ストライカーズ・オーシャン【ジョジョの奇妙な冒険 Part6異聞】   作:オレの「自動追尾弾」

54 / 99
#48/京都で生まれたならず者 ①

「ちょっとあんさん!聞いてませんえ!!何やあの人数はッ!?」

 

京都のどこかにある部屋、そこでメガネをかけた黒い長髪の女性が、目の前の女性につっかかる。

 

「おまけに『管理局』までおるやないか!ほんまに大丈夫なんでっしゃろなッ!?」

「大丈夫よ。やつらの主力スタンド使いのうち、数名は酔いつぶれてぐっすりだし、一番厄介な空条 承太郎も、今は関東……そして、我がスタンド使いたちとあなた方呪符使いや神鳴流剣士が手を組めば、最早敵なし!」

「………その言葉、信じてええんですな?」

 

メガネの女は、疑いの眼差しを女に向けながら問う。

 

「ええ。最も、私の目的は果たせてもらうわ。あの二人は別行動になるけど、ウエストウッドを着かせるわ。」

 

女が『左側の右手』をやった先には、角刈りにした髪と鍛え抜かれた体をした男と鷲鼻で長髪の男、そして奇妙な仮面を付けた二人の男女がいた。

そのうちの一人、仮面の女の手には、一振りの刀が握られている。

 

 

 

 

 

「頼んだわよ、『アヌビス神』!」

 

 

 

 

 

#48/京都で生まれたならず者 ①

 

 

 

 

 

「うーむ、分からん。だが、だからこそ、僕の『好奇心』をくすぐるんだよなぁーーー!それが人の『(さが)』というべきものだ。僕はそう思う!」

 

先ほどから露伴は、『本』にした明日菜のページをめくりながら、そう呟いていた。

 

「あの、露伴先生………そろそろこの子戻した方がいいんじゃあ………?」

「何を言うんだ康一くん!こんな事、今までなかったんだぞ!僕の『ヘブンズ・ドアー』で開いた記憶が袋とじなんて!」

 

露伴はそう言うと、袋とじになった明日菜のページに手をかけた。

 

「どれ、この袋とじを開いたら、何が書いてあるのか見てみようじゃないか……雑誌の袋とじなんて、中身はショボいだろうから普段は見ないのだが………ん?」

 

そう言って露伴は明日菜の記憶のページを開こうと、下の方からペリペリと破き始めたが、数センチ破いた所で手にかけたページの表にに目が止まる。そこには、こう書かれていた。

 

 

 

『あー、ジョリーンに頼まれて外歩いてたら、変なのにからまれたなぁーー。でも、岸辺 露伴って、どこかで聞いたと思ったらパルが話してたかも………』

 

 

 

「…………『ジョリーン』?」

「へ?徐倫ちゃんがどうかしたんですか?」

 

康一が露伴に聞いたその時―――

 

 

 

 

 

「「やっぱりお前か岸辺 露伴ァァァァーーーんッ!!」」

スッパーーンッ

「うおッ!?」

 

突然上から千雨と徐倫が『なにわ美人』、『なんでやねん』とそれぞれ書かれたスリッパで露伴を叩きつつ降ってきた!

 

「じょ、徐倫ちゃんに………千雨ちゃんッ!?」

「あ、どーも康一さん。久しぶり。」

「で、何であんたらがいるんスか?後露伴先生、神楽坂戻せや!」

 

康一に簡単に挨拶した徐倫に対し、千雨は露伴に、今度はスリッパではなく『エンゼル』の小太刀を突きつけて脅す。

 

「わ………分かったよ。分かったから、それは下げてくれ……………ちぇっ。」

「ちぇって言った?今ちぇって言ったかコラ!?」

 

露伴は千雨のスゴみに気圧され、残念そうに明日菜を戻すのだった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ホテル嵐山

ロビー

 

 

「『岸辺 露伴』?」

「ああ、97管理外世界(こっち)じゃあ結構有名な漫画家で、俺の実家のある『杜王町』に住んでんだが、8年前にスタンド使いになってな。その関係で知り会ったんだ。」

「へえ~、東方先生って、漫画家さんと知り合いなんですかぁ~~。」

 

仗助がミッド組と魔法使い組に露伴について話す中、ネギは尊敬の眼差しを仗助に向ける。しかし、仗助はウンザリした顔で答えた。

 

「そんな良いもんじゃねーよ………アイツわがままで強引な奴でよぉーー、漫画を面白くするための『リアリティ』を追求するために『奇行』に走るときまであるし………」

「ふんっ、ぼくの漫画の良さが分からない君に言われたくないね!」

 

不意に、入り口の方から声がした。振り返ると、小柄な男と、二十代後半の男を連れる徐倫と千雨がいた。

男は筆のような黒髪に、ギザギザの緑色のヘアバンドを付け、イヤリングやジャケットのボタン、さらにはベルトのバックルには『ペン先』を模したアクセサリーを付け、肩にはスケッチブック、首には一眼レフカメラを下げている。

 

「じょ、仗助くん!!」

「やっぱりお前か、露伴………康一も久しぶりだな。」

「って、あぁーーーーーー!!お前は『大宮駅』の!?」

「ん?君はあのときの………」

 

ノーヴェに叫ばれて、露伴も気づいた。この少女(ノーヴェ)は、大宮駅でティアナと一緒に露伴に詰め寄ってきた少女だと。

 

「あ……あんたが『岸辺 露伴』なのか………?」

「いかにも。ぼくは岸辺 露伴、漫画家だ。」

「大体の話は康一さんと露伴先生に聞いた。『取材』で京都に来る途中、あのツバメを見かけたそうだ。後はチンクや桜咲の推測通り、セインじゃなくツバメを攻撃して、セインを『本』にしたそうだ。」

「『本』?」

 

『本』という単語に首を傾げる一同。すると―――

 

 

 

「ふむ………口で説明するよりは、見た方が早いだろう。『ヘブンズ・ドアー』ッ!!」

ズギャァアアーーーン

「「「「「「「!!?」」」」」」」」

 

言うや否や、露伴は千雨に向かいスタンド―――「天国の扉(ヘブンズ・ドアー)」を放つ!すると千雨は、後ろに倒れながらまるで『本のページ』のように体がめくれる!よく見ると、めくれた部分には『文字』が書かれている。

 

「は、長谷川さんッ!?」

「これがぼくのスタンド『ヘブンズ・ドアー』だ。人を、その人物の「人生の体験」が書かれた『本』にする能力!」

「ってそれを説明すんのに何で千雨なんだよッ!!?」

「うるさいなぁぁあ~~~、ちょっと読んだら戻すって。えぇーとなになに………」

 

千雨を『本』にしたことをツッコむ徐倫。だが、露伴はそんなことお構い無しに千雨の記憶を読み始める。

 

「ん?『ネットアイドル「ちう」』?こいつ、そんなことやってんのか?」

「え?何ですかそれ?」

「ネットアイドルって?」

「おめーらも興味示してんじゃねーよッ!!」

スパパパコーーン

 

露伴の読み上げる千雨の情報に興味を持ち、のぞき込もうとする明日菜とネギに、『しんどいわ!』と書かれたスリッパによる連続ツッコミを放つ徐倫。

 

「………それ、何種類持ってるの?」

「全部で8種類だ。」

「結構あるんだね………」

 

「さて、結構面白い情報が得られたなぁ〜〜〜サイトの『URL』メモったし、後でじっくり観覧してあげるよ、『ちうたん』♪」

 

露伴はそういうと、ページの端に『今起きた事はすべて忘れる』と書くと、『ヘブンズ・ドアー』を解除する。

解除すると同時に千雨は目を覚ます。

 

「―――ああーーーー、こいつの『ヘブンズ・ドアー』か?それはだなぁー…………」

「いや、もういいです………」

「………?」

 

だが、本当に『何も覚えていない』らしく、『ヘブンズ・ドアー』の説明をしようとするが、ネギにもういいと言われてしまい、不思議に思う千雨だった。

 

後になって、千雨は『ヘブンズ・ドアー』に自分がかけられた事に気づいた上、露伴やネギたちに『ちう』の事がバレた事を知り、必死で口止めをするハメになった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ホテル嵐山

露天風呂

 

 

「「―――ふいぃぃーーーー………」」

「ちょっと2人ともー、何かおやじ臭いよ?」

「そうだぜ?東方のダンナはともかく、兄貴まで………」

「………何が言いてェんだ、カモ?」

 

おやじ臭く息を吐くネギと仗助に苦笑する康一とカモ。

現在は麻帆良学園の教師たちの入浴時間だが、康一、露伴、ブチャラティの3人は、こっそり湯に浸かっていた。

 

「しかし、疑っちまってすまなかったな康一に露伴のダンナァ。」

「いや、いいよ。スタンド使いたちとの連戦で、疑心暗鬼になってたんだよね。(スタンドに長く関わってきたとはいえ、オコジョと普通に話してるぼくって………)」

「まあ、オレも昔『トニオ』の奴を疑った事あるしな…………」

 

かつて、スタンド使いとの連戦でスタンド使いの料理人『トニオ・トラサルディー』を疑った事を思い出す仗助。

料理に混ざり、料理に含まれる成分で人の体を健康にするスタンド『パール・ジャム』の使い手である彼は、「うまい料理を食べさせたい」という思いでスタンドを使っていた。仗助と康一の友人の億泰(おくやす)曰く、『天使のような料理人』だ。

 

「―――所で、さっき『神楽坂 明日菜』の記憶を読んだんだが…………ん?」

 

仗助たちに話しかけた露伴だが、彼の元に、湯船に浮かんだ『桶』が流れてくる。桶にはお湯が張られており、中には―――

 

「―――あれ?ネギたち?」

「みんなも入ってたですか?」

 

中にはリインとアギトが浸かっていた。

 

「り、リイン曹長!?」

「何で2人が………はっ!?」

 

いきなりの闖入者に驚くネギだが、露伴と康一が2人を凝視しているのに気づく。

 

「………しゃ………………喋るオコジョの次は……………よ、『妖精』!?」

「………へぇえ〜〜〜〜〜〜〜」

 

驚いて口をパクパクさせる康一。対して露伴はと言うと―――

 

 

 

ガシィッ

「へうッ!?」

「ずいぶん小さいなぁーーーー………一体どういう構造なんだ…………?」

「へ?あ、あの…………ひぁうっ!?」

 

リインを掴んで、あちこち触り始めた。端から見たら、アブナい光景だ。

 

「て、てンめェェ〜〜〜〜…………この―――」

 

それを見ていたアギトは、両手に火球を出して露伴に投げつけようとするが―――

 

 

 

 

 

「「こンの変態がァァアアアーーーーーーーーーーー!!」」

ドグシャア

「へぶッ!?」

 

それよりも早く、徐倫とスバルの跳び蹴りが飛んできた。

すると、少し困惑した様子の刹那も入ってくる。

 

「ナ、ナカジマさんに空条さん…………ってネギ先生!?」

「え?何でネギくんや東方先生が!?」

「今は教師の入浴時間だよ………聞いてなかったのか?」

 

あきれ顔で、鼻血を出す露伴を『治し』ながら三人に聞く仗助。ちなみにネギと康一は、三人を見ないように背を向けていた。

 

「…………というか、ここは男湯じゃあなかったか?」

「多分、脱衣場だけ男女別になった『混浴』だな。」

 

ブチャラティの疑問に、スバルと徐倫の裸体を見て鼻息を荒げながら答えるカモだが………

 

「……………」

ドガァッ

「ぐおあっ!?」

 

徐倫に無言で踏みつぶされた…………

 

「ったく、このエロオコジョは!」

「すみませんでした先生方。すぐに出ますので―――」

 

刹那がネギたちに言い掛けたその時。

 

「ひゃあああ〜〜〜〜〜〜〜ッ」

「!?」

「い……今のは『このかさんの』!?」

「『このかお嬢様』ッ!?まさか奴ら、このかお嬢様に手を出す気か………ッ!?」

「え?『お嬢様』…………?」

 

刹那の木乃香の呼び方に違和感を覚えるが、今はそれどころではない!

 

「お嬢様ッ!!」

「桜咲!!」

「兄貴!きっとまた『関西呪術協会』の嫌がらせだぜッ」

「う、うん!脱衣所の方から聞こえたよ!!」

 

駆け出した刹那に続き、ネギや徐倫、スバルも駆け出す。

 

「お嬢様ッ!!」

「大丈夫ですかこのかさん!?」

 

そして、脱衣所で四人が見たのは―――

 

 

 

 

 

「「「「「ウキッキーーーーーー♪」」」」」

「いやぁあ〜〜〜〜〜〜〜〜ん」

「ちょっ……ネギ!?何かおサルが下着を………ッ!?」

「おい神楽坂!こいつらお前の『親戚』だろ!?何とかしろッ!!」

「ちょっと千雨ちゃん!それどういう意味ッ!?」

ズルッ

 

こザルに下着を奪われそうになる明日菜、木乃香、千雨の三人がいた………

 

「ええっ!?一体コレは………!?」

「こ……………このこザルども………!!このかお嬢様に何をするかぁぁぁあああああッ!?………斬るッ!!」

 

こザルが木乃香を辱める様(ように刹那には見えたが、実際は下着を取っただけ)を見て、いつの間にか抜刀した野太刀『夕凪』を構える刹那。

 

「きゃっ!桜咲さん何やってんの!?それホンモノッ!?」

「ちょ、ちょっとダメですよ桜咲さん!」

「そうだよ!!おサルを斬ったらカワイそうだよッ!!」

「な、何するんですか2人とも!?こいつらは低級な『式神』です!斬っても紙に戻るだけで………」

 

こザルを斬ろうとする刹那を止めるネギとスバル。刹那は困惑しながらも説明するが………

 

「オラァッ!!」

ドグシャアッ

「ムギャアッ」

「「空条さんッ!?」」

 

隣で徐倫の『ストーン・フリー』が、容赦なくこザルをブチのめしていた。

 

「………確かに、紙に戻るだけだな……スタンドを殴ったような感触に似てるが………」

「!おい、お前らがバカやってる間に近衛が………」

「ひゃあ〜〜〜〜〜〜〜!?」

「「「「「ウキッキーーーーーー♪」」」」」

「お嬢様ッ!!」

 

こザルに連れていかれる木乃香に向かい、刹那は夕凪を構えながら駆け出す!そして―――

 

「まことに勝手ながら、助太刀いたすぜッ!!」

「……!感謝します!神鳴流奥義ッ!!」

「双燕天翔流奥義ッ!!」

ズザザザザザザザンッ

「百烈桜華斬ッ!!」

「雷鳴月華ッ!!」

「「「「「ムギャアアアァァァァッ!!」」」」」

 

刹那と千雨の広範囲攻撃により、こザルたちはただの紙に戻る!

 

「桜咲さんッ」

「木乃香は無事か………!」

 

不意に、徐倫は近くの木に気配を感じる。すかさず近くにあった風呂桶を持ち、投げるフォームに入る!

 

「オラァッ!!」

ギャァアンッ

「………フン。」

ガサッ

「えっ?」

「…………チッ、逃がしたか………」

 

だが、投げられた風呂桶よりも早く、その気配は逃げていったようだ。

 

「すみません長谷川さん。しかし、今のが………」

「せ、せっちゃん………なんかよー分からんけど、助けてくれたん?あ、ありがとう。」

「!あっ………いや…………」

 

千雨に礼を述べる刹那だが、木乃香に礼を言われて、顔を赤くする。そして、

 

バシャアッ

「ひゃっ!?せ、せっちゃん!?」

 

抱いていた木乃香を離してしまい、そのまま走り去ってしまった………

 

「??何だ今のは………?」

「さあ………?(曹長、今のウチに。)」

(はいです。お願いします、ブチャラティさん。)

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「………このか………やっぱり桜咲さんとは何かあったの………?」

「…………うん、アスナや徐倫にも、ちゃんと話してへんかったよね…………」

 

風呂から上がったネギたちは、木乃香から話を聞いていた。

 

木乃香は、麻帆良に来るまでは京都にある広くて静かな屋敷で育ったのだが、山奥にあったため友達が一人もいなかったらしい。

 

 

そんなある日、屋敷に客人(後で刹那に聞いたら、『神鳴流』の師範だったらしい)と共に、刹那が付いてきたのだという。

 

 

刹那と木乃香は仲良くなり、当時から剣道(神鳴流)をならっており、怖い犬を追い払うなど、危ないときは守ってくれたりもしたらしい(ネギたちは、今も守っているように思えたが………)。

 

 

だがその後、刹那は剣の稽古で忙しくなり、あまり会わないようになったまま木乃香が麻帆良に引っ越し、中1の時刹那も麻帆良(こちら)に来て再会出来たのだが―――

 

 

 

「………何かウチ、悪いことしたんかなあ………せっちゃん、昔みたく話してくれへんよーになってて………」

「このか………」

「「「「「………………」」」」」

 

淋しそうに話す木乃香に、ネギたちは何とも言えない表情になる…………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

木乃香が部屋に戻り、ネギ、明日菜、スバル、徐倫は、部屋にいなかった刹那を探すことにした。

 

「………このかさん、淋しそうでしたね………」

「うん、普段のこのかなら、あんな顔絶対にしないもんね………」

「あ………そういやあ、中1ん時、ちょっと落ち込んでた事あったかな………?」

「そういえば、『奏汰』の時も、桜咲は「依頼」をしただけで、自分から動こうとしていなかったな………水くさいなぁ、何にも話してくれなかったなんて…………」

 

四人が話していると、前からウェザーが歩いてくる。

 

「………ネギくんか。A組の奴ら、修学旅行初日の夜にしては静かだな………まあ、他の客に迷惑にならないからいいがな。」

「そ、そうですね~~~。騒がせどころか、みんな寝ちゃいましたからね~~~(お酒で……)」

「………今回、また何やら大変らしいな………俺や長瀬たちでよければ、いつでも呼んでくれ。」

「あ、はい!ありがとうございます、ウェザー先生!」

 

ウェザーはそう言うと、また見回りに歩いていった。明日菜が、徐倫に聞いた。

 

「………ウェザー先生のスタンドって、「天候を操る」んだっけ?」

「ああ。結構強いぜ。でも、先生には悪いが、出る間もなく終わっちまうかもなぁ~」

 

徐倫がそう言うと、スバルやネギは苦笑する。

 

この後日、実際にウェザーの能力に助けられるのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ホテル

入り口

 

 

「―――あー、好奇心で聞くんだが桜咲くん…それは、何をしているんだい?」

 

脚立に乗り、入り口の上部に『呪符』を貼っていた刹那は、不意に後ろから話しかけられて振り返る。そこには、浴衣に着替えた露伴がいた。

 

「………露伴先生ですか。これは「式神返し」の結界です。」

「ふう~~~ん………」

(………漫画家というのは、みんなこんななのか…………?東方先生は、このまま私たちに『取材』と称して着いてくる気だと言っていたが………大丈夫なのか?この人を巻き込んで……………)

 

興味深そうに呪符を見つめる露伴に、刹那は不審な顔になる。

仗助や徐倫には聞いていたが、『漫画のネタ』になりそうなものを見つけたら、自分が大けがしようが、ヒドイ目にあおうが、死なない限りあらゆる体験を「作品に生かそう」とするらしい。

『芸術家気質』とでも言うのだろうか?刹那には露伴の漫画に対する情熱が、少し分からなかった。

 

「あ、いたいた、桜咲さん!」

「あ、露伴先生もいましたか………」

 

そこへ、ネギたちがやってくる。それに続くように、チンクや仗助たちもロビーに集まってきた

 

「それ、『呪符』だよね?桜咲さんも『日本の魔法』を使えるの?」

「ええ、剣術の補助程度にですが………」

 

刹那の説明を聞き、スバルは『ベルカ式』に近いものだと、自己解釈した。

 

「―――関西呪術協会の嫌がらせがかなりエスカレートしてきました………このままでは、このかお嬢様にも被害が及びかねません………」

「そうだな………「ディード」の事を含めると、『左手が右手の女』の勢力が絡んでいる可能性もある。」

 

刹那の話に、チンクが付け足す。

 

「桜咲、オメーも京都出身と聞いた。襲ってくる敵について、知っていることを教えてくれ。」

「―――敵は恐らく、「関西呪術協会」の一部勢力で、『陰陽道』の『呪符使い』、そして、それが使う『式神』です。」

 

仗助に言われ、刹那は話し始めた。

 

呪符使いは古くから京都に伝わる日本独自の魔法『陰陽道』を基本としているが、『呪文』を唱える間無防備になる弱点はネギたち『西洋魔術師』と同じらしい。

 

故に、西洋魔術師が『従者(パートナー)』を従えているように、上級の術者は『善鬼(ぜんき)(前鬼)』や『護鬼(ごき)(後鬼)』という、強力な式神をガードにつけているのが普通だという。

 

さらに、関西呪術協会は、刹那の『京都神鳴流』と深い関係にあるらしく、呪符使いの護衛に神鳴流剣士が付くこともあるらしく、そうなったら非常に手強いという………

 

「………それに、先ほどチンクさんも言っていましたが、今回は『スタンド使い』も関わっている可能性もあります。そうなったらもう…………」

「な………なんかヤバそうだね…………」

「………今の話からすると、神鳴流は『敵』と考えていいのか?」

 

徐倫が問いかけると、刹那はうつむく。

 

「はい………彼らにとってみれば、西を抜けて東に付いた私は言わば『裏切り者』………でも、私の望みは『このかお嬢様をお守りする』ことです。仕方ありません………私は………お嬢様を守れれば満足なんです。」

 

それを聞いて、先に口を開いたのは今までメモを取っていた露伴だった。

 

「ん〜〜〜〜〜〜〜、漫画のキャラクターにしたら好かれるタイプだよ、君はッ!!」

「露伴先生………」

「よーし、分かったよ桜咲さんッ!!」

「桜咲さんがこのかの事嫌ってなくてよかった!それが分かれば十分!!私たちも協力するよッ!!」

「か……神楽坂さんたちまで………」

 

露伴に続き、明日菜とスバルが刹那の背中をバンバンたたきながら言う。

 

「やれやれだわ………決まりね!」

「はい!関西呪術協会から、クラスのみんなを守りましょうッ!!」

「「おォーーーーーーッ!!」」

 

ネギがそう言うと、それに賛同するように、スバルたちが叫んだ。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ロビーのネギたちの様子を、離れた場所から見ていた陰が二つあった。

 

「―――さて、こちらも動きましょうか………サルシッチャ、ホル・ホースたちに連絡を。」

「はい、お嬢様。」

 

彼女―――ルル・ベルも、動き出す準備が整っていた………

 

 

 

 

 

←to be continued...




48話です。
・サブタイトルは「砂漠で生まれたならず者」から。ちなみに『太臓もて王サーガ』の帯にも、同じタイトルがありました(笑)

・アヌビス神再び。誰に憑いたかはお楽しみに。

・ツッコミ用スリッパの元ネタは言わずもがな(笑)

・露伴にとって『魔法』は宝の山ですから、色々やります(笑)あの後、S・フィンガーズでこっそり脱出しました。

・この小説では千草の一派と『両右手の女』勢は組んでいるため、スタンド使いが何人もいます。スバルやネギたちには、いくつもの激戦が待っています。

・動き出すお嬢様たち。彼女たちの目的も、次回から徐々に明らかになります。お楽しみに。

では、次回をお楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。