ストライカーズ・オーシャン【ジョジョの奇妙な冒険 Part6異聞】   作:オレの「自動追尾弾」

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#28/オコジョはネギ・スプリングフィールドが好き ②

5年前―――

 

イギリス ウェールズの山中

 

 

「くっ………『猫の妖精(ケット・シー)』にも並ぶ由緒正しい『オコジョ妖精』の(おとこ)のおれっちが、こんなチンケな罠にかかるなんて……情けねえ!」

 

草むらをのぞくと、誰かが仕掛けた罠に脚を挟まれて動けなくなった子オコジョがいた。そのオコジョは、脚を挟んでいる罠に手をかけると―――

 

「こんな事じゃ『漢の中の漢』にはなれねえべッ!一気に引っこ抜いてやんよぉおお!!」

 

気合を入れて、罠から脚を引っこ抜こうとし始めた。そんな様子を見てられなくなったのか、少年が草むらから出てきた。

 

「あっ!嘘です!ごめんなさいッ食べないでッ!!」

「大丈夫、罠を仕掛けた大人には僕が言い訳しとくからね。」

「………へ?」

 

オコジョは最初、少年が言ったことが分からなかった。少年は『治癒呪文』をかけると、オコジョに「もう引っかかっちゃダメだよ。」と言い、オコジョを逃がした。

 

 

 

 

 

しばらくすると―――

 

 

 

 

 

「コラッネギ!エモノ逃がしただろッ!!」

ポギャッ

「アイテッ」

「………………」

 

大人に叱られる少年―――ネギを遠くから見て、オコジョは思った。

 

 

 

――この人こそ……『漢の中の漢』だ………!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

現在

グリーン・ドルフィン・ストリート麻帆良 206号室

 

「―――っていうのが、おれっちとネギの兄貴の出会いなんでさぁー。その後も色々とお世話になりやして………」

「………へー?」

「『漢』……………ねえ………?」

 

ネギとの馴初めを話すオコジョこと『アルベール・カモミール』(通称『カモ』)の話を、冷やかな目で聞いていた明日菜と徐倫、ティアナ。

 

「………そんな兄貴の「友人」であるおれっちを()()()()、姐さん方はどうする気なんでさー?」

 

そんなカモは現在、徐倫の糸で縛り上げられて中吊りにされており、その下にはカセットコンロが置かれ、ぐつぐつと湯が煮えたぎる鍋が設置されている。

ネギは徐倫達の後ろで少し不安そうな面持ちであるが、千雨とあやかはネギの肩を掴んで「諦めろ」と言わんばかりに首を横に振る。さらに周囲を囲むように、スバルやチンク以下ナンバーズ一同が睨みつけていた。

 

「……かの大泥棒『石川五右衛門』は、『釜茹で』にされて生涯を閉じたそうだぜ?『下着泥棒』さんよォーーー?」

「ごめんカモ君………泥棒は『罪』だから………」

「ギャーーー!?オ、オコジョ虐待反対ーーーーー!?」

 

ジタバタと逃れようとするカモであったが、結構キツく締まっているらしく逃げ出せないでいた………

 

 

 

 

 

#28/オコジョはネギ・スプリングフィールドが好き ②

 

 

 

 

 

さて、カモ君ことアルベール・カモミールが何故、このような状況になっているのかを説明させていただこう。

 

意外とタフだったのか、翌朝には回復して元気に起き上がったカモ。しかし、前日の下着泥棒の犯人であるために、どこからか徐倫が用意したケージに閉じ込められてしまっていた。

 

トドメとなったのが、ネギが姉と慕うネカネから良すぎるタイミングで届いたエアメールだ。

内容としては、カモがイギリスで『下着泥棒二千枚』の罪で指名手配されているというものであり、ネギの所に来ていないか確認の手紙だったのだ。ご丁寧に、手配書も同封されていた。

 

詰まる所、カモは追手が下手に手を出せない『立派な魔法使い(マギステル・マギ)候補生』のネギの元へ高飛びしてきていたのだ。カワイイ顔して腹黒いオコジョである。

 

かくして、変態オコジョ妖精は吊るし上げられ、断頭台で判決を待つ羽目になってしまったのだ。

 

哀れなり、カモ。

 

 

 

 

 

「あ、兄貴の魔力の痕跡を辿って入った場所にギャルたちがわんさかいたんで……意気揚々と『コト』を起こしたのがいけなかったかぁ………まさか『管理局』がいたとは………」

「逃亡中なのに、下着泥棒するなよ………」

「オトコの悲しい『()()』ってやつでさー………」

 

カモの後悔に呆れる一同。セインや千雨は、「男ってバカなんだなー……」と思ったそうな。

 

「さて、ハラウオン執務官、今回のアルベール・カモミールの処遇、いかがいたしましょうか?私としては、このまま釜茹での後にアルフのおやつってのが妥当かと思いますが………」

「ちょ!?残酷すぎやしませんか姐さん!?」

「アタシも、ソイツ食べるのはちょっと………」

 

助けを乞うカモに対し、徐倫はこの中で責任者であるフェイトに聞く。苦笑しているフェイトもカモの所業は許せないものがあったが、流石にカワイソーだと思い、助け舟を出してあげることにした。

 

「えーと………カモ君は、『こっちの世界』の魔法について、詳しいんじゃかな……?それだったら、ネギ君の助けになるんだと思うけど………」

「!そ、………そうッス!兄貴、まだ従者(パートナー)決めてないんスよね!?なんだか『命』を狙われてるみたいだし、パートナーに関する魔法なら、おれっち専門でっせ!?」

 

フェイトの助け舟にこれ幸いと乗っかるカモ。徐倫とティアナはふむ、と考えた。

 

「どうなんだ、ネギ?」

「は、はい………確かに僕、『戦闘魔法』の類は一通り習っているんですけど………パートナーとかその辺は「まだ早いかなー」って後回しに………」

「だったら、おれっちに任せて下せー!オコジョ妖精のおれっちなら、仮契約を結ぶための儀式を執り行う魔法を扱えるッス!!」

 

成程、それは便利だと考える徐倫とティアナ。一同は顔を合わせると頷きあい、カモを下して糸を解いた。

 

「まあ、確かに知識は豊富みたいね………いいわ、今回だけは、許してあげる。」

「あ、姐さん方………!」

 

じーんと涙を流すカモ。ただし、と、徐倫は睨みつけた。

 

「次やったら、マジに許さねーからな!覚えとけよ!」

「い、イエッサー!」

 

徐倫とティアナの凄みのある目力に身を強張らせながら、カモはピシッ!と敬礼をした。

手が短いので、ちゃんとできてはいなかったが。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「そんじゃーまず、『魔法使いと従者の契約』について、僭越ながらワタクシ、アルベール・カモミールが説明させていただきやす。」

 

鍋とコンロを片付けられたテーブルの上で(せっかく沸かしたお湯を捨てるのはもったいなかったが、カモの毛が入っているといけないので排水溝に捨てて鍋は洗った)、カモが説明をし始めた。

 

「魔法使いと契約して『魔法使いの従者(ミニステル・マギ)』になった者は、魔法使いを守り助けることになるんスけど、代わりに魔法使いから『魔力』を貰って、肉体的にも精神的にも『パワーUP!』さらには、各パートナーごとに潜在能力をさらに引き出すことができる『マジックアイテム』も得られるんでさー。」

「ほほう?」

「けど兄貴みたいな子供だと本契約は出来ないし、『パートナー』を1人選ぶのはなかなか大変なので、『仮契約』を数人として、将来一人を選ぶ形になるッスね。」

「成程なー………」

 

明日菜や徐倫がカモの説明に頷くと、千雨があごに手を当てながら口を開いた。

 

「成程、身体能力向上にマジックアイテムか………となると、現時点で『戦闘力を持たないヤツ』が最適って事か………?」

「という事は………」

 

全員の目が、1点に集中する。明日菜とあやかだ。

 

「あやかは情報収集等がメインで、明日菜は完全に巻き込まれただけだが………」

「そ、そうだけど………」

 

明日菜が少しためらっていると、あやかはおもむろに立ち上がった。

 

「………それでしたら、是非ともこのわたくしをッ!」

「うお!?」

 

そして、いきなりカモに掴みかかると、ブンブンと揺さぶり始めた。

 

「さあッ!わたくしをネギ先生のパートナーにして下さい!さあッ!!」

「あばばばばばばばばばばばばばばば」

「ちょ……落ち着きなさいよ……!」

 

目を血走らせて鼻息を荒くするあやかをなだめる徐倫と明日菜。あやかから逃げ出したカモは、目を回したらしくふらふらとしていた。

 

「か、カモ君、大丈夫?」

「あ、あにき~……あの姐さん、ちょっと怖いっすよ~………」

「あ………」

 

ネギとカモの会話を聞いて、ようやく我に返ったあやかは、コホン、と咳ばらいをした。

 

「ご、ごめんなさい……わたくしったら………」

「まったく、いいんちょはネギの事になると………」

「まあ、乗り気なのはいい事なんで………じゃあ準備するんで、一発『ブチュー』っと仮契約しますか!」

「ええっ!是非ともブチューっと!……()()()()?」

 

全員、『ブチュー』の単語にフリーズする。そして、きっかり十秒後―――

 

 

 

 

 

「ってぇええッ!?ブチューって………き………」

『『キス』ゥゥウウウッ!!?』

「まあ、一番簡単な契約方法なんでさぁ。」

 

『仮契約には『キス』が必要』………それが、雪広 あやかの『恋』という炎に、油どころかガソリンを注いだ!

 

「な……………なぁぁぁんですってぇぇぇぇええええええッ!!!」

ブシュゥウウウ

「興奮のあまり鼻血が噴水のごとくッ!?」

 

後で輸血が必要になりそうなレベルで鼻血を吹き出すあやか。噴出が弱まったのを見計らって、ティッシュを両の鼻の穴に詰め込んだ。

 

「あああッ!ネギ先生とキスができるとはッ!!では――――」

 

そう言うと、手元のラップトップパソコンをチャカカカカッと操作し始めるあやか。そして、操作し終えたのか、モニターをネギの方へ向ける。

 

「では、先生はどれが好みなのか、番号キーを選んで押してください。なんでも、1500年前のインドの『カーマスートラ』という本には、48以上もの『仕方』が載っているそうですが……」

 

見ると、モニターには9種類の『キスの仕方』が表示されていた………

 

「「「って子供に何を聞いてるんだァァァァッ!!!」」」

ドグシャア

「ヒャブッ」

 

何やらアブナい雰囲気のあやかに、明日菜、徐倫、千雨の同時攻撃が決まった!

 

「全く………てか、何でキ……キスなのよ?」

「いや〜、他にもあるんスけど、色々と面倒なんで………」

「あいつ………一晩で手編みのセーター編み上げる勢いだったぞ…………」

「マジで危ないんじゃないッスか…………?」

 

笑顔で気絶するあやかを、とりあえず心配を(いろんな意味で)するノーヴェたちであった。

 

「あー………あやかはちょいと危険だな………」

「…となると、だ、やっぱり明日菜になるわけか?」

「だな。」

「やっぱり………まあ、寮が同じ部屋だから、守れるとしたら私なんだけどさぁー………」

 

不満そうな明日菜に、首を傾げる徐倫とスバル。明日菜は頬を赤く染めて、

 

「この()()()()()()()()、キスしろっていうの?」

『あ。』

 

よく考えたらそうだった。現在この部屋にはナンバーズ7人にスバルたち、徐倫たちと、10人以上がいる。その目の前でキスをするなど、羞恥もいいところだ。

 

「………ま、まあ、無理に今決める必要はねえだろ!」

「そうね!今日は寮に帰って、明日から考えましょう!」

「そうですね!じゃあ、解散!」

『おつかれさまでしたーーー!!』

 

全員が顔を真っ赤にして一目散に退散した。あやかは明日菜が担いでいった。

 

 

 

 

 

「………ネギ、カモ、後で話がある。」

「「え?」」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

翌日 女子寮 徐倫と千雨の部屋

千雨と明日菜が見届ける中、ネギと徐倫はカモの用意した魔法陣の上に立っていた。

 

「ほんじゃま!いっちょ行きますか!仮契約(パクティオー)!!」

ブワアアアアァァァァ

「「うわっ!?」」

 

カモが叫ぶと、『魔法陣』が光り輝く。魔法陣の中に立つネギと徐倫は魔法のエネルギーに驚くが、暖かい光は心地が良かった。

 

「さあさあさあ!一発ブチューっとやっちゃってくだせぇ、お二方!!」

「あうう〜〜〜」「そう急かすなって………」

 

鼻息の荒いカモにせかされ、覚悟を決める二人。

 

 

 

 

 

二人の顔が近づき――――

 

 

 

 

 

唇と唇が重なった―――

 

 

 

 

 

ズキュゥゥウウーーーン

 

 

 

 

 

「え、今のキスした音なの?」

「分からないっすけど………まあとにかく、仮契約成立ッ!!」

 

一層強い光があふれると、カモは魔法陣の範囲に「光」が集まるのをみた。光は薄い長方形の形になり、やがてカードになった。見ると、カードには指を指す徐倫と、背中合わせに立つ『ストーン・フリー』が描かれていた。

 

「ん?何だこれ?」

「あ、こりゃ『パクティオー・カード』ッスね。魔法使いとの仮契約の証ッス。」

「成程………」

 

こー言うのはちょっと良いかも、と思う千雨であった。キスは結構恥ずかしいケド………

 

「……つー訳で、これからよろしくな、ネギ。」

「は、はい!」

 

かくして、ネギ・スプリングフィールドは空条徐倫というパートナーを得たのであった。

 

←to be continued…




28話です。
・今回はネギの仮契約(パクティオー)編。カモは変態の鑑なので、女性陣には『敵』と認識されてもしょうがないです(笑)

・今作のいいんちょは既に魔法の事を知っているので、理性のブレーキが若干壊れ気味です。

・最後は、ネギと徐倫の仮契約。ジョジョでキスといえば、あの擬音は欠かせません(笑)カードの徐倫のポーズは、若干承太郎のジョジョ立ちっぽい感じですね。

では、次回をお楽しみに!

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