ストライカーズ・オーシャン【ジョジョの奇妙な冒険 Part6異聞】   作:オレの「自動追尾弾」

82 / 99
#74/怪鳥シルバークロス ①

シャラン襲撃の翌日、カラスと対峙した3人の魔法先生の中で比較的軽傷であった瀬流彦とガンドルフィーニの2人が、学園長室で学園長と承太郎、仗助、ネギ、フェイトたちに、今回の事を報告しに来ていた。

 

「いやー、お恥ずかしい限りです………」

「………今回ばかりは、自分の軽率さが原因です……」

 

頭や腕に包帯を巻き、頬などのガーゼが痛々しい2人が恥ずかし気に言う。なお、同行していた神多羅木先生は、足を骨折して全治1カ月の入院である。

 

学園長が、2人に聞いた。

 

「それで、何が起こったのかね?」

「はい………」

 

ガンドルフィーニは、事の次第を話し始めた。

 

 

 

 

 

#74/怪鳥シルバークロス ①

 

 

 

 

 

「調査の結果、件のカラスは南側にある雑木林周辺を縄張りにした、『シルバークロス』であるとわかりました。」

「シルバークロス?」

「ああ。左足に、どこかで拾って来たらしい十字架のシルバーアクセサリーを付けている事から、そう呼ばれているそうだ。」

 

仗助の疑問に答える瀬流彦先生。承太郎は「カラスにしちゃあゼータクな名前だな。」とつぶやくと、ガンドルフィーニが続けた。

 

「情報では、ここ数ヶ月の間に雑木林に巣を構えていたカラスの群れがシルバークロスを除いて一斉に他所へ引っ越してしまったそうで………恐らくは『スタンド』で追い払ってしまった可能性もあるかと………」

「なるほど………」

 

そこまで言うと、ガンドルフィーニはふうとため息をつき、眼鏡をかけなおした。

 

「私はそれを知ると、学園長の指示を待たずに雑木林に突入しました………『異能力(スタンド)が使えるとはいえ所詮はカラス』と、侮っていたからです………」

「……俺の経験上、むしろ『人間以外』のスタンド使いの方が厄介な印象だな。」

「きっと、動物の「本能」的な部分の差なんでしょうね………」

 

承太郎は、『(ストレングス)』のオランウータンや『イギー』、『虫食い』に『猫草(ストレイ・キャット)』の事を思い出しながら言うと、ネギが思ったことを口にした。スタンドは生命エネルギーから生み出されるものなので、むしろ動物の方が強いのかもしれない。

 

「瀬流彦先生と神多羅木先生の静止も聞かずに林に入ると……目の前にあのカラス……シルバークロスが、自分たちの行く手を阻むように、地面に立っていました………」

「カラスの姿に驚く間もなく………次の瞬間には………傍に立っていた木が大きく()()()………我々に襲い掛かってきたのです!」

 

瀬流彦の告げた状況にネギたちは驚くが、承太郎は冷静に「明らかにスタンド能力だ。」と呟いた。

 

「幸い、早くに気づいたので避けることはできたのですが、その隙にシルバークロスは飛んで行ってしまい、追いかけようとした瞬間………」

 

ガンドルフィーニがそこで言いよどむ。しばし沈黙した後に、瀬流彦が口を開いた。

 

「………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()………!」

「な!?」「………」

 

瀬流彦の言葉に、息をのむ一同。

 

「僕は咄嗟に避けることができましたが、瀬流彦先生と神多羅木先生はそこで負傷して動けなくなってしまいました………戸惑っていたら、いつの間にか、僕の足元にシルバークロスが立っていて………攻撃しようと思ったら………何故か身体が『金縛り』にでもあったかのように動かなくなってしまい………勝手に、僕の腕が意思とは無関係に動いて………奇妙な事を言うかもしれませんが、気づいたら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()………!」

「何………?」

 

ガンドルフィーニは自分でも何をされたのか分からずに混乱している様子であった。何らかのスタンド能力を受けたのは確かであるが、スタンドを見る事の出来ない者からしたら恐怖であろう。ガンドルフィーニは顔を曇らせながら、ズボンのポケットを探り、携帯電話を取り出した。

 

「しばし倒れて、少しの時間気絶をしていたら、ヤツはいつの間にか僕の携帯電話を取り出していて………器用に足で操作をすると、画面をこちらに見せてきて………この文章を入力していたんです………」

 

そう言って見せた携帯電話の画面には、メール機能で文章が入力されていた。

 

[折れ煮地下ずくな。血数いたらコロス。]

 

「………俺に近づくな、か………」

「相当賢いようだな………それも、()()()()意味で………」

 

仗助がぞっとしたように言うと、承太郎がやれやれと呟いた。漢字変換を間違えてはいたものの、意味は十分に分かった。

 

「その後、応援で駆け付けた刀子先生らに救助してもらいました………後で、そのワゴン車は数日前に盗難されていた事が分かりましたが………車には、(キー)すらかかっていませんでした………」

「……とりあえず、ボコられただけでよかったぜ………前にオレが戦ったスタンドに目覚めたドブネズミは、他のネズミをドロドロに溶かして殺した上に、人間の家に乗り込んでスタンド攻撃で無力化した上、生きたまま冷蔵庫に監禁して保存食にしていたからよォー………」

「ひえっ………」

「よ、良かったぁー!この程度の傷で済んで、ホント良かったぁーーー!!」

 

仗助が過去に経験した事を聞いてぞっとするネギとフェイト、比較的軽傷で済んだことに心から喜ぶ瀬流彦とガンドルフィーニ。意外と良心的なカラスらしい。

 

「まあとにかく、今回の事を踏まえて、スタンド使いを中心とした『シルバークロス捕獲チーム』を編成しようと思っての。君たちに来てもらったんじゃが………」

 

学園長がそう言うと、ネギたちスタンド使い3名は頷いた。

 

「相手がカラスだと、ホル・ホースさんやミスタさんのような、飛び道具を使う人がいいですかね?」

「いや、今の話だと結構賢そうなカラスみたいだからな………警戒されんだろーなぁ~………」

「相手は鳥類屈指の「賢さ」を持つカラス、それもスタンド使いだ。ここは少数鋭でいくのがベストだろうな。スタンド使いの選出は、こちらに任せてくれ。」

 

承太郎達がそう話していると、学園長がふーむ、と困った感じで唸った。

 

「?どうかしたんですか?」

「いや……実は、今回の事件を聞いて、『カラス狩り』に躍起になっている生徒がいてのぉ………一応、指令を待つようには言ってあるが………」

 

学園長が言いよどんでいると、学園長室のドアが勢いよく開かれ、1人の女子生徒が入って来た。

 

「学園長!」

「あ、あなたは………」

 

入って来たのは、先日徐倫たちに決闘を申し込んできた、高音・D・グッドマンであった。

 

「カラス狩りのメンバーにスタンド使いを中心にすると聞きましたわよ!?」

「う、うむ……やはり、専門家に任せた方が………」

「納得がいきませんわ!カラス1羽に、魔法使いがやられるなんて!面目が立ちませんわ!!」

 

高音は学園長に向けて叫んでいると、後ろからそーっと愛衣が入ってきて、ネギに話しかけてきた。

 

「す、すいませんネギ先生………」

「あ、佐倉さん………」

「お姉さま、スタンド使いに関して懐疑的だったうえに、今回の事で魔法使いのプライドが傷ついたと言って、躍起になっているんです………」

 

愛衣に説明をされて、ネギは未だに学園長に食って掛かる高音を見た。魔法使いの使命に誇りを持っている彼女からすれば、『未知なる異能力』であるスタンドは『異物』以外の何物でもなく、それに魔法使いが、しかもカラスに負けたとなれば、『プライド』が傷ついたと感じるのも無理はないだろう。

 

「やーれやれだぜ………」

「………!?」

 

高音がいつまでも騒いでいると、今まで黙っていた承太郎が帽子をかぶりなおしてそう呟いた。しかしその声には怒気が籠っており、高音を含めた全員が静まった。

 

「お前のプライドが傷ついたんで立候補するんならいいんだが、スタンドはスタンド使い以外には『見えない・触れない・戦えない』の三重苦なんだぜ?そんなもん、『サハラ砂漠で目隠しをして、一粒の砂金を探す』ようなモンだ………それでも行くってのかい?」

「う………」

 

承太郎のプレッシャーの籠った説得に高音はぐ、と押し黙った。承太郎は高音が黙ったのを見ると、学園長に向き直った。

 

「今回の「カラス狩り」、魔法使いサイドはコイツら2人でいいか?」

「う、うむ………後は、スタンドの見えるティアナ君でもいれば、いいかのぉ………」

 

学園長はそう言うと、『シルバークロス』の捕獲を今週末の土曜日に設定、スタンド使いの選出を承太郎たちに任せ、この場は解散となった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

そして迎えた土曜日、グリーンドルフィンストリート麻帆良の前に、今回選出された捕獲チームが集合していた。

 

「………今回は、よろしくお願いします。」

「ええ、こちらこそ………」

 

ぶっきらぼうに挨拶をする高音に苦笑する愛衣とティアナ。その後ろで、仗助とチンクが呆れた表情でため息をつき、ネギが困ったような顔をしていた。

 

「だ、大丈夫かなぁー………?」

「あの姉さん、結構プライド高いタイプみたいだしなぁー………」

「今回行くのは、これで全員か?」

 

チンクが仗助に聞くと、ティアナが答えた。

 

「ううん、あと1人いるわ。私が推薦したいスタンド使いがいるって言ったら、了承してくれて………」

「あと1人?」

 

愛衣が首をかしげて聞いた。

 

「ええ。今回みたいな時に役立つであろう、スタンド使いよ。現地で落ち合う手筈になっているわ。」

 

ティアナがそう説明をするが、一同は首を傾げたままであった。

 

「けどよぉー、アニキやチンク姐さんはともかく、仗助のダンナの『クレイジー・ダイヤモンド』は射程距離あんまないんすよね?カラス相手に、どうするんスか?」

「そういえば、スタンドには『射程距離』があるんでしたね………」

 

雑木林に向かう中、カモが仗助に聞いた。

確かに、ネギの『タスク』の爪弾やチンクの『スティンガー』はともかく、仗助の『クレイジー・ダイヤモンド』は射程距離が2mほどしかない。飛び回るカラス相手では不利であろう。

 

「安心しな。例え近接パワー型の『クレイジー・ダイヤモンド』でもよぉー、攻撃手段はいくらでもあるんだぜぇー」

 

そう言うと、仗助は背負ったバッグの中からケースを取り出した。中には金属製の、直径が1㎝にも満たない球がいくつも入っており、ヂャラ、と音を立てた。

 

「………それは?」

「『ベアリング(軸受け)』の球だ。まあ見てなって。」

 

仗助は近くの柵の柱に空き缶を2,3個置くと数m距離を取った。そしてベアリングの球を『クレイジー・ダイヤモンド』に持たせると、それを指で弾いて飛ばした!

 

ガンッガンッ

「おお!」

 

放たれた球は空き缶に見事命中して撃ち落された!

 

「成程、所謂『指弾(しだん)』ですわね………」

「おうよ。前にコイツで『ドブネズミ』を仕留めたんだ。それから何回か練習してよぉー、結構命中率は上がったぜぇー」

 

感心して思わずつぶやく高音に仗助が答えた。射程は20mほどだが、カラス相手には有効な方であろう。

 

「成程、ネギ先生の爪弾と仗助先生のベアリングなら、『不意打ち』には持ってこいって訳ですね!」

「そーいう事。『不意を突く!』!野生の動物相手にゃ、これが一番効果的ってワケよぉ!」

 

愛衣が声を弾ませた。高音は少し悔しい気もしたが、仗助の意見には賛同ができた。

 

「さて、例のカラスのスタンドなんだがよぉー、」

 

移動をしながら、仗助は話し始めた。

 

「ガンドルフィーニ先生の話からすると、『何らかの方法で操る』能力と考えられる。この手の能力には、操るための条件(スイッチ)があるはずだ。」

()()()()、ですか?」

 

ネギが聞き返した。

 

「ああ。オレの故郷の『杜王町』に、『サーフィス』っていう触った相手をコピーする人形のスタンドを使う間田っていう先輩がいるんだがよぉー、そのコピーした人形は、『コピー元の人間と向かい合うと、身体の自由を奪って操る』っていう能力を持っているんだ。つまり、この場合のスイッチは『向かい合う』ことだ。」

 

仗助の説明になるほど、と相槌を打つネギたち。仗助は続けた。

 

「とにかく、相手をよく『観察』するんだ。そうすれば能力の正体が、自ずと見えてくるからなぁ………「落ち着いて」行動をするのが先決だぜ………」

 

仗助は、4人にそう注意をした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

20分くらいかけて雑木林に着いた一行は、入り口付近にあった()()を見て、動けないでいた。

 

「………コレは、『ワナ』、ですね………」

「ああ。」

 

それを見たネギが言うと、仗助が肯定した。

そこにあったのは、紛れもなく『罠』であった。ただし、ネギたち『人間』に向けた物ではなく、『カラス』に向けたワナであった。

 

高さが50~60㎝くらいはあるカゴが逆さまになって1本の棒で斜めにされ、その下にはエサが皿に乗っており、棒にはひもがくくられて、その先端は近くの茂みまで続いていた。

 

「………あの、確かランスターさんの推薦した方って、もうココに来ているんですよね?」

「うん………」

 

愛衣がティアナに聞くと、ティアナは苦笑して頬を掻いた。あまりにも『古典的』にも程がある罠に誰もが呆れていると、近くでバサバサッという鳥の羽ばたきが聞こえた。

 

「!?ヤツか……!?」

「全員、木の影とかに隠れろ!」

 

仗助が指示を出すと、皆は木の影に隠れた。

 

「カァーッカァーッ」

 

そのすぐ後、カゴの罠を背にして現れたのは、左足に十字架のアクセサリーを巻き付けた1羽のカラス・シルバークロスであった。地面に降り立ったシルバークロスは周囲をキョロキョロと見渡した後、直ぐに後ろの罠を見て、ヒモの行く先を目で追った後、まるでため息でもつくかのようにクチバシを開いた。

 

(やっぱ罠に気づきましたね……)

(アイツ結構賢いみたいだからねぇ………「バカにしてんのか!?」って顔してるわね………)

 

影から見たティアナが思った通りに、シルバークロス自身も呆れた様子であった。

その時、シルバークロスが振り返ったかと思うと、真っすぐにこちらの方を見ていた!

 

(!?ま、まさか………バレてる………!?)

(カラスだからってナメてかかるまいと思っていたが………野生の()()ってやつかぁ~!?)

 

仗助たちが内心焦っていると、シルバークロスはピョンピョンと跳ねてこちらに近づいて来る。そして、翼を広げようとしたその時―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………カ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

背後の罠のカゴが『()()()()()』、シルバークロスをすっぽりと覆うほどの大きさになった!?

 

「何!?」

 

思わず高音が声を出した時には、驚いて動作の遅れたシルバークロスに向けてカゴが閉じて、その下に囚われてしまった!

 

「か、カゴが大きくなった………!?」

 

愛衣が驚く中、カゴは中にシルバークロスを閉じ込めたまま元のサイズに戻った。その様はさながら、虫を捕らえたカエルの舌である。

 

「この現象は、まさか!ティアナが呼んだ『スタンド使い』とは!!」

 

木の影から出てきたチンクがスタンド使いに心当たりを思い出すと、ヒモの先端のあるであろう茂みの中から、小さな女の子が出てきた。

 

「ヤッタ!大成功!!」

「ああ!た、確かコイツは、『スペースマン』の!?」

「はい、『夜叉丸 雪子』です!」

 

雪子は満面の笑みで名乗った。ティアナは、彼女の隣に立った。

 

「雪子ちゃんの『スペースマン』は『奇襲向き』の能力だからね、カラス相手には結構有利だと思ったのよ。流石にあの罠には、驚いたけど………」

「えへへ………」

「た、確かに………古典的であるが故に、完全に油断していましたわね………カラスもわたくし達も………」

 

照れる雪子に対し、『一本取られた』高音は感心するしかなかった。大停電での『心理的盲点』を突いた戦法といい、意外と頭の回る少女である。

 

「さーてと………問題はこっからだな………」

「ええ、このままシルバークロスが大人しくしている訳がないですからね………」

 

仗助とネギが、シルバークロスの捕らえられたカゴに近づこうとしたその時、

 

 

 

 

 

スポーーーンッ

 

 

 

 

 

『!?』

 

カゴが勢いよく吹っ飛び、翼を広げたシルバークロスの姿が露わとなった!

 

「カァーッ!!」

 

シルバークロスはそのまま飛び上がると近くの木の枝に止まり、仗助たちを見下ろした。

 

「……グレート。ただじゃあ済まないとは思ってたが………」

「案外アッサリ出てきたわね………しかも、」

 

ティアナがカゴのあった位置を見ると、エサの入っていた皿が空になっていた。

 

「用意されていたエサを平らげるくらいの余裕もあるみたいだし………」

「ここからが本番ですね………まさか『正面対決』になろうとは、思っていませんでしたけど………」

 

臨戦態勢となったシルバークロスを見上げながら、ネギはそう呟いた………

 

 

 

 

 

←to be continued…




74話です。
・サブタイトルは『怪人ドゥービー」から。

・今回はカラス狩りの話なんですが、『魔法使いとスタンド使い』といった感じのテーマにもなっています。

・『シルバークロス』の不気味さを出すために割と手練れな筈の神多羅木先生らには一時退場してもらいました。「所詮はカラス」と侮ったのが原因ではありますが。

・高音&愛衣コンビ、そして『スペースマン』の夜叉丸 雪子がまさかの再登場。高音は今作ではプライドを高めに設定してありますね。

では、次回をお楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。