IS ~無限の成層圏に舞う機竜~   作:ロボ太君G。

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第四章(22):覚悟の在り処

Side 一夏

 

 ボーデヴィッヒの見舞いからの帰り道、俺は一つの問題に直面していた。

 本来の目的だったボーデヴィッヒが機竜の事をどれだけ把握していたかの確認はとれたからいい。思い出話の内容から考えても、おそらく本当に知らなかったと考えて問題ないだろう。

 だが、彼女の境遇に対して親近感を覚えたために、思っていた以上に長居してしまった

 

(まあ、そちらも今以上に大きな問題には発展しないだろう……)

 

 そんなことを考えながら、廊下を歩いてる時だった。

 

「影内君、ここに居ましたか!」

「山田教諭?」

 

 少し急ぎ足気味に此方の方へと歩み寄りつつ声をかけてきたのは山田教諭だった。何事かと思い用件を尋ねようかと思ったが、俺と違い実務の方面で今回の一件の後始末をしていた事を思いだし、まず労いの言葉の一つくらいは掛けておくべきだろうと判断した。

 

「会議後の事後処理、お疲れ様です」

「いえいえ、これ位はどうって事ありませんよ! 先生ですからね!

 と言うか、それを言うのであれば……むしろ、あの状況下で常に先陣を切り続けた影内君の方でしょう?」

「ほぼ成り行きですし、あの時は性能面でのこともありましたから」

「……その性能と腕前が、今は心配ですね」

 

 性能の方は絶対防御の有無について、腕前は高性能だが危険な機体を扱えてしまう事に対するそれだと推測できた。最も、騎士団(シヴァレス)の活動にも参加していた身からすれば通常業務の範疇ではあるのだが、それを知らない山田教諭に言っても無意味だろう。

 

「それはそうと、影内君!

 なんと、今日から男子の大浴場の使用が解禁されたんですよ!」

「……すいません、記憶違いでなければ来月からだったと思うのですが」

「予定ではそうなっていたんですけど、今日行うボイラーの点検が予定よりも大分早く終わったんですよ。で、時間的な余裕ができたので影内君とシャルル君の男子二名に入ってもらおうって事になったんです。特に、影内君は今回の一件の事もありますし。

 ですが、影内君は今まで生徒会の方に行っていたとのことなので、先にシャルル君に入ってもらってしまいましたが……」

 

 山田教諭の説明とその中で出た名前に、一種の戦慄と安堵を覚えた。

 

(デュノアは先に入って、出た後か……。

 彼女の素性を知っている身としては、異性が一緒に風呂に入るという状況にならなくて良かった……!)

 

 ある種の冷や汗が噴き出た俺を見て山田教諭は何を勘違いしたのか、少々慌てながら弁解と説明を始めてしまった。

 

「も、勿論お望みとあれば今から一人でも入れますよ!

 そ、それに入浴中は女子生徒が入ってこないように私が見張りに着きますし……」

「あ、いえ……別にそういう事でもないのですが。

 ですが、お心遣い痛み入ります」

 

 普通にお辞儀してお礼を述べた所、山田教諭の方が申し訳なさそうな表情になった。

 

「これくらいは当然の事ですよ。

 ……あんな事態に巻き込まれてしまったのに、何の労いも無いのは私達(教師陣)としても心苦しいものがありますから」

IS(機竜)に乗ることになった時からある程度覚悟していたので、それについては別に気にしていないのですが」

「それでも、ですよ。

 命が危険にさらされる可能性が高い機体については、私としては未だに納得しかねるものがありますが……その機体で戦ってくれたのです。お礼の一つくらいはしたいものですよ。

 それに、一応私は大人で影内君はまだ子供と言っていい年齢なんですから。少しくらいは大人に甘えても罰は当たらないと思いますよ?」

 

 優しい笑顔で言われたその言葉に、一瞬呆けた。

 

「……有り難うございます」

 

 自然とお礼が口をついて出る。山田教諭はそれに対しても「気にしないでください」とだけ答え、その後はコレ以上遅くなるのも問題があるからと大浴場に向けて歩いていた。

 

 

―――――――――

 

 

「それでは、ごゆっくり~♪」

 

 大浴場に着いた後、山田教諭に扉の前に立って見張りをしてもらいつつ入ることになった。

 

(そう言えば、風呂も久しぶりと言えば久しぶりか……)

 

 王立士官学校(アカデミー)でも都合が合えば入らせてもらう時もあったが、こちら側に戻ってからはほぼシャワーで済ませていたか入らないかという状況だったため久しぶりと言えば久しぶりという気持ちになっていた。そして、その中には少なからず楽しみに思っている部分もある

 

 ―――だがこの時、俺は重大な見落としをしていたことに気が付かなかった。

 

 この後、脱衣場で脱ぐと日頃の習慣もあって機攻殻剣(ソード・デバイス)を持って風呂に入っていった。

 

「……見事だな」

 

 風呂の設備と中身を見て、素直に感心した。

 その設備は国立校という事もあってか、王立士官学校にも劣るものではない。風呂も大浴場を中心にいくつかあり、個室で分かれているサウナもある。窓から見える夜景はIS学園の前の星空とそれを映す海を切り取った、見事な風景が広がっていた。

 作法通りに体を一度流してから、浴槽に近づいた時だった。

 

「……ん?」

 

 浴槽に人影が見えた。

 その直後――

 

「……?

 ……! きゃあああぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁあぁぁぁ!!?!」

 

――見えた人影、つまりは簪からの盛大な悲鳴が聞こえてくることになった。

 

 

―――――――――

 

 

「そ、その……すまなかった」

「ううん。確かに驚いたけど……事故だし、仕方ないよ。

 でも、こっちは出来るだけ見ないでね。その……は、恥ずかしいから……」

 

 互いの姿を確認し、互いに背を向けながら浴槽に浸かっていた。

 

「しかし……どんな偶然なんだろうな……」

「まさか、ちょうど見張りの山田先生がいない時に私が入っちゃうなんてね……」

 

 そう、この状況になった原因。

 単純な事で、山田先生が俺を呼びに行っている間、どこから漏れたかは知らないがボイラーの点検が早く終わり大浴場を使えることを知った簪が生徒会の方へと呼び出されていて遅くなったのもあって入りに来たらしい。会長と虚さんは未だ話し合い中、剣崎は諸事情で普段から大浴場は使っておらず、本音は剣崎と一緒に部屋へと戻っていったとの事。そして、俺と山田先生は簪が入っている事を知らずに当初の予定通りの行動をとってしまったらしい。

 要約すれば、完全に間が悪かったというだけの事故である。

 

(漏らした相手に悪意が無ければ、だが……)

 

 とは言え、このまま俺が出て行けば山田先生から不審がられることは必須、簪が出て行けば俺の有罪確定である。短い話し合いの結果、今は互いにこのまま湯船につかり、適当に頃合いを見て互いの部屋に戻ろうという話になった。

 

「えっと……ごめんね。

 男子はもう入り終わったって聞いてたから」

「終わったのはデュノアだけだろうに……中途半端な伝達でもあったのか?」

 

 大昔の三和音(トライアド)の悪戯を思いだして頭痛がしかけたが、今回は事故であろうことが予測されるだけに余計に質が悪い。

 

「ね……影内君」

「……何だ?」

「今日は、その……お疲れ様。

 それと、ありがとうね」

 

 間の悪い事故について頭を悩ませている中、簪から告げられたのは感謝の言葉だった。

 が、特にお礼を言われるようなことをした覚えがない。

 

「……別に、礼を言われるようなことをした覚えはないんだが」

「沢山しているよ。

 今回の事もそうだし、今まで戦ってきてくれた事もそうだし。私の事に限って言えば、タッグを組んでくれた事も、電車の時の事もそう」

「此方にしてみれば、その全部が通常業務の範囲内だ。だから、感謝されるような事でもない」

 

 俺の返答に、心なしか簪が不機嫌そうな声音になってさらに言葉を重ねた。

 

「……仕事じゃないと組んでくれなかったんだ」

 

 そこなのか、と言う言葉が出かかったがそこはさすがに抑えた。

 

「別にそうは言っていない。

 ただ、そう気にすることじゃないとだけな」

「……あんな事になっちゃったけど。

 私にとっては、色々と感謝している事ばっかりなんだよ」

 

 あんな事、というのは《VTシステム》関連の一件だろう。俺達(機竜側)としても、神装機竜の流出がほぼ確定した以上は本腰を入れざるを得ない決定打となっただけに、記憶に焼き付いている。

 

「それに……ずっとずっと、命がけの状況で一番前で戦って貰っているのに、更に頼っちゃってて……。

 言い訳だけど、あんなに危ない状態で戦っていたなんて知らなかったから……」

「それについてもだ。

 更識会長や学園長、ここまで案内してもらった山田先生もそうだったが。むしろ、気負い過ぎだ。此方はそれでいいと了承しているし、むしろ気を使って貰っているって思っているくらいだ」

 

 いくらかの言葉を選んで言った後、少しだけ沈黙があった。

 

「……前々から思っていたけどさ。

 影内君って、凄く……戦い慣れているよね。それに、命を懸ける覚悟も常に決めているような感じがするし」

 

 少しだけ苦々しい感情が混ざっているように感じたが、簪が感じているかもしれない其れの内容を考えた時、俺としては感じなくていいものを感じているのではないかと思った。

 

「確かに慣れているし、覚悟も決めているつもりだ。

 けど、本当はそういったものを求めないのが一番いいのかもしれないけどな」

「……? どういうこと?」

 

 思った事を言ったところ、簪は不思議そうな声音で聞き返してきた。

 

「戦いに対する慣れや覚悟は、言い換えればそれだけ命のやり取りをしてきたってことだ。俺も、それなりには経験してきたつもりではある。

 けど、本当はそういった経験は無い方が……そういう経験を積む必要のない、平和な場所の方がいいんじゃないかって思ってな」

「……そう、なのかな」

「あくまで個人的な持論だ。話半分に聞いてくれればそれで十分」

 

 簡単に締めた後、少しの間は沈黙が続いた。

 が、ふとあることに気付いて此方から聞くことにした。

 

「そういえば、簪。

 のぼせてたりはしないよな?」

「……会話に集中してたから気づかなかったけど、もうそろそろ出た方がいい…かな?」

 

 返答を聞いて、最初に決めていた通りに俺も出ることにした。というのも、俺が出なければ必然的に見張り役をしてもらっている山田先生もそのままになり、簪が気づかれずに出ることが難しいからである。

 その後、風呂場から出た俺は山田先生にお礼だけ告げると、そのまま部屋へと戻っていった。山田先生も役目が終わったとの事でその場を後にしている。

 その少し後、簪からも部屋へと戻っていったという話が聞こえてきた。

 

 

―――――――――

 

 

Side 千冬

 

  プルルルル プル

 

『ヤッホーーーー! ちーちゃぁあああぁぁぁん!!』

 

  プッ

 

 余りの五月蠅さに、反射的に電話を切った。が、すぐに着信音が鳴った。電話をかけてきた人間を見れば、先程自分が電話を掛けた相手であることがわかる。

 正直に言えば、面倒な相手ではある。だが、用があることも事実であるため電話に出た。

 

『酷いよ、いきなり切らないでよ!

 せっかく、せぇ~っかく! 束さんが忙しい中電話に出たのにさーー!!』

「五月蠅いぞ、束……もう少し声の音量を抑えろ……!」

 

 もう何度目になるかも分からないが、それでも咄嗟に出た言葉を止めることなく吐き出した。

 どの道、この程度で自身の行動を直すような性格でもない。

 

『いやぁ~~、ちーちゃんのほうから連絡してくれたから束さんは嬉しくて嬉しくてテンションが上がりまくっちゃってんだよね~!』

「私は五月蠅いといった筈だが?」

 

 注意するにはしたが、それでも治らぬ態度に辟易する。

 が、そればかりにもかまけていられないため、早々に本題に入ることにした。

 

「束……お前に、聞く事がある」

『それは、もしかしなくても……《VTシステム》の事かな?』

 

 実に不愉快そうな口調で、束はその名を口にした。

 

「ああ。そうだ。

 貴様は、アレにどこまで関わっている?」

『ちーちゃん……さすがにその台詞は束さん悲しくなっちゃうよ?

 天災と謳われているこの(篠ノ之束)が、あんな不細工な代物に手を出すわけないじゃん。私の作る物は、完璧にして十全がモットーなんだからさ』

「そうか……それが分かれば、いい」

『ああ、それともう一つね。

 あの不細工システムについて、変なことがわかってねー』

「変な事、だと?」

 

 意外な展開に少々驚きつつ、束の言葉の続きを素直に待った。

 

『うん。

 あのシステムが積まれていた国の研究機関片っ端から調べて、あの不細工なものを作った施設を跡形も無く消そうと思ったんだけど……』

「勿体ぶるな。それで、やったのか?」

 

 どうせやったのだろう、そう思っての返答だった。

 だが、そこから続いたのは意外な言葉だった。

 

『ううん、やってない。というか、()()()()

 あの不細工な代物に関わっていた施設は、もう既に全部稼働を停止していたの。それもほぼ完全にと言ってもいいほど。今は本当に手を出していなかったみたいだね。

 それに、どうもアラスカ条約締結以前の使い方も妙な方向に行ってたから、今回のようになるかって聞かれると微妙だし』

「妙な方向、だと?」

 

 疑問の声を上げた私に対し、束も幾許かの興味を抱いている様子を隠さずに答えた。

 

『うん。

 まあ、簡単に言っちゃうと……体感型学習装置、かな?』

「学習装置、だと?」

『そう。もっと具体的に言うと、部門優勝者(ヴァルキリー)の動きを模倣(トレース)するのには変わりがないんだけど、そこで過剰な負荷が掛かったら出来る限り安全に停止するようにリミッターが掛けられていたみたいだね。

 それで……実際の運用では、普段は体感型学習装置として実際に動かした時の感覚や動き方を学びつつ、実戦になればそのまま格ゲーのコマンドみたいな感じでタイミングよく動きの一部一部を取り出して使用する。

 まあ、機数に限りあるから訓練用と実戦用を分けたりするのが難しいからの苦肉の策だろうけど……これはこれで、興味はあるかな。あの不細工システムを、それなりに上手く活用しようとしたみたいだし』

 

 束の説明を受けて、その利点を考えた。

 確かに、事実上ISコアを束一人しか作れない現状を考えると、限られた数をどううまく使うかというのは重要な課題となる。まさか相手国が弱っているからと直ぐに全面戦争などと考える輩は居ないだろうが、それでも国防の戦力は充実しているに越したことはない。

 となると、嘗てのドイツは訓練機としてISを使用した際の事実上の戦力低下を防ぐために、このような事をしたのだろうか。あるいは、訓練機と実機の役割を総取りしようとしたのかもしれない。

 

『ま、結果的にはアラスカ条約の影響で頓挫したみたいだけどね。

 それに……当時のドイツ軍の議事録を調べてみると、それまでの研究成果から、下手に無理な研究続行なんてやってもそれほど成果が上がることが見込めない上、発覚した時の各国からの追及の方でそれ以上の不利益を被りかねないって判断したみたいで、少なくともその時には停止しているみたいだね。

 だからまあ、暫くは犯人捜しかな』

「……一夏の後援者を名乗っていた連中の可能性は?」

 

 私自身が嘗て犯した過ち(白騎士事件)の事を思い出し、深く考える前に言ってしまった。

 だが、束は特に動じた様子も無く冷静にほんの一瞬だけ思考すると、その可能性を否定した。

 

『全く無いとは言えないけど、低いかな。

 そもそも、いっくん達がドイツのあのISの事を知らなかったっぽいし』

「それも、そうか……」

 

 一回、大きく息を吐いて気持ちを落ち着けた。

 私の(一夏)教え子(ラウラ)に対してあのようなことをしでかしてくれた連中を許す気など毛頭ないが、今は情報が足りない。ならば、それを何とかして集めるまで下手に動かない方が得策かもしれない。

 

「……分かった。

 それと、用件はもう一つある」

 

 私の言葉に、束はまたしても先に答えを言ってみせた。

 

『そっちで起こった騒動に出てきた機体の事だよね?

 具体的には、《ヴィーヴル》とかいう機体と、例の白い機体。そして、フィルフィ・アイングラムとか言うのが使っていたあの紫色の機体の三機』

「そうだ。

 単刀直入に聞くが、何か分かったことは無いか?」

『ダァメだね。

 分かったことといえば、ほぼ確実に架空企業ってだけ。あのISじゃない機体群の方はもうお手上げだね。な~んにも出てこない。

 あ、でもいくつか推測できることはあったよ』

「なんだ?」

 

 束をして何もわかっていないというセリフに言葉を失いかけたが、やはり何も収穫が無いわけではなかった。

 其のことに幾許かの安堵を覚えつつ、内容を聞こうと続きを促した。

 

『まず、行先とか移動したルートとかを調べたんだけど、その中に不自然な場所があったんだ。

 場所は某所の奥深い森の中。付近に一応本社っていう設定にしている古い倉庫みたいなとこはあるんだけど、そこが登録される以前からそこに行ってたみたいだしね』

「そこに、何かあると?

 具体的な場所は?」

 

 そこに行けば、何かを掴めるかもしれない。そう思い、その場所の座標を聞こうとしたが、その考えは呆気なく潰えることになった。

 

『う~ん……それがさ~。

 大雑把な場所は分かってるんだけど、詳しい所は微妙なんだよね~。そもそもが森の中で衛星写真とかは使いづらいし、下手に無人機とかで行っちゃうと周辺で警戒している連中の目に入っちゃうからね~。

 それに、ちょっと前にIS学園からそこまで行った時があったからその道中にいっくんに聞こうかと思ったけど、結局できなかったしね~』

「……警戒している人間、だと?

 何処のどいつだ?」

『ん~……あんまし興味なかったから調べてなかったけど、多分、更識家とかいうのじゃない?

 ひっじょ~に悲しい事に、いっくんも箒ちゃんもそっちに行っちゃってるからねぇ……』

 

 言われて、合点がいった。

 確かに、今の一夏は生徒会の一員であり、現生徒会長はその筋の人間だと聞いている。しかも、その生徒会も今代のメンバーはほぼその筋の人間で構成されているとも聞いている。

 

(なるほど……生徒会入りは、その意味もあってか。

 いや、そうなると学園長も……)

 

 多少、今の一夏の周りの人間関係が整理出来てきたが、それと同時に面倒そうな現実も見えてきた。

 

「そうなると、強行突破しても面倒なことになるな。そちらは別に考えるしかないか……。

 それと、今日の会議で一つ気になることがあったのだが……」

『奇遇だね~。

 私も、今日ちょこっと調べたら少しばかり気になることがわかってね~』

「お前が気になる事、だと?」

 

 意外といえば意外なセリフに、その内容に気が行った。

 

『うん。

 でもその前に、ちーちゃんの方から』

「……あの機体に関することだ。

 単刀直入に言うと、あの機体には防御用の障壁があるのみで、絶対防御は無いそうだ」

『う~ん……ISじゃないって考えれば辻褄は合うけど……。

 な~んか、それにいっくんが乗ってるってのが気に入らないかな~』

 

 思っていたよりも薄い反応だが、以前推測した内容の真実味が増すには十分な材料だった。

 そして同時に、此方に話すべきことだと言っていた内容も気になっていたので、それを促した。

 

「さて。貴様の方の話は何だ?」

『うん、まあ要約して話すと……ちょっと後に、いっくん達がフランスに行くみたいでね。ただ、そこでやることがね……』

「フランスだと? そこで何を?」

『いや~……束さんも今まで興味なかったから調べてなかったんだけど、そこに例の怪物が大量に居るみたいでねぇ……』

「な、何!?」

 

 だが、事態の深刻さは私の想像をはるかに超えていた。

 

『しかも、いっくん以外にも何人か行くっぽいね。

 一応、ステルス追加した無人機をカメラマンにしてその様子を見る予定だけど』

「……指をくわえて見ているだけのつもりか?」

 

 さすがにこの発言には異を唱えたが、当の束は何処吹く風とでも言うかのように反論してみせた。

 

『勿論、いざとなったら手を出せるようにはしておくけど……でもさ、少し気にならない?』

「何がだ?」

『いっくんが、ああなっちゃう原因になった人がどんなのなのか。それと、そいつらの実力について。

 把握しておいた方がいいとは思わない?』

 

 言われて、思考する。

 

(……束の言う事にも一理あるか。

 それに、いざという時の備えはしているみたいだしな……)

 

 決断までに、そう時間は要しなかった。

 

「分かった。

 だが、後でもう一度、詳しい話を詰めさせてもらうからな」

『オッケ~♪ それじゃ、私はそれまでに情報でも集めてるね~♪

 お茶会の日時はくーちゃんに追って伝えてもらうつもりだから、ヨロシク~♪』

 

 そこまで話したところで、この時はいったん解散になった。

 不穏な予感は拭えなかったが、それでもこの時出来ることは他に無かった。

 

 

―――――――――

 

 

Side 一夏

 

 風呂場での騒動から一晩明けた翌日。

 《VTシステム》の一件により学園も含めた関係各所が大混乱したために、学年別トーナメントは全面的に中止されていた。

 が、それもどこ吹く風で今日も教室は平和だった。些か危機感が無さすぎるように思うが、無駄に緊張するのもそれはそれでよくないと思い直してそのまま過ごすことにした。

 

「おはよう、影内」

「いっち~おはよ~」

 

 教室に入って間もなく、剣崎と本音から声を掛けられた。

 

「おはよう」

 

 簡単に返し、席に着く。その後は、幾許かの時間的猶予があったため二人や合流してきたセシリアと雑談を交わしていた。

 

「そういえば、影内さん。デュノアさんは?」

「少し遅れると言っていた。

 まあ、今朝方は居たことだし、心配はしなくていいんじゃないか?」

 

 セシリアから告げられた質問に、今朝方の事が思い起こされる。が、内容は薄々と見当がついているので気にしなくていいだろう。

 そうして、授業が始まる直前の事だった。

 

「あ~……諸君、席に付け……」

 

 まず、妙に疲れた様子の織斑教諭が入ってきた。

 そして、その隣にはボーデヴィッヒがいる。これまでにも幾度か騒動を起こしているだけに、教室にいたクラスメイトが警戒の視線を向けた。

 だが、当の本人は気にすることもなく教壇の前、教室にいる全員からよく見える位置に立った。

 

「この時間を少し借りることを許してほしい。

 それと、皆。昨日の一件とそれまでの行為について、多大な迷惑をかけてしまったことをお詫びしたい。本当に――すまなかった」

 

 深々と頭を下げて、謝った。

 昨日までの態度との違いに、戸惑いが広がる。だが、彼女を非難する言葉は出てこない。そんな微妙な雰囲気を察したのか、口を開いたのはセシリアだった。

 

「……言いたい事は色々ありますが、ここでそれを責め立てるのは情けないというもの。それを許す度量を備えるのも女性として必用な事でしょう。

 ですが、ボーデヴィッヒさん。今後、今回のようなことを繰り返さないように気をつけてくださいましね」

「寛大な対応に、感謝する」

 

 ボーデヴィッヒは再度深々と頭を下げ、謝意を示していた。セシリアもセシリアで嘗て自身がやらかした事と重ねて見ているのか、少しだけ遠い目を織り交ぜてボーデヴィッヒの方を見ていた。

 だが、それが終わるとなぜか自分の席ではなく俺の席の方に近づいてきた。

 

「それと、影内。恥を忍んでお前に頼みがある!」

「……内容による」

 

 嘗ての三和音(トライアド)をなぜか思いだして嫌な予感がしたため、慎重に返答の言葉を選んだ。

 そして、その予感は的中してしまった。

 

「影内、私をお前の弟子にしてくれ!」

「断る!」

 

 もはや条件反射で出た言葉だったが、言われたボーデヴィッヒには大きな衝撃だったらしく割と慌てた様子で説明を求めてきた。

 

「な、なぜだ!?

 日本では、尊敬する人には弟子入りするものだと私の副官であるクラリッサが言っていたのだぞ!?」

「そもそも前提であるその知識が間違っているが……それを抜きにしたところで、到底許容できないんだよ。これは其方の問題じゃなく、俺の問題だ。だから、諦めてくれ」

「いや、諦めん!

 お前が認めるまでは決して……」

 

 このままでは埒が明かないので、別方向から攻めることにした。

 

「ほう?

 では、お前は自分の我儘を押し通すためにお前が尊敬しているであろう織斑教諭の授業時間を削る気か?」

 

 この一言を聞いたボーデヴィッヒは、一瞬凍りつくとその姿勢のまま目まぐるしく表情を二転三転させた後に――

 

「わ、私は諦めんからな!

 絶対にお前を私の師匠にするからな!」

 

――どこかの小悪党のような捨て台詞を若干涙目になりつつ吐きながら、自身の席へと付いた。

 なお、この時にクラスメイトの彼女を見る目が本当に変わっていた。何と言うか、ちょっとヤンチャな小動物を見るような感じになっている。

 

「影内、手加減してやれ。

 それでは、諸君。授業を始める……前に、少し話がある」

 

 その雰囲気を察してか、織斑教諭が声を上げた。が、その声には隠し切れない疲労――おそらくは精神的なソレ――が含まれている。

 

「山田先生」

「はい~……」

 

 そして、山田先生を読んだ。が、呼ばれて入って来た山田先生は本当に疲れているらしく、まったく隠せていなかった。隈も酷い。

 が、それは織斑教諭にも言えるため、おそらくは教師陣を睡眠不足に陥らせる何かがあったと考えるべきだろう。それに対して心当たりもある分、同情の念も湧いてきた。

 

(お疲れ様です、先生方……)

 

 同情の念を覚えたのは俺だけではなかったらしく、教室のそこかしこから気遣う声が聞こえてくる。

 その雰囲気を察したのか、山田先生が仕切り直す意味も含めて声を張り上げた。

 

「え~……今日は皆さんに、新しいクラスメイトを紹介します。いえ、知っているには知っている人ですが、その、何と言うか……そもそも転入扱いでいいのかも未だに疑問ですが……とにかく。

 入ってきて下さい!」

 

 山田先生の呼びかけに応じ、件の原因となった生徒が現れた。

 

「失礼します」

 

 が、その姿を見たクラスメイト達は一様に絶句することになる。

 それもそのはずだろう。なにせ、入って来たのは――若干の改造が入った()()()()()I()S()()()()()に身を包んだシャルロット・デュノア其の人だったからである。

 

「皆さん、改めまして。シャルロット・デュノアです。

 諸般の事情によりこのようなことになってしまいましたが、気負う事無く接していただけると幸いです」

 

 デュノアからの丁寧な挨拶が入ったが、それでも暫くは呆けている者の方が多かった。呆けていないのと言えば、事実を知っていたために苦笑している俺と剣崎、そして相変わらずのマイペースだった本音の三人だけ。

 が、その時間も長くは続かなかった。

 

「……つまり、シャルル君ではなく、シャルロットちゃんだったという事?」

「そして、すんごい美少女……!」

「ついでに、影内君とは同室だったはず」

「それと、昨日は男子が大浴場使ったような……」

「これは事案ですね!」

「…………こ、今年の薄い本はどうすれば……」

 

 一部におかしな反応が入っていたが、気にしている余裕は無い。ひとまず、簡単に弁明できる方から片付けるとしよう。

 

「……一部で誤解されている様なので弁明するが。

 確かに昨日は大浴場の使用許可をいただいたが、俺はその時生徒会の方に呼ばれていて()()()()()()入浴した時間がずれている。最終的に()()()()鉢合わせることは無かった。

 ですよね、山田先生?」

「ええ、そうですよ~……」

 

 相変わらず生気が抜けていたが、それでも返事をしてくれた。なお、この弁明を聞いた瞬間に一部からあからさまな落胆の声が聞こえた。

 

(何を期待していたんだ……!)

 

 不信感ともいえる感情が首をもたげるが、そこを気にせずに追加の説明を重ねた。

 

「それと、同じ部屋に一時期は居たが、結局そういうことは無かった。

 うまく隠されてしまったみたいだしな」

 

 再度の落胆の声が聞こえたが、一々気にしていたらキリが無いと思いそのまま放置することにした。

 実際にはこれだけで事が終わらない事も知っているが、それでも今はこれでいいだろう。

 

(後は数日後に迫ったフランスでの作戦か……)

 

 頭の中では全く別の事を考えつつ、其の後は通常通りに授業を受けて行った。

 なお、この弁明の時は簪との混浴の件は完全に伏せた。

 

 

―――――――――

 

 

Side 簪

 

「影内君、ちょっといいかな?」

「ああ」

 

 午後の授業と放課後の特訓も終わり、部屋に戻ってゆっくりとしていた夜。

 デュノアさんが女性だと分かり、そのまま直ぐに引っ越すことになって、代わりに私が戻ることになっていたため今は再度、影内君と同室になっていました。

 元々同室だったことと、空き部屋の状況などでこうなったみたいです。とは言っても、本当は私が相変わらず連絡要員として出来る限り一緒にいる時間を確保するためなのですけど。

 

(でも……影内君と一緒に居られるなら、それもいいかな)

 

 そして、二人きりの時間を使って聞きたいことがあったので聞くことにしました。

 

「ボーデヴィッヒさんから、弟子入りさせてほしいって言う話があったって聞いたんだけど」

「ああ、そんなことも言われた」

「断ったって聞いたけど、なんでかなって……?」

 

 私の質問に、影内君は少し困ったような顔になって答えてくれました。

 

「そうだな……俺に師匠がいるって話はしていたよな」

「うん」

 

 その話は私自身も前に少しだけ聞いたし、ボーデヴィッヒさんとの会話の中でも言っていたのでよく覚えています。

 

「俺にとっての師匠っていうのは、あの人達でな。そして、俺は未だに何一つとして、あの人達から習った以上を出来るようになったことも無いし、自分自身の独自の何かを生み出した事も無い。

 ……いや、一応は暴走の産物があるが……アレは使用禁止になっているからカウントしなくていいか」

「影内君が使用禁止になった……?」

「ああ、そこは気にしないでくれ。多分、死力を以って戦わなければいけないような状況でもない限りは使わないだろうし。

 で、話を戻すが。かなり悪い言い方をしてしまうと、俺は師匠達から習った分野それぞれで、習ったところから進歩も無く立ち止まっているんだ。極端な話、劣化版とも言える。

 そんな人間が師匠なんてやっていいものか? また、ボーデヴィッヒが迷走しかねんぞ」

 

 この返答には、思わず顔を顰めそうになりました。

 

「影内君。それはいくら何でも、言い過ぎじゃないの?」

「本人が自分のことを言う分にはいいだろう。

 それに、過剰に自信をもって道化を演じるよりはマシかと自負しているが」

「必要以上に自分を下に見るのは他の人を見下しているのと変わらない、っていう話をどこかで聞いたことがあるのだけど」

 

 自分でもよく分からない苛立ちを込めて、ほんの少しの反撃を入れてみました。

 

「言っている意味は分かるのだがな……それでも、俺にとって師匠っていうのはあの人たちの事を言うのであって、間違っても俺自身は入らないというだけだ。

 それに。俺自身も色々と言いはしたが、これでも未だに後悔していることもある。ボーデヴィッヒに色々と言ったのも、未だに後悔していることがあるからこそっていう部分もあるんだよ」

「……何を、後悔しているの?」

 

 その内容に、もしかしたら、という思いがよぎりました。

 

(……箒や、鈴。あるいは、鈴の話にあった親友だった人達の事なの?)

 

 そして、その予感は――

 

「……昔、俺がまだ師匠達と出会う前の話だが。

 幼馴染と、親友と呼んだ人達が居たんだ」

「……!」

 

――的中しました。

 胸中の驚きを出来るだけ表に出さないようにしながら、話の続きを待ちます。

 

「随分と世話になったよ。

 あの頃の俺は、弱くて……何もできなかったからな。本当に、今生きているのもあの頃世話になっていた人達のおかげっていう部分が大きい。

 ただ、其の後……唯一の肉親()()()人が、ある競技の大会に出ることになってな。そこでちょっとした事件に巻き込まれて、アイツらとは別れることになった。詳しくは調べてないからわからないけど、多分死亡扱いになっているだろうな。

 で、それでも俺自身は遠い土地でしぶとく生きていたわけだが……事情が重なって、別れも言う事が出来ていなくてな。それからもう何年も経っているけど、未だに後悔している」

「……お別れを、言えなかったことを?」

 

 どうしても、確認しておきたかった。

 箒と鈴の、今の親友として、どうしても。

 

「それもあるけど……それ以外の方が大きいかな。

 何より、親友達にはほとんど一方的に世話になっていたし、当時大きな悩みを抱えていた幼馴染相手には何の役にも立てなかったどころか、こっちが励ましてもらっていたくらいだった。

 その癖、変なところで意地を張ってて。一時期まで、こっちの事なんかまったく振り返ることのなかった肉親の影を追いかけていた。そして、其れが無意味だったと感じるようになったころに勝手に立ち止まった。

 本当は……世話になっていた親友達への恩返しや、幼馴染の役にでも立てるように何かしら模索でもすればよかったのにだ。

 要約すると……本当に大事にすべきだった人達を、蔑ろにするようなことをしていたんじゃないかって後悔している。正直に言えば、恨まれていてもおかしくないんじゃないかって」

 

 この話を聞いて、どうして本当のことを話さないのか、どうしても確認しておきたくなった。

 

「だったら、その人達の所に行かなくていいの?

 今の影内君たちの立場なら、やろうと思えばできると思うけど」

 

 あの二人の話を聞いた後だったこともあって、行ってほしいという思いも含めて

 

「いや、行かない。

 確かに、やり方を選ばなければ会えるだろうが……今やっていることを考えると、会う気にならなくてな」

「今やっていることって……」

 

 影内君が言ったことをそのまま呟いた私に、影内君はほんの少しの寂しさを混ぜながら答えてくれました。

 

「……一応、命を懸けて戦っている。

 そう簡単に死ぬつもりは無いが、其れだけで生き残れると思うのも間違いだ。最悪を考えるのであれば、いつ死んでもおかしくない。

 そして、俺はそれを受け入れている」

 

 そこで少しだけ言葉を切ると、どこか遠くを見つめながら続きを言いました。

 

「……ただでさえ、あの時まで世話になっていた。何もできない人間に好意的に接してくれるほどの、お人好し達だった。

 そんな人たちに……同じ人間の死を、二度も経験させることも無いと思ってな……」

「……!!」

 

 影内君の話してくれた内容に、私は何も言えなくなっていました。

 

「もし、今の俺が世話になっていた人達に対してやれることがあるとすれば、

 あの化け物共を早々に駆逐して、多少なりとは安全に過ごせるようにすること位なものだろう。だったら、それでいい」

 

 その話に、どこか悲壮とも呼べる決意と、何かを間違えていると思うのにそれを言い表せないもどかしさを感じながら、私はただただその話を聞いていました。

 そして、影内君の話が一区切りついた時、私は最後の質問を重ねました。

 

「……もしも、だけど。

 あの化け物の事が片付いて、影内君もちゃんと生きてたら……どうするの?」

 

 最後の質問に、影内君は少し答えに悩んだようでした。

 けれど、それも短い間の事でした。

 

「……多分だけど、何も言わないと思う。

 どの道、今はあの場所で生きていくことを決めている。下手すると二度と会う事は無いかもしれないほど、遠い場所でな……。

 薄情かもしれないけど、過去の亡霊が挨拶だけしてまた遠くへ行きましたなんてのも、どうかと思うしな……」

「……私が言うのも変だけどさ。

 出来れば、挨拶くらいはしてあげた方がいいんじゃないかな。きっと、その人達にとっては今も影内君は大切な人だと思うし……」

「……もしそうなら。それだけでも、十分過ぎるくらいなんだけどな」

 

 今はこれだけ言うのが精一杯だった私に、影内君は何処か優し気な表情で答えを返してくれました。

 それが、この日の就寝前最後の会話でした。

 

 

―――――――――

 

 

Side ???

 

「フフフ……♪

 思っていた以上にいい具合に動いていたなぁ……D(ドラグナイト)S(ストラトス)S(システム)は」

「……話には聞いていたが、ああも圧倒的なもんなのか」

 

 隣で見ていた蜘蛛女が感心したように、あるいは意外そうに言ったが、相も変わらぬ理解力の低さだった。

 

「だから言っただろう?

 私は、最初から嘘は言っていないと」

「……そうやって調子に乗らなけりゃ、多少は信憑性も増すと思うんだがよ」

 

 今度は呆れているみたいだが、まあいい。今の私は、実験が概ね良好な結果に終わり、非常に機嫌がいいのだから。

 

「しっかし……まさか、《VTシステム》の方をカモフラージュ扱いするたぁな。

 IS学園やIS委員会の連中も想像ついてねぇんじゃねぇの」

 

 何が可笑しいのか、今度は含み笑いになっている。

 だが、その意見は楽観視と言えるものだ。

 

「うむ……それに関しては、情報さえある程度手に入れば思い当たる連中がいるかもしれない」

 

 私の台詞に、それまでの含み笑いを一瞬で消し去り、真顔で此方へと顔を向けてきた。

 理解力の低い無能かと思っていたが、さすがにその筋にいる事はある。アーカディアの連中よりは低い練度だが、それでも使い道はありそうだ。

 精々、()()()()()()()()()としよう。

 

「何処のどいつだ?」

「あの白い機体と紫の機体の搭乗者の一派だ」

「今回、テメェの機体をブっ潰した奴等か……根拠は?」

「今説明しても二度手間だが……まぁいい。

 理由は簡単だ。あの一派は、私と同じ源流から派生しているだろうからだ」

 

 私の簡素な説明に、蜘蛛女が途端に険しい表情になった。

 

「おい、それはどういうこったよ。今はいいが、後で懇切丁寧に説明してもらうぜ。

 ――――元ドイツ軍《VTシステム》兼《越界の瞳》研究者、ウェイル・()()()()()()さんよ」




この話とオマケの設定資料を挟んで第四章は終わりです。
次の第五章はオリジナルの話になります。

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