「何か現れたぞ!?」
「に、逃げろ!!」
月の民達は慌てていた。何故なら龍らしき怪物が突如現れ、月の都で暴れていたからである。
「があああああ!!」
龍は雄叫びを上げながら破壊を続ける。その時
「貴様…余程死にたいから此処で暴れているのだな?」
「よ、依姫様!」
龍が暴れていると聞きつけて、依姫が現れた。そして
「月の都と月の民を守るが我が使命…いざ!参る!」
依姫は剣を抜き、龍を斬りつけた。龍の首は飛び、戸惑う身体を更に斬りつけた。龍の身体は粉々になり消えた。月の民達は依姫に声援を送った。
"あの頃の私は月の都では1番強かった…その強さに魅力された玉兎達は私みたいに強くなりたいと言ってきた。私は玉兎達に厳しく過酷な修行をさせた。その結果多くの者達が立派な兵士となった。その時は私は嬉しかった。自身の修行を元にしただけなのにこんなにも強い兵士ができた事に。だが…"
「く…!」
私は剣を振りかざす。だが前にいる男は何事も無いように避ける。
「ならば!」
男の隙を見て"火雷神"を放った。これは避けられぬ!と思った。しかし…
「危ね…服が燃える所だった…」
これも避けられてしまった。私は再び剣を振りかざす。だがこの時私は怒りに震え、斬撃が無残なものだった。当たる筈がない。
「はぁ…はぁ…これならどうだ!?」
息を切らしてしまったが直ぐに冷静さを取り戻し"建御雷"を放つ。無数の雷を男目掛けて撃った。だがこれも当たり前のように避けられた。この時私は思った。"今までの修行は何だったのか?自分が1番強いのではなかったのか?"と思い始めた。今まで私に勝った者は1人もいなかった。実質自分が最強だと信じていた。だが前にいる男が原因でそれは全て消えてなくなった。その男の正体は…外来人であり人間でありながら圧倒的な力、強靭な肉体の持ち主…"趣味でヒーローをやってる最強の男"サイタマだった。
「おい、もう終わりか?」
疲れているのか息を切らしている依姫にサイタマが言う。
「貴方は何故反撃をせずに避けてばかりいるのですか…?」
依姫は問う、確かにサイタマは攻撃もせずに避けてばかりいる。
「簡単に言うとな、お前の実力が知りたいだけだ」
「そうですか…ならば質問があります。何故貴方は強い…何か秘訣でもあるというのですか…?」
依姫はサイタマに強さの秘訣を聞き出そうとした。これにサイタマは…
「秘訣か…ヒーロー目指そうと思った時は"腕立て伏せ、上体起こし、スクワット100回、ランニング10km、1日3食必ず食べる、夏冬は暖房冷房器具は使わない"を3年間続けただけだからな…それと武術剣術とかもやってない。それだけ、参考になった?」
「貴様はふざけているのか…!?それだけで強くなれるなら私の長年の修行は何だったというのだ?」
「人の事情なんて知るかよ。それと俺からも聞きたい事がある」
「?」
依姫は怒りを見せたがサイタマからの質問にキョトンとした。
「お前…月の都から出た事あるのか?」
「なっ!?」
図星だった。依姫は月の都から1度も出た事がない。
「例え此処から出なくても戦える奴らはいる!」
「それはお前が1番強いと思ってるからじゃないのか?または月の都の強い奴らはお前にとっては"口程にもならない"レベルじゃないのか?」
「そ、それは…」
依姫は口が詰まってしまった。月の都から出た事が無い為、同じ奴らに勝ちまくって"自分が1番強い"と思っているのだ。というより月の民で実力のある者は大半依姫と同じ考えだが。
「そういうのを"井の中の蛙大海を知らず"って言うんだぜ」
「黙れ!それを言うなら貴様はどうなんだ!?」
依姫はサイタマに剣を向けて言う。
「俺が元々いた世界は怪人怪物が毎日のように出没する。俺はそいつら会う度に倒してきた。けど大半が一撃で倒れてつまらなかったよ。だけどな、俺が本気を出せる奴は沢山いたよ。時には苦戦する事もあったが全て勝利で収めた。幻想郷に来た時もそうだ。俺と対等に戦える奴がいて感動したよ。お前みたいに"同じ奴らしか戦ってないのに1番強いと気取っている奴"とは違ってな!」
サイタマは依姫に普通のパンチを放った。だが寸止めした為依姫にはダメージは無く、逆に後ろにあった岩が破壊された。
「お前よりも遥かに強い奴らは沢山いる。自分で強いと思う思想を消せ」
サイタマは普段は見せない凛々しい顔で言った。
「そうか…!口で言ってもわからぬ奴には力でねじ伏せる必要があるそうだな…?」
依姫は完全に怒り狂っていた。サイタマにバカにされたからである。事実だが。
「"愛宕様の火"!!」
依姫の手が燃え盛る炎となった。それは剣にも及んだ。
「この炎は地上にはない熱さだ、燃えてなくなれ!」
燃え盛る炎をまとって依姫をサイタマを斬りつけた。その時
「マジシリーズ"マジ扇ぎ団扇"!!」
サイタマは右手を左右に振った。その風はすざましく、依姫にまとった炎を一瞬で消した。
「なに!?」
依姫は戸惑った。だが直ぐに立て直す。
「もう許さぬ!!灰と…」
依姫の顔に衝撃が走った。何故ならサイタマは目にも留まらぬ速さで普通のパンチをしたからである。依姫は地面に叩きつけられて気を失った。
「マジシリーズ使ったが…やっぱりお前みたいな自称最強には本気出せねぇわ」
サイタマは気を失った依姫を肩に乗せ、豊姫とレイセンのいる場所まで向かった。
依姫の"建御雷"とサイタマの"マジ扇ぎ団扇"はオリジナルです。
次回この章完結です。