永遠の17歳。の後輩22歳   作:しおぽん

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独自解釈がでます。


働きねずみと夢追いうさぎ

キャッツの球団お気に入り選手のレプリカユニフォームを着ている彼女は相も変わらずメガホンをバットのごとく振り回している。

 

そんな彼女の後ろから、声を聞きつけたのか穏やかな雰囲気を纏った壮年の男性が出てきた。

「やぁ、真壁君早いねえ・・・」

少し糸目に見える何かを見透かす様に開いた。

「うん、うん、いい目をしているね。さぁ、こちらに掛けなさい。すぐに業務ともいかないから少し話そう。」

促されるままに俺は案内されたソファーの前に立ち一声掛けてから腰を落とす。

 

「固いなー、リラックスリラックス!」

ニコニコした表情のまま、俺が座っているの向かい側ではなくソファー横に平然と座るユニフォーム姿の彼女。

 

「あ、はぁ・・・すみません。」

というか誰だこの女・・・この格好から考えるに事務員等ではないだろうし、いや大企業だからこそ社内では働きやすさを追求したラフな格好を許容しているのだろうか?

しかし、他を見ればほとんどがスーツだ。一番最初に排除した事が想定されてきた。

 

まさかア イ ド ル ?

そんなまさか・・・、俺自身がイメージしていたアイドルはフワフワヒラヒラを着たメルヘンちっくなものなのだが・・・

まぁ、そのイメージも友人が無類のアイドル好き、最近の押しアイドルは765プロの伊織ちゃんという娘らしい。

一度テレビで見たが本当に「アイドル」というような娘だった。

 

その「アイドル」と比べてしまうと・・・なんだろう胸にこみ上げるこの気持ちは。

あくまでアイドルだとすればなんだけども。

 

「そっけないなー!知らない仲でも無いんだし・・・あぁ、そっかっ!私だけだった。」

笑顔のままグッと顔をこちらによせる。

 

「私は姫川友紀!346所属アイドルで好きな球団は強豪キャッツ!趣味は野球観戦!何か質問はっ?」

 

彼女の声には活力がありハキハキとした物怖じしない自信満々の笑み、そして何より

「え、あっあの顔が近い・・・です。」

不用心なこの女性はなんなんだ、無駄に距離感の近いその姿勢に年甲斐もなくドキドキしてしまう。

 

 

「あ、あはは~、ゴメンねー何だかさ!面と向かって話すのが初めてじゃない気がしてさあ。」

指摘を受けてか少し頬が紅潮している彼女。

 

「姫川君、真壁君が困っているからそろそろいいかな?」

「あ~、今西部長さんごめんなさい!」

向かい側に座っている壮年の男性が笑みを浮かべながら口を開いた。

「いいや、元気があっていい事だ。さて先程、姫川くんから紹介があったように私は今西といいます。私は君の直属の上司だ。」

これからよろしくと言ってからまた穏やかな笑みを浮かべる。

「そして君の隣にいるのは姫川友紀君だ。この会社に所属しているアイドルだね。もちろん、他にもアイドルはいるが紹介はしないよ知り合う機会も多いからその時にするといい。」

俺は相槌を打ちながら、これからの事を考える。

今西部長が言っていた通りにどういう仕事をしていくかはわからないがプロデュース部門なのだから少なからず接する機会があるだろう。

もちろん特異だとは思いたいが姫川友紀という女性を見るととある不安が浮かんでくる。ファンを構成する層がかなりニッチだと。

試案顔を見越したのか、その考えを断つかのように今西部長が話を続ける。

 

「あぁ、今ここにはいないがもう一人直属の部下がいてね。無愛想な男ではあるが君も学ぶ所があるだろう、今はとある大きな企画の為に出ていてね戻ってきたら紹介するとしよう。」

今西部長は最後にはなるがと一呼吸置いて言うと仕切りの向こう側に目配せをしていた。

 

するとそこから服装からおそらく事務員さんだろう綺麗な女性がでてきた。さすが346事務員さんですらアイドル級。

素晴らしい容姿もだがそれを置いて気になるのは三つ編みである、毎日セットしているのかと思うとその手間にただただ感嘆である。

「どうぞ、お茶です部長。」

事務員服の彼女はにっこりと笑いかけ目の前に置かれたテーブルにお茶を配膳する。

「ありがとう」と早速お茶を飲む小西部長。

 

「最後は彼女、千川ちひろさん事務職として在籍している方だ。社内でわからないことは私たちに聞いてくれればいい。」

「千川ちひろです、気兼ねなくなんでも質問してくださいね真壁さん。」

今西部長、千川さんの雰囲気にあてられたのか自然と肩に入った力が抜け緊張が解けていることに気付いた。

これが人の魅力というものなのだろうか、今まで抱いていた不安も無くなったとは言わないが小さくなったのは間違いない。

「千川さん、今西部長改めてこれからよろしくお願いします。」

俺は満面の笑みでそう応えた。

 

 

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それから1時間ぐらいだろうか、今西部長とプロデュース部門での主な仕事内容の話をしてこれからの方針を聞いた。

まぁ、さすがに新人にすぐ担当アイドルを付ける事はなく当分は今出先にいる先輩社員の後ろにつき経験を積むらしい。それからアイドルの担当、次いでユニットの管理との事。

 

「なに、難しく考えることはない一番に重要なのはアイドルの魅力に気づくことだ、もちろんそれだけではないがね。あぁ、もうこんな時間だ楽しい時間はすぐ過ぎるね、私はそろそろ失礼するかな。」

気負いすぎると君の為にもならないからねとこぼしてから残りのお茶を一飲みした。

 

そして千川さん、今西部長を通した事務的な手続きは終わり自分のデスクにも案内され荷物を置いた。

後ろに立っていた今西部長が口を開く。

「うん、それでは真壁君に会社の案内をしたいのだが・・せんかわk「はい!はーい!」」

 

ちらちらとこれまでの会話で横やりを入れてきた姫川友紀がここぞとばかりに手と声を張り上げた。

話を遮られた今西部長は苦笑いである。

 

「私がその仕事うけるよ!今日はレッスンが無いオフ日だし、紗枝ちゃんも来てないからね!ちひろさん今西部長さんダメかな?」

水を得た魚とはこのことか、目新しいものが手に入り生き生きとした表情が伺える。

 

「所属アイドルだから中の施設については詳しいし問題はないと思うけど・・・今西部長、真壁さんはどう?」

千川さんも忙しいだろうし、案内役がもらえるのであればありがたい話だとばかりに頷く。

「しっかり中の施設を見てきなさいそれだけでも勉強になるはずだ、姫川君もよろしくね。」

というと今西部長は扉から出て行った。

 

「それじゃ、行くよー!!」

天に向かって拳を掲げるアイドル、何故か様にはなっており一緒に腕を掲げそうになるくらいである。

「よろしく!」

上げかけた腕を右手で抑え照れて少し赤くなった顔を誤魔化しながら彼女の元気に応えるような返事をした。

 

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「どうだった?かなり広いでしょ!しかも会社の部署だけじゃないからね!中は使用中だからみせられないけどエステルーム、温泉、サウナ、各種レッスンルーム、食堂、公園!!」

本当に広い、テーマパークの様だ。しかもTV、映画撮影の制作等のスタジオも併設されていたのは驚きだった。

もちろん部署以外の施設にいくとやはりアイドルっぽい人たちを見かける事も多く、レッスンルームにはアイドル事情に疎い俺でもわかる高垣楓がいてテンションが上がったがここは仕事と思い我慢。

 

「本当にすごいな・・・さすが346プロダクションだ。」

何もかもスケールが違う。そう思うとこのプロダクションに所属しているアイドル全員が金の卵に見えてくる気もする。

大体の案内も終わったのか先行していた彼女が急に立ち止まった。

 

「で、最後はカフェ!」

笑顔のまま振り返って言ったその場所は最初に来たところ。

「姫川さん、朝早く到着して時間があったので一休みした所なので案内は大丈夫ですよ。」

勿論有無を言わさず、まーまーまーと背中を押され屋外にあるテラスへと誘導された。

 

「今、この時間だとスペシャルな店員さんがいるから楽しみにしててね!」

と言ってスッとスタッフルームへ駆けていくユニフォームの彼女。

それにしてもニッチなアイドルだな野球+アイドルか・・・というか彼女の場合はキャッツ+アイドルかな。

少し346の方向性を疑いたくなるが、でも確かに彼女の姿を見ているだけで不思議と元気が出るのは確かだろうなどと考えながらあの時無邪気に掛け声と一緒に上げそうになった左腕をなでる。

遠くでは何か打ち合わせをしているのか、何か驚くような声と気合を入れるような声が聞こえる。

 

 

部長から手渡された方針内容の資料に手を伸ばし目を通す。

「約1年後の始動目指すシンデレラプロジェクトについてか・・・」

このシンデレラプロジェクトとは来年の1月頃に行われるライブのメンバーの人たち『川島瑞樹』『高垣楓』『城ヶ崎美嘉』『佐久間まゆ』『十時愛梨』『日野茜』『小日向美穂』『輿水幸子』『白坂小梅』のプロデュースに関わる上で、インスピレーションを受け出先の先輩がこの企画を立ち上げ綿密に作り上げ銘打ちされたものである。

 

今、外出しているのもどうやら候補生の選出を現在行っているらしい。

企画の立案から各アイドルのプロデュース方針やそのアイドルの仕事をとる事などを統括しているのが先輩だと聞き一人でできるのかという疑問と一人でも企画の内容、実現性によってはこれからこんな大きなプロジェクトに携わることができると思うと鳥肌がたってくる。

 

「楽しみだなぁ・・・」

この先輩に会うのも楽しみ、そしてこの企画されたシンデレラプロジェクトに末端としてだが参加できることが嬉しく思えた。

 

すると、とたとたとこちらに人が駆け寄る音が聞こえる。

それは俺のテーブル近くで止まり一呼吸置いて口を開く。

「346カフェへようこそ!メニューはここに置いておきますね~。」

どこか懐かしいような声、そんな訳はないのに今日はいろいろあって耳まで疲れたのだろうかとまた少し笑う。

目を通していた資料をカバンへと収めてメニューに目を通す。

 

「新人プロデューサーさんこんにちは!訳あって臨時バイトをしていますがそれは仮の姿・・・きゅぴーん!!うさみんパワーでメルヘンチェーンジ!」

懐かしさは濃くなるあまり、メニューをテーブルに置き顔を上げる。

そこにはしっかりセリフに合わせてキレッキレのポージングを取る

「ウサミン星からやってきた歌って踊れる声優アイドル安部菜々17歳で~す!きゃは☆ミ」

中学生時代、近所に住んでいた初恋で憧れのお姉ちゃんがいた。

 

「な、なにしてるの?菜々姉ちゃん」

 

 

「―――――――っヘぇ!?!?!?」

 

 

父さん、母さん芸能界は予想以上に怖い所みたいです。

 

 




ちなみにこの菜々さんは27歳設定
主人公と5歳差です。
小さいころは5歳差って大きいけど22歳と27歳なら・・・ワクワクしますね。

じかいのこうしんもがんばります
あしたはむりです
お気に入り10件も付きました歓喜!励みになります。

※アニメシンデレラガールズの一年前から始まっております。
なお、川島瑞樹等が行うライブを2月から1月に今後のストーリー状で変更いたしました。

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