ストライカーズ・オーシャン【ジョジョの奇妙な冒険 Part6異聞】   作:オレの「自動追尾弾」

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今回で、にじファンに投稿していた分が終了になります。


#71/麻帆良に来た3人の女

『―――ドウヤラ、我々ノ存在ガ感知サレタヨウダ。』

 

どこかのビルの内部。

集めた三人の男女の前に立つ謎のスタンドが腕を組み、壁にもたれながら語る。

 

胸と頭を宇宙服か潜水服を思わせる卵形の大きなカプセルで覆い、中は影になっていてよく見えないが頭部らしき部位があり、紅く鋭い右目が輝いている。紫と黒で彩られた体はスマートでメカニカルな四肢を持ち、左手はL字に曲がった銀色の四角いマジックハンドになっていて、時折カチ、カチと打ち合わせている。

 

「そうか………それで『プレシャス・プライド』、私たちはどうする?」

『ソウダナ………今ノ所ハ現状ドオリ、ダナ。君タチ三人ニ与エタ『マンハッタン・トランスファー』、『ティナー・サックス』、『ギミック・ゲーム』ヲ上手ク使イ、彼ラヲ『秘密裏』ニ手助ケシテクレ。』

 

スタンド―――『プレシャス・プライド』がそう言うと、三人は会釈して立ち去った。

 

三人が立ち去ったのを確認すると、『プレシャス・プライド』のもたれていた壁の影から一人の少女が表れ、窓の外を見る。

 

「―――ネギ君、それにアスナ………今君がやられる訳にはいかないんだよ………」

 

『プレシャス・プライド』を自らの身体に納めると、少女は懐から二枚の『DISC』を取り出した。

 

「残るDISCは二枚………はてさて、誰がふさわしいのやら………?」

 

 

 

 

 

#71/麻帆良に来た3人の女

 

 

 

 

 

修学旅行の振替休日が明け、3‐Aに再び騒がしい日々が戻ってきた。

 

「ねえ知ってる?今日転入生が来るんだって!」

「ええー、こんな中途半端な時期に?」

「だよねー、それに、二月にスバルちゃんが来たばっかなのにねーーー?」

 

桜子、円、美砂たちチアリーダー部三人組が円の席付近で話しているそれを耳にはさみながら、夏美が席に着いた。

 

「転入生かぁー………朝倉は何か聞いてる?」

 

夏美が朝倉に話しかけるが、朝倉は机に突っ伏していて「カッパめ………カッパめ………」と呟いていた。

夏美は首を傾げながら鞄を開き、中の教科書や筆箱を机にしまい始めた。

 

「ん………?」

 

ふと、夏美が机の下側を見ると、『緑色のボールのようなカエルらしきもの』が、夏美教卓の下から歩いてくるのが見えた。

 

「え?あれ?」

「………」

 

夏美がカエルらしきものと目が合うと、文字通り「蛇にでも睨まれた」ように固まり、目が泳ぎだした。

 

「………」バッ

「あっ!?」

 

カエルらしきものは素早く教卓に逃げ込み、夏美は思わず立ち上がり教卓に駆け寄った。

夏美は教卓の下をのぞき込むが、カエルらしきものはいなく、あったのはその()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「どうよ?」

「なるほど………」

 

徐倫と明日菜、スバルが、教卓付近で紙を片手に首を傾げている夏美を見ながら、『ドロウ・ザ・ライン』を持ったハルナの説明を受けていた。

 

「つまり、『ドロウ・ザ・ライン』で描いた絵に “着色”すると、非スタンド使いにもそのスタンドが『見える』訳、だね。しかも、それなりに射程距離もあるみたいだし。」

「そーいう事♪」

 

スバルに聞かれ、得意げに笑うハルナ。すると、4人の後ろから声をかけられた。

 

「………でも、何も知らない人間にイタズラをするのは感心できないわね。応用できれば役に立つだろうけど、気を付けた方が良いわ。」

「あ、うん。気を付けるわ。」

 

振り向かないままハルナが頷く。その直後、4人は気づいた。

 

「………あれ?」

「今のって………?」

 

4人は振り返ったがすでに誰もいない。向き直ると、いつの間にかネギが教卓に立っており、隣には見慣れた銀髪縦ロールに翠の眼の少女が、『自分たちと同じ制服』に身を包んでいた。

無論、左手は制服に合わせた布で隠しているが。

 

「おはようございます。えーと、急に決まったのですが、転入生を紹介しますね………」

 

ネギが苦笑気味に切り出すと、隣の少女が黒板に筆記体で『Luru Bell』と自分の名前を書いた。

 

「ニス・ポゥ・リポンド(はじめまして)………というのは、おかしいかしら?今日からこのクラスの生徒になる『ルル・ベル』よ。国籍はフランス。よろしく。」

『………………』

 

振り返ったルル・ベルがそう挨拶する。普段なら一気に騒ぎ立てるA組一同だが、今回は訳が違った。何せ、修学旅行のルル・ベルの行動を見ていたのだ。しばし沈黙が続いたが、皆同じ事を考えていた。即ち―――

 

 

 

 

 

(((((((転入してきたーーーッ!?本屋逃げて!超逃げて!?)))))))

 

である。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「どーいう事よネギ!何でルル・ベルがうちのクラスに来るのよッ!?」

 

ホームルーム明け、ネギの首根っこを掴んで踊り場まで連れ出した明日菜とそれに着いて来た徐倫、スバルは、早速ネギを問いただしていた。

 

「お、落ち着きなよアスナ………」

「じ、実は、僕も今朝急に知らされて………学園長先生と話し合った結果決まったそうです……「行動しやすいから」って事で。」

「それは『護衛』のか?それとも『ストーキング』のか?」

 

思わず、呆れ顔で聞き返す徐倫。

 

「あ、それとですね………ルル・ベルさんだけでは(色々な意味で)不安という事で、サルシッチャさんも学園に潜入することになりました。」

「サルシッチャも?」

 

ネギが思い出したように告げると、徐倫が聞く。すると、何故か明日菜とスバルが衝撃を受けたような顔になった。

 

「さ、サルシッチャさんも、って………」

「どーかしたか?」

 

何故かわなわなと振るえる二人。

 

「ま………まさかルルちゃん………」

「サルシッチャさんに………」

 

 

 

 

 

「「女子中学生として、女装させた訳なのッ!?」」

ズルリ……

 

二人の口から出たセリフに、ネギと徐倫は思いっきりずっこけた。

なお、二人の脳裏には三つ編みお下げで女装したサルシッチャの姿が浮かんでいた………

 

「………いえ、ちょうど『用務員さん』を募集していたそうなので………」

「「………あ、そっち?」」

「それ以外に何があるんだよ!?むしろ女子中学生として潜入させる方がおかしいわッ!」

 

二人の素のボケに対して、思い切りつっこみを入れる徐倫。

三人はもうすぐ授業が始まるからと、教室に戻っていった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――やっと着いたわね、麻帆良学園………」

 

その日の昼過ぎ、麻帆良学園駅に、一人の少女が到着していた。

 

「さてと、アイツの学校に行く前に、お昼にしましょうか。」

 

少女はそう呟くと、目に留まった喫茶店に向かっていった。

 

 

 

 

 

少女が喫茶店でナポリタンを注文した時、少女の座る席から少し離れた席で、カツサンドを頬張る女性がいた。

 

「………ふふん、微っ笑〜〜〜♪」

 

女性はバッグから一枚の写真を取り出すと、つまみ上げるように持ち、微笑みながら見つめた。

 

「コイツを()るだけで5,000万だなんて、楽すぎて爆笑な仕事よねぇ~~~♪」

 

女性はカフェオレを飲み干し、女性は写真を放り投げた。

 

 

 

 

 

その写真は、一瞬にして粉みじんに切り裂かれた―――

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「はぁ………」

 

昼休み、中庭で弁当を前にのどかは深くため息をついた。ルル・ベルのせいで、今朝から精神的に疲れてしまっていた。

 

「………のどか、大丈夫ですか?」

「うん…何か疲れちゃったけど………」

「ルルちゃん、何か体液出そうな勢いで宮崎さんに視線送ってたもんねー……」

「そこまで行ったら吸血鬼でしょ………」

 

一緒に弁当を食べる明日菜たちは、のどかを気遣いながら苦笑していた。

なお、当のルル・ベルは現在学園長に呼ばれており、現在この場にはいない。いたらいたで、非常に厄介な状況になるが………

 

「はぁあー……断ろうにも、ルル・ベルさんってちょっと近寄りがたいというか………」

「うーん…宮崎さん、押しが弱いからねぇ………」

 

苦笑しながらスバルが言うと、明日菜が思いついたように言った。

 

「だったらさあ、先輩にアドバイスでも聞いたら?」

「先輩?誰ですかそれは?」

 

夕映が明日菜に聞くと、売店にパンを買いに行っていた徐倫が戻ってきた。

 

「なあ徐倫、修学旅行の時のアレは、単なる偶然なんだよ!」

「はいはい、別に何とも思ってないよ、最初から。」

 

何故か、必死に言い訳をするアナスイを連れて聞き流す徐倫を見た明日菜は、ちょうどいいという風に親指で指した。

 

「『ストーカー被害』の先輩に。」

「「「あーーー………」」」

「ん?何?何の話?」

 

妙に納得する一同であった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

同じころ、麻帆良学園都市内にある麻帆良総合病院の特別病棟―――魔法(こちら)側の治療や診断を行うこの病棟では、フェイトと承太郎付き添いの元、ノーヴェとディードの精密検査が、ちょうど終わった所であった。

 

「ノーヴェ君に宿ったという『ロストロギア』ですが………各種センサーでの検知は出来ませんでした………」

「そうですか………」

 

医師からの診断結果を聞いて頷くフェイト。ノーヴェは少し不安そうにしていたが、今の所、身体に不調も異常もなかった。

 

「ディード、大丈夫?」

「ええ、チサメさん、だっけ?に付けられた傷も治ったし………」

 

心配そうに話しかけるオットーに返事をするディード。ディードの方も、アヌビス神に操られて戦わされた上に『スケアリー・モンスターズ』により恐竜化されていたが、身体に異常は見当たらず、スタンド『エターナル・ブレイズ』も自在に使えているようだった。

 

「でも、ビックリしたわ……気づいたら『97世界』で、私に『スタンド能力』が身についていたんだもの………」

「そうだよね……(操られていた時の記憶はないんだ………)」

 

ディードがオットーにそう話した時、承太郎が口を開いた。

 

「………その事で、少し気になっていた……何で連中は、()()()()()()()()()使()()()()()()()?」

「え?」

 

承太郎の言葉にきょとんとする一同。フェイトが、それに答えた。

 

「何でって………それは、インヒューレント・スキルをスタンドに昇華する実験のためって、アヌビス神が………」

「だから、何でその実験をしたんだ?単に『戦力強化』のためか?いや、だったら何故ディードを取り返しにこない?」

「あっ………」

 

承太郎に言われて気づいた。確かに『左手が右手の女(ヴィオレッタ)』たちは、奪還されたディードに接触する様子がない。

 

「しかも、連中は『スケアリー・モンスターズ』なんていう汚い爆弾(ダーティボム)まで仕掛けてやがったんだぜ?」

「た、確かに………まさか……!」

 

フェイトは承太郎の言いたいことを察した。ディードが『()()』だとしたら、『()()』があるのでは………?

 

「まさか、ヴィオレッタ側には………!?」

「そう考えるのが妥当だろうな………ヴィオレッタの手中には、ナンバーズやスバルたち以外にも、『戦闘機人がいる』と………」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「あの、のどか………」

「へッ!あ、はい………」

 

時間は過ぎて放課後。ハルナは漫画研究会、夕映は哲学研究会のため、のどかは今日は図書館に寄ってから帰ろうと準備をしていると、ルル・ベルが気持ちもじもじしながら話しかけてきた。のどかが普段と違う雰囲気のルル・ベルに戸惑っていると、ルル・ベルは少し恥ずかしげに聞いてきた。

 

「よっ、良かったら、一緒に帰らないかしら?」

「え?あ、はいー、それ位ならーーー………」

 

少し悩んだ後、のどかは合意をし、二人はそのまま教室から出た。

 

(い、今までは()()()ガッツイてアプローチしすぎていたのよね。そう、こーやってふつーな感じで接すれば良いのよねッ!)

(な……何か普段と違くって、逆に怖いかもーーー………)

 

「………スバル、ネギ、ルル・ベルが本屋ちゃんに何かやらかさないようついて行くわよ!」

「合点承知ッ!」ズビシッ

「本屋ちゃーーーん!!一緒に帰らないーーー!?」

「す、少しは信じてあげましょうよーーー?」

 

結果、三人は二人について行く事にした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――ねえホル・ホース、これは何のマネかしら?」

 

同じ頃、ティアナはとある喫茶店のテーブルに腰掛けて、向かいに座るホル・ホースに向けて訝しい風に睨んだ。テーブルには、美味しそうなショートケーキが、紅茶とセットで置かれていた。

そんなティアナにホル・ホースは禁煙パイプをくわえながら、ティアナに笑いかけた。

 

「いやぁな、お前さんを『撃った』事のお詫びに、と思ってな。」

「………別に良いのに。全く、急に呼び出したから何かと思えば………」

 

ため息をつきながら紅茶に手を伸ばすティアナ。釣れないねぇ、と笑うと、ホル・ホースも紅茶を一口飲む。ホル・ホースはしばらくニヤニヤとティアナを見つめていたが、睨まれたため慌ててそっぽを向いた。

 

「………!?」

「?」

 

その時、そっぽを向いたホル・ホースは目を疑った。その方向にいた女性は、見覚えがあったからだ。

 

「マジかよ………よりにもよってアイツが………!?」

「え?何?どうかしたの?」

 

焦るホル・ホースに、ティアナが聞く。

 

「(あの女がこの麻帆良に………!?もしも標的が千雨なら、)かなりヤバいッ!!」

「え?な、何がッ!?」

 

いきなり叫んだホル・ホースに驚き、ティアナは思わず引いてしまった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「………なーんであなた達まで着いて来ちゃってるのかしら?」

「アンタが本屋ちゃんに何かしないためよ!」

「随分と信用されてないわねぇ………」

 

自分とのどかの間に入った明日菜とスバルにルル・ベルが睨むと、明日菜がつっこむ。後ろを歩くネギは苦笑気味だ。

 

「い、一応、今日は特に何もされていないからーーー………」

「まあ、そうだろうけど………この後何されるか分かったもんじゃないからね。」

 

のどかの言葉に明日菜が返すと、スバルが頷いた。

 

 

 

その十数m後方―――

 

 

 

「あッ………!あの馬鹿はッ!」

 

その少年を見つけた少女は、ワナワナと震えていた。

 

「心配してはるばる日本にまで来たっていうのに………何アイツはイチャイチャイチャイチャしているなんてぇ………本っ当にボケボケなんだから!ネギはッ!!」

 

 

 

さらに別の方では………

 

 

 

「たっは!爆笑(ばっくしょ)〜!」

 

先ほど喫茶店でサンドイッチをかじっていた女性が、ルル・ベルたちを見つけて笑みを浮かべていた。

 

「こ〜〜〜んなあっさり見つかるなんてねぇ〜〜〜♪ほんじゃあ、ま、しばらくは様子を見ますかな♪」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――で、何か、あちらさんの情報は掴めたの?」

「………今の所はまだね。ホル・ホースが潜入していたアジトにSPW財団のエージェントが向かったらしいけど、既に(もぬけ)の空だったそうよ。」

「そうですか………」

 

場所は移り、比較的人通りの少ない公園に入った5人は、噴水の近くのベンチに座って話をしていた。

 

「向こうのスタンド使いの詳しい人数が分からないし、おまけに向こうにはまだ『矢』があるからねぇ〜〜〜………」

「………正直、お母様がまだスタンド使いを生み出すやも知れないし、私のようにスタンド使いを雇う可能性もあるわね………」

 

少しうつむきながら告げるルル・ベルに、皆が少し不安げな表情となる。

その時だ。

 

 

 

 

 

「ネェ…………ギィィィイイイイイッ!!」

「「「「「ッ!?」」」」」

 

突然、叫び声が聞こえたかと思うと、頭上に強めの魔力を感じた。

 

「アーニャ・フレイム・バスター………」

「え?何なにッ!?」

「キィィィイイイイイック」

キュゴンッ

「「「「「わ゛ーーーッ!?」」」」」

 

その魔力が最大にまで高まると、5人の中央あたりに突っ込んできた!

 

「ちょっ!何!?何なのよ!」

「敵襲ッ!?」

 

突然の出来事に、臨戦態勢に入る4人。だが、ネギには今の攻撃に少し見覚えがあった。

 

「いえ、今のは………まさか………」

「フン、今のをよく避けたわね………」

「え?スバル………?」

「え!?私じゃないけど………?」

 

何故呼ばれたのか分からなく首を傾げるスバル。爆心地に人影が見えると、それは一歩一歩こちらに近づいてきていた。

 

「相変わらず魔法戦闘の修行だけはやってるみたいだけど………」

 

その影は、着ていたローブを脱ぎ去ると、更に歩み寄る。その姿は、ネギと同い年くらいの、赤く長い髪を左右で結わいた少女であった。

 

「チビでボケボケな所は相変わらずみたいね、ネギ!」

「『アーーーーニャ』ーーーーーッ!?」

「ええぇッ!?」

「アーニャって………?」

 

その少女―――アーニャの姿を見たネギが叫ぶ。四人は少女がネギの知り合いであることに驚いていた。

 

「ななな何でアーニャが日本に!?ロンドンで占い師しているハズじゃ…何でこんな所にッ!?」

「『何で』って、決まってるでしょ!アンタを連れ戻しに………」

 

ネギの質問に答えるアーニャだが、気づいた。気づいてしまった。自分が脱ぎ捨てたローブが、燃えていたことに………

 

「キャー!?わ、私のローブに火がーーーッ!?たたか高かったのよコレーーーーーッ」

 

慌てて燃え上がるローブの火を消そうと踏むアーニャ。だが、その火はアーニャの長い髪にも燃え移った。

 

「いやぁあああ!?あつッ熱あつーーー!消して消してッ!!誰かぁーーーーーッ!?」

「えーと………」

「騒がしい子ね………」

 

パニックになるアーニャに呆れる一同。とりあえず、のどかとルル・ベルがそれぞれスタンドでアーニャを噴水に放り込み、鎮火させることにした。

 

ザッパーン

「………ありがと。」

「………ホントに何しに来たのアーニャ………?」

「だっ、だからアンタを連れ戻しに来たのよーーーーーッ!」

「忙しい子だなーーー………」

(何かあの子、ナカジマさんに声にてるかもーーー………)

 

火が鎮火して落ち着いたアーニャだが、ネギを見て再び叫んだ。

 

「いいからもー、イギリスに帰るわよッ!」ガシッ

「ええっ、ちょ、帰るって何で………!?」

「何でって……アンタが日本に来て早々大変な事件に巻き込まれてるって聞いて、心配したネカネお姉ちゃんの代わりに連れ戻しに来たのよ。」

 

ネギの腕を掴むアーニャが告げた言葉に、五人はキョトンとする。

 

(いつの間にイギリスまで情報が?流したとしたらだれが………?)

「分かったら帰るわよ!ホ・ラ・来なさいよ〜〜〜ッ」

「わー待って待って!?」

「いいから来なさいーーー!」

 

嫌がるネギを引きずるアーニャ。それに、明日菜とルル・ベルが割って入った。

 

「ちょちょ、待ってアーニャちゃん!」

「そうよ。一旦冬のナマズみたいに大人しくしなさい。」

「む、誰よ、アナタ達?」

「わ、わ私たちはネギ先生の生徒ですよーーー。」

「フーン………?」

 

のどかの答えを聞き、アーニャは四人を上から下までジロジロと見る。

 

(なーんかなれなれしいのが三人に、後は何か控えめね………内二人が巨乳(=敵)で、後半分が貧乳(=味方)………今は下手に動かない方がいいわね………)

 

四人を見ながら思考を巡らせるアーニャ。

 

「(まさかとは思うけど、この二人に(たぶら)かされている訳…?『敵ね』ッ!!) はじめまして!アーニャです。ウチのネギが大変お世話になりまして………」

「あ、これはどうもご丁寧に………はじめましてアーニャちゃん。」

(魔力で強化されたキックぶっ放しといて、丁寧もなにもないけどね………)

 

明日菜とスバルの、曰く『ナイスバディコンビ』を敵とみなし、とりあえず挨拶をしておくアーニャ。

 

「でも安心を。ここからのネギの世話は私がするわ。では。」ダッダーーー

「ちょっとーーー!?」

「アーニャ待って待ってーーー!?」

 

そのままそそくさとネギを連れ去ろうとするアーニャだが、ルル・ベルとスバルに止められた。

 

「ちょっとあなた!冬のナマズみたいに大人しくしなさい!」

「し、心配しなくても、今回の事件は時空管理局の局員が来てるから大丈夫だよ。」

「少なくとも、私たち四人だけでも『鉄●兵団』終盤のし〇かちゃん位頼れるよ?」

「え?そこまで見えないんだけど………?ナマズ?」

 

さすがにそこまでは………

のどかたちは、スバルの過大評価に苦笑した。

一旦落ち着いたため、お互いに確認をする為にベンチに座る事にした。

 

「それじゃあ改めて、こちらは僕の幼なじみのアーニャです。アーニャ、この人たちは僕の教え子だよ。」

「神楽坂 明日菜よ。」

「ルル・ベルよ。」

「み、宮崎 のどかですー。」

「スバル・ナカジマです。」

「………アンナ・ココロウァです。アーニャは愛称ね。」

 

何故か少しむくれながら自己紹介するアーニャ。

ルル・ベルはそんなアーニャにため息をつくと、早速質問を始めた。

 

「所であなた、ネギ君が事件に巻き込まれてるって、誰から聞いたのかしら?」

「誰からって………知らないわよ。いつの間にかそういう噂が流れていて、それで不安になって来たって訳よ。………あ、いや、私じゃあなくて、ネカネお姉ちゃんがよ………?」

 

最後に何故か照れながら言うアーニャ。スバルはその仕草が何かかわいいと思ったが、黙っておいた。

 

(噂が流れたって………誰かが流したって事かな?)

(分かりません。けど、流したとしたら、何の目的が………?)

 

明日菜とネギが裏でコソコソと話すが、考えても分からなかった。

 

「………まあ良いわ。とにかく、ネギ君には先生の仕事があるから、直ぐには帰れないわ。帰えられたら、私も困るもの。」

「ちょっと、それどーいう意味よ!?」

「ルル・ベル………!?」

 

ルル・ベルの告げた言葉に、アーニャだけではなく明日菜やネギたちも驚く。まさか、アーニャに全てを話す気なのか………?

 

(まさかこのルル・ベルとかいうお姉さん、ネギの事………?イヤイヤイヤ!あり得ないわよねッだってネギってばボケでチビで頭んなかお父さんでいっぱいだし!!でも、世の中には『そーいう趣味』の人がいるって聞くし………いや、でもでもでもーーー!?)

 

一方のアーニャは、なにやら勘違いしてぐるぐると思考を巡らせていた。そんな様子を見たルル・ベルは、やれやれとため息をついた。

 

「………何を勘違いしているのか知らないけど、私にはのどかが―――!?」

「「「「!?」」」」

 

ルル・ベルが言い掛けたその時、こちらに一人の女性が歩いてくるのが見えた。

 

二十代半ばほどの見た目で、ボブカットにした金髪の、両方のこめかみあたりから右が青、左が赤のメッシュを胸のあたりまで垂らした髪型で、白い肌に青い眼、紫のリップの派手なメイクをしている。

肩が大きく開いて、右側に『禁煙』のマークが描かれた青紫色の長袖のTシャツを着て右腕に肘まである黒い手袋を着けており、ショートパンツの上から色とりどりの缶バッジをジャラジャラとたくさん着けた布をパレオのように腰に巻いて、ハイヒールを鳴らしながら歩いてくる。

 

ただ近づいてくるだけならば、ルル・ベルも気にならない。

気になる理由は、彼女の背後に立つ『(ヴィジョン)』だ。

 

ガスボンベを思わせる緑色をした縦長の頭部にはランダムに赤い七つの穴が開けられたゴーグルのような眼を持ち、ジグザグに空いた口を持っている。鏡餅のような胸と肩からはコードのような細長い腕が垂れ下がっていて、右腕にはスイッチの付いた箱のような籠手が着いており、アームのような両手の指をせわしなく動かしている。足は長く、つま先が四角い形になっていた。

 

「?あの人がどーかしたの?」

 

不思議そうに首を傾げるアーニャ。どうやら、アーニャにはあのスタンドが見えていないらしい。

 

「アーニャ下がって。」

「ネギ?」

「何か用かしら?昼間から『()()()()()』出して来るなんて………」

 

ルル・ベルが女性に問いかけると、女性はニヤリと笑う。だが、アーニャが前に出てきた。

 

「ちょっと、何なのよいきなり!あの女の人が何だっていうのよッ!?」

「ちょ、アーニャ………」

 

アーニャが前に出て女性に指をさして叫ぶ。ネギがアーニャを止めようとするが、

 

 

 

ドン

「「「「ッ!!」」」」

「(思っていたよりも射程距離が広い………)アーニャッ!!」グィイッ

「へ?」

 

スタンドがアーニャの背後まで一瞬で接近した!ネギは慌ててアーニャの手を引くが、スタンドは右手の籠手を操作して、右腕でアーニャに殴りかかった!

 

ピッ

「………失笑。射程距離ギリギリでかすっただけかぁーーー。」

 

スタンドを手元に戻した女性が、落胆の声を上げる。ネギとのどか、ルル・ベルはスタンドを発現させて戦闘態勢に入る。

 

「な……何なのよいきなり………?」

 

戸惑うアーニャだが、ふと気づいた。いつの間にか右手の甲に、『赤いペンキのようなもの』が付着している。

 

(何コレ………赤いペンキ………?いつの間に?)

 

アーニャは、いつの間にか付いていたペンキを不振に思った。

 

 

 

 

 

瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドッジュゥゥウウウ

「ッ!?キャァアアアアアアアアッ」

「「「「!?」」」」

「アーニャッ!?」

 

突如、赤いペンキが『燃え上がり』、アーニャの右手の甲を焼いた!

 

「なッ!?何よコレッ!?熱ッ!?いきなり燃え初めて………ッ!?!?」

「私は『七色の(レインボー・)シャラン』。アンタ達の命、もらい受ける………ッ!」

 

シャランと名乗った女性は、頭の後ろで腕を組みながらそう告げた。

 

 

 

 

 

←to be continued...




71話です。
・サブタイトルは『病院に運ばれた3人の男』から。

・謎のスタンド『プレシャス・プライド』と配下の三人のスタンド使い登場。彼女らの目的はいずれ。

・ルル・ベル転入。ちなみに名前のつづりは適当です。

・承太郎から『ナンバーズ以外の戦闘機人』の可能性が………後の展開を考えて憶測させておこうと思いまして。

・アーニャ登場。前章の調たち同様、この辺で出しておきたいなと思いまして。

・三人目の女、シャラン登場。まるでゲームのような軽い気持ちで殺すイメージです。

では、次回をお楽しみに!

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