ストライカーズ・オーシャン【ジョジョの奇妙な冒険 Part6異聞】   作:オレの「自動追尾弾」

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仕事の多忙で、遅れに遅れてしまいました………


#86/ディスタント・ムーン ②

#86/ディスタント・ムーン ②

 

 

 

 

 

「はぁ!?親父が帝の父親の「カタキぃ」?」

 

浜辺で『エナジー・フロゥ』と『アンチェイン・ワールド』のレンガを迎撃していた徐倫は、綺初から聞かされた帝と父・承太郎の因縁を聞いて思わず聞き返した。

 

「そうだ。帝の父上である岩飛 皇十郎殿は18年前、空条承太郎に殺されたのだ。帝はそれ故に、空条承太郎と戦いたがっていた。」

「そうだったのか………」

 

それを聞いた徐倫は、納得していた。

2年前、神父に雇われたとはいえ伊賀の忍がわざわざアメリカまで自分たちを襲ってきた来たことに疑問に思っていたが、まさか承太郎への復讐が目的だったとは……

同じく話を聞いていたネギが、迫って来ていたレンガを『魔法の射手』で撃ち落としてから疑問を口にした。

 

「18年前………だとしたら、『DIO』に雇われたのでしょうか?」

「DIOに?だが、承太郎殿から忍者と戦った話など………?」

 

楓が2体の『エナジー・フロゥ』同士を()()()()ながら、同じく疑問を出す。同じく応戦していたミスタの抱える(ココ・ジャンボ)の中のポルナレフも、首を傾げていた。

 

『…いや、18年前にニンジャとなんて、戦っていないはずだが………』

「何?」

『けど、帝やお頭は「空条承太郎に殺された」って……』

 

ポルナレフの声を聞いたらしい綺初とすずめも困惑する。徐倫は、2人に聞いてみた。

 

「おい、その父親の名前の他に何か情報………例えばスタンド能力とか聞いてないのか?」

「能力までは聞いていないが………確か名前は聞いていたはずだ………」

 

攻撃の手を止めないまま、綺初は思い出そうとしていた。

 

 

 

 

 

「確か『暗青の月』………『()()()()()()()()()』だ。」

 

 

 

 

 

『………って、『()()()()』かよ!?』

 

綺初が告げた名前を聞いて、思わず叫ぶポルナレフ。

 

テニール船長―――厳密にいえばテニール船長に変装した岩飛 皇十郎だが―――本物のテニール船長を暗殺し、彼に成り代わって香港からエジプトに向かうチャーター船に潜入し、承太郎たちを暗殺しようとしたスタンド使いだ。

承太郎との戦いで得意の海中に引きずり込んで追い詰めるも返り討ちに遭い敗北したのだが、まさか娘がいて、しかも忍者だったとは………

 

『………いや、しかしよく考えてみれば、チャーター船の情報をキャッチして本物の船長を暗殺、誰にも気づかれないレベルで変装して成り代わるのを、“一晩”たらずでやってのけたんだよな、あいつ………』

「なるほど、ニンジャなら納得だな………」

 

すぐに冷静になって当時の事を分析したポルナレフの言葉に、納得して頷くミスタ。ニンジャってスゴい。

2人が納得をしていると、『エナジー・フロゥ』の1体を狙撃した裕奈が、ある事に気づいた。

 

「そー言えばお嬢、襲われる前に海に泳ぎに行っていたけど、大丈夫かなー………?」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「どゎぁあああああーーーッ!!」

 

走るスバルに抱えられたハルナが悲鳴を上げる。2人は今、海上に走らされた『ウイングロード』の上を、『エナジー・フロゥ』の編隊の銃撃から逃げていた。

 

「さ、早乙女さん抱えながらじゃあ、思ったようには………」

「ごめーん!足手まといでごめーん!!」

「い、いや、文句言ったわけじゃあ………」

 

思わず謝るハルナに対して、逆に謝るスバル。その時、接近していた『エナジー・フロゥ』の背後から何かが近づき、しがみ付いて動きを止めようとしていた!

 

「!?あれって………」

「朝倉の『ハロウィン』!?」

 

飛びかかって来たのは、朝倉和美の『ハロウィン』であった。ハロウィンは戦闘力のないながらも複数体でしがみ付くことで動きを制限し、2人への追撃を妨害していた。

 

「今だッ!!」

 

スバルはその期を逃さず、振り返り様に「リボルバー・シュート」を放ち、『エナジー・フロゥ』の破壊に成功した!

 

「ナイスアシスト朝倉!」

 

ハルナが『ハロウィン』に称賛とサムズアップを送ると、ハロウィンもサムズアップを返す。すると、スバル達の元にティアナとノーヴェが駆け付けてきた。

 

「スバル!」

「ティア!」

「海上も上空も『エナジー・フロゥ』の編隊でいっぱいね………浜辺の方もレンガと合わさって脱出出来ないみたいだし……」

 

ティアナが周囲を見ながら状況を口にする。たった今破壊されたばかりで新たな『エナジー・フロゥ』はまだ来ていないが、時間の問題であろう。

 

「私たちの救援に「ハロウィン」が来たって事は、ネギ君や宮崎さんも動けない状況ってことだね……」

「それ以上に、海に引きずりこまれた千雨ちゃんも気になるし……」

 

ハルナはそう言うと、今までスバルに抱えられていたために見る暇のなかった千雨たちの引きずり込まれたあたりを見て、そこで驚愕した。

 

「!?なッ!何よあれ!?」

「「「!?」」」

 

ハルナの叫びにスバル達が振り向く。そこには、海面に巨大な渦潮が渦巻いていたのだ!

 

「う、渦潮だ!巨大な渦がいつの間にか!?」

「さっき言ってた『ミカド』ってヤツの仕業か!?」

「千雨ちゃんとルーテシアが危ない!!」

 

ハルナが叫んだ瞬間、ノーヴェとティアナが動き出す。しかしノーヴェが飛び込もうと腕を海水に突っ込んだ瞬間、

 

「うぐッ………!?」

「!?」

 

顔を歪めて腕を引っ込める。ティアナは異変を瞬時に察知して『ミュステリオン』の舌で引き揚げた。

引き上げられたノーヴェの両腕には、小さな(やいば)のようなものがいくつも突き刺さっていた!

 

「こ、コレは……?ウロコ?スタンドのウロコのようなものが……!?」

「じゃあ、あの帝って人の!?あの渦潮の中にこのウロコが舞っているって事!?」

「これじゃあ、千雨ちゃんを助けに行けない………」

「それ以上に、長谷川さんとルーテシアもこのウロコの餌食になっているんじゃあ………!」

 

スバルが言う通り、刃のように鋭いウロコが海中に舞っている渦潮の中に2人が囚われている以上、海中の千雨たちは危機的状況になっていることは間違いないだろう。

 

「助けに行こうにも、海中がこんな状況じゃあ………でも、早く助けないと2人の命が………!!」

「何を迷っているのかしら?」

「え!?」

 

スバルたちが手をこまねいていると、背後から声がした。振り返ってみてみれば、そこには海から上がってきたと思しきルル・ベルの姿があった。

 

「ルル・ベル!」

「そーいえば、さっき泳いてたわね………」

「2人は今、命の危機にあるのよ?こんな事している場合じゃあないでしょう?」

「そうは言うけれど………」

 

ルル・ベルの言うことはその通りなのだが、この現状では、と言いよどんでいると、ルル・ベルは渦潮の中心を睨んだ。

 

「帝がいるのは、おそらく渦潮の『中心』よ。「台風の目」のように、回転するものの中心は無防備なものよ。」

「!そ、そうか!!」

 

ルル・ベルの指摘に手をたたく一同。そのまま、作戦が伝えられた。

 

「作戦はこうよ。まず『ウイングロード』で渦の中心の真上まで行き、そのまま私が1人で頭上へダイブするわ。」

「ルル・ベルが?」

「あんた1人で体張ることはないんじゃあ………?」

 

ルル・ベルの立てた作戦に異議を言う一同。しかし、ルル・ベルは意を決した鋭い目を渦潮に向けていた。

 

「2人がこうなった原因は、私の「母」よ。母の()()()()()()()なんかのために、2人を死なせないわ………!」

「ルル・ベル………」

 

ルル・ベルの静かな覚悟に息を飲むハルナ。ティアナもそれにこたえるように頷いた。

 

「……わかったわ。でも、何かあった時のために、私たちが上で待機しているからね。」

「ええ、お願い。」

 

ルル・ベルは返事をすると、スバルはウイングロードを渦潮の真上まで伸ばすと、走り出した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

一方海中では、帝による一方的な攻撃が今なお続いていた!

 

『はっはっはーッ!!この海流からは逃れられないだろうね!海流からは!!』

『ぐぅう………ッ』

 

嘲笑う帝に対して、苦しい表情の千雨。腕の中のルーテシアも、呼吸が出来ずに苦しそうであった。

 

(これ以上は、私以上にルーテシアが………!!)

『んー、こーいう『ワンサイドゲーム』はいっぽーてきで趣味じゃあないんだよねー、趣味じゃあ………けど、他に手もないからねー、他に。』

 

帝は少し悩んだが、右手の水かきをキラリと光らせた。

 

『そろそろ、ひと思いに殺してあげようかな、ひと思いに!!』

『ッ………!!』

 

そのまま2人に目掛けて海流に乗って迫ってくる!千雨は咄嗟に翼でガードをするも、その一撃でバランスを崩してしまう。

 

『もらったよッ!!』

ドガッ

『!?しまっ………!』

 

追撃で打ち込まれた回し蹴りで、千雨はルーテシアを手放してしまった。

 

『はっはー!まずは1人!』

 

勝ち誇ったように笑う帝。千雨も流されたルーテシアの方を見るが、そこには………

 

カシン!

 

『!?』

 

カシン!カシン!

 

『え?!』

 

 

 

カッシィーーーン!

 

 

 

腕を交差させてうずくまる姿勢のルーテシアの身体を『()()()()()()()()()()()()()()()()』が覆い、『ディスタント・ムーン』のウロコから身を守っていた!

 

 

 

 

 

『あれは………!?(ネギ先生の言ってた、『ルーテシアのスタンド』か……!?)』

『な、何だよあれ!?妹の方もスタンドが使えるなんて、聞いてない…!?』

 

ルーテシアの身体に纏われた甲冑(スタンド)に驚く2人。千雨はネギから聞いていたが、何も情報が入って来ていない帝からしたら晴天の霹靂であった。

 

ザバァッ

『む!?』

 

その時、頭上から何かが着水した音が聞こえる。水面の方を見上げると、そこには両腕で急所を防御したルル・ベルが、帝にむけて接近してきていた。

 

「!?(ルル・ベル………!)」

『ああ~~~も~~~!!何なのさ次から次に、何なのさ!!』

 

ルル・ベルの姿を見た帝が混乱したように頭を掻いた。そうしている間にルル・ベルが急接近してくると、『サイケデリック・インサニティ』の拳を振るう!

 

『!おっとっと……』

 

しかし、帝はひょいと避けてルル・ベルの背後に回り、回し蹴りをお見舞いした。

ルル・ベルは蹴りと激しい海流で飛ばされるも、『サイケデリック・インサニティ』の脚力で体勢を立て直すと、『P・インサニティ』の拳を連続で放った!

 

『オルオルオルオルオルオル!!』

『よっ、ほいっと♪』

 

しかし帝は、何てことないようにひょいひょいと避けてしまう。それでもルル・ベルの猛攻(ラッシュ)は止まらず、混乱していた帝は段々と冷静さを取り戻していく。

 

『……んー、イキナリ来てびっくりはしたけど、そんなガムシャラな攻撃じゃあ、アタイは倒せないよ、アタイは!』

『オルオルオルオルオルオル!!』

『………』

 

帝の嘲笑に耳を貸さず、ウロコで傷つくのも構わず攻撃を続けるルル・ベル。ルル・ベルの一見奇行にしか見えないその行動を見た千雨は考えた。

 

(ルル・ベルが無意味にあんな事するようなヤツじゃあない………何か企みでも………?)

 

千雨が考えを巡らせていると、ふと、潮の流れが緩やかになっている事に気が付いた。

 

『……?(海流が落ち着いた?帝がルル・ベルに構っているせいか?)』

 

少し疑問に思いながらも、今のうちにルーテシアを助けようと翼を展開させ、飛ぶようにルーテシアの元に向かい、ルーテシアをかかえた。

 

(このスタンド……結構な防御力のようだが、『マジェント』みたいに無敵ってワケじゃあないようだ……ウロコの傷はないが、それでも呼吸できねーからこのままじゃあ溺れちまう……早く海面に上がらないと………)

『ん?潮の流れが変わった………?』

 

千雨が海面に上がろうとした時、帝も海流の変化に気づいたらしかった。千雨は再び渦潮に囚われてはマズいと海面に向かおうとしたその時、海流がどっと、千雨を襲った。

 

『!?ま、またか!?』

『うぇえッ!?な、何これ……この潮の流れはアタイじゃあないぞ、アタイじゃあ!?』

『え!?』

 

帝が再び海流を操ったかと思った千雨であったが、当の本人が予想外の反応であった。では、これは一体…?

 

『オルオルオルオルオルオル!!』

『ん…?』

『オルオルオルオルオルオル!!』

 

と、今なおがむしゃらにシャドーボクシングのように『サイケデリック・インサニティ』の拳を何度も振るうルル・ベルを見た。

 

(ルル・ベル、いつまであんな事……?)

 

しかし千雨は、ここにきて『ある事に』気が付いた。

 

 

 

 

 

サイケデリック・インサニティ………

 

変わった海流………

 

重力………()()

 

 

 

 

 

『ッ!?ま、()()()!?

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ルル・ベル、大丈夫かなー?」

「いくらアイツでも、あのカッターみてーなウロコの舞ってる中に突っ込むのはムボーじゃねーか………?」

「ところで、そのキズ大丈夫?」

「んー?正直結構痛いけど、この程度じゃあへこたれねーよ。」

 

その少し前、怪我をしたノーヴェは『エナジー・フロゥ』の編隊をスバルとティアナに任せて、ハルナと共に渦潮の方を見下ろしながら、ルル・ベルを心配していた。

 

ゴォオオオ………

「ん?」

 

しかしその時、渦潮の勢いが収まったかと思うと、今度は海がまるで、台風の中継で見たような激しく荒れ始めたではないか!

 

「うおお!?」

「な、なんかスゴイ荒れてないこれ!?」

 

突然の海の変化に驚く2人。『エナジー・フロゥ』を粗方倒したスバル達も海の変化に気づいたのか、驚いた様子であった。

 

「これは………!?」

 

一同が驚いていたその時、

 

 

 

 

 

ザッバァーーーンッ

 

なんと、海が浜辺から見て左右に大きく()()()()()()()()!!

 

 

 

 

 

「う、海が割れたーーーーー!?!?!?」

「「「ええーーーーーーーーーー!?!?」」」

 

突然のとんでもない現象に叫ぶ4人!

 

「うえぇ!?あ、あわわわわ!?」

ズテーン!

 

その時、割れた海の間の空中に取り残されていたらしい帝が、海底に額から落ちていくのが見えた。何が起こったのか分からないスバルの隣に、ルーテシアをかかえた千雨が飛翔してきた。

 

「!?長谷川さん!」

「ッ………はあーーーっはあーーーっ………」

「ルーテシア!大丈夫か!?」

「う、うん………」

「そうか………」

 

いつの間にかスタンドが消えて、大きく呼吸をしたルーテシアを見てホッとする千雨。ノーヴェらと共に駆け付けたティアナは、千雨に問いかけた。

 

「な、何があったの……!?」

「…ったく、ルル・ベルのヤツ、トンでもねー事しやがった………」

「え?」

 

千雨は、海面に降り立ったルル・ベルを見て呆れた表情になった。

 

「私は、アイツが何度も帝を殴ろうとして空振りしているんだとばかり思っていた………だが、()()()()()………ルル・ベルは、()()()()()()()()()()()()()()()………」

 

千雨の言葉を聞いても理解の出来ない一同であったが、千雨は結論を言った。

 

「アイツは『サイケデリック・インサニティ』で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()………!」

「「「「な……なんだってーーー!!」」」」

 

ルル・ベルのしでかした「とんでもないこと」を聞いた一同が叫ぶ。

 

「いや、何でアイツのやる事っていちいち規模がデカいんだよ!?」

「『モーゼの十戒』じゃあないんだから………」

「便利すぎでしょ、重力操作………」

「だがまー、おかげでこうして私たちは助かったんだから、文句言えねーんだよなー………」

 

千雨は一言ぼやくと、海底のルル・ベルと帝を見据えた。

 

「さーて、陸に上がった河童退治でも行きますか!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ぐぅ~………ま、まさか『重力操作』………ここまでとは思ってなかったよ、ここまでとは………うわ、血出てる………」

 

額を強く打った帝が、出血する額を押さえながら唸る。その背後に、ルル・ベルがゆっくり歩きながら接近してきた。

 

「自慢の『海水操作』も、これじゃあ使い物にならないわよね?」

「はッ!」

 

ルル・ベルの接近に気づいた帝だが、振り返った瞬間、『サイケデリック・インサニティ』の右拳が顔面に叩き込まれた!

 

「うッ!ブぇ………!」

 

その瞬間、重力操作によって帝は後方に『()()』していき、そのまま『アンチェイン・ワールド』のレンガの壁に叩きつけられた!

 

「ぐぅッ………」

 

何とか受け身を取ってダメージを抑えるも、自身の『独壇場』が破られたことが信じられないという気持ちでいっぱいだった。

 

「こ、こんなアホみたいなことをするヤツがいるなんて………!!」

 

愕然とする帝であったが、そこに追い打ちとばかりに、千雨が飛翔してくる!

帝が驚く間もなく、千雨はその場で独楽のように回転、その遠心力の加わった左逆手の「刺突」を放つ!

 

「!?」

 

帝は咄嗟に腕を交差させて防御する!その瞬間、腕に激しい痛みを感じ、腕に小太刀が突き刺さったと理解した。

 

「ぐぅッ!!いったぁ………」

 

帝は防御出来たことに一瞬ホッとしたが、その時、右手の小太刀が振るわれている事に気が付く!

 

「『双燕天翔流』八大奥義が一つ―――」

「な―――」

 

そして、突き刺さった小太刀の柄頭(※刀の柄の先端部分)に、もう一方の柄頭が叩き込まれた!!

 

ドゴッ

「『雹槌月華』………!!」

ドッギュゥウーーーン

「ごあッ………!!」

 

突き刺さった状態からの追撃(プラス)波紋!これには帝だけではなく、背後のレンガの壁も一たまりもなく砕け散った!!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ドッガァアン

「!?何!?」

 

浜辺で戦闘をしていたネギたちは、突然砕けたレンガの壁に驚く。すると、砕けた壁から飛び出してきた人影に気づいた。

 

「ぐぅう………」

「あれは……!」

『み、帝!?』

 

飛んできたのが帝だと気づいたすずめが思わず悲痛な叫びを上げた。帝は両腕と額、腹部から出血をしているものの致命傷にはなっていないようだが、動けないようだった。

 

「両腕で防御されていたから、身体(ボディ)へのダメージはないが、波紋の一撃を喰らっているから、しばらくは動けねーはずだぜ………」

「千雨ちゃん!」

「ま、まさか……海中で帝が敗北したというのか………!?」

 

千雨は砂浜に着地をすると、スバル達も追って集合する。綺初は帝が敗北した事に愕然として攻撃の手が止まるが、すずめは慌てながらも綺初に指示をする。

 

『綺初!ここは帝を連れて撤退を………!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっと、逃がさねーぜ、お嬢さん?」

 

ジャララララ

 

「!?」

 

しかし、すずめが撤退を進言したその瞬間、『空中に穴が開いて』、その中から鎖分銅が飛び出し、すずめの乗る『エナジー・フロゥ』の隊長機を拘束してしまった!

 

「!?」

「あ、あの鎖って………!?」

 

明日菜には、その鎖と空中の穴に、見覚えがあった。まさかと思ったその時、穴から右手が伸びて出てくると、その手のひらを『エナジー・フロゥ』の後頭部にとん、と押し当てた。

 

「脱法・『波布(はぶ)』!!」

バギャス

『ぐェッ!?」

 

その瞬間、手のひらから放たれた『波紋』が『エナジー・フロゥ』を流れ、頭部のハッチから搭乗していたすずめが放り出されてしまった!

 

「何だと!?」

 

砂浜に投げ出されたすずめは仰向けに倒れたままビクビクと痙攣をしている。本体であるすずめが気を失った事により、全ての『エナジー・フロゥ」が解除されて地面へと墜落していく。

 

「ま、まさか………どういうつもりだ!?」

 

残された綺初は、空中の穴から出てきたズルリと出てきた長い黒髪に真っ黒なスーツの男―――『()()()()』に向けて怒鳴りつけた。

 

「ジェイド!?」

「な、何でアイツが………!?」

 

明日菜たちも、予想外の助けに来たジェイドに驚きと戸惑いで動けなくなる。しかしジェイドは、ニタリと不気味に笑うだけであった。

 

「悪いが、説明は後だ。さて、後はお前さんだけだなぁ………」

「ぐっ………」

 

2人がやられたのを見た綺初は、形勢逆転されたことが信じられず困惑するばかりであった。

 

「こ、こんなことが………」

「今だ!『戒めの矢』!!」

「!?」

 

しかしその瞬間、ネギの放った『戒めの矢』で綺初は拘束されてしまう!綺初は脱出を試みるも拘束は強く、抜け出せそうにない。

 

「こ、コレでは『アンチェイン・ワールド』での転移もままならない………!」

「さーてと、お前ら3人は捕まえさせてもらうぞ?」

「ッ!!」

 

気が付くと、綺初の周囲には千雨やティアナ達が、得物の切っ先を向けていた。綺初は逃げ悔しさに顔を歪ませるも出せない事を悟り、がくりとうなだれた。

すると、周囲のレンガが砂に戻り、サラサラと崩れていく。綺初がスタンドを解除した、つまりは『敗北』を認めた証拠であった。

 

「……やれやれだわ、これでこいつらは『捕虜』って扱いになるワケね………」

「そーいうこったな。」

 

徐倫がため息をつくと、それを肯定するようにジェイドが呟いた。

 

「……で、アンタなんで私たちを助けたりしたのよ!?」

「あ、そうだったわ!何でお母さま側の貴方が……!?」

 

そこで、明日菜とルル・ベルがジェイドに詰め寄った。数日前にヴァナゴンと共に千雨たちを襲ったジェイドが一体なぜ助ける真似を…?一同が疑問に思っていると、千雨がため息交じりに話しかけてきた。

 

「もう話しても良いんじゃあないですか?蛇蝎縛刀流正統後継者、『伐田 萬蔵(ばった ばんぞう)』さんよぉー?」

「………へ、そうだなぁ。」

 

ジェイドこと『萬蔵』はサングラスを外し、鋭い眼差しの目で笑いかけた。

 

 

 

 

 

「……なんか、向こうはめっちゃ盛り上がってるッスねー……」

「確かに……」

「急展開すぎて、付いて行けねーよ………」

 

ノーヴェやウェンディたちは、萬蔵の登場に少し困惑していた。

 

ふとノーヴェは、先ほどウロコで切った左腕の傷が、少し広がっている事に気づいた。

 

「………あれ、さっきのウロコの傷、ちょっと大きくなっているか?けど、あんま痛みはない………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズルゥウ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!な!?」

 

その時、その傷口から『()()()()()()()()()()()』が飛び出てきた………!!?

 

「……!?なっ………なんだあああああ!!あ、アタシの左手がッ!?な、なんなんだこれは!?」

「!?ノーヴェ!?」

 

混乱したノーヴェは思わず叫び声を上げる。ノーヴェの異変に気づいたウェンディとティアナが駆け寄った。ノーヴェは左腕を見せるが、ウロコで傷ついている以外に異変のない状態であった。

 

「……はっ……!!え?」

「ど、どうしたの………?」

「い、今、左腕から………」

 

困惑したノーヴェが左腕を見る。今まで「ロストロギアが体内にある」と聞かされていたが、その実態を目の当たりにしてしまい、混乱している様子であった。

 

(あ、あの左腕………アタシの「左手」の中に…アタシの()()()()()()()()()()()!?)

「ノーヴェ………」

 

 

 

 

 

←to be continued…




86話です。今回、少しタイトルの挿入の仕方を変えました。
・帝はあのテニール船長の娘でした。ポルナレフの言う通り忍者ならあれだけのアサシンスキルと変装技術持っていてもおかしくないので。

・ルーテシアのスタンドの片鱗とルル・ベルの覚悟。『サイケデリック・インサニティ』は割と応用利くから、こんな大胆な活用も出来ます。空振りでも空間削れる『ザ・ハンド』と同じ理論ですね。

・まさかの助っ人ジェイド。そしてようやく『遺体』の登場と、今回は怒涛の展開すぎたかも………

では、また次回!

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