其の八極に   作:世嗣

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新しいやつの息抜きで書いたハロウィン特別編。
ジーク恋人if。
R15の限界を攻めていくような作品。まあラノベとかでももっとエロいのあるし大丈夫だろ。

ミッドにハロウィンあんの? とかティアナのファントムブレイカーが「パンツめくれぇっ」に聞こえるってくらい、意味のないツッコミはやめてください。華麗にスルーします。



鉄腕祭事

 

 

次第に寒さの気配を感じさせている風を防ぐように身を寄せながら小さなアパートへの階段を上っていく。

五つあるうちの左から三番目、つまり俺の部屋の扉を開けると服を脱ぐのももどかしくベッドに倒れこんだ。

 

「疲れた」

 

はあ、と息を吐いてポケットから机の方へ鍵とコイン型のデバイス、財布を投げ捨てると、教会騎士服の胸元のボタンを外した。

 

「飯、食うか」

 

重い体を持ち上げると冷蔵庫に入れてあるハンバーガーをレンジにぶち込んで解凍、しばらくして温まったものを一口かじる。強いケチャップとチーズの味、それに薄いパティーがマッチしてて、まあうまいと言えばうまいが。

 

「やはり姉さん(はやて)の味には劣るな」

 

既に八神はやての家を出て一人暮らしを始めてから数年が経ち、俺も聖王教会に就職した。正直、オリヴィエを祀ってるあたり『エデル』としてはあまり好まないが、まあ俺としてはそれなりにいい職場だ。人も良いし、オレの記憶を買って、給料もなかなかの額出してくれる。

 

味気のないハンバーガーの残りを口に放り込み、何か飲み物を出そうとした時、不意にベルが鳴った。

 

「む?」

 

思わず首をかしげる。

 

時刻は既に8時を回り、外はすっかり暗くなっている。特に来訪の予定もなかったはずだが。

 

訝しく思いながら解錠して扉を開いて、思わず声がこぼれた。

 

「ジーク……」

 

「やっほ、お仕事お疲れや」

 

流れるような黒髪。夏空をそのまま切り取ったかのような美しい空色の瞳。体つきは適度に鍛えられているためかすらっとしていて、なおかつ膨らむところはしっかりと膨らんだ女性的な体つき。そして、数年前から美少女とも言えたその容姿は、すっかり大人のものへと変わり、美しさを増している。

 

「其方、なんで?」

 

「ん? 恋人が相手の家に遊びに行くのになんか理由いるん?」

 

「いや、別にないが……」

 

そしてその美しい女性は、ジークリンデ・エレミアは俺の恋人、だったりする。

 

俺がなんでジークが来たのかイマイチわからず歯切れ悪く受け答えしている間に、ジークは「入るでー」と言ってコートをはためかせながら部屋に入ってしまう。

 

「ベットにジャーンプ! ひゃー、凄いシリウスの匂いするー。なんや安心するなぁ」

 

俺のベットでゴロゴロと転がりながら枕に顔を埋めるジーク。その姿に思わず自身の赤い髪をかいてしまうが、すぐにまあいいかと結論づける。

 

確かにジークの言う通り愛しい恋人だ。訪ねてくるのに理由はいるまい。

 

コートから覗く足をパタパタと機嫌よく揺らすジークに僅かに笑みを漏らすと、キッチンでコーヒーを二人分入れる。

 

一つは俺の赤いマグカップに、一年目の記念日にせがまれるように買った黒猫のプリントされたジークのマグカップ。

 

「ほら、コーヒー。砂糖は二つだったな」

 

「ん、ありがとな」

 

ジークが起き上がってベッドに腰掛けてマグカップを受取る。そして、俺もその隣に腰掛けた。

 

二人の体重に耐えきれなかったのか、安物のベットがぎしり、と音を立てて軋んだ。

 

「シリウス(ウチ)の砂糖の数なんかよう覚えとったなぁ」

 

「そのくらい覚えるさ」

 

「でも昔はそう言うタイプやなかったやんか。こう、殴り合い一筋! みたいな?」

 

「何、恋人の事だ。一から十まで、何から何まで覚えておきたいに決まっているだろう?」

 

「へ、へぇ……、そ、その、どうも」

 

ふ、と隣へ笑みを向けると、ジークは、顔を林檎の如く真っ赤にして俯いてしまう。その姿がたまらなく愛おしく、手を肩に回して抱き寄せようとして、まだ彼女がコートを着たままであると言うことに気がついた。

 

「ジーク、なんでコートなんか部屋で着ている? 暑くないのか」

 

「え、コート? ああっ! ここに来た目的忘れとった!」

 

どうやら指摘されるまで頭から抜け落ちていたらしく、ジークが驚いたように立ち上がる。

 

「なあシリウス、今日がなんの日か知っとる?」

 

「何って、『はろうぃん』という奴だろう? 仮装した子どもがお菓子をもらいにくる祭事」

 

「あれ、知ってるんや」

 

「今日はそのせいで孤児院とか回ったしな。先輩に軽く説明は受けた」

 

「ふーん、ちょっと意外や」

 

聖王教会の中には孤児院も兼ねた教会も多い。俺のような教会の騎士は今日の様な祭事ではそうした孤児院を周り、子どもたちの相手をするのだ。今回は、仮装した子どもたちにお菓子を配るのが仕事だった。

 

「それで? はろうぃんとジークが今日来た事、一体なんの関係があるというんだ?」

 

「え、えーと、それはなぁ……」

 

ジークが目線をそらしていじいじと指を付き合わせて、やがて意を決した様に口を開いた。

 

「きょ、今日な、久しぶりにヴィクターとかハルにゃんで集まったんよ。そ、それで話の流れで仮装することになって」

 

「ふむ」

 

(ウチ)はええって言ったんよ!? で、でもみんながどうしてもっていうもんやから、その、仮装、してみたんよ」

 

「それで?」

 

「……それが、思ったよりも可愛かったもんやからシリウスにも見せてあげたくなった」

 

最後は拗ねた様に唇を尖らせて、ちらりと俺の方を伺う。

 

「それだけや」

 

そしてぷいっとそっぽを向いてしまった。

 

「く、くく」

 

「な、なんや」

 

「く、くくくく、なんだ、それ……くく」

 

「わ、笑うことないやんかぁっ!」

 

「くく、すまんな。あまりにも可愛い言い草だったものでな」

 

「か、可愛いとか言わんでええ」

 

またもや拗ねた様にそっぽを向き、頬を膨らませる姿がなんとも言えず愛らしい。まあここまで恥ずかしがりながら言ってくれたのだ。後は俺が聞いてあげるべきだろう。

 

「ジーク、コート脱がないのか? 下に着てるんだろう、仮装の服」

 

「着てるけど……」

 

「けど?」

 

「私の、見ても笑わったりせえへん?」

 

「しないとも。お前はきっと何を着てても愛おしく思うぞ」

 

「ま、またシリウスはそういう事いぅ……」

 

「事実を言っているだけだ。やましいことは何もない」

 

「セリフがやましいんや。シリウス(ウチ)と付きおうてなかったら恐ろしい女たらしになっとったで……」

 

「今の俺がジーク以外と付き合うことはないよ。もしあるとすれば……」

 

「あー、もうそういうのええから! 服脱ぐから目ぇ閉じて欲しいんよ!」

 

赤い顔のジークはそう叫ぶと俺の方をジトッと睨んだ。どうやら俺の言葉はジークにとっては相当恥ずかしいものだったらしい。付き合って長いのだしいい加減慣れて欲しい気もするが。

 

言葉に従って取り敢えず目を閉じる。

 

「ちゃんと閉じたか?」

 

「ああ。ちゃんと閉じた」

 

「圏境使ってないな?」

 

「……今やめた」

 

「聴勁もやで」

 

「そのくらいいいだろ、裸だって──」

 

「わーわー! そういう問題やないから! いいからちゃんと静かに待っとって!」

 

はあ、と隠すつもりもなくため息を吐いて目を閉じても知覚できる系の技は全てやめる。ジークの方もそれを肌で感じ取ったのか、こちらも安心した様に息を吐いた。

 

ぷちり、と俺の部屋に小さな音が響いた。

 

その小さな音は一定のリズムで断続的に音を響かせていく。しばらくしてその音が止むと、今度はずりずりという衣擦れの音が聞こえ始める。

どうやらコートのボタンを外して、それから脱いでる音らしいのだが、目を閉じているせいで想像力が刺激されて、なんだか非常にいかがわしいことをしている様な気分だ。

 

「ええで」

 

しばらくして着替えが終わったらしいジークの言葉で目を開ける。

 

「ーーー」

 

そして、言葉を失った。

 

膝上まで覆う長い黒のニーソックスに、レースのついた赤いスカートは股下数センチまでしかなく、ニーソックスの間の肌色を目立たせている。

そして、特筆すべきは上半身。これまた赤のリボンがついた黒いキャミソールは胸だけしか隠しておらず、その彫刻の様な美しい腹部と臍を惜しげもなく晒している。そしてキャミソール自体もサイズが小さいのか、ジークの大きく膨らんだ胸の谷間を見せつけていた。

 

「ど、どうやろか」

 

ジークが消えそうな声で尋ねてくる。

 

背中には大きなマント、そして口元には紅と、鋭い犬歯があるあたり、所謂『ヴァンパイア』の仮装なのだろうが、そんな事など頭に入ってこない。

 

有り体に言おう。死ぬほどエロかった。

 

「ジーク」

 

「は、はいっ」

 

「最高に可愛く、愛らしく、そしてエロい」

 

「エッ、ろ……」

 

エロい

 

「そ、そんな力強く言わへんでもええからぁっ」

 

わたわたと慌てるジークを見て天を仰ぐ。

 

何処かにいる初代エデルよ、俺は未だそちらとの約束を守れているかは分からぬが、俺は今間違いなく幸せだぞ。

 

「ジーク、ありがとう」

 

「こんなシリウスの満たされた顔見たのいつぶりやろ」

 

「それはそうとして、ジーク、あれはやらないのか、『trick or treat』とかいう奴。孤児院の子どもは皆聞いてきたぞ?」

 

「え、だって(ウチ)服見せに来ただけやし。というか、シリウスお菓子持ってへんやろ?」

 

「何か問題か?」

 

「ありありやろ。絶対イタズラするハロウィンとか原義から外れとるって」

 

「ああ、それなら問題ない」

 

まだ着替えていない騎士服の胸ポケットからキャンディーを一つ取り出す。

 

「孤児院での余りだ。これならできるだろう?」

 

「でも、キャンディー貰ってもなぁ」

 

「こういうのは形だけでもやっとくのが礼儀だろう。ほら、早く聞いてくるがいい」

 

へいへい、と手招きすると、ジークはまあええか、と呟いて俺の方へ向き直って、はにかんだ様に笑みを浮かべた。

 

「ええと、シリウス、trick or treat?」

 

trick(悪戯)だ」

 

「え、でも手の中の……」

 

「はむっ」

 

「って、あああ! 食べたらあかんやろ!」

 

「ほら悪戯して来るがいいジーク!」

 

「で、でもぉっ!」

 

「其方はヴァンパイアであろうジーク! かぶっと来いかぷっと!」

 

「なんでシリウスこういう時に限ってノリノリなん?!」

 

キャンディーを口の中に入れて噛み砕き、完全に食べてしまうと手を開いてジークを迎える。

 

ジークはしばらく俺の広げられた腕を赤い顔で見つめていたが、やがて観念したかの様にそろそろとその中に収まってくる。その体を抱きかかえれば、騎士服越しに布一枚を隔てたジークの柔らかい胸の感触が伝わる。

 

「じゃ、じゃあ悪戯、するな」

 

そういうと、ジークはその犬歯の覗く口を小さく開いて、俺の首筋に小さく噛み付いた。

 

「は、ん───はむ、ちゅ──」

 

ちろちろとジークの舌が俺の首筋を優しく舐めて、甘噛みし始める。首筋に顔を埋める様なジークの態勢は俺の顔の近くに彼女の頭があるという事で、そのせいで髪から漂うラベンダーの様な香りを吸い込む結果になる。

 

「ん──」

 

首筋のもどかしい刺激と柔らかい体の感触、甘酸っぱいその香り、そして艶かしく漏れる声。どれもが酷く蠱惑的で、しかもそれが愛おしい恋人のものともなれば、我慢できるはずもなかった。

 

「ジークっ!」

 

「きゃっ」

 

思わず、ジークの体を抱きかかえる様にしてベットに押し倒していた。小さな声と共に首筋からジークが離れ、ころん、と転がった。

 

「シリ、ウス……」

 

とろん、とした瞳に見上げられて、もう我慢する様な理性は残っていない。

 

「ジーク、 trick or treat」

 

「え、(ウチ)仮装しとるからお菓子なんて……ひゃっ」

 

「じゃあ、悪戯しかないな」

 

見せつける様な腹を指先で、つつ、と撫でるとジークから可愛い声が漏れる。近くから見る瞳は濡れた様に潤んでいて、そのことが俺の中に燻る被虐心に火をつける。

 

「 trick or treat」

 

「やから、(ウチ)──んやっ。ダメ、跡ついてまうからっ──んんっ」

 

答えは聞かずに先ほど俺がされた様に首筋に唇を落とし返した。その白雪の様な首筋に沿う様にしてキスを落としながら、最後に鎖骨あたりへ優しくキスを落として顔を上げる。

 

潤んだ空色の瞳が俺を見つめる中で、囁く様にジークへ言葉を紡ぐ。

 

「首は、嫌か」

 

「────うん」

 

「ならどこならいいんだ?」

 

「そんなん、女の子に言わせんで欲しいんよ」

 

ふ、と儚いほどに美しい笑顔を浮かべたジークの笑顔。その表情に、狂おしいほどの愛しさを感じながら、俺はゆっくりジークとの距離をゼロにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






は? エロ。シリウスベタ惚れかよ。

ちなみに今回はTwitterで投票してもらって人選しました。

際どい黒猫ファビア、フリフリドレスハルにゃん、魔女っ子ヴィヴィオ、ヴァンパイアジークの四人が候補だったのですが、1、3、3、4でジークが選ばれる事に。ファビアェ……

次もこんな感じで投票で決まるからね! 次はいつかな! 気が向いた時にやるからね! 気になるなら見においでよ! 時々色々喋ってるから! 君の希望が推しのえっちな話へと繋がるのだ!

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