ストライカーズ・オーシャン【ジョジョの奇妙な冒険 Part6異聞】   作:オレの「自動追尾弾」

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気付いたら2年も更新できなくてすみませんでしたが、何とか年内に更新できて良かったです。


#88/ミリオン・モンスターズ・アタック! ①

#88/ミリオン・モンスターズ・アタック! ①

 

 

 

 

 

徐倫たちを『ミリオン・モンスターズ・アタック!』が襲う少し前、ルル・ベルは遠くに沈む夕日を見ながら黄昏れていた。先ほど、のどかに自分の『告白』の返答を受けて、彼女の気持ちは大分落ち込んでいた。

 

「………(フラれることは分かってはいたけれど、実際に言われるとやっぱりショックね………)」

 

そんな風に物思いにふけっていると、ルル・ベルの背中から声がかけられた。

 

「お嬢ー、あまり落ち込まないでー」

「裕奈………」

 

振り返った先にいた裕奈とハルナが、ルル・ベルを慰めるように言う。

 

「………心配は不要よ。別にこの程度のことで、落ち込んだりしないわ………」

 

ルル・ベルは気丈に振る舞い視線を水平線に戻すが、その顔にはどこか憂いの色が見え隠れしている。その様子に裕奈が呆れて苦笑をしていると、ハルナはうーむ、と腕組みをして何か考え込むような仕草を見せた後、ルル・ベルに近寄った。

 

「ルル・ベルさー、もしかして今まで、友達とかいなかった?」

「……っ!?」

 

唐突な質問に驚いたのか、ルル・ベルはビクッと肩を震わせ振り向く。そしてすぐに顔を背けた。どうやら図星だったようだ。

 

「今までのルル・ベルの様子見ていたけど、あんまり人と話すの慣れていないっぽかったし、多分、そういうことかなって思ったんだけど……」

「………意外に、洞察力はあるようね………昔からお母様にスタンドの訓練や暗殺(アサシン)(スキル)を叩き込まれていたせいか、同世代と話したりする機会が殆どなかっただけよ……」

「お嬢、そんな殺伐とした幼少期送ってたの………!?」

 

ルル・ベルの過去の一片を垣間見てしまった裕奈は思わず困惑する。一方のハルナは、(そーいや、千雨ちゃんも子供のころは似たような感じって聞いた気がする……)と思い出し、苦笑していた。

 

「まぁ、今までそれで困ったことはなかったし、特に気にしてはいないのだけれど……でも、そうね。確かに、私は友達と呼べる存在はいなかったかもしれないわね」

 

自嘲気味に呟きながら、ルル・ベルは再び視線を水平線に戻した。しかしルル・ベルは、少し寂しそうな顔をハルナたちに見せまいとしていたことを、ハルナは何となく察していた。

 

「ねぇ、ルル・ベル………」

 

ハルナがルル・ベルに話しかけようとしたその時、不意に気配を察したルル・ベルが顔を強張らせ素早く背後を振り向いた。

そこには、短く刈上げた髪の一部を剃った男性がフラフラと歩いてくる姿があった。全身ずぶ濡れで息も荒く、不気味な雰囲気をまとっている男性だ。

 

「な、何………!?」

「こいつ、いつの間に………!?」

 

ルル・ベルが警戒して身構えると、ハルナは驚いて目を見開く。すると男性は、虚ろな瞳のまま口を開いた。

 

「お、お前………ルル・ベルってんだろ………?」

「な、何………?」

 

男性のただならぬ様子に、ルル・ベルは戸惑いを見せる。ハルナと裕奈も緊張しながら男の動向に注意を払っていると、男は突然、口の端から赤い血を垂らして、その場に倒れた。

 

「えっ……? ちょ、ちょっと………!?」

「あ、あれはヤバイ………『()()()()X()』のヤロー………裏切りやがって………!」

「は?ミスターXって………?」

 

倒れた男に駆け寄ったルル・ベルとハルナが戸惑っていると、いつの間にか目の前に枯れ木を思わせるミイラのようなスタンドが、何体も現れた!

 

Fuuuuuuuuuuu(フウウウウウウウウウウウ)………』

「なにッ!「()()()()」!」

Fuoooooaaaaaaaa(フオアアアアアアアアアア)!!』

 

ルル・ベルが驚いている間にスタンド『ミリオン・モンスターズ・アタック!』は一斉に襲いかかる!

 

「くッ………!!」

 

ルル・ベルは思考を切り替えて戦闘態勢に入る。『サイケデリック・インサニティ』を出現させると両腕を交差させて『ミリオン・モンスターズ・アタック!』の攻撃を防御、回し蹴りを叩き込んで弾き飛ばした。

 

「ハルナ、紙とペンは!?」

「ここにあるよ!」

「それなら、そこの彼をスケッチブックに()()()、この場から逃げて!こいつらは恐らく『群生型』!他のみんなの所にもスタンドが現れているはずよ!コイツらは私が引き受けるわ!!」

「う、うん………!!」

 

ハルナは困惑しつつもスケッチブックに倒れた男の絵を素早く描くと、男を絵の中に閉じ込めてその場から離脱した。一方、『ミリオン・モンスターズ・アタック!』たちはすぐに体勢を整えて再びルル・ベルを睨みつけていた。

 

Fuoooooaaaaaaaa(フオアアアアアアアアアア)………』

「さて………」

「こいつら、さっきの感じだと結構破壊力(パワー)あるみたいだね?」

「……!」

 

ルル・ベルが『ミリオン・モンスターズ・アタック!』に向き直った時、裕奈が隣に立って話しかけてきた。裕奈の背後には『スーパー・スナイプ』が立っており、右腕のライフルを構えていた。

 

「……あなたも逃げてよかったのよ?」

「いやー、お嬢だけじゃあ流石にこの数はムズカシーかなって思ってさー♪」

『ソーソー。アッシラガ援護スルンデ、思イッキシ殴ッテキテイイッスヨ。』

「……はぁ、まったく、仕方のない子ね……」

 

呆れたようにため息をつくルル・ベルだが、その顔には僅かに笑みを浮かべていた。そして、裕奈とともにファイティングポーズを取る。

 

「狙撃は『スーパー・スナイプ』に任せて自分の身を守るようにしてちょうだい。()()()()()()()()()()()()()?」

「あー、うん!わかった!」

 

裕奈はルル・ベルの言葉から『不器用な気遣い』を感じ取り、嬉しそうに笑顔を見せた。

 

「……何ニヤついているのかしら?早く攻撃しなさい!」

「はいはいっと♪」

『ホイッス。』

 

裕奈が返事をすると、『スーパー・スナイプ』のライフルから放たれた弾丸が、『ミリオン・モンスターズ・アタック!』の1体の額を貫いた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

一方、ネギや明日菜と共に『ミリオン・モンスターズ・アタック!』と戦っていた徐倫と千雨たち。千雨は手にした小太刀で『ミリオン・モンスターズ・アタック!』を切り伏せ、ネギも『タスク』で2体ほどまとめて切り裂いていた。

 

「くそっ、キリがないわね……!!」

 

思わず徐倫が悪態をつく。すると、『ミリオン・モンスターズ・アタック!』の群れの後方から、何体もスタンドを蹴散らしてスバルとジョルノが駆けつけてきた。

 

「ネギ君、大丈夫!?」

「スバルさん!ジョルノさんも………」

「他のみんなの所にも、このスタンドの群れが出現したみたいなんだ………結構な数がいるようだ……ほかの場所ではジョースケたちが対処しているようだが、どれほど持ちこたえられるのか………」

 

スバルがスライド気味に急停止すると、ジョルノが呟いた。周囲の『ミリオン・モンスターズ・アタック!』は唸り声を上げてフラフラとゾンビのように近づいてくる。

一番近くにいた徐倫が避けると、振り下ろされた拳が壁に当たって小さな穴をあけた!

 

「群生型でこれだけのパワー………本体は近くにいるのか?」

「でも、このコテージの何処に……?」

 

徐倫とジョルノが考えを巡らせていると、明日菜がある事に気が付いた。

 

「あ!分かった!『橋の下』よ!海上コテージの下の海中に本体がいるんだわ!!」

「そうか!」

「いい読みね、明日菜!」

 

明日菜の言葉にスバルと徐倫が納得したようにうなずき合う。そうと決まれば、と徐倫とジョルノが『ストーン・フリー』と『ゴールド・エクスペリエンス』を発現させると足元の橋を睨みつけ、殴りつけた!

 

「オラオラオラオラオラァーーーッ!!」

「無駄無駄無駄無駄無駄ァーーーッ!!」

ズガガガガドガバギドガガガガガッ

 

2人はスタンドの拳の連打(ラッシュ)で橋を破壊すると、その下にいたスタンド使いの姿が露わになった!

 

「さーて、ごたいめ―――」

ザバァアンッ

「―――ん………?」

 

橋の下から現れたもの、それは全長2mもあろう『サメ』であった!!

 

「サササササメーーー!?」

 

まさかのサメに驚いていると、サメがネギの方に倒れ込んでくる!

 

「オラオラオラーッ」

バギィアーーッ

 

そこに、不敵な笑みを浮かべたストーン・フリーがサメに背を向けたままアッパーカットを喰らわせて、数m吹き飛ばした!

 

バギィッ

『Fuooo………』

「ん?」

「大丈夫かネギ?」

「あ、はい………」

 

徐倫がネギに尋ねると、ネギは目を点にして返事をした。その時、ジョルノは『ミリオン・モンスターズ・アタック!』のうち1体が吹き飛ばされて消失したのを確認した。

 

「今、スタンドのうちの1体だけが吹き飛んだ……?」

「何?」

「どういう事?」

 

ジョルノの疑問について考える間もなく、『ミリオン・モンスターズ・アタック!』の軍勢が攻撃を再開してきた!

 

「急に攻撃の手を強めてくるとは………」

「考える間を与えない気か……!!」

 

3人は迫って来たスタンドを殴り飛ばす。ちょうどその時、コテージから翼を持った少女が腕の中に少女を抱えたまま飛んで行くのを見た徐倫がネギに向けて叫んだ。

 

「ネギに明日菜、悪いけど千雨の方に行ってくれない?流石に空までは連中も来れないだろうけど、援護を頼む!」

「は、はい!」「わかった!」

 

ネギと明日菜は返事をすると、杖に乗って千雨とルーテシアの元に飛んで行った。

 

「さーて、今は目の前のこいつらをブチのめすか!」

「ええ!!」

 

3人は頷き合うと、『ミリオン・モンスターズ・アタック!』に向き直ってつっこんで行った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ルーテシアを抱えた千雨は、『アニバーサリー・オブ・エンゼル』を纏って上空に飛び上がっていた。目下では『ミリオン・モンスターズ・アタック!』と戦う徐倫たちの姿がある。それを見て、千雨は少し悔しそうに唇をかんだ。

 

「くそ、ルーテシアのためとは言え、すまない………!」

「千雨ちゃーん!」

 

千雨が小さく呟くと、後ろからネギが明日菜と一緒に杖で飛んできた。

 

「2人とも……」

「一応援護で来たんだけど、大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ。」

 

千雨は下にいる『ミリオン・モンスターズ・アタック!』を見ながら答えた。

 

「あのスタンド、結構なパワーがあるから本体が近くにいるんだと思っていたんだけど………」

「それでさっき、橋の下の海中にいるんじゃあないかと思ったんですけど、サメが1匹いただけで………」

「ああ、あそこで()()てるやつか………でも未だに他のスタンドがいるのを見るに、本体は別にいるって事なのか………?」

 

千雨は下にいるスタンドの群れを睨みつける。本体らしきサメが倒されても健在なところを見ると、別にいるのではないかと考えていると、腕の中のルーテシアが目を覚ましたのか、小さくうめき声を上げた。

 

「う……ん……」

「あ、ルーテシア………大丈夫か?」

「う……うん……ここは……?」

「今は空を飛んでる。スタンドの群れに襲われたんでな……ネギ先生たちも来てくれたんだ。」

「そ、そう……」

 

ルーテシアは少し困惑しながらも、千雨の腕の中で周りを見渡した。

 

「アイツらは空までは追ってこれないみたいだし、今のうちに対策を………?」

「クォー、クォー」

 

千雨がそう言いかけた時、こちらに向けてカモメが2、3羽、こちらに向かって飛んでくるのが見えた。

 

「………?」

 

カモメがこんな風に人に向かってくるなんて珍しいな、と思った千雨はカモメを見ていると、カモメの背後から『ミリオン・モンスターズ・アタック!』が出現した!

 

Fuuuuuuuuuuuu(フウウウウウウウウウウウ)!!』

Fuoooooaaaaaaaa(フオアアアアアアアアアア)!!』

「「「!?」」」

「何だと!?」

 

千雨たちが驚く間も無く、カモメから現れた『ミリオン・モンスターズ・アタック!』は歪んだ爪で斬りかかってきた!

 

Fuoooooaaaaaaaa(フオアアアアアアアアアア)!!』

「ちぃいッ!!」

 

千雨は咄嗟に翼で防御をするが、『ミリオン・モンスターズ・アタック!』の猛攻は止まらない。3羽のカモメは羽ばたいてその場に留まって、3体同時に『ミリオン・モンスターズ・アタック!』の腕で何度も斬りかかってくる。

 

「こ、コイツ………!!」

「カモメからスタンドが出てきた?じゃあ、下にいるヤツらは………!?」

 

ネギが猛攻を続ける『ミリオン・モンスターズ・アタック!』を見ながら疑問を浮かべる。明日菜と千雨も同じ事を考えていたが、その時、『ミリオン・モンスターズ・アタック!』の攻撃で翼の防御が弾かれてしまい、『ミリオン・モンスターズ・アタック!』の爪が千雨に襲い掛かった!

 

「しまった!!」

Fuuuuuuuuuuuu(フウウウウウウウウウウウ)!!』

バギッ

「うおおッ!?」

「キャア!!」

 

爪の攻撃は防御甲冑で防がれたものの、勢いで千雨は後方に押し出されてしまい後方のネギたち諸とも眼下のコテージに落下してしまった!

 

ゴシャァッ

「うぐぉッ………!!」

「ぐぅう……」

 

ネギたちはコテージの屋根を突き破って、中に落ちてしまった。咄嗟にネギと千雨が明日菜とルーテシアを庇ったために幸いにも大きなケガは負わなかったが、ネギと千雨は苦痛の声をもらした。

 

「く……ッ、大丈夫ネギ!?」

「な、何とか……」

 

明日菜がネギに尋ねると、ネギは苦しそうに返事をした。千雨も頭を振りながら起き上がると、自分たちがブチ破った穴から『ミリオン・モンスターズ・アタック!』がこちらに向かって飛び込んでくるのが見えた。

 

「ま、マズい!コテージの中じゃあ、逃げ場が……!」

『『『Fuoooooaaaaaaaa(フオアアアアアアアアアア)!!』』』

 

千雨が焦ったような声を上げる。それと同時に、3体のスタンドがコテージの中に飛び込んで来た!ネギがすかさず『(タスク)』の爪弾を数発放つと『ミリオン・モンスターズ・アタック!』2体の額に命中して消滅するが、残った1体は千雨にむかって爪を振り下ろした!

 

「千雨ちゃん!!」

 

明日菜の悲痛な叫びがコテージに響く。千雨は『ミリオン・モンスターズ・アタック!』からルーテシアを庇うように抱きかかえると背を向けて、その背中に『ミリオン・モンスターズ・アタック!』の爪が振り下ろされた!

 

ドバッドバドバッ

Fuooa(フオア)………』

「!?」

 

しかし、千雨にスタンドの爪が振り下ろされる事は無かった。なぜなら、『ミリオン・モンスターズ・アタック!』の腕とこめかみに3発の弾丸が着弾して、弾かれるように横に飛んでいったからだ。

 

「何だ!?」

Fuuuuuuuuuuuu(フウウウウウウウウウウウ)………』

 

突然の事で千雨が混乱してしまう。ミリオン・モンスターズ・アタック!はふらつきながらも体制を立て直し、なおも襲って来ようとしていた。

 

「ドラララララララララララララララララァアーーーッ!!」

ドガドバゴバゴバドガドバゴォッ

Fuuuuuuu(フウウウウ)ッ………』

 

………が、それも横から来た何者かの拳によって殴り飛ばされて阻止され、完全に消滅した!

 

「な……!?」

「大丈夫か?」

 

千雨が驚いて振り返ると、そこには背後からクレイジーダイヤモンドを出したまま笑みを浮かべる仗助と硝煙が上る拳銃を構えたミスタの姿があった。2人の後ろには隠れるように立つノーヴェ、のどか、ハルナ、夕映、あやか、それに縛られた綺初、すずめ、帝の姿があった。

 

「仗助さん!」

「少し妙な事に気付いてみんなに伝えようとしたら、あのゾンビみたいなスタンドまみれになっていてな………外でハルナたちと会って、このコテージに避難したんだ……」

「そこに、私たちが落ちちゃったのね………」

 

ノーヴェの説明を聞いて現状を理解した明日菜が、あきれ顔で言った。仗助はミリオン・モンスターズ・アタック!が消滅したのを確認すると、屋根に開いた穴を直してネギたちに向き直る。

 

「みんな、ケガは大丈夫か?治すぜ。」

「あ、ありがとうございます。」

 

クレイジーダイヤモンドでネギの傷を治し、千雨は波紋の呼吸で自身の傷を癒し手から離れたルーテシアの容態を確認した。ふと、明日菜はあやかと夕映の表情がすぐれないことに気が付いた。

 

「ん?どうしたの2人とも?」

「い、いえ………実はさっき、ハルナからスタンドのゴーグルをもらいまして………それを使えばスタンドを『視認』できるのですが………」

「今、この辺りに犇めいているスタンドを見てしまって………みなさん、今まであんな恐ろしいものと戦っていましたの………?」

「あ、うーん、まあ………」

 

青ざめた表情のあやかの問いに、なんて答えていいか分からず苦笑するネギ。実際、今まで見えていなかったものが見えるようになり、それも最初に見たのがゾンビめいた見た目のあのスタンドであれば、恐怖を感じるのも仕方ないだろう。

 

「なんか、昔にそんな映画あった気がするなー、昔に。ゼイリブだっけ?」

「さて、今のうちにあのスタンドの対策を考えるぞ。徐倫たちが戦ってはいるが、いつまで持つか分からないしな………」

 

ノン気に話す帝を放っておいて、千雨が話を切り出した。

 

「この()のスタンドは本体を叩くのがベストなんだが、この状況じゃあ本体を探すのも難しいだろうなぁ………」

「さっき、そう思って本体がいそうな橋の下を探したんだけど、出てきたのはサメだったし………それに、その後はカモメからもスタンドが出てきたわ……」

「サメに、カモメだと………?」

 

明日菜の発言を聞いたチンクと仗助が、怪訝な顔になる。チンクは顎に手を当てながら、口を開いた。

 

「さっき、とんでもない量の「魚の死骸」を桟橋の下に見つけたんだ………おぞましい光景ってヤツだ。一目で『ヤバい事が起きてる』ってわかった……」

「魚の死がい………?」

「魚………サメ………カモメ………違う生き物なのに、同じスタンド………」

 

今ある情報を整理しているのか、ネギがブツブツと呟き始めた。そして、ある事に気が付いたのか、顔を上げた。

 

「もしかして………あのスタンドの能力が、分かったかもしれません。」

「本当か?」

 

千雨が反応をすると、ネギは頷いた。

 

「はい。恐らくですが、あのスタンドは『本体と別の生物に取りついて行動するスタンド』なんです。他の生物の生命エネルギーを使っているから、遠隔操作でもあれだけのパワーを引き出していたんです!」

「別の生物に取りつくだと!?」

 

ネギの仮説にミスタは信じられないという声を上げた。明日菜や千雨も息を飲みノーヴェたちも驚いた顔になっていた。

 

「あり得るのか、そんな事………?」

「………いや、以前露伴が相手をしたという『チープ・トリック』というスタンドは、本体から別人に憑依して、新しい本体にするスタンドと聞いた。群生タイプと近接タイプでは違いがあるだろうが、似たような能力って可能性はあるな………」

 

ノーヴェが思わず口に出すが、仗助は冷静に分析する。

 

「あの魚の死骸は、ここまで来るのに生命エネルギーを使い果たして使い捨てられたのか……」

「じゃあ、あのスタンドの本体はこの近くにいない可能性が高いってこと!?」

「そうだな……今コテージ周辺の海にいる魚は、全部あのスタンドの本体ってことになるな………」

 

明日菜とノーヴェ、チンクが口々に言う。だが、その方法も分からずに頭を抱えていると、ハルナが何かを思い出したのか、懐から紙を取り出すと中から傷ついた男性が出てきた。

 

「ぅう………」

「そいつは……?」

「さっき、傷ついた状態でコテージに現れてさ……もしかしたら、あのスタンドの本体の事知ってるかも……」

 

ハルナが取り出した男は傷ついて倒れていたものの、意識はある様子だった。仗助が直ぐにクレイジーダイヤモンドで傷を治すと、男は静かに驚いた表情になり、ゆっくりと立ち上がった。

 

「………傷を治してもらった事は感謝するぜ。一応、俺はヴィオレッタ側の人間なんだがなぁ~………」

「何となく察しはついてたけど……」

 

男が後頭部を掻きながら言うと、千雨がため息交じりに答えた。男はコホン、と咳払いをすると話し始めた。

 

「俺は『ホルマジオ』だ。お前、ブチャラティの所のミスタだよな?ナランチャのヤツに殺されたが、ヴィオレッタの手引きで生き返っちまった。」

「ブチャラティと同じ、人造魔導師か………」

 

ホルマジオの自己紹介を聞いたミスタが呟く。仗助がホルマジオに聞いた。

 

「それで、何でお前まであのスタンドに襲われたんだ?」

「そー言えばさっき、「ミスターX」がどうとか言っていたけど………」

「ミスターX………いかにもって名前ね………」

 

ハルナがホルマジオに聞くと、ホルマジオは少し考えた後「しょうがねぇなぁ~」と頭を掻きながら話し始めた。

 

「……あのスタンドは、ヴィオレッタが目覚めさせたものだ。本体のミスターXってのは通称で、本名は『X(エックス)・ジオ』と言う男だ。」

「あ、ミスターXってコードネームとかじゃあないんだ………」

 

ホルマジオの説明を聞いたネギが、思わず呟く。ホルマジオは頷くと、話を続けた。

 

「ヤツはこの近くの無人島で、スタンド能力を使いこなせるように訓練していたらしい。俺は訓練の様子を見に行っていたんだが、ヤツは気でも狂ったのか、スタンドを使って襲い掛かってきやがってな…………何とか逃げて来たんだよ………」

「返り討ちにあったって、裏切られたのか?」

「多分な。ま、ヤツはヴィオレッタがスタンドを目覚めさせたとはいえ、手を貸す義理まではないって考えなんだろうかもな………」

 

ホルマジオが肩をすくめて言うと、ミスタが質問をしてきた。

 

「それで、X・ジオは今どこにいる?」

「さあな。根城にしていた無人島に引きこもっているのか、スタンドの成果を見るためにこの島にまで来ているのか……」

 

ホルマジオは質問に答える事ができなかった。

 

「どっちにしろ、この状況を打破するには、先に外の連中を何とかしないとダメか……」

「だが、あの数をどうやって倒す?」

 

仗助とミスタが現状の打開策に頭を捻っていた。徐倫たちが襲われている以上、時間がない。何か案は無いかと考えていると、帝が口を開いた。

 

「あー、とりあえずアタイ達の口封じに来た訳じゃあないのは安心かな、とりあえず。」

「呑気だなお前は………」

「あたし達が危ないのは違いないでしょ………」

 

帝の発言に呆れる綺初とすずめ。千雨もジト目で帝を見ていたが、ネギだけは帝を見て何か思いついたのか、帝に話しかけた。

 

「あの、帝さん!」

「んにゃ?」

「帝さんの、『ディスタント・ムーン』の「()()()()()能力」!その力を貸してくれませんか!?」

 

ネギの発言を聞いて、明日菜たちはハッとした。海水を操る能力を使えば、海水中の魚たちを一ヶ所に集める事も可能だろう。後は魚を一網打尽にすれば、生命エネルギーを絶たれた『ミリオン・モンスターズ・アタック!』は消滅するだろう。

 

「あー………確かにそれは可能かもねー、確かに………でも、断る。」

「ええ!?」

「坊やは知ってるかもしれないかもさー、アタイはジョースター家と結構な因縁があるわけなんだよ、アタイは。」

「帝の言う通りだな。過去の因縁もある以上、我らがお前たちに力を貸すのは無理だ。」

「あたしも同じ意見だね。因縁もあるし、あの人にはお金ももらっているからね。」

「そ、そんな………」

 

流石にこの状況では断られる事はないと踏んでいたネギは、絶句した。千雨や仗助はやれやれ、と首を横に振る。ネギはどうするべきか考えていたが、何か決心をしたのか、みかどに再度話しかけた。

 

「……分かりました。それなら『お願い』ではなく、『ビジネス』の話をしましょう。」

「ビジネス?」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

Fuuuuuuuuuuu(フウウウウウウウウウウウ)………』

Fuoooooaaaaaaaa(フオアアアアアアアアアア)!!』

「くそ!キリがないなッ!!」

 

徐倫とスバル、ジョルノの3人は、迫ってくる『ミリオン・モンスターズ・アタック!』の絶えない軍勢と戦いを続けていた。先ほど、念話でこのスタンドの能力がネギから伝えられたのはいいのだが、本体のX・ジオの居場所が分からない以上、迫ってくる『脅威』たるミリオン・モンスターズ・アタック!を退け続けるしかない。

 

Fuoooooaaaaaaaa(フオアアアアアアアアアア)!!』

「オラァアッ!!」

 

ミリオン・モンスターズ・アタック!の攻撃をストーン・フリーが拳で弾き返し、ガードが開いた腹にラッシュを叩き込んで吹き飛ばす。先ほどからこれの繰り返しであるが、一向にスタンドの数が減る気配がない。

 

「こ、これは………ちょっとキツイ、かも………」

 

段々と数が増えてきているような気がするスタンドに、疲弊したようすのスバルが苦笑混じりに呟く。ジョルノも少し息が上がり始めてはいたが、戦いながらミリオン・モンスターズ・アタック!の様子を見て、ある事に気付いた。

 

(倒した傍から補充がされている………本体のX・ジオという男は、こちらの様子を伺える場所にいる可能性が高い……)

 

ジョルノはそう推測して周囲を見渡すが、それらしき人影は見当たらない。どこかにいるのだろうか、とジョルノが考えていると、ミリオン・モンスターズ・アタック!3体が迫って来た!

 

「ジョル兄!!」

「!?」

 

スバルが叫ぶが、ジョルノは反応が遅れてしまい間に合わない!先頭のミリオン・モンスターズ・アタック!の爪がジョルノに迫ってくる!

 

ブンッ

『『『Fuoo(フオオオ)………?』』』

「………?」

 

しかし、スタンドの爪はジョルノの1m手前で空を切る。ジョルノとスバルは何が起こったのか分からず、ポカンとした表情になっていた。

 

「こ、これは……」

Fuoo(フオオオ)……!!』

 

スバルが驚いた表情で呟くと、ジョルノの目の前のミリオン・モンスターズ・アタック!は後ろに引っ張られるように後退していた。周りを見れば、他のスタンドも同様に引っ張られており、1ヶ所に集められているようであった。

 

「な、何だ?何が起きている………?」

 

徐倫が思わず呟き、ふと下を見れば、足元の海流が不自然に速くなっている事に気付いた。スタンドの本体にされていた魚やサメが、スタンド諸とも速い海流に流されて、一ヶ所に集められているのだ。

 

「こ、これは……!?」

 

スタンドが流されて行った先を見れば、ミリオン・モンスターズ・アタック!が1ヶ所に集められて犇めきあっている状態であった。身動きが一切出来ずにいるスタンドに困惑していると、海の中から人影が現れた。

 

「はっはーッ!!」

「なっ!?帝ォ!?」

 

飛び出してきた『ディスタント・ムーン』を纏った帝に徐倫が驚いて声を上げた。目の前に帝が着地をすると、上空を見上げて叫んだ。

 

「今だよ坊や、今!!」

「はい!!ラス・テル・マ・スキル・マギステル!闇を切り裂く(ウヌース・フルゴル・)一条の光(コンキデンス・ノクテム・)我が手に宿りて、(イン・メア・マヌー・エンス)敵を喰らえ(イニミークム・エダット)!」

 

上空で杖に乗り待ち構えていたネギが呪文を詠唱する。ネギの右手に電撃が宿り、バリバリと音を立て始める。そして、ネギはミリオン・モンスターズ・アタック!の足元の海中にいる魚たちに狙いを定めて、右手を振り下ろす!

 

白き雷(フルグラティオー・アルビカンス)!!」

ガカァンッ

 

ネギの手から放たれた電撃は海面に直撃し、海中の魚たちに直撃した!電撃を喰らった魚たちは感電して痺れたかと思うとそのまま動かなくなり、電撃が止むと同時に一斉に浮かんできた。

 

『『『Fuoooooooooooo(フオオオオオオオオオオ)…………ッ!!』』』

 

取りついていた魚たちからの生命エネルギーが絶たれたためにミリオン・モンスターズ・アタック!は悲鳴のような唸り声を上げながら全て消滅していった!

 

「た、倒したのか………?」

「本体は無事だろうが、スタンドは消滅したようだな。」

 

徐倫とジョルノが呟くと、ネギが近くに降りて来た。

 

「みなさん、大丈夫ですか?」

「あ、うん、なんとか………」

「考えたな。彼女の能力で魚を集めて一網打尽にするとは。あの魚がスタンドの本体にされている以上、そこから生命エネルギーを得られなければ消滅するからな。」

「昔テレビで、ダイナマイトや電流使って魚気絶させる漁って見た事あるなー……」

「あ、それ私も見た事ある。」

 

スバルがネギに答えていると、ジョルノはネギの行動を評価した。明日菜や千雨たちも集まってくると、徐倫は帝の姿を見て呆れたように話しかけた。

 

「てか、帝はよく手を貸してくれたな………自分で言うのもなんだが、因縁もあったし………」

「あ、はい。最初は断られたんですけどね………」

 

ネギは少し恥ずかしそうに後頭部を掻きながら答える。徐倫が不思議そうにしていると、あやかが続けて答えた。

 

「ネギ先生とわたくしの交渉の末、1人120万円で三羽鴉さんの腕を買いましたの♪」

「ええ!?」

「いやー、確かに徐倫たちに恨みはあるにはあるけど、所詮ヴィオレッタさんとはカネで繋がった関係だしさー、所詮。」

「恨みによる『私怨』ならともかく、金による『仕事(ビジネス)』ならば話は別だよ。そこの坊やには恨みはないし。」

「ヴィオレッタからは1人100万だったからな。臨時ボーナスとでも思えば良い。」

「と、いうわけでして……いいんちょさんにはお金を借りることになりましたが………」

 

ネギは苦笑いしながらそう言った。徐倫はそんなネギを見て、やれやれと言った感じで溜め息を吐いた。

 

「やれやれだわ。意外と機転が利くわよね、ネギ………」

「よければ、半分僕の方で持つよ?」

「ありがとうございます。」

 

ジョルノがあやかにそう言うと、千雨が口を開いた。

 

「これで海中にいたヤツは倒したな。後は本体を探し出してブチのめすだけか………」

「恐らく、ヤツはこの島のどこかにいる。操作は本体であるミスターXが直接確認するあろうからな。」

 

ジョルノが自身の推理を話すと、全員が納得したように頷く。仗助が全員を見渡して指示を飛ばした。

 

「よし、宮崎と朝倉、早乙女は周囲を探ってくれ。残った奴はケガ人の治療と体力の回復をしてくれ。」

「あ、はい!」

 

仗助の指示で一同は動き始めた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――フン。我が軍の第1陣を全滅させるとは………中々やるではないか。」

 

隠れて様子を伺っていた男は鼻を鳴らした。

大戦時のドイツ軍を彷彿とさせる黒い軍服と軍帽を被り、小さな四角い口髭を生やした険しい男は、右手にした乗馬用鞭を左手に当てて鳴らした。

 

「まあ良い。我が軍はあれだけではない。すぐにでも第2陣を出撃させる事としよう………」

Fuuuuuuuuuuu(フウウウウウウウウウウウ)………』

Fuoooooaaaaaaaa(フオアアアアアアアアアア)………』

 

男の後ろでは『ミリオン・モンスターズ・アタック!』が犇めくように並び、更に、男の足元には何かが動いていた………

 

 

 

 

 

←to be continued…




88話です。
・ルル・ベルの過去がちらり。ヴィオレッタは完全に復讐鬼となっていて、娘の事も道具程度にしか見てない感じです。パルってこういう時意外と察しがいいですよね。

・『ミリオン・モンスターズ・アタック!』は、攻撃出来て増殖もするチープ・トリックみたいな感じ。若干「チリ・ペッパー」や「ブルー・ハワイ」も入ってるかも。

・三羽鴉を金で雇うという、TATOO YOU!戦のジャイロみたいな事をやるネギ。3人とも意外とビジネスライクなところあるのは、裏のスタンド使いらしいかなーって思います。

・X・ジオ登場。劇中にある通り、「ミスターX」って書くといかにもって名前になるので命名しましたw 元ネタはトヨタのマークXジオ。

では、来年もよろしくお願いいたします。

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