・・いいんですか?僕に見せてしまって・・・」
「事件にいた当事者なのに、何も教えてもらえないなんて納得出来ねぇだろ?」
「だってさ」
「ありがとうございます!」
タイヨウはクロノ・ドラン以外のディペンドカードの白黒のカード、グレードが書かれていない方に気が付く。
「こっちは名前がないんですね。グレードとかも・・・」
「その辺もな、結局全然わかってねぇんだよ、俺には。だから、知ってる可能性がある奴に聞くしかねぇ」
「そうだね。私も、あれからどうしてるのか気になるし、そろそろ会うにはちょうどいい頃かな。あいつ・・・神崎ユウイチロウに」
そう、3人が今向かっているのは、ユナサン支部の元支部長、神崎ユウイチロウがいる居場所だ。
TURN88「神崎との再会」
3人は電車から降りて、その次にバスに乗って、神崎がいるとされている山の登山前の場所に辿り着く。
「・・・本当にこんな所に、神崎がいるの?」
「何ヶ月か前に、この山で修業をしているのを登山者が偶然見かけたとか。ユナサン支部では、今でも神崎さんを慕ってるファイターもいて、情報が行き交ってるんです」
「・・・まぁ、行ってみるしかねぇか」
考えても仕方ないので3人は山の中へと入っていく。3人は山を登りながら神崎の修行について話している。
「しっかしよぉ、修行って何なの?」
「それは・・・やっぱりヴァンガードの修行なんじゃないんですかね?」
「山で・・・何するんだよ?」
「滝に打たれる・・・とか・・・?」
「・・・まぁ、神崎なら・・・やりそう・・・かな・・・?」
クロノは山を登りながら昨日の伊吹との会話について思い返す。
☆
『さっきの話の続きだが・・・』
『いけよ。忙しいんだろ?』
『・・・・・・お前の父が姿を消したのは、お前たち家族を巻き込まないためだ。その思いに、嘘はない』
☆
(・・・巻き込まないためって・・・超巻き込んでんじゃねぇかよ・・・!)
クロノは心の中でそう思っていた。
「クロノさん!」
「どうした⁉」
「いや、なんか変なもの見つけたんだけど・・・」
タイヨウとユイの視線には何やら石で作られた小さな変な像が置いてあった。クロノもその像を見てみる。
「これ、何でしょう?」
「馬に乗ってる・・・人・・・?」
「いや、ユニットか・・・?」
「もしかしてこれ・・・オーラガイザー・ドラゴンじゃないですか⁉」
「・・・ああ、言われてみれば・・・そう見えるかも・・・」
「・・・確かに・・・」
どうやらこの石の像はオーラガイザー・ドラゴンをモチーフにしているらしい。
「!あっちにも!」
タイヨウが指を指す方向には、今度は石の石像に似たようなものがある。
「こっちもだ!」
川沿いにあるところにも似たものがあった。
「こっちにもまた!」
さらに先に進むと、似たようなものが複数個ある。これらの彫刻を辿っていくと、今度は岩にも彫刻が掘り出されていた。
「・・・だんだんうまくなってる・・・」
先に進めば進むほど、オーラガイザー・ドラゴンの姿がうまく掘り出されているのがよくわかる。
「このまま石像を辿っていったら、神崎さんが・・・?」
タイヨウがそんなことを考えていると・・・
カツーン・・・カツーン・・・
何やら音が聞こえてきた。
「なんだ?この音?」
「⁉うわあ⁉」
「どうしたの⁉」
「あれ!」
クロノとユイがタイヨウが驚いた先を見てみると、そこにはオーラガイザー・ダムドの彫刻があった。しかもかなり完成度が高い。
「うわぁ、オーラガイザー・ダムドだ・・・」
「すげぇ・・・」
「クロノさん、ユイさん、あそこに人が・・・」
クロノとユイはよーく見てみると、確かにそこには人がいた。目に映ったのは、熱心に岩を掘り続けている神崎の姿だった。
「あいつ!・・・うわぁ!」ズルッ
「クロノさ・・・うわああああああああ!!」ズルッ
「え、ちょっ・・・あああああああああ!!」ズルッ
3人は足場で足を滑らせてそのまま落ちていく。木の葉がガードしてくれたおかげか大けがをせずに済んだ。
「いててて・・・大丈夫か、タイヨウ?」
「ええ。なんとか・・・」
「それよりさっきの・・・って・・・」
落ちた3人が目にしたのは、2頭の馬だった。
「「「う、馬あああああああ⁉」」」
目の前に馬が現れて3人は声を上げて驚いた。
「この子は・・・神崎さんの愛馬です」
「愛馬⁉神崎って馬飼ってたの⁉」
「じゃあさっきのは神崎・・・」
ガブッ!
「・・・ん?」
2頭のうちの1頭の馬がクロノの髪をかじっている。
「やめろー!何すんだよ⁉」
「ぷぷっw・・・餌と間違われるクロノの渦巻き頭www」
「ユイ、てめー!なに笑って・・・いてててて!」
「それは餌じゃないよ!食べちゃダメだよー!」
「いててて!離せぇ!」
ユイが笑っている中、クロノは馬から引き離そうとしている。
「下がれ!ヘルシャフト!エーアガイツ!」
そこに降りてきた神崎が黒い馬、ヴンダーアドウェントに乗り、白い馬、ヴンダーヘルシャフトと茶色い馬、ヴンダーエーアガイツを下がらせる。エーアガイツはクロノの髪を離した。
「大丈夫ですか⁉クロノさん!」
「ちょっとちぎれた・・・」
「少しだけ食われたってことだよねそれ?」
「この山は子供が遊びで分け入るところではない。早々に立ち去れ!」
神崎は3人に注意すると、タイヨウに気付く。
「・・・ん?貴様は、ディマイズの明日川タイヨウ」
「元・・・ですが・・・」
続くようにクロノとユイの存在にも気づく。
「!新導クロノ・・・佐倉ユイ・・・」
「クロノが神崎に聞きたいことがあるんだってさ」
ユイはそう言って、クロノに本題に入らせる。
「聞かせてもらうぜ!このディペンドカードについて!」
クロノがクロノ・ドランのカードを見せると、神崎は驚愕し、その後に口元に笑みを浮かべる。
「・・・そうか。俺の元から奪ったあれを、貴様に託したのか、伊吹は」
「!」
「貴様がディペンドカードの覚醒に成功したなら、俺に問う事など、今さらなかろう」
そう言って神崎はその場を去ろうとしていたが、クロノがそれを止める。
「俺だけじゃない!普及協会の名誉会長の明神リューズは、ディペンドカードを7枚まで覚醒させて・・・死んだ」
「!!?」
リューズが死んだと聞いて神崎は目を見開いていた。
「死んだ・・・だと・・・?」
「ご存知なかったのですか?ニュースでも、大きく報じられてましたが・・・」
「もしかしてその時も修行中だったの?」
「・・・死んだ・・・あの方が・・・」
これには神崎は驚きと動揺を隠せないでいた。
「・・・でも生きてる」
「!!?どういうことだ!!?」
「知りたければ、お前の知ってることを洗いざらい話せ!」
神崎とクロノは顔を見合っていたが、神崎はそのまま去ろうとする。
「お、おい!」
「・・・今は修行の途中だ」
「ちょ、ちょっとー!!」
「終わるまで待ちましょう」
「けど・・・」
「帰れとは言わなかった。きっと話してくれますよ!」
「察してちゃんじゃあるまいし・・・そう言えばいいじゃん・・・」
3人はとりあえず神崎の修行が終わるまで待つことにした。しかし待つ間3人は暇を待て余している。
「いつまでやるんだよ?」
「暗くなるまでですかね?」
「あ~、ヒマ~。私退屈とか嫌いなんだよね~・・・」
3人が待っていると、そこにエーアガイツが何やら鞄を持ってこっちに来た。その鞄を3人の前に落とす。中身は何個もある彫刻道具だった。
「これ・・・僕らも修行しろってことじゃないですか?」
「え~、神崎がやってるあれを?」
タイヨウの言葉にユイは心底嫌そうな顔をしている。
「冗談じゃ・・・」
ガブッ!
クロノが修行を行う事を拒否しようとすると、エーアガイツは再びクロノの髪をかじる。
「やめろっつの!!やりゃいいんだろ⁉やりゃあ!」
3人は不本意ながら神崎と同じ修行をやることになった。
「何で女の子の私が、こんなのやらなくちゃいけないの?」
「だいたいこんなんでヴァンガードの修行になんのかよ?なぁ?」
クロノはタイヨウにそう問うが、タイヨウは熱心に岩を削っているのであった。
「・・・素直なやつ」
「・・・タイヨウ君が頑張ってるんだから、私もしっかりしなきゃね」
クロノとユイはそれぞれ彫刻を再開する。
(どうして僕は・・・ユナサン支部を守れなかったんだろう・・・)
タイヨウはヒロキの思想について思い返す。
『正義は常に勝つ!悪は負けるしかないんだよ』
(・・・違う。それだけは、絶対に間違ってる。でも・・・どうしてあの子は、そんなことを言ったんだろう?僕は・・・どうしたらいいんだろう・・・?)
タイヨウはそんなことを思いながら岩を削っていく。ユイは熱心に岩を削っていく中、自分の叔母のことについて考えていた。
(・・・どうして叔母さんは、あんなことを言うんだろう・・・)
『あいつらは目的を果たすために必要な道具ってだけだ!』
(・・・それだけは絶対に違う!なんとかそれを証明させないと・・・!)
『今は生きていたっていう事実がうれしくて・・・』
(・・・ママは叔母さんのことを心配してくれてた。いったい・・・その十数年前、何があったんだろう・・・)
ユイはそう考えながら岩を削っていく。クロノは少しばかり休憩をとっていた。
『生きているのさ、新導ライブは』
(・・・正直、実感はねぇ。もうずっといないものだと思ってたし、今さら・・・)
『それは元々、お前の父が、お前のために残したものだからだ』
(だったらなんで、直接会ってそう言わない⁉何で伊吹もユイの親父さんも、ずっと黙ってたんだ⁉そんなに俺が信用できない⁉俺がガキだから⁉)
『・・・頼んだぞ』
(結局俺は、今でも伊吹の手のひらの上のままなのかよ⁉)
クロノは苛立ちを表しながら岩を削っていった。
☆
すっかり夕方になり、3人はそれぞれ彫った彫刻を見せ合う。
「すれいみー・・・なんですけど・・・」
「私は・・・ウルバスター・・・」
「俺は・・・クロノジェット・ドラゴン・・・」
よく見てみればそう見えなくもないが、お世辞にもうまいとはいえない出来だ。
ガブッ!
3人が苦笑いしていると、エーアガイツがまたクロノの髪をかじる。
「あ、また食われてる」
「やめろ!何でだよ⁉」
「頑張ったんだよ⁉僕らこれでも頑張ったんだよ⁉」
アドウェントに乗ってやってきた神崎は3人の出来を見る。
「・・・迷いがあるな」
神崎は一言そう述べた。
「うるせぇ!ずっと待ってたんだ!ディペンドカードのこと話せ!」
「・・・夕粥の支度は任せる」
「「はあ⁉」」
つまりは夕飯はクロノたちで作れと言っているのだ。神崎はそのまま今自分が住んでいる小屋に戻ろうとしている。
「ちょ⁉待てよ!」
ガブッ!
エーアガイツはまたまたクロノの髪をかじる。
「いい加減やめろ!ああ!どいつもこいつも!!」
☆
神崎の住んでいる小屋に向かっている中で、クロノは知っていることを全部話す。
「それで多分、その子供が明神リューズ本人なんだ。記憶と知識を新しい体に移し替えて・・・」
「そんなことが・・・」
事情を知ったタイヨウは驚きの表情をして、神崎は口元に笑みを浮かべる。
「世の理を曲げるか。さすがあのお方・・・」
「!あのお方?やっぱり神崎は、会ったことがあるんだね!明神リューズに!」
小屋に辿り着き、そこで神崎は自分の知っていること全てを話す。
「・・・7年ほど前になるか。普及協会で行われていたギアースのプロトタイプの実験。俺はモニターとして参加していた」
そう、神崎があのお方と呼び慕っていたのは、他ならない、明神リューズその人だったのだ。そして神崎はその際、ユニットが召喚されたという事を、3人に告げた。
「リューズがユニットを召喚した⁉」
それを聞いた3人は調理をしながら驚いていた。
「あれこそが奇跡。ヴァンガードファイターが行きつく頂点だと俺は感じた。俺は全てを賭けて己を磨いた。そしてユナサン支部の支部長に就任した時、送られてきたのだ」
神崎が持っていたディペンドカードはリューズが神崎に送ってきたものだったのだ。一緒に同封された手紙にはこう書かれていた。
『ファイターのイメージにより、奇跡は現実となる』
「ディペンドカードとは、クレイから召喚されたユニットとファイターとの契約の証。手にしたものはユニットを意のままに操ることができる。だが、そのためには凄まじい量のストライドフォースを必要とする。超越したファイターでなければ、実体化したユニットを操る前に、その身を滅する。俺は、ユニットを操るどころか、ディペンドカードを覚醒させることすらかなわなかった」
「そっか。だから神崎はユナサン支部のファイターを利用してディペンドカードを覚醒させようとしたんだね」
「自らの命を削るほど、強烈なイメージ力がなければ、惑星クレイとこちらをつなぐ道は開けない」
「「「!!」」」
神崎の言葉に3人はディペンドカードを覚醒させることの危険性に気付いた。
「文字通り、命懸けだ。ユニットをこの世界に呼び込み、ディペンドカードに契約させ、従わせるという事は・・・」
「もしかして・・・リューズが死んだのも・・・」
「ユニットを7体召喚したと言っていただろう?恐らくその反動だ」
あまりのスケールの大きさに3人は驚愕しかできなかった。
「時に佐倉ユイ、貴様は何ともないのか?」
「え?私?」
突然話に触れられ、呆気にとられるユイ。
「本当に、何ともないのか?」
「だから何の話?」
「俺とユナサン支部で対戦した時、貴様は実際に、ユニットを呼び出している。ディペンドカードを持っていないにも関わらずだ」
「ええ⁉」
「何っ⁉」
「ほんの束の間であったが、貴様のイメージは時空を超え、クレイのユニットをあのフィールドに降臨させたのだ」
「私が・・・?」
ユイが実際に、ディペンドカードを持っていないにも関わらずユニットを召喚させたことにクロノとタイヨウ、そして当の本人であるユイも驚いていた。
☆
一方、伊吹はとある場所で仲間の報告をスマホで聞いていた。
「了解した。そのまま追跡を続けてくれ。万が一動きがあれば、頼む」
そう言って伊吹はスマホの通話を切る。
「お疲れのようですね?」
「!!」
伊吹の背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。伊吹が後ろを振り返るとそこには東雲がいた。東雲は伊吹に塩大福を渡す。
「甘いものはいかがですか?塩大福。そこの店、有名らしいですね?ご存知かもしれませんが。近くなんですよね?ご自宅」
「・・・カンパニーとやらも、ずいぶん暇なようだな」
「もうすぐ審判が下される。あなたに」
「・・・こちらはいつでも構わないが?」
伊吹は懐からデッキを取り出し、東雲は肩をすくめて笑みを浮かべて缶コーヒーを飲む。
「せっかちな人だ。嫌いじゃありませんが」
「その相手、僕に譲ってください」
伊吹と東雲の前にシオンが現れる。東雲はシオンの姿を確認すると、笑い出す。
「・・・ははははは!嬉しいよ、嬉しい!サプライズに喜ぶ乙女の気分だ!」
「・・・彼が伊吹さんの行動を探ってるという情報が入ったので、少し張らせてもらいました。僕も彼には聞きたいことが山ほどある」
「何だい?綺場家の資金をストライドゲートシステムの開発に流用したこととかかな?」
東雲の言葉にシオンは東雲を強く睨み付ける。
「その目だシオン。それが見たかったから、俺はここにいる」
シオンの睨みに対して、東雲は不敵な笑みで返す。
「・・・カンパニーっていうのは気楽なところでね。明神さんの理念にそぐいさえすれば、各個人が自由にやって構わない。俺たちは明神リューズの部下でも家臣でもない。ただ志を同じくする同士というべき存在だ」
「志?」
シオンの言う通り、東雲はリューズの理念には興味はなく、志など持っているはずもない。
「・・・確かにね」
それを自覚しているのか東雲は笑みを浮かべる。
「俺はただ、見たいものをよりよく見える場所に移っただけのことだから」
東雲は残りのコーヒーを飲み干す。
「今日は業務連絡に来ただけなんだ」
「!」
「伊吹さん、あなたへの予告状です。あなたへの審判として・・・あなたが最も苦しみもがき、この道を選んだことを心から後悔するような、罰を用意させていただきました。どうぞお楽しみあれ」
伊吹は東雲を殴りかかろうとしたが、伊吹の拳を東雲は避わす。すぐさまシオンも東雲を殴りかかろうとするが、東雲は缶をシオンに投げつける。シオンは缶をはじき返す。東雲はバイクに乗り、そのままその場を立ち去った。
☆
食事を終えた3人はそれぞれの時間を過ごしていた。神崎は木を彫って、彫刻を開始している。ユイはカードを置き、その場でユニットを召喚しようと試みるが、案の定、何も出ることはなかった。
「・・・やっぱなんも起きないか・・・。ていうかそもそも、ディペンドカードを持ってないのに、召喚できるって、それこそ奇跡じゃんか・・・。(でも、もし本当にユニットを召喚してたとしたら・・・どういう気持ちだったんだろう・・・?)・・・あああ!もやもやする!」
ユイはもやもやして頭をかきだす。クロノは自分のディペンドカードを持って、自分のイメージを念じているが、何も起きない。
(・・・まだ不完全ってことなのか?それとも俺に、その力がないから?親父は何を考えて、俺にこのカードを残したんだ?)
クロノがそう考えている中、タイヨウは自分のデッキを調整しているが、いまいちしっくりしていないようだ。
(・・・違う。これも違う気がする。どうすればいい?どうすればあの子に・・・。僕はあの子に勝ちたい?・・・ううん、そうじゃない。僕は・・・)
『俺様の正義は絶対!敵う奴はいねぇんだよ!』
『ユナサン支部の理想こそが絶対に正しいんです!』
タイヨウはこれらのことを考え、どうすればいいのかと悩んでいた。
「何を迷う?」
「!」
「カードの声を聞け。そうすれば、道も見えてくる」
神崎はタイヨウにそうアドバイスをし、グレードの配分を少しだけいじる。
「カードの声・・・」
タイヨウはそのアドバイスでなんとなく実感を覚えた。
「!ぬあああ!いつの間にカードを⁉己の迷いが消えるまでは、触れまいと誓っていたのに!!」
神崎はすぐさま、彫刻を掘ることに戻る。神崎のアドバイスでタイヨウは納得のいくデッキが完成したようだ。それを見たクロノとユイは笑みを浮かべる。
「・・・あのお方は、拠点としていた場所を捨てて消えたと言っていたな?」
「ん?ああ、今残ってる情報がないか、マモルさんたちが調べてるみたいだけど・・・」
「・・・なるほどな」
神崎はクロノたちにさらなるアドバイスを与える。
「・・・貴様らの行動に審判を下すというのなら、まずは活動の拠点となった支部、計画の首謀者たち、そして・・・あの方の今後の動きを嗅ぎまわろうとする者達」
神崎のアドバイスに3人は顔を見合わせる。
☆
翌日の朝、神崎の愛馬たちはクロノたちをバス停のところまで送らせるため、クロノたちを乗せている。
「後は頼んだぞ、ヘルシャフト、エーアガイツ、アドウェント」
「・・・なんか・・・あ、ありがとうございます」
クロノは神崎に向けて感謝の言葉を述べる。
「・・・ちょっと神崎のこと見直したよ。意外と面倒見いいんだね!」
ユイは神崎に対して初めて満面の笑みを浮かべる。
「・・・二度と来るな!修行の邪魔だ。いけ!」
神崎の合図で愛馬たちはクロノたちを乗せて山を降りていく。
「「「うわああああああああ!!」」」
馬のスピードが速いためか、3人はバランスを取るのに精いっぱいだった。3人が見えなくなった後、神崎は笑みを浮かべていた。
☆
リューズの元いた古い拠点に研究員たちがカンパニーたちが消したデータを復興するために集まっていた。その場所がよく見える高い場所でヒロキは双眼鏡で覗いていた。
「おーおー、悪人共がぞろぞろと。俺たちカンパニーの秘密を暴こうってか?そうはさせねぇ!ここはビシッと俺様が、成敗させてもらうぜ!!」
・・・ヒュ~・・・
誰もいないのにただ1人で決めポーズをとるが寒い風が吹くだけだった。
「・・・ふっ、決まったな。んじゃ、とっととエースの野郎を呼び出してっと・・・ん?」
ヒロキはエースを呼ぼうとして連絡しようとすると、下の方に顔を向ける。そこには山から戻ってきた3人がいた。
「やっぱりここに来た。な、神崎の読み通りだ」
「・・・ん?」
ヒロキはクロノの髪型を見て、声を上げる。
「ああ!そのグルグル!もしかしてお前、伊吹の手下の新導クロノ⁉ってことはそこの女は偽善者の佐倉ユイ⁉」
「手下じゃねぇ」
「偽善って・・・それ言われたの2回目だね・・・」
ヒロキの言葉にクロノは気に食わなさそうな顔をし、ユイは苦笑いを浮かべる。
「悪の総帥、伊吹の手下なら当然、悪の中の悪!!ここで会ったが百年目!まとめて成敗してやるぜ!!」
「望むところだ。俺たちが勝ったら、カンパニーのことを洗いざらい話してもらうぜ」
「けっ、悪の分際でうぜぇんだよ。俺様の正義に逆らう奴はこの世にはいねぇんだよ」
「タイヨウ君から聞いてた通りの子だね。こりゃまたなんとも・・・」
クロノはヒロキとファイトするために上に上がろうとする。
「待ってくださいクロノさん。僕にファイトさせてください」
「!タイヨウ?」
タイヨウは2人に向けて首を縦に頷く。クロノとユイもタイヨウに向けて首を縦に頷く。タイヨウはヒロキの前に立つ。
「ふん、悪は懲りないねぇ。いいぜ、何度でもぶっ潰してやる!」
タイヨウとヒロキの再戦が始まろうとしていたのであった。
to be continued…
ユイ「いろいろお世話になったね。助かったよ」
神崎「礼を言われる覚えはない。行きがかり上そうなっただけのこと」
ユイ「でも、情報を教えてくれただけじゃなくて、止めてもくれたし・・・」
神崎「やめろ!こそばゆいわ!!」
ユイ「神崎って、結構いい人だったんだね。前と全然印象違ってたし、見直したよ!」
神崎「ぬ、ぬうぅぅぅ!とっとと立ち去れぇい!!」
TURN89「タイヨウVSヒロキ」