ストライカーズ・オーシャン【ジョジョの奇妙な冒険 Part6異聞】   作:オレの「自動追尾弾」

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#27/オコジョはネギ・スプリングフィールドが好き ①

グリーン・ドルフィン・ストリート麻帆良 206号室

 

 

「今、徐倫からメールがきた。エヴァンジェリンたちと交戦したが、逃げられたらしい………」

 

エヴァンジェリンに『全裸』にされたティアナを送り届けに来た千雨。一応自分の服を着せて玄関前まで来たが………

 

「………あのチビっ子がああああ………次にあったら…………次にあったらぁぁ……」

「…………気持ちは分かるが、とりあえず落ち着け、な?」

 

全裸にされた怒りで、全く聞いてなかった。若干、セインとディエチも引いている様子であった。

 

(しかし『吸血鬼』か……私の『波紋』が通用すればいいんだが…………)

 

千雨は吸血鬼相手の実戦経験がなく、そもそも、エヴァンジェリンが『石仮面』由来の吸血鬼であるかどうかすら怪しい。一抹の不安をかかえた千雨はふと、自分に刺さる視線に気が付いた。見ると、そこには自分を見つめる30cmほどの小さな影があった。

赤い髪を四カ所で止め、妙に露出の多い黒い衣装に蝙蝠のような翼と、長い尻尾らしきものを生やしたその少女は、確か最初の挨拶の時に『アギト』と紹介されたはずだ。(千雨はその名前を聞いて『どこかのラーイダみたいな名前だな。』と思ったものだ。)

 

「………なんだよオチビさん、人をジロジロ見て?」

「んー………いや、何かアンタ、チサメだっけ?「雰囲気が似てるなー」って思って………」

 

アギトは首を傾げるように答えた。

 

「………似てる?誰に?」

「うん、『ルールー』にさ………何となくだけど………」

 

千雨は最初、『ルールー』が誰の事なのかわからなかったが、その名前から今この場にいない1人の少女に行きついた。

 

「……ああ、あの『ルーテシア』って子にか……?けど、何でそー思うんだ…?」

「いや、本当に何となく、だよ………アタシ自身にもそれはわからないよ……」

 

アギトと千雨は、互いに首を傾げあった………

 

 

 

 

 

#27/オコジョはネギ・スプリングフィールドが好き ①

 

 

 

 

 

翌日

 

エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは現在、屋上で授業を思いっきりサボっていた。

ネギの父親、『千の呪文の男(サウザンド・マスター)』にかけられた『呪い』の影響で学校に来ているものの、正直20年も中学生をしているので飽き飽きしていたため、彼女はサボりの常習犯であった。

ついでに言うと、『吸血鬼』なので昼間は眠たくて仕方がないので(日光は平気らしい。)寝ぼけ中でもあった。

 

「………しかし、今のぼーやの周りは、妙に『強固』だな…」

 

寝ぼけながらも、ネギの『血』を狙うべく考えを巡らせるエヴァ。

改めてネギの周囲の状況を整理してみると、スタンド使い数名に『管理局』の魔導士たちが10人以上いる。その中には()()ジョースターの一族が3人もいるのが厄介だ。

 

()()()()は「侮れない」からな………ブチャラティと茶々丸だけで切り抜けられるか………む?」

 

その時、エヴァンジェリンは「誰か」が入ってきた気配を感じ取った。

サウザンド・マスターにかけられた呪いには『オマケ』が付加されており、関東の魔法使いの総本山といえるこの麻帆良学園都市を狙う者から守る『警備員』の役割を押し付けられているのだ。

この学園都市の周囲には『結界』が張られているのだが、たった今、その結界を破って侵入してきた者の気配を感じ取ったのだ。

 

「誰か、侵入してきたのか………仕方ない、調べるか………まったく、『ナギ』のやつめ………厄介な『呪い』をかけおって………」

 

ぶつくさ文句を言いながら、エヴァンジェリンは屋上から降りて行った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

その日の昼休み カフェテラス

 

「あのブチャラティってやつ、ここ数年に麻帆良に来たようね。」

 

ドリンクのストローに口をつけながら徐倫と話をする『聖ウルスラ女子高』の制服を着て鳥の足跡模様のヘアバンドを巻いた女子生徒は、徐倫から聞かれた「ブローノ・ブチャラティ」に関する情報を教えていた。

 

「不良に襲われてる所助けてもらったりしてる子がいてさー、何か一部にコアな『ファン』がいるみたいねー………詳しくは知らないけれど、『桜が丘』の方に住んでる事は分かったわ。」

「ん、そんだけ分かればいいわ………ありがとうグェス。」

「また頼ってね♪」

 

グェスはそういうと、コーヒーのプラスチックカップを手に去っていった。

 

エヴァンジェリンの情報を集めるにあたり、『魔法関連』をネギやスバルたちに任せ、徐倫や千雨は『スタンド関連』、つまりブチャラティの情報を集めていた。

朝、グェスに名前と特徴を知らせ「コイツの事、知ってる?」と、何気なしにメールで聞いたところ、あっという間にウルスラ校中を聞きまわったらしく、昼休みにはブチャラティの情報を教えに来たのだ。以外にも、顔が広いらしい。

 

「現時点で、アイツは『スタンド使い』、『ジッパーを引っ付けて、開くことで切断・切開する能力』、『桜が丘に住んでいる』、『エヴァンジェリン側のスタンド使い』………って事は、分かったな………」

「よぉ徐倫。元気か?」

 

徐倫がブチャラティの情報を整理していると、アナスイが話しかけてきた。とたんに、徐倫は不機嫌な顔になった。

 

「この間は情けない姿を見せちまったなぁー………あン時の挽回は、絶対にするから………」

「ああ、期待してるよ。」

 

相変わらず口説いてくるアナスイに棒読みで返す徐倫。スタンド使いとして頼りにしているが、正直人間としては尊敬に値しない。

 

「そうだ、今度、食事でも一緒に………」

「それ以外口を開くなら、オヤジにチクるぞ?」

「あ、すいません………」

 

何度も冷たくあしらわれてもヘコたれないアナスイでも、さすがに承太郎には敵わない。そのまま立ち去る徐倫を見送るしかできなかった。

哀れなり、アナスイ。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

同じ頃、中庭ではネギ、明日菜、スバル、千雨が話し合っていた。

なお、まき絵とアキラは裕奈たち、のどかは夕映とハルナに誘われているため、この場にはいない。

 

「魔法使いの世界の昔話に倣って、魔法使いは通常、サポートするパートナーとして従者(ミニステル・マギ) と契約を結んでいるんです。」

 

サンドイッチを片手に、話し始めるネギ。

 

「あまり戦いになる事はないので、今では恋人づくりの口実になっているみたいですけど………」

「どうやら、『魔法使いと従者(パートナー)』っていうのは、『前衛』と『後衛』の関係性になっているみたいだね。」

 

3個目の超包子特製・特大肉まん(通常の3倍サイズ)を手に、スバルが話し始める。

 

「昨夜はあのブチャラティって人と茶々丸さんに、ネギ君と仗助さんの魔法とスタンドの動きを封じられて、身動きが取れない内にエヴァンジェリンさんに接近されちゃったからね………本来は、従者が動きを封じている間に、魔法使いが呪文を唱えるっていう戦い方だと思うよ。」

「成程………」

 

ネギと千雨は、納得したように頷いた。明日菜だけは、いまいち話についていけている様子ではなかったが………

 

「よーするに、『多勢に無勢で襲ってくるヒキョーモノ』って事ね。」

「アスナさん………」

「うん、アスナはその認識でいいと思うよ………」

「あー、今バカにしたでしょー!」

 

微妙にズレた解釈をする明日菜に呆れる一同。

 

「けれどまあ、神楽坂の意見も、当たらずとも遠からずだな………今までネギ先生の関わってきた戦いは、殆どが『単身』で攻めてきていたからな………コンビネーションで攻めてくるのは、初めてのケースだ………」

 

思えば、『(グロウン)・キッド』も図書館島のゴーレムも、単身で攻めてくる相手ばかりであった。『数』で攻めてきたのはオエコモバくらいだろうが、あの時は承太郎たちもいたので、大した問題にはならなかった。

その時、

 

「ぅアスナさーーーーーーーーーんッ!!」

「わーーー!?」

 

突然、あやかが乗り込んできた。怒鳴りながら明日菜につかみかかると、ぶんぶんと揺さぶり始めた。

 

「ネギ先生が襲われたって聞きましたわよ!?あなたが付いていながら、何をしてますのッ!!」

「お、落ち着いてよいいんちょ………」

 

何とかあやかを落ち着かせる明日菜とスバル。あやかは明日菜から手を放すと髪を手櫛で整えた。

 

「まったく………ネギ先生や宮崎さんを『矢』で射抜いた輩もいるというのに………これ以上、ネギ先生に負担をかけたくはありませんわ………」

「それは私も同じだけど………」

「それで、相手は何者なんですの?」

「それが………」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

その日の夕方 グリーン・ドルフィン・ストリート麻帆良

入り口前

 

「あ、ギン姉!」

 

マンションに徐倫と明日菜と一緒に向かっていたスバルは、マンションの入り口でギンガとノーヴェを見つけ、大声で声をかけた。見たところ、大量の袋を持っているため、買い物の帰りなのだろう。

 

「あらスバル、今帰り?」

「うん。」

「って、あれ、ジョリーンに、アスナ、だっけか?」

 

まだうろ覚えな様子であったが、ノーヴェが2人の名前を呼んだ。

 

「所で、今日はどうしたの?」

「うん、ちょっと作戦会議を………」

 

入り口に入り、ギンガと話し始めるスバル。木乃香をはじめとして『魔法』の事を知らないメンツが寮には多いので、うかつに話ができないために、六課の部屋を使わせてもらおうというのだ。

 

ギャーーーー!?

そっちいったッスよ!

逃がすな!追ええーーーーー!!

 

206号室の前にまで来た時、一同は部屋が騒がしい事に気づいた。

 

「まったく、アイツら何騒いでんだよ………」

「なんか、チンクの声もするね………どうしたんだろう………?」

 

首をかしげながらも、玄関のドアノブに手をかけるスバル。

 

「待て。」

「徐倫?」

 

だが、徐倫がドアを開けるのを止める。どうしたのだろうと思っていると、徐倫は右手人差し指の指先から『糸』を伸ばし、先端を郵便受けから中に侵入させて、自分は親指を耳に当てた。

 

「?何してんの?」

「しっ………小さい『足音』がするな………人間のモノじゃあないわ………アルフのモノにしても小さすぎるし………ネズミかしら………?」

「え!?」

「い、糸から伝わる『音』を、聞いているの……!?」

 

徐倫のスタンド『ストーン・フリー』の応用法に感心する明日菜達。徐倫は素早くドアの付近に蜘蛛の巣のような『糸の結界』を張り巡らせると、スバルに指示を出した。

 

「玄関の方に駆けてきているようだったわ。スバル、とっ捕まえるから、合図を出したらドアを開けて頂戴。」

「う、うん………」

 

徐倫の指示でドアを開ける体制に入るスバル。そして、

 

「今!」

「OK!」

 

合図と共にバン!とドアを全開にする。瞬間、足元を小さく白い影が飛び出してきて、糸の結界に捕まり縛り上げられた!

 

「!?キュー!?」

 

捕まった白い影は、驚きの鳴き声を上げた。その正体は、白い毛並みの、長い胴体を持った『小動物』であった。何だろうと思い、明日菜が手を伸ばしたその時、

 

「わ~~~~~ストップストップ~~~~~!?」

「え?」

 

玄関の方から声がした。振り返るとそこには、こちらに突っ込んでくるティアナとウェンディの姿が………

 

ドガッ

「「「「ギャーーーーース!?」」」」

 

そのまま激突してしまい、小動物と明日菜は2人の下敷きになってしまった。

特に白い小動物の方は、明日菜、ティアナ、ウェンディ3人分の体重をその小さな体に受ける事となってしまい、押しつぶされて苦しそうな声を上げた。

 

「お、おい、大丈夫か………!?」

 

慌ててノーヴェとスバルが駆け寄り、3人を起こした。その時、激突した拍子に糸が緩んでしまったのか、小動物は素早くその場を去ってしまった!

 

「あ!アイツ!」

「意外と丈夫だな………ていうか、何でフェレットが………?」

 

もう見えなくなってしまった白い影に呆然としつつ、ティアナたちに事情を聴く事にした。

 

「ねえ……何があったの………?」

「う、うん………実は………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのフェレットっぽいのに、私たちの下着の大半を盗まれた………」

「まあ、寸前でパンツとかは全部取り返したッスけど………」

『………えッ?』

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「話によると、アルフが『()()()()のない臭い』に気が付いて、辿ってみたらティアナたちの下着を持ち出そうとしているフェレットみたいなのを見つけて、追いかけまわしていたらしいわ………」

「まあ、おかしな事もあるのですわね………」

 

その日の夜、女子寮の廊下を歩きながら、明日菜とあやか、ネギ、徐倫は、廊下を歩きながら話をしていた。

あやかはネギがエヴァンジェリンに狙われている事を知ると、「吸血鬼」関連で何かわかるのではと思い『SPW(スピードワゴン)財団』に連絡を取ると、心配になってネギに着いて回り始めたのだ。

 

(うーん、フェレット………?)

「ん、どーしたのよ、ネギ?」

「いえ、ちょっと………そのフェレットっていうのが気になって………」

 

首をかしげて考えるネギに明日菜が聞くが、ネギはうんうんと考えていた。

 

「あら、あれは………?」

「え?」

 

ふと、明日菜たちの部屋の前まで来た時、あやかはドアの前に何か『小さく白いもの』が落ちている事に気が付いた。見ると、胴体が細長く、毛がフサフサしている。しかも良く見ると、手足や尻尾まであった。

 

「あー!さっきのフェレット!?」

「いえアスナさん………あれは『オコジョ』ですわ………」

「何でそんなのが、寮の廊下に……?」

「え?『オコジョ』……………?」

 

オコジョと聞いて、ネギはそちらを見る。そして気づいた。

全身傷だらけだが、間違いない。あれは………いや、『彼』は!!

 

 

 

 

 

 

 

()()()()ッ!!?」

「ん?『カモ』?だれそれ?」

 

ネギがいきなり叫んで駆け寄ると、オコジョを抱き抱える。3人はネギの呼んだ名前に疑問を浮かべるが、ネギの手の中のオコジョはぐったりとしながら起き上がり、

 

「ネ………ネギの兄貴ッスか?へへっ……情けないったら………ありゃしないが…………これでお別れみたいでさぁ………………がくっ」

「か、カモくゥゥゥウウウんッ!!」

 

一通り喋ると、自分で『がくっ』って言って気絶した。

 

 

 

 

 

……………あれ?

 

 

 

 

 

「「「喋ったァァァアアアアアッ!! !?」」」

 

 

 

 

 

生涯で『2匹目』のしゃべる動物の衝撃に、3人は叫ぶのであった………

 

 

 

 

 

←to be continued…




27話です。
・サブタイトルは「猫は吉良吉影が好き」から。

・千雨とアギトの会話。この会話の意味はいずれ。

・グェス登場。この世界での彼女は高3です。原作でも『ミュー・ミュー』の時に普通の友達として接していたので、仲はそれなりに良好です。

・カモくん登場。今作でも変態紳士な彼ですが、今回は『相手が悪かった』としか言いようがないです………

では、次回をお楽しみに!

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