ストライカーズ・オーシャン【ジョジョの奇妙な冒険 Part6異聞】 作:オレの「自動追尾弾」
翌日早朝
〈修学旅行4日目〉
(………)
スクナを倒した翌朝、刹那は荷物を肩に背負って屋敷の門の前に立っていた。
(『あの姿』を見られた以上、もうココにはいられない………お嬢さま………申し訳ございません………)
刹那は屋敷に一礼をすると、踵を返してそのまま立ち去ろうとする。その時だ。
「………行くのか?」
「!空条さん………ネギ先生まで………」
その門の前には徐倫とネギが立っていた。
「刹那さん………本当に行くんですか!?このかさんはどーするつもりですか!?」
「い…一応一族の『掟』ですから………お嬢さまを守るという『誓い』も果たし、神鳴流に拾われた私を育ててくれた近衛家へのご恩も返すことが―――」
「馬ー鹿。」
「は……?!」
突然徐倫に言われた言葉に、刹那は目を白黒させた。
「ったく、忘れたのかよ昨日言ったこと?どんな理由があろうと、お前がいきなり消えたらこのかが泣くぜ?」
「そ…それは………」
徐倫に問われて、刹那はごにょごにょと口を濁らせてしまう。
「そうですよ!それに、正体がバレて大変なのは僕も同じです!だから、刹那さんも自分でこのかさんを守って下さいよ!」
「それは何か違いませんか?しかしネギ先生………」
ネギがそう叫んだ時だ。ドコからか刹那を呼ぶ声がした。
「せっちゃんせっちゃん、大変やーーーーーッ」
「大変よ刹那さーーーーーん!」
「え!?な、何事ですか!?」
慌てたように駆け寄ってきたのは、明日菜と木乃香であった。後ろからは、スバルや千雨たちも慌てた様子で走って来ている。
「実は、ホテルに放った私たちの身代わりの式神たちが暴走してるらしいのよ!」
「「えぇッ!?」」
「桜咲!式神ならお前の専門だろ!」
「せっちゃん、早よー!」
明日菜たちに説明されて驚く声を上げるネギと刹那。千雨たちはこれ以上自分の身代わりに好き勝手されたらたまったものではないと、そのまま本山を駆け下りて行った。
「………ま、そーいう訳みたいだぜ?」
「………仕方ありませんね。」
刹那はそう苦笑すると、皆の後を追うように走っていった。
☆★☆★☆★
「やれやれだぜ。騒がしい連中だな………」
「元気があっていいじゃないですか。」
今までの様子を見ていた詠春と承太郎、なのは達は、微笑みながらそう話していた。
「所で………」
ふと、なのはは屋敷の壁を見た。そこには―――
「あの
「俺もアイツに聞きたいことがあったし、ちょうど良かったがな。」
「いやそうじゃなくて、『壁にめり込んだまま』なんですけど………」
戻ってきて早々、無事な姿を見て思わずのどかに飛びかかったため、のどかが反射的に放った『イノセント・スターター』の一撃により壁にめり込んだルル・ベルがいた………
#69/亀のスタンドに潜む真実
数時間後、身代わりの式神の暴走を止めたネギたちは、詠春に呼ばれネギの父―――ナギ・スプリングフィールドがかつて京都にいた時に使っていた別荘に案内されていた。
幸いにも、修学旅行4日目は“完全自由行動日”であったため、行動することに制限はなかった。
「しっかし、結構な人数で来ちゃった………」
徐倫は、自分とネギの後ろを着いてくる面々を見ながら呟いた。
着いてきたメンバーは明日菜やスバル、ティアナとノーヴェをはじめ、刹那、木乃香、夕映、ハルナ、のどか、ギンガ、アナスイ、そして、いつの間にか復活して着いてきたルル・ベルである。
「…まあ、承太郎さんが何か話があるっつってたからな………何だろ?」
ノーヴェがそう呟きながら歩いていると、目の前に昨日までの神主のような格好ではなく、私服を着た詠春と、承太郎とジョルノの3人が立っていた。
「いやー皆様、ご足労を。」
「長さん。」
「私服もシブい!」「アスナ………」
皆は詠春の案内で、ナギの別荘への道を歩き始めた。
「そういえば、千雨さんの姿がありませんが………?」
「はい。実はさっきミスタさんを通じてポルナレフさんから連絡があって、話したい事があるからと言って、ホテルで話しをしています。」
「そうでしたか………」
(ポルナレフのヤツ、ついに話す気になったか……)
「あの、あの女の人…千草さんは……」
「そちらは高町さんたちに任せました………まあ、大丈夫でしょう。」
ネギと詠春が話していると、そこに徐倫が割って入ってきた。
「所で、あの白髪のヤツについては…?」
「現在調査中です。今の所、『ルミリオ・アーウェルンクス』と名乗っていたことと、一ヶ月前にイスタンブールの魔法協会から日本へ研修に来た事しか……」
おそらく偽装ですが、と付け加える詠春に、徐倫は頷いた。
しばらく歩くと、ネギたちの前に木に隠れるように三階建ての建物が見えてきた。ナギの別荘だ。
中に入ると、壁一枚がまるまる本棚になった内装が目に留まった。
「わー…」
「本がたくさんーーー♪」
「結構オシャレね………」
「ここに…昔父さんが………」
各々が室内の感想を呟いていると、早速室内の散策を始めた。
書籍や食器など様々なものを見てみたが、ものが多いためナギに繋がる手がかりらしきものは見あたらなかった。
「どうですか、ネギ君?」
「はい、見たいものや調べたいものがたくさんあって…もう少し詳しく調べたいのですが、今修学旅行中なので………」
数十分ほど散策していると、詠春がネギに話しかけてきた。ネギの手にはナギの残したものらしき資料が多数あった。
「ハハ、またいつでも来て良いですよ。」
「んーーー………長さん、ココのカギは長さんが管理してるんスか?」
ふと、ノーヴェが何かを見ながら聞くと、詠春が振り向いて答えた。
「ええ。そうですが…?」
「ふぅーん………」
ノーヴェがそう呟くと、こっそり“ソレ”を拾い上げた。
「ノーヴェ、承太郎さんが話があるって。」
「ん?ああ、分かった。」
と、スバルが話しかけてきたため、ソレを放ってそちらに歩んだ。
(しかし、何であんなのがあるんだ?何で………)
(女性用の下着なんか………女装趣味でもあんのか?)
☆★☆★☆★
一方、徐倫たちとは別にポルナレフに呼ばれた千雨は、ココ・ジャンボの中にいた。
「………えーと……話って、何?」
「ああ………」
千雨に問われたポルナレフは、多少ためらった後口を開いた。
「………実はな、千雨、十年ほど前私が行方不明になったのは…」
「『矢』を探して『ディアボロ』とかいう奴に返り討ちにあったんだろ?承太郎さんに聞いてるよ。」
「………まあな。」
千雨に言われてポルナレフは苦笑すると、話を続けた。
「そのときディアボロのスタンド『キング・クリムゾン』の持つ時を吹き飛ばす能力で時間を『吹き飛ばした』影響か、時空にゆがみが生じてしまったようでな。私はそのゆがみに飲み込まれたんだ。」
「それで4年間行方不明に………」
ポルナレフによると、その後何の縁か『ミッドチルダ』の陸士108部隊の『女子トイレ』の個室で気絶していたのを隊士である女性に発見された後、治療を受けてしばらく108部隊に保護されていたらしい。
「(まさか、私のトイレに運がないのは親譲りなのか………?じゃなくて…)ていうか、正直父さんが行方不明だった理由聞かされても、どう反応して良いのか………」
「…まあ、前置きはこれで良いとして、………実はその時発見してくれたメガーヌ・アルピーノに、治療中も世話になってな………」
「“アルピーノ?”もしかして、ルーテシアの?」
千雨が気づいたように問うと、ポルナレフはそうだと頷いた。メガーヌ・アルピーノとルーテシア・アルピーノ。
「ああ、ルーテシアは彼女の娘だ。」
「やっぱり………」
「そして千雨………」
「
「……………………………………………………………は?」
ポルナレフの告げた言葉の意味が分からず、千雨は思わず間抜けな声を上げてしまった。
「わ、私の………『妹』って………は?ちょッ………ちょっとまて!え!?まさかルーテシアの父親って?まさか?え!?!?まさか父さん………ッ!?」
「………うん、まあ、そういう事だ。」
混乱しているため矢継ぎ早に言葉を繰り出す千雨に問われ、ポルナレフは頬をかきながら申し訳ないように答えた。
まあ、つまりはルーテシアが言っていた『
「フザケンナーーーーーッ!!」
ギャゴンッ
「ホゲッ!!」
瞬間、『エンゼル』の右籠手を着けた千雨がポルナレフを殴り、ポルナレフはぶっ倒れた。
「なに死にかけてまで異世界で不倫してんだよ!?明らかにそんな状況じゃないだろ!?」
「い…いや、違うんだ千雨!私は妻子持ちだと説明したんだが、何か話しているうちにいい感じになっちゃって向こうから………」
「言い訳になってないわァァアアアーーー!」
この後数十分間、千雨がポルナレフを責めるのが続いた………
☆★☆★☆★
「………」
「え、えーと………」
「ル、ルールー………」
そんなやりとりを千雨とポルナレフがする中、亀の外で見張りをしていたミスタの前には、偶然通りかかったルーテシアとアギトのふたりがいた………
「………そっか。もう、死んじゃってたんだ………」
「ルールー………」
ルーテシアはそう呟くと、立ちすくむ二人を置いてその場を立ち去ってしまった…
☆★☆★☆★
「―――とまあ、そういう事だ。」
「「「「「……………」」」」」
承太郎は、スバルやジョルノ、徐倫たち五人に全てを話した。
ディオ・ブランドーとジョースター家の因縁を、
自分がDIOをエジプトで葬った事を、
そして、スバルやジョルノたちにジョナサン・ジョースターの肉体の影響を受けたDIOの血が流れている事を………
「そうだったんですか………」
「そっかー……じゃあ、空条さんと私たちって、親戚みたいなものなのかなぁ〜?」
「………まあ、遠すぎる気はあるがな………」
「………気には、ならないのかい………?」
スバルに対しジョルノが問うと、スバルは頬をかきながら答えた。
「うん、まあ、気にならないっていったら嘘になるけど………」
「まあ、私も親父に聞かされて戸惑ったけど、今までのスバルたちを見ているからな。今さらそんなこと分かっても、特にどうこうはないよ。」
「そう、か………」
スバルと徐倫の言い分を聞いて、承太郎は納得したように頷いた。ギンガやノーヴェも、考えは同じのようだ。
「………それより、問題はノーヴェの体にあの『恐竜のスタンド』が体に残っていることよね………」
話を聞き終えると、ギンガが不安げにうつむくノーヴェを見つめながら口を開いた。
「………そのことだが、長に話を聞いている。」
「長さんに?」
それに答えたのは、話し終えた承太郎であった。
詠春曰く、ノーヴェのちかくにあったあの灯籠の下にはある人物に預かったロストロギアが埋まっており、昨夜襲撃してきたフェルディナンドや暦たちはそれを狙ってきたと言う事だ。
「………そのロストロギアの正体は詳しくは知らないらしいが、そのロストロギアがノーヴェの『体内』に転移したのが原因だろう。」
「転移………って!そんなヤバそうなのが私ンなかに!?」
先ほどまでの不安そうな顔が吹き飛び、慌てて自分の体をあちこち触るノーヴェ。それに皆が苦笑する中、ギンガが話しかけた。
「ま、まあ、そういう事なら麻帆良で精密検査ができるから、今異常が見あたらないなら帰ってからでも大丈夫だから。」
「そ、…そうか………そうだよな………」
ギンガにそう諭されて、少し落ち着くノーヴェと、それを黙って見つめる承太郎。
「………」
実は昨夜、承太郎は詠春にノーヴェの体内のロストロギアの正体について説明は受けていた。だが、その正体が正体だけに、皆には打ち明けなかったのだ。
(いずれにしても、ヤツらがまた『アレ』を狙ってくる可能性はある………警戒するに越したことはないな………)
☆★☆★☆★
数時間後、ホテル嵐山に帰ってきた徐倫たちに明日菜やまき絵に楓、刹那を加えたメンツに、アナスイとウェザーが話しかけてきた。
「ヴェルサスが………!?」
「生きてたんだ……あの人………」
アナスイたちの口から語られた事実に、徐倫や楓、まき絵は驚愕の顔をする。
「ヴェルサス、って確か………?」
「私やジョルノさんと同じ、DIOって人の………?」
「ああ…二年前にアメリカで『プッチ』に捨てゴマにされたと思ったんだがな………」
アナスイがあきれ気味に言う。
その時、スバルが思い出したように懐をまさぐった。
「あ、そうだ……」
「?」
「その、ヴェルサスさんと関係あるかは分からないけど、昨日話しそびれちゃったから忘れてたよ………コレ、大浴場で拾ってさ………」
と言ってスバルが取り出した『ソレ』を取り出した時、五人の表情が強ばった。
『ソレ』は、直径20cmほどの、藍色のDISCであった………
「あ、それは………」
「ディ………DISC!?何でDISCがッ!?」
「え?ええと………コレって、一体………?」
スバルが首を傾げていると、ウェザーがスバルからDISCを受け取った。
「このDISCは、『ホワイトスネイク』の能力によって抜き取られた物だ。これは『スタンドのDISC』だな………」
「ホワイトスネイク………ってたしか?」
ウェザーや徐倫に説明されて、スバルはその名前に聞き覚えがあったので驚いた。
ホワイトスネイクと言えば、二年前に徐倫たちがその野望ごと打ち砕いた『エンリコ・プッチ神父』のスタンドである。
その能力は、人の記憶とスタンド能力をDISC化させて奪い取ったり読んだりするものだ。
そのDISCの実物が、今自分の目の前にある物だというのか………?
「そ、そのDISCが、何で大浴場に…?」
「それなのですが………実はお嬢さまの頭から出てきまして………」
「何だとッ!?」
刹那に説明されて、更に徐倫たちを驚愕が襲う。
「こ…このかにDISCが入れられていた………!?」
「ね、ねえジョリーン、たしか残ったDISCって…」
『フム、『アノ者』ガ、何処カヘ隠したハズ………』
「ああ、そのはずだ…帰ったら「ヤツ」に確認だな………」
徐倫たちの言う人物が誰かは分からないが、とにかくDISCの所在は確認が可能らしい。
☆★☆★☆★
[From:スーパー・スナイプ
TEXT:明日には麻帆良に帰るけど、私の正体、話さなくて本当にいいの?]
『スーパー・スナイプ』の本体から届いたメールを見たルル・ベルは、軽くため息をついてからメールを返した。
[From:ルル・ベル
TEXT:ええ。あまり情報を開示しすぎては、あなたに危険が及ぶかもしれないでしょう。]
[From:スーパー・スナイプ
TEXT:それもそうだね。所で、修学旅行が終わったら、お嬢はどうするの?]
[From:ルル・ベル
TEXT:とりあえず、麻帆良で学園長と話し合うわ。あなたの他のスタンド使いも、スタンド能力を自覚しているころだろうし。]
[From:スーパー・スナイプ
TEXT:なるほどねー。じゃあ、麻帆良で。]
スーパー・スナイプからのメールを読み終えたルル・ベルは、京都の夜空を見上げた。
「………のどかと、どうやって話しかけたらいいのかしら………?」
翌日、様々な謎を孕んだまま、麻帆良学園の三年生達は京都を後にした。
☆★☆★☆★
「フェルディナンドが倒され、あなたが送り込んだ小娘たちは惨敗………例の『モノ』も手に入らず………無様ね。」
「………」
「ル、ルミリオ様………」
ヴィオレッタがルミリオをあざ笑うのに対して何も言えない暦と環。
「くっ…(悔しいが、何も言えないのも事実………!)」
丸太に張り付いたまま歯を食いしばる焔。そんな中、すり替えられた新巻鮭で調理したあら汁を食べ終えた学ランの人物が箸を置いた。陰で素顔は分からないが、腰まである金髪の髪が後ろで三つ編みにされており、立ち上がった際に波打つようにゆれた。
「大丈夫ですよ。『アレ』の在処は検討が出来ます。それに、」
言うと、その者の背後に黒地に金のラインが入った
「ボクも、この『ドラゴニア』に慣れたら出撃しますので。」
「………次こそは期待に応えなさいよ?協力してくれると言ったのはあなたの方なんだから………」
「大丈夫だ。」
ルミリオはそう答えると、『ドラゴニア』をしまった金髪の人物に歩み寄り耳打ちした。
「キミは大丈夫なのかい?彼女らとやり合うのは―――」
「大丈夫ですよ。上手く行けば引き込みますから。」
「そうかい………頼んだよ、『ホクト』。」
←to be continued...
69話です。
・サブタイトルは『真実の口にひそむ真実』から。
・何となく気づいていた方もいたようですが、ルーテシアはポルナレフの娘、つまりは千雨の異母妹です。
実は伏線はありまして、ルーテシアが普通にスタンドが見えているような場面があったり、後トイレでの災難とか(笑)
・スバルたちのルーツとノーヴェの体内のロストロギアの話。
ちなみに今さらですが、スバルたちのかけ声はDIOや吸血鬼たちの「WREYYYYYYY」から取っています。DISCの所在を知っている『ヤツ』に付いては次回以降に。
・最後に登場した『ホクト』。実は結構重要なキャラになるので、お楽しみに。
では、次回をお楽しみに!