ストライカーズ・オーシャン【ジョジョの奇妙な冒険 Part6異聞】   作:オレの「自動追尾弾」

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#53/朝倉 和美の収穫

夕方

 

ホテル嵐山

 

 

「………………」

 

ロビーの椅子に腰かけて、ネギは呆けていた。

というのも、

 

―――私、ネギ先生のこと、出会った日からずっと好きでしたッ!!私………私、ネギ先生のこと、大好きですッ!!!

 

(み………宮崎さんに…………『告白』されちゃった…………)

 

昼間にあった出来事―――のどかに告白された事が、頭から離れなかったからだ。

 

(お………『奥ゆかしい』と言われる「日本の女性」に「こ、こ…告白」までされた以上、『英国紳士』としてそれなりの『責任』を取らないと―――でも、僕10歳………あーーダメだァーーーッ僕、先生失格だァァァァァァーーッ)

 

色々と勘違いしているのか、「告白」という相当ショックな出来事で混乱しているのか、頭を抱えてぶんぶんと降り出し、しまいにはヘッドスピンまでし出すネギ。端から見たら「面白い光景」だが、本人は真剣に考えていた。

 

「ネギ先生、どうされたんですの?」

「昼の『奈良公園』で、何かあったの?」

「うひゃァッ!?」

 

そこへ、ネギの様子が気になったのか、あやかとまき絵が話しかけてきた。後ろには、裕奈や双子の鳴滝姉妹―――ツリ目でツインテールの姉風香(ふうか)と、シニヨンでタレ目の妹史伽(ふみか)もいた。

 

「い………いやあの、誰も僕に『告った』りなんか………」

「えッ!?こ、『告ったァァァッ!?』」

「えーーーッそれホントネギ君ッ!?」

「誰からされたのッ!?」

(し…しまったァァァァァァ~~~~~~ッ)

 

うっかり口を滑らせ、『告られた』事を言ってしまうネギ。

 

「え………あ、いや、こ…こっ!ぼ…僕、ウェザー先生たちと打合せがあるのでこれでーーーーーッ」

ドッヒューーーーーーン

「あ、ちょっと待ってよネギくゥゥゥゥん!?」

「「誰が」『誰に』告ったんですの~~~~~~ッ!?」

ダッターーー

 

何とか誤魔化そうとするも誤魔化しきれず、ネギはその場を逃げ出し、あやかたちはそれを追う。

 

「う〜〜〜〜ん………大丈夫かしらねぇ、あのガキんちょは…………」

「もう、なにもかも『一杯一杯』って感じだね、ネギ君………」

「10歳なのに、色々と背中にのし掛かりすぎなんだよなァ、ネギは…………」

 

陰から見ていた明日菜、スバル、徐倫は、苦笑しながらネギを心配していた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「逃げ足早いなぁッ見失っちゃったよ!」

「どーすんの、いいんちょッ!?」

 

ネギを追っていたあやかたちは、ネギの逃げ足(魔法による身体強化付き)により、見失っていた。

 

「うーん……『A組のうちの誰か』が「何かをした」のは確かなようですわ………このまま「謎」にしておくわけにはいきませんわね…………」

 

とにかく気になって仕方がないあやかたち。どうにかして『真相』を解明したかった。

 

「―――ここは………『()()』の出番ですわッ!!」

 

 

 

 

 

#53/朝倉 和美の収穫

 

 

 

 

 

3‐A・3班 班部屋

 

 

「なぬ!?『教師と生徒』が『淫行疑惑』ゥゥーーーーーッ!?」

 

班部屋で、デジカメに今日撮影した写真のチェックをしていたツリ目に赤毛を後ろで束ねた髪型の少女(余談だが、若干ウェンディと髪型がかぶる……)朝倉 和美(あさくら かずみ)は、あやかたちからの情報に声を上げた。

 

「そーなんだよ朝倉!大変なんだよッ」

「ンン〜〜〜〜〜〜〜そりゃァ大スクープだねェ〜〜〜〜〜〜………ま、「事実」ならだけど………それならばッ!!」

 

そう言うと、朝倉はカメラを構えて、スクッと立ち上がった。

 

「『スクープあらば、即参上ッ!!』『麻帆良学園報道部突撃班』にして『3‐A公式カメラマン』!この朝倉 和美にお任せあれッ!!」

「ええ、そのあなたを見込んで、「調査」をお願いしたいのですわ。」

「OKOK!で、『ホシ』は誰よ?『新田』?瀬流彦?」

「それが、かくかくしかじか………」

 

朝倉に説明するあやかたち。(かくかくしかじかで説明が済む小説って便利♪)

 

「えーと、つまり『ネギ先生が誰かに告白された』………と………っつかそれ全然『淫行』じゃないっつのッ!!」

「なッ…何をおっしゃいますか!充分「許されざる行為」ですわッ!!」

 

あやかたちやや拡張された表現につっこむ朝倉。だが、あやかたちは朝倉に調査を強要する。

 

「とにかくッ!ネギ先生に『誰』が『何』をしたのか調査してほしいのですわッ!!」

「頼んだよ朝倉ーーッ」

「スクープじゃないもんには興味ないんだけどなぁ〜〜〜〜〜〜………しかしまあ、ひょんなことが「大事件」につながる事もあるし………一般市民の期待に応えるのも、『報道記者』の仕事かもねぇ。」

 

まあ、とりあえず調査してみようと、朝倉は班部屋を出る。彼女の背中に向かい「頼んだよー」と、あやかやまき絵の期待の言葉が投げかけられた。

 

(って言うか、『告白』なんつったら「()()()」位しかいないじゃん…………)

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

3‐A・5班 班部屋

 

 

班部屋でのどかは一人、ネギに告白した事についてジュースを飲みながら考えていると、突如、ノックが聞こえた。

 

コンコンッ

「おーい入るよーー。本屋いるーー?……お、ちょうど『一人』か♪」

「はい、何ですか朝倉さん?」

 

入ってきたのは朝倉だ。その手には、何故か「ボイスレコーダー」が握られていた。

 

「うん、聞きたいことがあってさぁーー………あんた、ネギ先生と『寝た』って本当?」

「ブゥゥゥゥーーーーーーーッ!?」

 

いきなり変な質問をされて、のどかは飲んでいたジュース(ラベルには『メルテッディン・パルム・フェノメノン』と書かれている)を吹き出した。

 

「なッ………ななななななななななななななな………そんなこっしてないですぅぅぅううーーーーーーッ!!」

「ナハハハ、冗談冗談。今日ネギ先生に『告った』んだってなぁ〜〜………―――で、どうだったん?」

 

のどかに吹きかけられたジュースを拭きながら朝倉はのどかに聞くと、のどかは顔を赤くしてもじもじし始めた。

 

「え………ど、どどどどどどどーと言われましても………私は『自分の気持ち』を伝えたかっただけですので………だから―――お返事は最初からいらないとゆーかー………」

「へぇーー………で、ネギ先生の気持ちは気にならないの?」

「―――いえ…もう満足………とゆーか…………あの………聞くの…………こわいのでー……………」

 

急に声が小さくなるのどか。それを見た朝倉は……

 

「アッハッハッハッ!かわいーなー宮崎はーーーーー♪だめだよーーー『小学生』じゃないんだし、そんなんじゃぁーーーーーいや、まあいいかァーーーー」

ぐりぐり

「あーーーうーーー?」

 

恋に弱気なのどかがかわいかったのか、頭をぐりぐりとなで始めた。

のどかは訳が分からないようだったが、朝倉に内緒にするように言い、朝倉は部屋から立ち去った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

カチッ

「………ほいっ、『取材終了』と。………はぁーーーぁ、やれやれ………こんなんじゃあ、『記事』にもなんないよ………」

 

部屋から出た朝倉は、ボイスレコーダーのスイッチを切る。

 

「ま、みんなが知ったら騒ぐだろうし、この件は『秘密』にしといてやるか♪『ゆっくり進む恋』もあるさね………」

「―――ほう、それは『どんな恋』なんだい?」

「うん?そりゃあ、ネギ先生と宮崎が………って誰ッ!!?」

 

うっかり誰かにしゃべってしまいそうになる朝倉だが、寸前で踏みとどまった。

振り返った先にいたのは、ギザギザのヘアバンドにペン先のアクセサリーの男―――岸辺 露伴だ。

 

「ああすまん、僕は漫画家の岸辺 露伴だ。」

「えっ!岸辺 露伴ッ!?あの有名な!?」

「ああ。『京都』に取材に来たんだが…………全く、京都は観光客だらけで窮屈だよ………今日は『金閣寺』と『銀閣寺』を見てきたんだが………金閣寺のあれは何なんだよ?ただ『金ピカ』で『派手』なだけじゃないか!あんなののどこがいいんだ〜〜〜〜〜?―――それに比べて、『銀閣寺』の「落ち着いた雰囲気」はいいねぇ〜〜〜〜〜!僕は「グッ」ときたよ!」

「は……はあ………(この人、『銀閣寺派』かぁ…………)」

 

一方的に話した後、手にしたパンフレットの「銀閣寺」を見ながら、露伴はうっとりしたように語るのを見て、朝倉はどうでも良さそうな事を知った。

 

「それに、色々分かったこともあるぞ。たとえば、「〜どす」なんて、『舞妓さん』位しか使わないとかね。」

「あー、そうですよね〜。私のクラスメートにも『京都出身の子(木乃香)』がいますけど、全く使いませんよ〜。」

「あ、やっぱりそうなのかい?いやぁ、軽く『偏見』持ってたなぁ〜〜〜〜〜てっきり「方言」と思っていたよーーー。」

 

何故か共感する二人だった。

 

「それで、『ゆっくり進む恋』ってのは―――」

「えっ!?あ、いや……その………」

 

露伴がいきなり話を戻したため、朝倉は焦った。

正直、のどかとネギの恋は、しばらく様子を見てあげた方がいいと思い、朝倉は『黙っている』ことにしていた。

故に、いくらクラスに関係ないとは言え、今ここで露伴に話すのは正直マズい。

朝倉が露伴にどう言い訳しようか考えていると、意外な言葉が露伴の口から出た。

 

「―――まあ、話したくないなら、黙っていればいいよ。僕も無理に聞かないしね。」

「えっ?あ、そ……そうですか………アハハ。」

 

露伴にそう言われ、朝倉は安心して頭を掻き、笑いながらその場を去った。

 

 

 

だが、朝倉は知らなかった。露伴が内心―――

 

(まあ、後で『ヘブンズ・ドアー』で「読めば」いいし♪)

 

と思っていたのを………………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「はぁーーー、まさかあの「岸辺 露伴」が、このホテルにいるとはねぇーーー……後で『取材』してみようかな?―――しっかし、ウチのクラスは平和だねぇ〜〜〜。何か、こう『血沸き』『肉躍る』ような「大スクープ」でも、どっかに転がってないもんかねぇぇ〜〜〜〜〜………お?」

 

そんな事をぼやきながらホテル内をぶらついていた朝倉は、ふと、目の前をフラフラと歩くネギを見つけた。

 

(あらーーーー、何か『悩ん』じゃってるなーーー……10歳の少年には、『告白』はちょっと「ショッキング」だったかな………)

 

何やら落ち込んでいるというか、悩んだ様子のネギを見て、朝倉は心配になってきた。ネギは朝倉に気づかないまま、とぼとぼとホテルの外へ出て行く。

 

「―――ん?」

 

ふと、朝倉はネギの足下を子猫が通るのを見た。

そして、子猫はネギの先を行き、道路に座り込むと、顔を洗い出す。

 

そこへ―――

 

ブロロロロロ………

 

「ん………!ああッ、ネ、ネコがッ!?」

 

ようやくネギが子猫に気づいたときには、子猫にワゴン車が迫っていた!

 

ダッ

「あッ………!?」

 

朝倉が声を出す前に、ネギは子猫に向かい駆け出した!

 

(し…死んだァァァーーーーーッ!?ネギ先生ぃぃぃーーーッ)

 

朝倉が止めようと走ったその時―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル……風花(フランス・)風障壁(バリエース・アエリアーリス)ッ!!」

バンッ

「なッ…………!?!?」

 

子猫を抱えたネギが呪文を唱えると、ワゴン車は激突する前に『宙を舞った』!

 

ズズゥゥゥン

「よかった、無事だ………」

(え…………なッ…………何今のッ!?合気道!?)

 

混乱する朝倉だが、ネギは全く気づかぬまま、ワゴン車の運転手にも安全を確認した。

 

「ふふん、さすがは兄貴!『ぼーっ』としてても、やるときゃぁやるなーーー!でもダメだぜ?あんまり『派手な魔法』つかっちゃぁーーー。」

「うん………ゴメンゴメン。」

(オコジョ「しゃべった」ァァァァァァーーーーーー!?)

 

おまけに、カモがしゃべっている場面まで目の当たりにしてしまい、さらには………

 

 

「とりあえず、ネコを安全な場所まで―――」

スィィイーーー……

(飛んだァァァァァァアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーッ!?)

 

杖で飛ぶ場面までも目撃されてしまった………

 

「……………………………」

 

しばし、ネギが飛び去った方を呆然と見ていた朝倉だが、次の瞬間、『嬉し涙』を流しながら叫んだ。

 

 

 

 

 

「き………キタァァァーーーーーーーッ!!『超特大スクープ』がッ!!!!」

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ホテル嵐山内

 

 

(………アレが何かはわからないけど!あのオコジョが言っていた「魔法」という単語が本当なら!ネギ先生は『魔法使い』ということになる!!)

 

ホテルの一角を、朝倉はぶつぶつ呟きながら歩いていた。

 

「(―――考え直してみたら、私が撮った写真の中にも、いくつか『おかしいの』がちらほらあったような…………私とした事が、こんな特大スクープを見逃していたとは…………)だがッ!私は諦めないわよッ!!こうなったら――――!」

「うわッ!?」

 

いきなり叫んだため、偶然曲がり角から現れた村上 夏美が驚いたのもお構いなしに、朝倉は実行に移った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

数十分後

 

大浴場

 

 

「はぁ〜〜〜〜〜ーーーーーーーぁ………」

「……今日は別行動だったんだが、そんな事があったのか………」

「へい、そうなんでさぁ。―――オラオラ兄貴ィ、情けねえ声出してんじゃねーよ………」

 

湯に浸かりながら、仗助はカモから事情を聞いていた。

 

「大体、こんなゆっくりしてると、また女生徒が入ってくるぜぃ?」

「大丈夫〜〜〜〜〜〜。今は『先生タイム』だから〜〜〜〜。生徒は入れないよ………はぁ〜〜〜〜〜…でも僕、色々ありすぎて…………」

「―――確かに、10歳にしては、色々抱え過ぎよね……」

「おう、おまえもそう思うだろ?ルル・ベル。…………ルル・ベルッ!?」

「「えぇッ!?」」

 

仗助に言われ、ようやくネギとカモも、いつの間にかルル・ベルが入浴しているのに気が付いた。ちなみに今のルル・ベルは髪を下ろしているため、髪はストレートだ。

 

「って!なんでお前がいるんだよッ!!」

 

しばし、ルル・ベルの雪のように白い肌に見とれていたネギだが、仗助に言われ、慌てて目を手で覆った。

 

「そっ、そうですよッ!今は先生しか入れないはずですよ!?」

「見とれてたクセに、何言ってるのよ………まあ、誰も見てなかったから、こっそりとね。」

 

頭に乗せたタオルをとり、顔を拭きながら、ルル・ベルは何ともないというように言う。

 

「―――ところで、あなた宮崎 のどかに『告白されていた』みたいだけど……」

「ぶぅッ!!な!何で知ってるんですかッ!!?」

「まあ、色々とね。まあ、とにかくその告白――――ん?」

 

ルル・ベルが何か言おうとするが、ふいに、何かに気づいた。そちらを見ると―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直径が30㎝位はある『腕の生えたハロウィンのカボチャ(ジャックオーランタン)』が、『リカちゃん人形』をグイグイ動かしている場面だった………

 

「「「…………?」」」

「り……リカちゃん人形が動いてるッ!!!?」

 

尚、カモにはスタンドが見えないため、リカちゃん人形が「ひとりでに」グイグイ動いているように見えている。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ホテル内

 

とあるトイレ

 

 

(『ひとりでに動くリカちゃん人形』なんて見たら、ネギ先生は怪しんで『魔法』を使う!これで、『魔法(スクープ)』を引き出す!)

 

朝倉の手元にはデジカメがあり、画面にはキョトンとした形相のネギたちが写っている。

朝倉は自身の能力―――名付けて『ハロウィン』を操り、ネギの魔法を引き出そうと考えたのだ!

 

(二年前、偶然落ちていた『矢』を拾った時に『鏃』で手を怪我してから、見えるようになったこの力………矢はその後捨てたけど…………カメラから出てきて、『遠くの景色を撮影できる』この能力!今まで私の周りに『見える人』がいなくて、誰も知らないこの『ハロウィン』ならッ!!)

 

朝倉はスクープゲットを確信していた。

 

だが、朝倉はある『重大なミス』をしていた。

 

朝倉のミス。それは――――

 

「ん?ネギ先生、手をこっちに向けたぞ?ついに『魔法』を出すかッ!?」

 

朝倉が興奮気味に叫んだ瞬間、

 

 

 

 

 

ズババッ

「うわッ!?か、カメラがッ!?!?!?」

 

ネギのタスクがハロウィンを切断したと同時に、カメラが切断された!

 

朝倉のミスは、『()()()()()()()()()()()の存在を知らなかった』事であった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「先手必勝………!タスクであの『カボチャ』を切り裂きました!」

「グレート!でかしたぞネギ。」

 

場所は戻って大浴場。

タスクでカボチャ(ハロウィン)を切り裂いたネギは、カボチャのいたあたりを探り、湯船に沈んだリカちゃん人形を拾い上げた。

 

「あのリカちゃん人形……スタンドが動かしてたんスか?」

「ええ。スタンドが世間一般で言う『超能力』と呼ばれるのは、こんな事よ………スプーン曲げのトリックが「力任せ」なのと同じでね。」

 

不思議そうに呟くカモに、ルル・ベルが解説する。

つまりは、スプーンを持った一人の後ろから、もう一人がスプーンを『力任せ』に曲げている訳だ。

 

「あの『カボチャ』……何だったんでしょうね?」

「さあな…………何か攻撃してくる訳でもなく、リカちゃん人形動かしてただけだもんな………」

「あの動き―――多分だけど、スタンド使いになりたてで、スタンドが私たちに見えないと思ったやつじゃないかしら?」

 

ルル・ベルの推測に、2人はなるほどなと頷いた。

 

「なるほど……だからリカちゃん人形を…………」

「すると犯人は「愉快犯」な訳か?ただ脅かしたかっただけの?」

「さあ……?ただ、私には『様子を探っている』ようにも見えたわ………遠隔操作のカボチャ型スタンド…………私も知らないスタンドだわ………………」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

(くっ、不覚ッ!まさか「ハロウィン」が見えるなんて!…………これって、『魔法』なのかな?)

 

一方、朝倉は大浴場の脱衣場まで来ていた。自身の『ハロウィン』がどのような能力なのか今まで知りようのなかった彼女は不思議に思ったが、今は『スクープ』が優先だ。

 

「それは後で聞くとして―――『ハロウィン』は近距離の方が『精密な動き』が出来る!魔法なんて『超特大スクープ』!そう簡単に諦めるもんかッ!!」

 

そう言うと、朝倉は懐からデジカメを三台取り出した。

 

「『ハロウィン』ッ!!」

ニュゥウ~~~~~

 

朝倉が叫ぶと、カメラのレンズ部分から風船を膨らますかのように、『ハロウィン』がそれぞれ飛び出した!

 

「いくのよ、ハロウィンッ!『スクープ』を『撮ってらっしゃい』ッ!!」

 

ハロウィンの口からは、一眼レフのカメラのレンズらしきものが覗いていた………

 

朝倉 和美―――スタンド名:ハロウィン

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「「「っ!?」」」

 

ネギたち3人が振り向くと、3体のハロウィンが迫っていた!

 

「タスクッ!!」

「クレイジー・(ダイヤモンド)ッ!!」

「サイケデリック・インサニティッ!!」

ズガガガガガガガガガッ

 

3人が各々のスタンドを発現させ、ハロウィンに攻撃する!ネギの『タスク』が切り裂き、クレイジー・Dが殴り、サイケデリック・(インサニティ)が破裂させる!

 

 

 

 

 

ピロリ〜〜ン

「「「「…………?」」」」

 

そんな時、なんとも間の抜けた電子音が鳴り響いた。

 

「―――ぃよおっしッ!!『写真』ゲットォおッ!!」

「あ…朝倉さんッ!?」

 

そこにいたのは、ケータイを持った朝倉だ。足元にはカメラの残骸が散らばり、肩には、『ハロウィン』が一匹しがみついている。

 

「テメェがカボチャどもの『本体』かッ」

「いや〜〜〜〜〜、『ハロウィン』が見えるって知った時はヤバいと思ったけど、なんとかこうして撮れ―――ありゃ?「湯煙」でぼやけてる………」

「………とりあえず、戦う気はないみたいね………なるほど、『カメラのスタンド』とは………」

ガシイィッ

「へッ!?」

 

せっかく撮った『証拠写真』が台無しなのに気づいた朝倉だが、いつの間にかルル・ベルに近づかれ、サイケデリック・Iに頭を捕まれていた。

 

「くっ…『ハロウィン』ッ!!」

ボカボカボカボカボカボカボカボカボカボカ………

「………あり?」

 

慌ててハロウィンで攻撃する朝倉だが、ハロウィンはサイケデリック・Iをボカボカ叩くだけで、全くダメージはない。本体のルル・ベルがくすぐったい程度だ。

 

「………『遠隔操作型』故に、戦闘力は低いみたいね。さて、話を聞かせてもらいましょうか?でないと―――」

「わ、………わかった、話すから!」

 

サイケデリック・Iの威圧に「勝ち目はない」と察したのか、朝倉は潔く降参するのであった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ホテル嵐山

 

六課の部屋

 

 

「なるほど………つまり、今麻帆良で『魔法使いと超能力者の壮絶な戦い』が繰り広げられてるわけね………」

「大げさに言えば、そうなるわね………」

 

朝倉の返答に、ティアナが答える。

 

あの後、朝倉から事情を聞いたネギたちは、『口外しない』ことを条件に朝倉のインタビューに答えていた。

本人が自覚していなかったとはいえ、スタンド使いの増員は正直ありがたかった。

 

「―――しかし、カメラを介して発現する、カメラのスタンドか………」

「うん…何故か『カボチャの型』だったから、単純に「ハロウィン」って名付けたんだ〜〜。」

 

明日菜や徐倫らと共に朝倉が撮った写真を見ながら呟くチンクに、朝倉が説明する。

その写真には―――

 

「あっ、これ『タスク』じゃない?」

「こっちには『スタープラチナ』が写ってるよ………」

「『クレイジー・ダイヤモンド』や、『ストーン・フリー』が写ったのもある………スタンドって、映像や画像に写らないんじゃなかったか?」

 

本来『写真に残らない』はずの、『スタンドの(ヴィジョン)』が写っていた。

 

「なるほど、『スタンドが取り憑いた』カメラで撮ったから、『スタンドが写る』訳ッスね。」

「スゴいですよ朝倉さん!これ、スタンドが見えない人には、重宝しますよ!」

「え?そ、そうかなぁあ〜〜〜〜〜?」

 

ネギにほめられ、朝倉は照れたように頭を掻いた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ふう、………これで問題が一つ減ったぞーー!」

「よしよし、良かったわね、ネギ。」

 

徐倫らと一緒に部屋を出たネギは、問題が一つ減った安心感から、大きく伸びをした。

 

「まあ、朝倉が二年間も『無自覚』だったのには驚いたけどね〜〜」

「周りに見える奴がいないと思い込んでいたらしいぞ?」

「そうなんだ………あれ?朝倉さんは?」

「あっちでカモさんと話していましたが。」

 

スバルが疑問に持つが、刹那が説明した。

すると、6人の元へルル・ベルがやってきた。

 

「しかし、私の知らないスタンド使いがいたなんてね………そうそう、ネギ君、さっきの話なんだけど。」

「えっ、あ、はい…………?」

 

いきなり話をふられ、ネギはキョトンとする。

 

「宮崎 のどかの『告白』、すぐに『()()()()()』………」

『ッ!?』

 

ルル・ベルが言ったことに、6人は目を見開く。

 

「な………何よ!?何でネギが断らなきゃいけないのッ!?たしかに、『教師と生徒』の間柄だけど…………だからって、何であんたがそんなこと言うのよッ!?」

 

訳が分からないという表情の明日菜が、ルル・ベルにつっかかる。そんな明日菜に対して、ルル・ベルはすましたように言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………………………………………………………え?』

 

突然の告白に、ネギどころか、明日菜たちも呆気にとられて、固まった………

 

「それじゃあ、私はこれで。」

 

核弾頭並みにとんでもない爆弾を投下した張本人は、それだけ言うとさっさと立ち去ってしまった。

 

残されたネギたちはと言うと…………

 

『………………………えぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!?!?!?』

 

しばらくしてから、6人の叫び声がホテル内に響いた。

 

 

 

 

 

←to be continued...




53話です。
・サブタイトルは『重ちーの収穫(ハーヴェスト)』から。

・朝倉と露伴。この出会いが何をもたらすのか、それはお楽しみに。

・この作品にはしずな先生がいないため、違う形で朝倉が探りに出てます。サブタイトルの通り、朝倉は重ちーのように『スタンド使いだと自覚していないスタンド使い』にしてみました。『ハロウィン』の能力も、ハーヴェストを多少意識しています。

・ルル・ベルの告白には、実は訳があります。それは、後2〜3話したら判明する予定。

では、次回をお楽しみに!

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