ストライカーズ・オーシャン【ジョジョの奇妙な冒険 Part6異聞】   作:オレの「自動追尾弾」

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#13/ウルトラセキュリティ図書館 ④

千雨の母「長谷川 百香(ももか)」は二十年前、ニューヨークに住む『リサリサ』という女性の元で、「波紋」と呼ばれる力の修行をしていた。

 

1990年のある日、彼女の息子の紹介で、ある「男性」と知り合った。

 

彼と何度か食事をしたり、彼の家へ遊びにいったりしているうちにお互い惹かれ合い、1992年に結婚。翌年には千雨を出産した。

 

だが、千雨は父親と遊んだ記憶などは、ほとんどない。彼はどういう訳か、家をよく空けていたからだ。

 

妻にも訳を言わないため、たまに帰れば口げんかが絶えない。そんな関係が長く続き、千雨が4歳の時、父親は『音信不通』となった。

 

その内、千雨が父親の顔を忘れてしまった頃、2001年の春、イタリアで父親が『変死体』となって見つかった。

 

父は、心臓付近に大きな『穴』を開け、死んでいたそうだ。

 

葬儀は、彼の祖国で、親族と親しい友人のみで行われた。

 

その中には、母の師匠とそのひ孫、

 

そしてその娘もいた。

 

 

 

 

 

これが、長谷川 千雨と空条 徐倫の出会いであった。

 

 

 

 

 

 

 

#13/ウルトラセキュリティ図書館 ④

 

 

 

 

 

 

そして今、千雨に「災難」が降り注いでいた…

 

 

 

 

 

「ふ……ふさがないと!!隙間をッ!目張りしないと!このままでは窒息してしまうッ!」

 

隙間に浮いてきた本やダンボールを当てながら、スバルは叫んだ。

栓を抜いた浴槽の水のように、空気が隙間へと流れていくためだ。

 

「いや、違うぞナカジマ…水の中じゃないんだ…窒息じゃない。」

 

ウェザーは、冷静にスバルへ言う。

 

「心配しないといけないのは、その前に体内の血液が沸騰して死ぬことだ…気圧がどんどん低くなると、室温なのに血液は熱湯のように沸騰する……無重力で真空なら、人間の体は窒息より前に、20秒で血液はカラカラに『干からびて』しまうらしい……」

 

ウェザーが話す中、弾丸が飛んできた。

スバルはシールドで、千雨はスタンドの『小太刀』でそれぞれはじき返すが、はじいた弾丸が、目張りしていた本やダンボールに着弾してしまい、空気が流れる量が増えてしまう!

 

「「うああああっ!!」」

 

 

 

「弾丸を……補給するかな………」

 

男は、持っていた箱からガラクタを腕の球体へ入れた。彼はすでに、勝利を確信していた………

 

 

 

「ナカジマ!扉から離れろ!ねらい撃ちにされる…とにかく、どこかに身を隠すんだ!」

 

千雨が、スバルに向かって叫ぶ。

男の弾丸は正確に自分たちを狙い撃ってくる。扉近くの広い場所では、いい的だ。

 

「でッ…でも!空気を止めないとッ!はー鼻血がこんなにッ!」

「……『ウェザー・リポート』!」

「「!」」

 

ウェザーがスタンド名を静かに言うと同時に、三人の体を『雲』が包み込んだ………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「!!」

 

弾丸を補給して、撃とうとした男だが、三人の姿が見当たらない。

どこかに隠れたのだろうか……?いや、有り得ない。

すでにあの傷だ。持って後1分、いや、30秒で死ぬはずだ。ならば、どうやって、そしてどこに行ったのか………?

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

「ハァー、ハァー…」

「あまり大きく呼吸するな…この部屋の残り少ない空気をとりあえず集めて、体の周りだけ『雲』で囲んで気圧を高めただけだ……部屋の中は真空に近く、この「雲」の量しかない……。」

 

近くの本棚の陰に隠れ、千雨とスバルに今の状況を説明するウェザー。

 

今、三人の体は『雲』に囲まれている。しかも、それは「服」の形をしていた。

たとえるならこれは―――

 

 

 

「く……『雲の、う…宇宙服』?これって………!」

「で…でも、どの程度『呼吸』もつんだ?これ?」

 

千雨の質問に、ウェザーは渋い顔をする。

 

「…答えたくない質問だが、2分程度ってところか……ひん死の『雲のスーツ』だ…」

「……その間に敵に近づいてあいつを倒さなきゃ、今度は確実に真空に放り出されるってこと?」

 

スバルは、周りを見るウェザーに聞く。鼻血は止まったようだ。

 

「そういう事だ。だが、くそ…ヤツもさっきの場所にいないぞ…隠れられた……」

「ちっ、探さないと、このままじゃヤツの攻撃は『完成』しちまうな……」

 

千雨とウェザーが話す。

だが、スバルは「ある事」に気づいた。

 

「ねえ、鼻血が止まった今、ひとつ気になる事があるんだけど。」

「……何だ?ヤツを探さなきゃあならないから、手短に話せ。空気ももたない。」

 

スバルは、ある一点を指さす。そこには、『角皮文庫』と書かれたダンボールが『山積み』になっていた。

 

そして、千雨とウェザーも気づいた。

 

 

 

『山積み』?『無重力』下で??

 

 

 

「私はこの部屋の扉と壁と床に触った…それで、部屋中が『無重力』になっていろんな物が浮き上がっている。空気もいすも本もゴミ箱も………でも、何であそこのダンボールは浮き上がらずに床に『ひっついて』いるの?そしてその向こうの本棚の本…ガムが底にひっついてるわけ?

それにあの敵…あいつはどうやってこの真空で『呼吸』をしてた?ヤツの血液だって真空中ではブクブクと沸騰するんじゃあないの?」

「…!そうかッ!あれは『射程距離』だッ!この「無重力」には射程距離がある!部屋全部じゃあないんだ!!」

「そう、私が今触っているこの本棚から20m弱!『無重力』はそこまで!あのダンボール箱の所は今…普通の『重力のある世界』!空気は私の周りからだけどんどん出ていき、無重力エリアの中に入ってくることはない。見えないけれど、囲まれているんだ……半径20mの外!敵も無重力の『外』だから今、呼吸を普通にできている!」

「……あそこまで行けば、真空が終わり、気圧も普通の空気があるという訳か………ならば!」

 

ウェザーが納得すると、千雨に向き直る。

 

「長谷川!お前のスタンドを『全開』にするんだ!お前の能力なら、『雲のスーツ』が飛んでなくなる前にヤツを倒せる!!」

「スタンドを……全開に?」

「……………」

 

ウェザーの言うことが分からないスバル。だが、千雨は『はぁ』とため息をつくと、すくっと立つ仕草をする。

 

「仕方ねぇ、『緊急事態』だからな……どっち道『呼吸』は必要になる………だがなナカジマ!これだけは最初に言っておく!これから見るものは、『誰にも言うな』!いいな!?」

「う……うん………?」

 

スバルに忠告した千雨は、自分のスタンドの『全身』を出す――――

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

シュン

「……?」

 

自分の背後を何かが動いた気がして、男は振り向いたが、何もいない。

 

だが、直ぐに気のせいだと考えた。

 

自分の『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』は無敵だ!無重力の外には、自分以外誰もこれない!

 

そう考えた時、

 

 

 

 

 

 

コォォォオオオオオオ

 

「!!??」

 

奇妙な『呼吸音』が、背後から聞こえた!

 

振り向いた男が見たのは―――

 

 

 

 

 

「て…テメェ、何だよそのスタンドはッ!?」

「へっ悪いな、企業秘密だ!」

 

千雨は剣を構えて、壁を蹴る!

 

 

 

 

 

かつて、「柱の男」に敗れた『波紋の一族』の一部が、後に『日本』と呼ばれる地に逃げ延びた。

 

彼らは、チベットやヴェネツィアほどではないが、日本で『波紋』の一派を作り、修行に励んだ。(一説では、この修行僧の姿が天狗伝承の由来になったらしい。)

 

時が経ち室町時代、『波紋』と『剣術』を組み合わせた『仙道剣術』を生み出した者が現れ、徳川に仕えた。

 

後にこの剣術は時代の裏で活躍し続け、幕府に迫る妖怪の類を討伐したという………

 

その内の一つが、裏社会で京都の『神鳴流』と並び、『江戸の隠し刀』と謳われた流派、その名も『双燕天翔流仙道剣術』である。

 

(メッシーナ著「波紋世界史」 民明書房刊 税込み 3,850YEN)

 

 

 

 

 

 

「双燕天翔流仙道剣術、八大奥義が一つッ!」

「!?」

斬ッ

「疾風月華!!」

 

すれ違い様に男を何度も『斬りつけた』千雨は床に着地!同時に 自分の体を「重く」感じ、敵が能力を解除した事を確信した。

 

「ぐ………あっ、ぐ………」

「……と、どうやら無重力も終わりみたいだな………」

 

背後で短く声を上げて気絶したらしい男を見て、千雨はつぶやいた。

その時、

 

 

 

ドガガガァッ

「ん?」

 

 

 

 

「は……長谷川さん………無重力が解除されて助かったけどさぁ………」

「……いきなり解除させないでくれ………」

「ご……………ごめん………」

 

ただでさえダメージがひどいのに、無重力解除で本が降り注ぎ、さらにダメージを負った二人がいた………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「こいつの財布に「免許証」があったぜ。名前は『ラング・ラングラー』……国籍はアメリカか…」

 

財布から男――ラング・ラングラーの身元を暴いたアナスイ。

直ぐ横ではラングラーを千雨が縛り、のどかはスバルたちの手当をしていた。

 

「あ、あのー、長谷川さんとスバルさんは、手当の方は-……?」

「ん?ああ、私は大丈夫!こう見えて、身体は丈夫だからさ!」

「私も、『波紋』の呼吸である程度「治癒」はできるし、先生らを探す分には平気だぞ。」

 

ラングラーを千雨が倒した後、アナスイ達が『装甲防火扉』を開き、どうにか脱出できたスバルたち。今はネギ達を探す前に、ラングラーの処置をどうするかを考えていた。

そこでウェザーは、自分達でラングラーを運び、残りでネギ達を探すことを提案した。

 

「こいつはSPW財団に引き渡して、誰の差し金か吐かせる。こいつらを頼めるか?アナスイ。」

「いいぜ。そっちこそ、任せたぞ。」

 

ラングラーを運ぶのはウェザーとのどか、残りはネギを捜索することになった。

 

「よしっ!早速行くぞッ!!」

 

意気込むアナスイに、手当を終えた二人が続く。

 

 

 

 

 

が、

 

 

 

 

 

カチッ

 

 

 

 

 

「「「…………『カチッ』?」」」

 

 

 

 

 

アナスイの足元から、嫌な音が聞こえ、

 

 

 

バクンッ

 

 

 

床に『穴』が開いた…………

 

 

 

 

「ウソォォォオオオ!!??」

「アナスイテメェェエエエ!!」

 

3人の叫び声は、閉じた穴の蓋により、聞こえなくなった…………

 

「だ……大丈夫ですかね?皆さん……」

「分からん………」

「えぇーー!?」

 

 

 

ラング・ラングラー――スタンド名:ジャンピン・ジャック・フラッシュ――再起不能

 

 

 

←to be continued...

 




13話です。
・千雨の過去をちらりと書いてみました。実は徐倫と千雨は幼馴染のような間柄でした。
 千雨の父親とスタンドは、いずれちゃんと書きます。

・ラング・ラングラー再起不能。ちょっとあっけなかったかな?民明書房ネタは原作でもちょっとあったので入れてみました。
 まあ、ネギま世界観ならあってもおかしくはないと思うけどw

では、次回をお楽しみに!

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