ストライカーズ・オーシャン【ジョジョの奇妙な冒険 Part6異聞】   作:オレの「自動追尾弾」

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第4章 ルーテシア 浮上
#70/長谷川 千雨の新しい事情


―――あれ?ここ……どこ?

 

 

 

広大な砂漠の真ん中で、少女は目覚めた。近くにはたき火の番をする眼鏡をかけて髭を生やした男性がいた。

 

 

 

「ん?よお、起きたか、嬢ちゃん。」

―――げ、誰、このシブいオジサマは!?

「顔洗うなら、あっちだ。」

「うん。」

 

 

 

幼い声と共にフレームアウトする男性。

 

 

 

―――ん?これ…小さい頃の……私………?

 

 

 

ふと、顔を洗おうと見つめた水面に映る幼い少女の顔を見て、それが幼き日の自分であると気づいた。見上げればそこには満点の星空が広がって、東から光が昇ってきていた。

 

 

 

「帰ったぜー。」

「おっ、早かったな。」

「ネズミみたいのが3匹穫れたぜ♪」

「『みたいの』って………食うのかそれ…?」

 

 

 

ふと、夜明けの光をバックに、よく分からないネズミみたいな小動物を持った男が歩いてきた。

 

 

 

―――あれ………私、この人知ってる………

「お♪お早いお目覚めだな。」

―――でもちょっと待ってよ…何で私が知ってるのよ?だってこの人って―――

「オハヨー、“ナギ”………」

「向こうの空見てみなよ“アスナ”、夜明けがキレイだぜ♪」

 

 

 

 

 

#70/長谷川 千雨の新しい事情

 

 

 

 

 

「………変な夢………」

 

目覚めた明日菜の第一声は、今見た夢についてであった。

今日は修学旅行から帰ってきて翌日の日曜日。どうやら二度寝して、今は昼のようだ。

 

「ん?」

 

ふと、自分の寝る二段ベッドの向かいにあるロフト。いつの間にやらすっかりネギとカモのスペースとなったそこで、ネギがなにやらカリカリとペンを走らせていた。

 

「………帰ってきて早々に何カリカリやってんのよ、ネギ?」

「あ、アスナさんおはようございます。」

 

明日菜はネギに声をかけると、ひょい、とロフトに飛び乗った。

 

「よっと、いつの間にかこのロフト、あんたとカモの“家”になってるわねーーまあ、いーけど………ん?」

 

ふと明日菜は、ネギの机の上に器に盛られた一口サイズのチョコレートが目に入った。こっそり一つだけ摘むと、それを口に運んだ。

 

「実は、『長さん』からもらった手がかりを調べていたんです。」

「あ、そういえば何かもらってたわね。で、結局何だったの?」

「見てください。」

 

そう言ってネギが広げた紙には、上部に『MAHORA』と書かれた『地図』であった。

 

「実はこの『麻帆良学園』の地図の束だったんです。父さんが最後にあの部屋に来たとき、研究してたものだそうです!」

「えーーーっ!ま、麻帆良学園の地図!?な、何でよッ?」

「分かりません…暗号で書かれていて、今解読しようとしていたんですが………どうも……」

 

地図の一枚を見つめながら呟くネギを見て、明日菜は小首をかしげた。

 

「あんた、妙に嬉しそうじゃない………?」

「あ、エヘヘ………悪い人や強い敵とかもいて大変でしたけど、父さんの家もみれて手がかりも見つけられたし………なんか僕、すごくやる気が出てきちゃって。

今回の事で、スタンド使いの事とか、いろいろやらなきゃいけない事が出来ちゃったし、先生の仕事も大変ですけど………見てて下さいアスナさん、僕、がんばりましから!」

「………!?」

 

明日菜に笑いかけるネギのその顔を見て、ふと明日菜は夢に出てきた男性(ナギ)とダブって見えた。それに明日菜が戸惑っていると、ネギが不思議そうに見つめてきた。

 

「?どうかしたんですかアスナさん?」

「え゛ッ!?な、何でもないわよッ!」ペシッ

「あうう!?」

 

急に顔を近づけてきたネギに明日菜は何故かドキっとしてしまい、思わずチョップをかましてしまった。

そんなやりとりをしていると、玄関のチャイムが鳴り響いた。

 

ガチャッ

「お邪魔しますわネギ先生。」

「あ、いいんちょさんに、アキラさん?」

 

訪ねてきたのは、いいんちょこと雪広 あやかと大河内 アキラ。二人とも、なにやら真剣な顔であった。

 

「お迎えに参りました。学園長先生の元で、ルル・ベルさんが、話があると。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

数十分後

 

麻帆良学園 学園長室

 

 

ネギたちが学園長室に入ると、そこにはすでに承太郎と仗助、ウェザーたちスタンド使い、学園長やなのはやフェイト、スバルたち魔法使いたち、徐倫と楓、木乃香や刹那たち麻帆良の生徒、そして、ルル・ベルやサルシッチャ、ホル・ホースたちルル・ベルの一派が集まっていた。

 

「あら、ようやく来たわね?待ちくたびれたわよ。」

「何で学園長室にアフタヌーンティーセット一式持ち込んでるのよ………?」

 

どうやって持ち込んだのか―――いや、サルシッチャの『アンダー・ザ・レーダー』だろうが―――白い丸テーブルに乗せたスコーンやクッキーをお茶菓子にして優雅に紅茶を飲むルル・ベルに対し、明日菜が呆れながら言う。

 

「初音ちゃんよしよ〜し♪」

「ゴロゴロ………♪」

 

ちなみに木乃香は、ソファーで初音とジャレていた。

 

「あれ?空条さん、千雨さんは?」

「ああ、リサリサばぁちゃんが久々に稽古つけてくれるっつって、昼前に連れてかれたよ。」

 

「―――さて、ルル・ベルくん、君には聞きたいことがあるんじゃ。」

「私が麻帆良で生み出した『スタンド使いの数』、かしら?」

 

学園長に聞かれても、普段の態度を崩さないルル・ベル。学園長が頷くとカップをソーサーに置いて、学園長やネギたちに目を見つめた。

 

「私がお母さまから盗んだ『矢』で生み出したスタンド使いは、のどかやネギ君に篤緒 奏汰、それに偶然とはいえ目覚めたハルナを含めて―――」

 

 

 

 

 

「『6人』よ。」

「6人………!!」

 

ルル・ベルの告げた人数に、皆は息を飲む。

 

「じゃあ、修学旅行で助けてくれた『スーパー・スナイプ』を含めて、後『2人』のスタンド使いが、麻帆良学園に………」

「そうなるわね。いずれ私やあなたたちの前に表れるかもしれないわね。」

「教えてくれる訳ではないのね………」

 

再び紅茶を飲み始めたルル・ベルに呆れる一同。

すると、今まで黙っていた承太郎が口を開いた。

 

「それと、こちらの調べで分かった事がある。「富良野 鏡史郎」の話によると、ヤツを射抜いた時、射抜いた『ガディ・Ru』という男が、こう言っていたそうだ………」

 

 

 

 

 

『―――この男で『11人』目か………まあ、これだけいれば十分であろう………』

 

 

 

 

 

「11人いる!?」

 

ガディ・Ru。確かギンガやアナスイたちが戦ったというスタンド使いだ。

と言うことは、ヴィオレッタ側のスタンド使いは………

 

「いえ、鏡史郎の他に夜叉丸 雪子やランボ・ルギニーにオエコモバ、それに“私が”倒した『ウエストウッド』も同時期に射抜かれている事を考えると、少なくとも残りは後『6人』と考えられるわね。ブラックモアやダービー、マイク・O、それにラング・ラングラーなんかは、結構前からスタンドに目覚めていたし。」

「後、6人………」

 

残りの敵スタンド使いの数に息を飲むネギたち。それに加え、ヴィオレッタがスカリエッティによって蘇ったスタンド使いやあの白髪の少年―――ルミリオたちもいることから、この先の戦いはかなり厳しいものになるだろう………

 

「それだけじゃないぜ………」

 

徐倫はそう言うと、懐から藍色の『DISC』を取り出しテーブルに放り出した。

 

「『ホワイトスネイク』のDISCだ。このDISCは、『プッチ』の手元にある以外は私たちの仲間の一人がどこかに隠したはずだ。」

「それが、何故か木乃香の頭に………」

 

複雑な表情でDISCを見る一同。

このDISCを持ち出したのはヴィオレッタの一味なのか、はたまた別の勢力なのか………

 

「その仲間に、この後会いに行く。ネギ、着いて来るか?」

「あ、僕、これから図書室に用がありまして………」

「ふむ……ヴィオレッタたちスタンド使いや魔法使いに対しては、結界や警備を強化しよう。魔法使いに対しては我々に任せてくれ。」

 

学園長がそう告げると、紅茶を飲み干したルル・ベルが立ち上がった。

 

「私たちも、最後の一人を目下捜索中よ。見つかり次第、連絡をするわ。」

「え?()()()?全員の行方を把握してるんじゃないの?」

 

明日菜に問われると、ルル・ベルはバツが悪そうにする。

 

「仕方がないのよ………だって………」

 

 

 

 

 

「その辺を飛んでいた、()()()なんですもの………」

「「「カラスかよッ!?」」」

「………『麻帆良野鳥の会』の魔法使いに手伝わそうか?」

「ええ、助かるわ。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「やっほーネギ君♪」

「………見せたいものとは何ですか?」

 

数分後、図書室で夕映とハルナと合流したネギ、明日菜、木乃香、徐倫、スバル、ルル・ベルたち。よく見ると、夕映はなにやら眠そうだ。

 

「?どーした夕映?寝不足か?」

「はい…実は夕べ遅くまで、ハルナの『ドロウ・ザ・ライン』の能力研究に付き合わされまして………」

「い、いやー…でも、お陰で色々分かったよ♪」

 

近々成果を見せたるよー、と答えるハルナに苦笑するネギたち。

ネギは本題に入ろうと、机に地図を広げ始めた。

 

「これなんですが………」

「なるほど、これは興味深いですね………」

「ネギ君のお父さんが調べたんだって。」

「ええ、コレが事実なら、図書館島以上の秘密がこの学園にはあることになります…」

「スゴーイ!こんな地図、大学部の人たちも持ってないよ!!」

「分かりました。我々『図書館探検部』としても、協力は惜しみません。」

「ありがとうございます!」

 

地図を受け取った夕映とハルナが快く引き受けると、ネギは深々と礼をした。

すると、図書室の扉が開き、ある人物が入ってきた。

 

「ゆえゆえー、『バルバ汁ぶどう味』ってなかったよ………あ。」

「―――あ。」

 

入ってきたのどかがネギの姿を見て、二人は見つめ合って固まってしまった………

 

「ネ、ネギ先生……」

「の〜〜〜ど〜〜〜か〜〜〜〜〜!!」

「ひゃッ!?」

「「「「ルル・ベル飛んだーーーーーッ!?」」」」

 

が、突如ルル・ベルがのどかに向かい空中でジャイロ回転しながら飛び込んできた!

 

「ひゃァアアア〜!!」

ゴシャアッ

「へぶしッ」

「モロ鳩尾(みぞおち)ッ!?」

 

思わず『イノセント・スターター』でアッパーカットを放つと、ルル・ベルは体をくの字に折り曲げて吹き飛び、床に落ちてうずくまった………

 

「あぁッ!?だ、大丈夫ですか!?」

「し、心配してくれるのねのどか………そこが好き♡」

「好感度上げちゃってるじゃねーか………」

 

悶えながらものどかに熱い眼差しを送るルル・ベル。ある意味その『思い』は尊敬に値するやもしれないが、それは呆れと半々である。

 

「す、すごかったですね、今のパンチ………」

「えッ!?あ、い、いや、その………は、恥ずかしいですぅ〜〜〜……」

 

苦笑気味で話すネギと、それに照れるのどか。そんな姿を見て、明日菜は何故か胸が締め付けられるような感覚に襲われた。

 

(う……?あの二人を見て胸が苦しく………?何で………これじゃあまるで………)

「むむっ!?」

 

突然のことで戸惑う明日菜。すると、それを察知した者が一人。

 

「ふふふふ。匂う…匂うわよ……そっちの方から淡く甘酸っぱい『()()()』が!!」

「『ラブ臭』!?」

「何そのイヤなネーミング!?」

「そんなもんしないわよーーーーーッ!?」

 

ハルナが言った謎の単語に、全員、特に明日菜は思い切りつっこんだ。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

麻帆良学園から少し離れた場所にある山中に、小さいながらも滝がある。そこの滝壺から、『コォォォォオオオ………』というなにやら奇妙な音が聞こえてくる。

 

見れば、精神統一をするように目を瞑った千雨が、滝壺の水面に『立っており』、彼女の向かい側にはリサリサが千雨を見つめながら『立っていた』。

 

彼女たち立つ水面には『放射線状』に波紋が立っており、千雨のものが半径50cm位に対し、リサリサのものは約1.5mと非常に大きかった。

 

『波紋』の呼吸によって血液中に作ったエネルギーを足に流すことにより、あたかも磁石の同極同士が反発するがごとく水に沈まずに立っていられる。『波紋の呼吸法』の、ポピュラーな使い方の一つだ。

 

「………」

 

タバコをくゆらせながら千雨を見つめるリサリサ。先ほどから千雨の波紋が安定せず歪んだり直ったりを繰り返し、足首までが水に沈んでいた。

 

「………何か悩み事かしら、千雨?」

「―――え゛っ!?あ、いや、その………うわっ!?」ザッバーン

 

いきなりリサリサに話しかけられたせいか、千雨は呼吸を乱してしまい滝壺に沈んでしまった。

 

「ふぅうーー、そんなに取り乱すなんて………修学旅行中に何かあったの?」

「………はい、まあ、話せば長くなりますが……」

 

頭を水面から出す千雨は、煙を吐くリサリサにかなわないなぁと思いながら見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――なるほど、あのルーテシアって()が、ねぇ………」

「はい………」

 

川辺に上がり千雨に話を聞いたリサリサは、千雨の少し複雑な悩みを聞いて煙を吐いた。

ルーテシアとはこれからも顔を合わせる事がある。そんな中、彼女と普通に接することができるか?そう聞かれたら、千雨は首を横に振るだろう。

 

「正直、いきなり妹だなんて言われても実感わかないし、だいたい、このこと話して向こうが受け入れてくれるか分からなくて………」

「何か共感するわね………私も昔、似たようなことあったから………」

 

かつて、柱の男たちを倒すために、母であることを明かさずジョセフに対して非情な態度で接した事を思い出しながら話すリサリサ。携帯灰皿に火を消したタバコを入れると、千雨に向き直った。

 

「とりあえず、いつまでも黙っていられる訳にはいかないわ。話す機会を作って、ちゃんと話すのよ。」

「はい………」

 

リサリサのアドバイスに、千雨は苦笑しながら答えた。

 

「所で、師匠の方は静ちゃんと仲直りできたんですか?」

「………まあ、こっちはこっちで上手くやるわ。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「もー!何で教えてくれないのよーケチー!」

 

ネギ、木乃香、徐倫、スバル、図書館探検部3人とSTARBOOKS COFFEEに来た明日菜は、前を歩くルル・ベルに聞いた。やはり、『スーパー・スナイプ』の正体が気になるようだ。しかし、ルル・ベルはやれやれとため息をつき、

 

「あのねえ?どこにお母さまの刺客が潜んでいるのか分からないのよ?あまり情報は気軽に明かせないわ………」

「……まあ、私もルル・ベルの意見には賛成だな。正体と能力は、なるべく秘密にしておいた方がいいな………」

「うーん………」

 

徐倫も賛同したため、明日菜は少し納得していない様子ながらも頷いた。すると、カウンターの方が騒がしい事に気が付いた。

 

「だからよォ!何で『桃のタルト』が()()しかないんだって聞いてんだよぉ!」

「で、ですから……今出ているのが全部でして………他のケーキでしたら………」

()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

カウンターで怒鳴っているのは、グイード・ミスタその人であった。店員に食って掛かるミスタに、一緒にいたブチャラティとエヴァは呆れ、ジョルノが止めに入った。

 

「いい加減にしてくださいミスタ。僕もそれ頼むので、それでいいでしょう?」

「ぐっ、だ、だが、ボスにそんな縁ギの悪りー数から選ばせるなんて………!」

「相変わらずだな、お前は………」

 

エヴァがやれやれと呟いていると、トリッシュは後ろの方にネギたちがいる事に気が付いた。

 

「あ。」「む?」

「あら、あなたたち。」

 

トリッシュが声をかけて気づいたのか、ジョルノは振り返り会釈をした。

 

 

 

 

 

「じゃあ、しばらくは麻帆良(こっち)にいるんですか?」

「ええ。ポルナレフには助けられましたからね。チサメを守るのを手伝わせてもらいます。まあ、君たちとは別行動になるでしょうが。」

 

席を見つけて座ったネギたちは、ジョルノと話していた。

なお、ミスタご所望の桃のタルトは、ルル・ベルが先に頼む事で事なきを得た。

 

「まあ、ヴィオレッタには、ブチャラティの魂を『侮辱』した報いを受けてもらおうと思っているけどなぁー………」

「ええ。『「侮辱」するという行為に対しては殺人も許される』、死んだ僕らの上司“ポルポ”の言葉です。」

「ジャポーネだと、小指詰めるんだっけか?」

「いや、怖いよ!?」

 

ニヤリと笑い恐ろしい事を言うミスタたちに若干怯えるネギたち。誘った張本人のルル・ベルも、(お母さま無事でいられるかしら?)と、少し心配するのであった。

 

「………」

 

一方のスバルは、ジョルノと対面をして黙っていた。

 

「………(よく考えたら、スバルのお母さんと僕は『姉弟』の関係になる………そして、スバルたちはその(クローン)らしいから、僕にとっては姪っ子という感じなのだろうか………)」

 

スバルの様子に気づいたジョルノはそう考えて、スバルに話しかけた。

 

「……スバル、あまりかしこまらなくていいよ。『赤の他人』という訳でもないのだし………」

「あ、そうですか…?」

 

考えていたスバルは顔を上げ、人懐っこい笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

「じゃあ、『()()()()』って呼んでもいいですか?」

 

 

 

 

 

「………え?」

「はい?」

 

スバルが笑みを浮かべながら言った言葉にきょとんとする一同。ジョルノが戸惑っていると、スバルは笑顔のまま続けた。

 

「いやぁ、いきなりジョル兄じゃあ馴れ馴れしすぎるかなぁって思ったけど、なんていうか、『お兄さん』っていうカンジかなーって思って。」

「お、お兄さん………?」

「いや、十分なれなれしいと思うけど!?」

 

照れるように言うスバルに突っ込む徐倫。

ジョルノは物腰が柔らかく()()味方であるとはいえ、裏社会に生きるギャングなのだ。下手に刺激しては何をされるか分からない。

 

「……おい、どうかしたかジョルノ?」

 

どうしようかと徐倫が心配をしていると、ミスタがジョルノに話しかけていた。ちらりとみてみれば、何やらジョルノが額に手を当てて俯いていた。

 

「お兄さん………お兄さん………」

「おーい、ジョルノ?大丈夫かー?」

「ねえ、コレ本気で悩み始めてない?」

 

今まで言われなれていなかったのか、スバルの『お兄さん』発言に衝撃を受けてしまったらしいジョルノ。そんな彼を見て、少し軽率だったかなぁと反省するスバルであった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

岸辺 露伴は、朝倉 和美の案内で麻帆良学園の湖の遊歩道を歩いていた。杜王区に帰る前に『魔法使いのいる街』である麻帆良学園を見ておきたいと思い立ち、京都で意気投合した朝倉に案内を頼んだのだ。

 

「『河童ァ』〜?」

「そうなんですよ!実はこの湖、三年前くらいから河童の目撃情報が多いんですよ!!」

 

デジカメ片手に熱く語る朝倉に、露伴は訝しげに声を上げた。

朝倉 和美が中学の『諜報部』に入部した数週間後、スタンド『ハロウィン』に目覚める前、湖で偶然撮影した写真に写っていた影の正体を探る内に、湖の河童の噂が流れ始め、以来朝倉は、各校のオカルト研究部や諜報部員とは別行動で調査をしているという。

ある時は自身が3日間張り込んだり、ある時は半月間『ハロウィン』を張り込ませたり、様々な手段で河童の正体を探ったが、収穫はなかった。

 

「ふゥ〜〜〜ん………まあ、魔法使いやしゃべるオコジョがいたわけだし、河童がいても何ら可笑しくはないかもなァ〜……」

「そうでしょうそうでしょ〜〜〜♪私も魔法知ってから希望を見いだしまして〜〜〜♪」

 

満面の笑みで答える朝倉を露伴は見つめると、おもむろにスケッチブックを取り出して朝倉をスケッチしはじめた。どうやら、『うれしさ』の表現の参考にするらしい。

と、視線の先には同じく遊歩道を歩くネギ達一行がいた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「………」ジーーー

「何や初音ちゃん、ずっとカモ君のこと見とるなー?」

「友達になりたいんじゃないの、カモ君?」

「スバル姐さん、あれ明らかに『捕食者』の目なんスけど………」

 

未だにアルフにねらわれているというのに、これ以上捕食者が増えたらたまったものではないカモであった………

 

ジョルノやのどか達と別れたネギ達は(ジョルノはまだ悩んでいる様子であった)、『DISC』を隠しているという徐倫の仲間に会うべく、徐倫の案内で湖まで来ていた。

 

「それで徐倫、その仲間には、湖で待ち合わせてるの?」

「んーーー、まあ、待ち合わせはしてないけど、湖にいるのは間違いないからさぁ〜。」

「「?」」

 

ネギや木乃香が首を傾げる中、徐倫はおもむろに足下から手頃な小石を何個か拾うと、短音三回、長音一回という特定のリズムで何回かに分けて湖に投げた。

 

「あの、空条さん………?」

「お、来たか。」

「へ?」

 

徐倫が見た先では湖の水面が不自然に波打ち、そして、不意にザバーッ、と音を立てて、“ソレ”は現れた。

 

 

 

 

 

「徐倫、来てくれたんだ………」

「「「「へ………?」」」」

 

 

 

 

 

縦長の雫状の頭に長い手足の、黒いスマートな体格のソレは、徐倫に親しげに話しかけてきた。

 

「連絡しようとしたんだよぉーーー、湖に落ちてた『小銭』つかって。」

「ああー、この近く公衆電話ないからなぁー………ああ、みんなこいつは―――」

「「「「河童だァァァァーーーーーッ!?」」」」

「「………は?」」

 

ネギ達の叫びに、二人(?) は一瞬引いてしまった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホワイトスネイクの“DISC”で『能力』と『記憶』を与えられたプランクトンの集合体………?」

 

数分後、落ち着いたネギ達は徐倫に河童、否、プランクトンの集合体『フー・ファイターズ(通称『F・F(エフ・エフ)』)』の紹介をされていた。元々『プッチ神父』にスタンドのDISCを守護する使命を受けていたが、徐倫たちと出会った事で彼女を守ると思うようになり、プッチと戦って瀕死となったがギリギリで湖に逃れ、今はプッチの残したDISCを湖で監視しているとの事だ。

 

「よくオカ研や、何か「カボチャの形のスタンド」みたいなのが私を探しているみたいだけど、何とかばれないようにしてるよ。」

(((朝倉(さん)………)))

 

朝倉に呆れつつも、徐倫は本題に入った。

 

「実はさF・F、保管してあるDISCの事なんだけど………」

「ああッ!そうなんだよ徐倫!実は保管してあったDISCが5~6枚かなくなっていたんだよ!!」

「「えぇッ!?」」

 

F・Fの告げた事実に、明日菜とスバルは思わず声を上げてしまう。

 

「いつなくなったとか、分かるか?」

「分からない………ただ、一年半くらい前に、『ダイビング部』の練習があって保管場所から離れたんだけど………DISCを奪うなら『その時』しかないんじゃないかなぁ………」

「少なくとも、一年半前か………」

 

徐倫は顎に手をやり考える。だとすると、その間に盗まれたDISCの内一枚が木乃香に挿されたのだろう。果たして、誰の仕業なのだろうか………?

 

「少なくとも、『12人』程のスタンド使いが私たちに迫ってる訳ね………」

「後12人、ですか………」

「やれやれ、ちょっぴり疲れるという所かしらね………」

 

ネギと徐倫がそう締めた。

 

(あれ?………私…何で………?)

 

ふと明日菜は、自分がじっとネギの事を見つめている事に気づき、戸惑った。これではまるで―――――

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「………」

「………」

 

徐倫たちが話を終えた頃、朝倉はひざを突いて落ち込んでいた。その様子は、さながら『簡単に月面に来てしまったオカルト少女』のようであった。

 

「こんなあっさり………私の二年間は………」

「………まあ、落ち込むなよ。そのうち良いことあるよ………」

 

「あれ?あそこにいるの、朝倉さんに露伴先生じゃない?」

「ホントだ。」

「何で朝倉落ち込んでるの?」

 

 

 

 

 

麻帆良学園 名所その④

『湖の河童伝説』

 

場所―麻帆良湖全域。特に、西側の湖畔の目撃証言が多い。

 

二年前より、さんぽ部と諜報部を中心に目撃証言が多数あり、ぼやけてはいるが写真もいくつかある。それでも見られるのはマレであるため、時折オカルト研究部のメンバーが探しに麻帆良湖を訪れている。

麻帆良湖でお弁当を食べているときにいつの間にかおかずが減っている事例が多く、カッパの仕業の可能性が高い。(麻帆良学園新聞部発行『まほら新聞』より抜粋)

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「アスナさーん、どうかしたんですかーーー?」

「ど、どうもしないわよ………!(ど、どうしよう…私……これじゃ本当にネギのこと………)」

 

スバルとルル・ベルの二人と別れ女子寮に戻ったネギ達だが、明日菜は未だに胸に宿った感情に対し、顔を赤くして戸惑っていた。

ふとネギはあることを思い出した。

 

「あ、そうだアスナさん、まさかとは思いますけど…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「え゛っ!?」

「お、そーだ、ソレ言うの忘れてたぜ。」

 

思い出したように告げるネギとカモ。

 

「実は、来たばかりの頃アスナさんに恥ずかしいことしちゃったから、そのお詫びにと思ってカモ君に通販で『()()()』買ってもらったんです。」

「…へ?」

「ホレ薬…何でもあるんだな、魔法界…」

「おうよ!あれを食べさせれば、『最初に見た奴』に一目惚れって寸法だぜ。ま、効果は半日程度だけどな。」

 

カモが説明する中、明日菜はわなわなと身を震わせる。と言うことは、この半日の自分のこの胸のモヤモヤは………

 

「な…なーんだー………それならそうと………」

「「「?」」」

「最初っから言いなさいよーーーーーッ!」

スッパーンッ☆

「わひゃああッ!?」

 

今日半日で溜まったモヤモヤをはらすが如く、明日菜は手にした『ハマノツルギ』でネギを思いっきりひっぱたいた。

 

(よ…よかったぁぁああああ〜〜〜、全部ホレ薬のせいだったんだ………)

「…まさかアスナ、チョコ食べたんか?」

「まっ!まっさかぁ〜、アハハハハ♪」

((食べたな………))

 

明日菜の反応に、カモと徐倫は食べたと確信した………

 

 

 

 

 

後日、話を聞きつけたルル・ベルがそのホレ薬を求めに来たが、明日菜に門前払いになった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

休み明けの月曜日、成田国際空港

 

「―――全く、アイツ何危ない事に巻き込まれてるのよ!」

 

 

 

 

 

←to be continued...




70話です。
・サブタイトルは『吉良 吉影の新しい事情』から。

・敵およびルル・ベルの生み出したスタンド使いの数の確認。残りの『スーパー・スナイプ』と『カラス』はいずれ。

・スバルの『ジョル兄』呼びは結構最初から考えていました。一応『腹違いの姉弟のクローン』なので、ある意味妹ではあるので。

・フー・ファイターズ登場は河童として湖で暮らしています。今後も登場するやもしれません。ちなみにネギ達は『実物はこんな感じなのかなー』って意味で驚いています(笑)

では、次回をお楽しみに!

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