永遠の17歳。の後輩22歳   作:しおぽん

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働きねずみと夢追いうさぎ2

「へ~!菜々さんと真壁君って昔馴染みの知り合いだったんだ~!」

キラキラとした純粋な目が菜々姉ちゃんに突き刺さり、俺は頭を抱えながら目をキョロキョロさせたうさみみ少女?に目を向ける。

 

 

「そ、そうですよ~、お互いの家が近くてですねぇ~!」

目に見えて額に汗をかいている菜々姉ちゃん。

 

「おー幼馴染ってやつなんだ!あ、という事は真壁君もウサミン星出身ってことなんだね!」

天然なのかわざとなのかはわからないがニコニコしたまま少しずつウサミン星出身者を追い詰めていく。

 

「あ、あはははは~えっと草太君はうさみん星生まれじゃなくてですね~うーんと、あぁ!私が地球に来たときのホームステイ先が近かったんですよ。」

俺をひっそりとウサミン星出身者から除外したのはいいが、急ごしらえで作った話は哀れにも予想以上に姫川友紀をひきつけてしまう結果になって事を菜々姉ちゃんはまだしらない。

 

「あ、あれですよ、草太君小さいころはすっごく可愛かったんですよ!すごく甘えん坊で菜々姉ちゃん菜々姉ちゃんってヒョコヒョコついて来てですね!」

動揺からか真っ先に地雷原を駆け抜けるうさぎ、墓穴を掘るその姿に目元に涙が浮かんくるよ。

 

「中学生頃ぐらいから以前の様に遊ぶことも少なくなって寂しくなった覚えが・・・そう言えばその頃ちょっと意地悪な子に・・・っは!?」

郷愁に駆られてか17歳とは思えないような微笑をこぼした彼女、今この場面でなければ誰もが惚けるほどの表情。

しかし、現実は非常である。

ウサミン星人はその墓穴に身を入れ土を被せ花さえ供えた、完璧なアシストだ。

テーブルの下で右手をサムズアップさせながらこの話の行方を見守る。

 

「あ、あれ?菜々さん17歳で・・・あれさっき、真壁君確か菜々姉ちゃんって言ってたような気が・・・ねぇねぇ真壁君何歳だっけ?」

姫川友紀は頭に疑問符を浮かべながらそっと視線が菜々姉から俺に向けられる。

視線外の菜々姉の目にはしっかりと『打開案募集中』と書かれており少し上の虚空を見つめ逃避していた。

 

「22歳だよ、その理由は恥ずかしながら当時の安部さんもなんというか包容力があって年下ながらも甘えてたんだろうね。中学からはそれが恥ずかしい事に気づいて距離を置くようになった訳だ。」

理由付けとしては上策ではないだろうか、我ながら黙っていた10分の間で考えた内容としては上出来だ。

まさかのフォローだったのだろうか、逃避していた菜々姉ちゃんの目が爛々と輝き、俺に向けて胸の前に手を組み祈っている。

 

「小さい頃から菜々さんって大人の包容力みたいなのあったんだ・・・なんか納得いくかな!」小学生菜々さんのしっかり度合を見てみたいー!と姫川さんはテーブルに上半身と腕を投げ出し顔をテーブルに伏せた。

そして無事、熱狂的なキャッツファンを欺く事ができた俺はまた机の下で空いたもう一つの手で小さくガッツポーズを取る。

 

姫川さんは伏せた顔をパッと上げて俺の方に視線を向けた。

「ふふふ、それにしても真壁君は年下に甘えちゃうほどの甘えん坊ということだね。いいネタだ~!」少しイタズラっぽい笑みを浮かべメモをとるような仕草をする彼女。

 

「あ~やめてやめて、さっきの嘘だって。」

笑いながら手を横へ振り否定をする。

 

「もう遅いぞー!これはアイドルのみんな達に共有だー!」

そういうと姫川さんは顔を腕の中へ埋める。

ふと視線を菜々姉ちゃんに向けると少しホッとした表情であははと笑っていた。

 

 

 

 

 

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時間はそろそろ昼休憩を終える頃、お昼は姫川さんと一緒に喫茶店で済まし勿論案内も終えていたのでそのまま嵐の様に居なくなった。

「千川さんが言っていた時間まで少しだしそろそろ出ようかな。」

食堂があるにも関わらずお昼のメニューが豊富且つおいしいかなり人気でそうなお店である、勿論社員や許可証持っている人たちだけらしいが。

 

時計で時間を確かめ席をたとうとした時後ろから声をかけられた。

「草太君、さっきはありがとう。」

この呼び方はもしかしなくても菜々姉ちゃんである、振り返るとお盆を両手に抱えて立つ彼女がいた。

「気にしなくて大丈夫だよ、それにしても安部さんがここにいたなんて知らなかったよ。」

言葉の途中で菜々姉ちゃんが少し顔を歪めたがその後困ったような顔で笑う。

 

「ごめんね、実家を離れてからも連絡取ればよかったんですけど上京してから色々大変で・・・草太君は元気にしてました?」

そんな伺うような表情はやめてほしい、今も菜々姉ちゃんは菜々姉ちゃんだし連絡が取らなかったからといって咎めるというのも筋違いだ。

 

「うん、こっちも元気でやってたよ。昔と変わらず元気そうで本当によかった。」

菜々姉ちゃんは首と手をぶんぶんと横に振り慌てたように口を開く。

 

「そんなことないですよ!お肌やお化粧のノリが昔と比べると・・・あの頃なんてほぼ素顔だったのに・・・。」

相も変わらず墓穴を掘っていくスタイルは変わらないようで込み上げる嬉しさがあった。

「そうだ、草太君!今も野球はやってるんですか?インターネットでですけど草太君が出場した試合は欠かさず見ましたよ!もちろん!しっかり応援してましたよ~えっへん」

いつの間にか両手は腰に当てられ胸を反っている菜々姉ちゃん。

 

「あ~、止めたんだ。なんだかやる気がなくなってしまって。」

また、少し困ったような笑みで菜々姉ちゃんは座っている俺の頭の上に手を置いて一撫でする。

「草太くんの坊主頭触り心地がよかったのに勿体ないですよ~。でも今は今で格好いいからよしとしましょう!ほら、なでなでー!」

出社前にセットした髪をわしゃわしゃかき回されているが何故だか悪い気がしない。事務所に戻る前にセットしなくちゃとぼんやりと考えていた。

 

「色々ありますよね、本当に色々あるものですよね。」

勢い任せの手の動きは鈍り最後にゆっくりと一撫でして菜々姉ちゃんの手は止まった。

 

「安部さんの手が名残惜しいのは山々なんだけど、戻らないと昼休憩の時間が過ぎるからいいかな?」

その言葉を聞いて菜々姉ちゃんは顔を真っ赤にして手を引っ込める。

 

「そうですよね!お昼からの仕事も頑張ってきてくださいねっ。あ、あとできれば菜々姉ちゃんって呼んでほしいなあ・・・な、なんちゃって~」

顔は真っ赤のまま、むしろこの呼び名の件に関しては改めて考えると俺の方が恥ずかしい感じがする。

最初は驚いて咄嗟に呼んでしまっただけだし、社内、社外で公と私を混同させたくないのもある、そして何より姉ちゃんの『設定?』件もある。同じ事務所のアイドルにも誤魔化していたことを考えると大手を振って呼ぶわけにはいかないだろう。

 

 

妥協するなら

「今回みたいなことにならないように二人で会う時はそうするよ、菜々姉ちゃん。」

今回だけは許してほしい。

 

「はい!草太君!」

パッと笑顔が咲く、俺はこの笑顔が好きだったんだ。

懐かしい気分やほろ苦い記憶を振り切りカフェを出る。

 

それからエレベータで移動して目指す先は事務所。

今西部長や千川さん優しそうな職場の上司、心躍るようなサプライズもあり気分は良くその気持ちが自然と足を速める。

 

目的地に到着するころ事務所内から重低音な声が聞こえてきた。

恐らくこれからお世話になる『先輩』だろう、初の顔合わせになるが不安はなかった。

この職場で出会った人たちから感じた裏打ちがあったからだ。

朝と同じくノックをし入室の許可を得る。

 

「あぁ、真壁君ちょうどよかった。紹介し――――――

そこには背丈は185~8ぐらい、目の据えた三白眼、無表情の大男がいた。

立っているだけで威圧感の風体で一切表情を変えず大男はスッと一歩前へでて懐からナニカを取り出す。

 

 

反射的に目を瞑り、少し間が空き目を開けるとそこには名刺を出している

「これからよろしくお願いします。これからお互いに頑張りましょう、真壁さん」

重低音ボイスが威圧感に拍車をかける。

名刺を受け取るとシンデレラプロジェクトと銘打ちされており、目の前にいるプロデューサーの名前が書かれていた。

この大男、いやこの人こそがこれから『お世話』になる先輩である事を名刺が明確に示していた。

 

 

父さん、母さんやはり芸能界は怖いところです




タイトル名を主人公とアイドルを動物に例えて表記してるんですが・・・思いつかないです。

今後はタイトルで躓きそう。

じかいのこうしんもがんばります。
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