ストライカーズ・オーシャン【ジョジョの奇妙な冒険 Part6異聞】   作:オレの「自動追尾弾」

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#18/長谷川 千雨は静かに暮らしたい ③

さかのぼること18年前―――

 

1989年

エジプト ナイル川の川岸

 

午前2時

 

 

ある川岸で、『奇妙』な出来事が起きた。

 

川岸に『カニ』が数匹上がってきたのだ。

いや、これはおかしな出来事ではない。川岸にカニがいるのはおかしくない。

奇妙なのは、そのカニたちが、『折れて、刀身のみになった刀』を運んできた事である………

 

(クッ、おのれ承太郎……!貴様のせいで、オレはナイル川の川底に沈む羽目になったのだぞ…………!!この恨み!必ず晴らしてみせるッ!!)

 

刀―――『アヌビス神』は、承太郎への恨みで、闘志をメラメラと燃やしていた。自分の不運で川底へ沈んだことを忘れて………

 

(……とりあえず、川底でサビる事は避けられたが、このままでは何もできない………誰かが拾ってくれるのを待つしかないか…………)

 

そう思い、誰かを待つ事にしたアヌビス神。そんな時、川岸に一人の少女が現れる。

 

マントを頭からかぶっているので表情は分からないが、肌は黒く、服装は薄手のワンピースを着ており、地元の者ではない事がわかる。恐らくは旅行者だ。

 

(むっ!こんな時間に女が………?いや、そんなことより、こいつを操って、承太郎に復讐だッ!!)

 

だが、彼女が『左手』でアヌビス神を拾ったとき、信じられない事が起きた。

 

(にゃ!!ニャニィ〜〜!?あ、『操れない!』この女を操ることができないィイーーッ!?)

「………残念ねアヌビス神………私の『左手』で触れたスタンド能力は、全て『無効化』される………これが私の『スタンド能力』。」

 

少女は静かに告げると、右手でアヌビス神に布を巻き始めた。

ふと、アヌビス神は自分の置かれている状況がおかしいことに気づいた。

 

(………あれ?オレは『左手』でこの女に持たれているのか?だが、これは明らかに『右手』だぞ?………!?まさか!こいつは『左手』が―――)

 

「だが、私のこの『無効化』の能力のみでは、ジョースターどもには勝てない…………集めなければ…………私の復讐のための軍団を…………」

 

ぶつぶつと呟くように言いながら、彼女はその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

現在

 

 

「あの時、アヌビス神を拾い、優秀な刀鍛冶に直させたのは正解だったわ。」

 

紅茶に砂糖を入れながら、妙齢となったあの時の少女は言った。

彼女の目の前のモニターには、アヌビス神と戦う千雨が映し出されていた。

 

「おかげでお兄様を殺した男………ポルナレフの娘にたどり着いたんですもの………帰ってきたら、磨いてあげようかしら…………」

 

そう言うと、彼女は紅茶を手元に持ってくる。

 

 

 

だが、彼女の手をみると、おかしいことに気づく。彼女の左手の『親指』は、手の甲を外に向けているのに、『下側』にあった。

 

 

 

そう、よく見なければ、誰も気づかない。

 

 

 

彼女の『左手』が、『右手』であることに………………

 

 

 

 

 

#18/長谷川 千雨は静かに暮らしたい ③

 

 

 

 

 

(こ………この『アヌビス神』!…………今まで様々なスタンド使いと戦ってきたが…………「スタンドを身にまとう」………こんなタイプ、初めて見るぞ!)

「さあ、決着をつけようか!アヌビス神ッ!!」

 

言うと同時に、高く飛び立つ千雨。そのまま木に飛び乗ると、アヌビス神に向かって飛びかかる!

 

「疾風月華・隼ッ!!」

「バカめッ!その技はすでに―――」

ズババァッ

「なッ!?」

 

見切っていると言う前に、全ての斬撃を喰らうアヌビス神。体のあちこちに斬り傷を負い、斬り裂かれたミニスカートから太ももと下着が見えているが、その顔は驚愕だ。

 

「バッ、バカな!………スピードが……………増しただと………………!?」

「…………『疾風月華・隼』は、私が『勝手に』作った、『疾風月華』の派生技だ。私のスタンド、『アニバーサリー・オブ・エンゼル』での戦闘を想定してな!」

 

説明しながら、『エンゼル』の翼をパタパタと動かす千雨。その時、アヌビス神は気づいた。

 

「!そうか……踏み出すと同時に『飛行する』ことで、先ほどよりもスピードが増したというわけか!!」

「ああ。『疾風月華』みたいな突進技は、『エンゼル』の『飛行能力』で加速できるからな。だが、もうお前に『憶えられた』…………次で決めるッ!私の最も得意とする奥義で!!」

 

そう言うと、両腕を後ろへ持っていき、飛び出すような構えをとる。

 

「………面白いッ!」

 

アヌビス神も、両手持ちの構えをとり、千雨の出方をみる。

 

 

 

 

 

緊迫した空気が辺りを包み込み、両者は全く動かない―――

 

 

 

二人の間に木の葉が、ひらり、ひらりと、何の前触れもなく舞い落ちてくる―――

 

 

 

だれが決めたでもない―――

 

 

 

二人が決めたでもない―――

 

 

 

だが、それが地面に落ちるのが、二人の合図となった!

 

 

 

ドン!

「ア!ホッ」

ビュオ!

 

かけ声とともに、千雨に斬りかかるアヌビス神!!

 

「双燕天翔流八大奥義!!時雨月華ッ!!!」

シバババババ

 

一方の千雨も、両手からの連続突き―――「時雨月華」を放つ!!

 

 

 

そして――――

 

 

 

 

 

 

 

ガギギィィィ……………ン

 

 

 

 

 

 

辺りに、刀と刀がぶつかり合う音が響く。

 

両者は、すれ違った形で動かない。

 

勝ったのは――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………フッ、なるほどな…………貴様は剣術とスタンドを併用して……………戦うタイプか………………確かに………………憶えた………ぞ……………」

 

途切れ途切れに言いながら、アヌビス神は倒れていった……

 

「……ふう、ギリギリだったな…………」

「長谷川さんッ!」

 

『アニバーサリー・オブ・エンゼル』を解除し、アヌビス神に斬られた右わき腹を押さえながら言う千雨。そんなに深くはないようだ。アヌビス神に操られていたティアナの方は、傷だらけだが………

 

「長谷川さん、て、ティアは…………?」

「ああ、急所は外しておいたから大丈夫だろ。問題は、『アヌビス神』だな……」

 

そう言ってティアナの方を向くと―――

 

 

 

 

 

茶色い『ダイバースーツ』のようなものを着た男が、『アヌビス神』を握っていた。

 

「「!?」」

「千雨よ…………今回は引いてやる。だが、次に会うときは絶〜〜〜〜〜〜〜………対に負けないッ!!」

 

言うと、まるで水泳選手のように地面へと飛び込む。男が地面に接すると、地面は『泥化』して、そのまま潜っていった。

 

「な………今のは……?」

「ちっ!逃げたか………!(『エンゼル』を憶えられたのは厄介だな…………今度やり合うときは『アレ』を使う羽目になるかもしれないな…………)」

「と、とにかく、今は二人を病院に―――」

 

アヌビス神に逃げられ、ティアナと千雨を病院へつれていこうとするスバル。

 

その時だ

 

 

 

「『天使』が見えたと思ったらよおーー」

「「!!!」」

 

いきなり、背後から男の声が聞こえ、振り向く二人。

 

「すっげー戦いが見られたぜぇー。『達人同士の戦いは一瞬で決まる』ってよく聞くが、いやはや、見事な戦いだったぜー。」

 

木の陰から、やたらとデカい男が現れた。軽く190cmはありそうだ。

黒いスーツを着ているが、スーツの襟に『ピースマーク』のアクセサリーをつけている。ネクタイにも、ピースマークやハートの模様が入っている。

だが、男の身なりで最も目を引くのは、その『髪型』だ。まるで宇宙船や軍艦を彷彿とさせるリーゼントが、ビシッと決まっていた。

 

「…!あ、あんたは…………」

「よお千雨!久しぶりだなぁーおい!何年ぶりだ?」

「え?長谷川さんの知り合いなの?」

 

驚く千雨と、千雨に対してフレンドリーに話しかける男を見て、スバルは疑問を持つ。

 

「とりあえず、お前とそいつの「傷」、見してみろよ。」

「あ……ああ。」

 

男に言われ、千雨はティアナと自分の傷をみせる。すると―――

 

ズギャァアーーン

「!え!?え?!」

 

男から『腕』が伸びて、二人に触れたかと思うと、二人の傷が一瞬で『治った』!!

まるで、『最初から傷なんてなかった』かのようだ!

 

「……あれ?………私………??」

「ティア!!」

「よお、痛みはないか?」

 

ティアナが目を覚まし、駆け寄るスバル。ティアナはいつの間にかいる男に警戒するが、男に言われて、自分の体に異変がないか調べる。

 

「………痛みはないけど………私どうしてたの?刀を抜いたあたりから、記憶がないんだけど………」

「あの刀、スタンドだったんだよ。で、操られて私と戦っていたんだ。」

「えっ?」

 

千雨に事情を説明されて、驚きを隠せないティアナ。

 

「で、この人に傷を『治してもらった』所だ。」

「え?え?ていうか、誰この人!?」

「ああ、悪ぃーな。遅ればせながら、自己紹介させてもらうぜ。」

 

言うと、男は三人に向き直る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この度、『麻帆良学園女子中等部』で『数学』を担当することになった、『東方 仗助(ひがしかた じょうすけ)』ッス!以後、お見知りおきを!!」

 

 

 

 

 

アヌビス神――逃亡 再起可能

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

同時刻

 

麻帆良学園女子中等部 文芸部部室

 

 

通常の教室の半分ほどのこの部室には、長机2台にパイプ椅子が数個、大き目の本棚2つには純文学やライトノベルが詰め込まれ、棚にはお茶のセットや、あと何故かドラ○ン○ーザーの玩具が並べられていた。

 

「すいません空条さん、わざわざ文芸部の部室を貸していただいて………」

「気にしないでいいわ。どうせ春休み中は部活やらないし、部員も私含めて「3人」だけだしねぇー。しかも1人は春休み中、川崎の実家に帰ってるし。」

 

徐倫と刹那は、向かい合って話していた。刹那が「誰にも聞かれない場所で話がしたい」と言ってきたので、徐倫は自身が所属する文芸部の部室を提案したのだ。

 

「それで、話ってなんだ?」

「はい、実は、スタンド使いである空条さんに、お願いがあるんです………」

 

徐倫は驚いた。自分をスタンド使いと呼んだという事は、刹那は

 

「………お前、『魔法使いなのか』?」

「……はい。正確に言えば、『神鳴流』という、『気』を扱う『剣士』ですけれど、魔法使いサイドにいます。」

「……その辺の分類はわからないが………それで、お願いってのは?」

 

刹那は、胸ポケットから1枚の写真を取り出して、徐倫に見せた。写真には、アッシュグレーの髪の女子生徒が映っていた。

 

「お願いというのは、この人の事を調べてほしいのです………」

「ん~~~………?こいつ、見た事があるなぁー……誰だ?」

「………2年C組『田中 かなた』―――この生徒が、「スタンド使い」であるか否か、調べてほしいのです………」

 

 

 

 

 

←to be continued…

 




18話です。
・今回の黒幕、『左手が右手の女性』がちらりと登場。ルル・ベルとの関係などは、後々判明します。

・『アニバーサリー・オブ・エンゼル』は、シンプルに『飛行能力』を持つスタンド。後は、『銀の戦車』とあまり変わらないですね。
 千雨は『剣術』で戦うので、これくらいシンプルなのが丁度いいと考えての能力です。まだまだ隠し玉はあるようですが…

・仗助参戦。木乃香が覚醒するまでの間、『治療担当』が必要でしたので、出番は四部での承太郎くらいになるかもですが…

・ラストは徐倫と刹那の会話。次回は#05で名前が出てきた田中さんに関する『新作』になります。

では、次回をお楽しみに!

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