IS ~無限の成層圏に舞う機竜~   作:ロボ太君G。

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どうも、お久しぶりです。作者です。

まず更新間隔が開いてしまったことについて。申し訳ありません。
卒業、就職、教習所とそれに伴う引っ越しとその準備、一人暮らしになったりと色々とあっため執筆時間が中々取れませんでした。
今後は遅筆になっていくことと思いますが、どうかご容赦ください。

それでは、続きをお楽しみください。


第四章(14):一人のデビュー、二人のリベンジ

Side 鈴音

 

「セシリア……この組み合わせ、どう思う?」

「そうですわね……形は違いますが、いつかのリベンジの約束を果たすいい機会ではないかと」

「そ。私も同感」

 

 初戦の相手である影内と簪のペアについて、二人で益体もない事を話していた。

 けれど、それは二人を侮っているからじゃない。むしろ、あの二人は決して侮れる相手じゃない。一度負けてる影内は当然だけど、今の今まで量産機で戦い抜いてきた簪が専用機を持ったという事も拍車をかけている。そして、その二人がタッグを組んでいる。

 

(冗談じゃないわよ……)

 

 ある種の異常な近接技能を持つ影内と、対応力と火力が高く純粋な力押し以外の戦術も熟せる簪のペア。しかも影内は戦闘経験が豊富そうな部分がこれまでも何度か見られた以上、私たちの想定以上をしてくることも考えられる。

 

(まあ……だからって、負けてなんてやらないけどさ!)

 

 確かに強力なペアであることには変わらないけど、影内へのリベンジは前々から決めていたし、ようやく専用機を持った簪とも戦える。

 そんな二人との対戦を前に、内心で叫び、気合を入れ直す。

 

「じゃあ、勝ちに行きますか!」

「ええ!」

 

 そして、口にも出したその言葉に私のタッグパートナーは威勢良く答えてくれた。

 

「凰鈴音、《甲龍》。行くわよ!」

「《ブルー・ティアーズ》、セシリア・オルコット。行きますわよ!」

 

 私たちは、恐ろしくも楽しみな相手へと挑むために飛び出した。

 

 

―――――――――

 

 

Side 一夏

 

 タッグマッチトーナメントの自分たちの番が回ってきて、簪がカタパルトから出撃、俺も《ユナイテッド・ワイバーン》の召喚符(パスコード)を唱えて召喚し速やかに接続。準備を終えて、少ししてからだった。

 

「待たせたわね」

「お待たせしてしまい、申し訳ありませんわ」

 

 二人が反対側のカタパルトから出てきた。その目には、好戦的な光が見て取れる。

 

「今までは量産機だったけど、今回は互いに専用機。

 だけど負けないわよ?」

「私だって、負けないよ!」

 

 出て来て早々に簪が凰から宣戦布告されていたが、対する簪も強気に言い返している。いい傾向だと思った。

 

「いつかの、再戦の約束……果たさせていただきますわよ」

「それは楽しみだ」

 

 そして、此方も此方で宣戦布告されている。が、それ自体は互いに戦意を高めるためのようなものだろう。

 

『学年別タッグマッチトーナメントAブロック一回戦第一試合を始めます』

 

 アナウンスが流れ、少しの間が空く。

 

『それでは、影内一夏、更識簪ペア対凰鈴音、セシリア・オルコットペア――戦闘開始(バトル・スタート)!!』

 

  ブー!!

 

 開幕の宣言の直後、それぞれがそれぞれに動き出していた。

 

 

―――――――――

 

 

Side 簪

 

 影内君の当初の予想通り、まずオルコットさんが下がって鈴が前に出てきた。鈴はそのまま真っ直ぐ進んでくると同時に衝撃砲を使用してこちらを牽制してきた。さらに、オルコットさんのライフルとビットの二重射撃で攻撃してきた。

 私も影内君も咄嗟に回避したけど、その回避先が同じ個所に誘導されていることに二人揃って気付く。

 

「簪!」

「分かってる!」

 

 背面に装備されている二門の連射型荷電粒子砲《春雷(しゅんらい)》を使用して牽制。さらに、影内君が前に出て鈴と切り合いに突入していった。

 

「そこですわ!」

 

 その中に、オルコットさんの狙撃が割り込んでくる。鈴が影内君に押し込まれかけたタイミングを狙い、鈴はその間に体勢を立て直している。

 

「やらせないよ……!」

 

 だけど、この状態を続ける気はない。すぐに《春雷》の照準を鈴に向けると、数発だけ撃って立て直しを妨害する。そして、影内君がその瞬間に

 

「簪、オルコットの方を!」

「分かった!」

 

 聞こえてきたのと同時に加速してオルコットさんに肉薄を試みる。《打鉄弐式》は《打鉄》と違い高機動の機体として箒の《陽炎》のノウハウも取り入れて設計されていたけど、後から追加されることになった《白式》の背部ウイングスラスターの一部によってさらに推力が強化されている。この機動性の高さなら、肉薄は容易だった。

 けど、さすがにオルコットさんもそう易々と近づけさせてはくれない。ビットで包囲しつつ、ライフルで狙ってきている。

 

「撃ち抜かせていただきますわよ!」

「させない!」

 

 《打鉄弐式》の切り札とも言える最大の装備、六機の八連装ミサイルポッドから合計で四十八発の独立稼動型誘導ミサイルを発射する《山嵐(やまあらし)》を準備する。

 

「発射!」

 

 ロックが終わると同時に時期の速度を少しだけ緩めて発射。狙い通り、四十八発のミサイルが私と《打鉄弐式》に先行してオルコットさんに襲い掛かる。

 最初に見た一瞬こそ驚いた様子を見せたオルコットさんだけど、すぐにビットを使って私のミサイルを迎撃してきた。おかげで大部分のミサイルが撃ち落とされたけど、それはむしろ狙い通り。

 迎撃されたミサイルから爆炎があがり、視界が一瞬制限される。その瞬間に合わせて私は一気に再加速、通常ブーストで出しうる最高速度を出して接近する。追加されたウイングスラスターによって並みの高速機を凌駕するほどの推力を得た今の《打鉄弐式》ならそれができる。

 

「……!? ち、近っ」

「そこっ!」

 

 近づいたその一瞬に、対複合装甲用超振動薙刀《夢現(ゆめうつつ)》を振るう。

 

「ッ! インターセプター!!」

 

 だけど、オルコットさんも国家代表候補生の一角。すぐさまナイフを呼び出すと、それで私の《夢現》を受け止めようとしてくる。そして、同時に近くに数機のビットも呼び出していた。

 けど、そのくらいなら問題ない。

 

「ハァッ!」

 

 《夢現》の刃でオルコットさんのナイフを一回打ち据え、その反動を利用して《夢現》を一回転。同時に、機体を半回転させて続くビットの射撃を回避。

 

「……この、タイミングで!?」

 

 オルコットさんが驚いたような様子を見せたけど、ここからが本番。

 一回転させた《夢現》を回している途中で少し短めに持ち替え、石突にあたる部分で半回転の勢いも加味しながら再度、ナイフを持ったオルコットさんの腕を打ちすえる。

 衝撃に耐えかね、オルコットさんがナイフを取り零した。その隙に少し下がって、再度《山嵐》を起動。ロックできた瞬間に一斉射する。

 

「行って!」

「させませんわよ!」

 

 オルコットさんもすぐに切り替えてライフルとビットで迎撃してきた。

 

(やっぱり通常のロックシステムだと、活かせきれない……っ!)

 

 本来搭載される予定だったはずの第三世代兵装《マルチ・ロックオン・システム》が搭載されておらず、それとの併用が前提の仕様だった《山嵐》は今現在、通常の対単一ロックオン・システムを採用している。だけど、それでは四十八発の独立稼動型誘導ミサイルを十分に活かしきる事が出来ない。

 

(でも、やりようはある……!)

 

 それは、完成までの調整中に影内君に教えてもらった。

 たとえ本来の主力兵装である《山嵐》の性能を完全に引き出すことはできなくても、その火力そのものと爆破範囲は健在。なら、それを活かしつつ他の装備とも合わせて戦術を組み立てていけばいいって。

 だから、そうした。影内君自身もいくつか提示してくれたし、私自身でも考えた。

 その結果が、今ここにある。

 

(《打鉄弐式》での初めての実戦だけど、それでもここまで……!)

 

 そして、自身の愛機との付き合いの長いオルコットさんとここまで戦えている。

 確かに、オルコットさんの《ブルー・ティアーズ》は近接戦闘を極端に苦手としているという大きな弱点を有している。けれど、その分ライフルやビットの攻撃性能は本来侮れるものじゃない。一撃必殺と呼べる爆発力は無いけど、十分に性能を引き出した時のS(シールド)E(エネルギー)への恒常的な攻撃力は侮れない。ビットでのオールレンジ攻撃も影内君や箒が例外的なだけで、普通のIS搭乗者なら避けきるなんてことはできない。

 普通に戦ったら、私が押し負けていてもおかしくは無い。

 

(でも、だったら……接近戦で、戦えばいい!)

 

 わざわざ相手の土俵で戦う必要は無い。それは何度も教えてもらったし、見せても貰った。だから、私もそうする。とは言っても、私と影内君とでは根本的な技能で差がある。特に回避と近接戦能力では顕著。だから、私はそこに射撃も織り交ぜることでどうにか戦えるレベルにまでしようとした。

 さらに、本来は前衛を務めるはずの鈴を影内君が抑えている。この状況なら疑似的に私とオルコットさんの一対一ができる。

 

(本当に、頼りになる……でも!)

 

 それだけに頼りきっちゃいけない。

 そして、影内君からも合図が来た。

 

(やってみせる! そのための、《打鉄弐式》なんだから!)

 

 

―――――――――

 

 

Side 一夏

 

「ハアアァァァ!」

「ゼァ!」

 

 簪がセシリアと戦っている中、俺は凰と剣戟合戦を繰り広げていた。

 

「本ッ当に、出鱈目ね!

 あんな鍛え方してりゃそうなるだろうけどさ!」

「光栄だが、俺の師匠達はもっと強いぞ!」

「今は目の前をアンタ達を倒す方が重要だからそれはいいわ!」

 

 互いに少しを会話を挟みながら、全力で斬り合いの格闘戦を続ける。

 凰もこの前戦った時から一層実力を磨いたようで、この前よりも一撃一撃が重い。しかも連撃の腕は据え置きなものだから、接近戦での脅威度は高くなっている。さらに衝撃砲も以前より全体的に精度を増しており、より侮れない相手になっていた。戦術そのものというよりは、技能方面を中心に磨かれている。

 が、此方も鍛錬を怠った事は無い。

 

(悪いが、今は圧倒させてもらう!)

 

 事前に簪と打ち合わせていた通り、ここでは凰を出来る限り近接戦で圧倒する。

 今回、簪に取っては初めての実戦となる。そこでこの二人をいきなり相手にするのは俺も付いているとは言っても不安材料は残った。元々この二人は互いの得意分野がはっきりとしており、それぞれの役割をこなせればそれだけでも一つ連携の形になる。そして、それが正しく機能した時の脅威度はそれぞれを相手にしたときの比ではないだろう。

 

(なら、答えは簡単だ……分断すればいい!)

 

 二人同時に二人で相手したときに不安材料が残るなら、明確な弱点が残る一人を相手にしたときの方がまだやりやすい。そして、こちらも数が同数で簪の腕前も信用できるからこそ実行できる戦術だ。

 とは言え、凰とオルコットも腕は確かである以上は其のうち対応されることは想像に難くない。だから、その前に此方が次の一手を打つ。

 

「このっ……いい加減に当たりなさいよ!」

「断る!」

 

 何度かの剣戟とその中での軽口のやり取りの最中、両手に持っていた機竜牙剣(ブレード)の内一刀を機竜息銃(ブレスガン)に持ち替え、凰を狙ったように見せかけて別な相手を狙う。

 

「何処に撃ってんのよ!」

「いや、これでいい……ッ!」

 

 狙った相手は俺から見て同じ凰と同じ射線上に居るオルコット。放った弾丸は、確かにその肩部の非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)に当たっていた。

 その直後に、凰の背後から大量のミサイルが殺到した。

 

「……!? ミサイル!」

 

 凰の対応も早いもので、射角に制限の無い衝撃砲の乱射でミサイルを迎撃しにかかっている。そして、直撃したミサイルは

 が、それでも爆炎は大量に出る――それこそが俺と簪の狙いだった。

 

「……やあああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 爆炎を突っ切り、簪が此方へと突っ込んでくる。同時に、俺も反対側――オルコットの方へと、全力で接近していた。

 

(さて……選手交代と行くか!)

 

 

―――――――――

 

 

Side 鈴音

 

「ここで簪が相手って……!」

 

 正直、焦った。

 影内と簪の戦い方の違いは普段の摸擬戦の事もあって知っているけど、その二人の戦い方は大きく異なっている。影内は基本的に能動的に攻撃してくる格闘型だけど、簪は攻めても受け手もできるオールラウンダー。影内とは別な意味で厄介な相手。

 

「ここからは私が相手だよ、鈴!」

「……ッ! やってやろうじゃない!」

 

 普段の簪からは中々想像できない挑戦的な声が発せられ、その手に握られた長刀が振るわれる。私の《双天牙月》よりもリーチで勝る其れは、簪の戦闘距離の維持の上手さと相まって攻撃する機会そのものを奪われている。その中に織り交ぜられる連射特化の荷電粒子砲も、中々にいやらしい。

 

(しかも、このままだとセシリアとも連係がとりにくい……そこも戦略の内って事かしらね)

 

 そしてもう一つ。影内と簪は、多分私とセシリアを分断しに来ている。

 理由もわかる。私もセシリアも苦手分野が明確で、そこを補い合う事でペアとして機能させてきた。けど、それは裏を返せば互いの苦手分野をフォローし合えないとその難点がそのまま疲れてしまう事を示している。そして、影内はそれを分かった上で突いてきた。

 さらに、私達が手を打つ前に互いの相手を交換した。これはおそらく、私達がこの状況に対応する前に別な状況に切り替え、それを繰り返すことでペアとして機能させないことが目的。

 

「セシリア!」

「よくってよ!」

 

 だけど、このまま何も手を撃たないという選択肢は無い。

 簪の専用機《打鉄弐式》の長刀のリーチと簪自身の長刀の技量、特に受け流しに優れたそれは影内とかとは一味違った脅威だった。柔よく剛を制す、を体現しているとも言える。

 だからこそ、二刀と格闘での力押しが一番得意な私としてはあまり戦いたくない相手だった。衝撃砲での射撃戦にしたところであの連射効率のいい荷電粒子砲と大量のミサイル相手では手数と火力の差が歴然。

 

(簪相手なら、セシリアのほうが今はいいわね……いえ、それ以前にどうにかして向こうのペースを崩す……そのためには!)

 

「《龍砲》、行きなさい!」

 

 狙いは大雑把で、とにかく数を撃つことを中心に《龍砲》を放つ。狙いは足止め。

 

「そのくらいで!」

 

 狙い通り簪は回避しつつ射撃戦に移行し、少しの間接近の勢いが緩まった。その隙に私はセシリアの方へとブースト。合流を図る。

 

「やらせるか!」

 

 だけど、そこで影内が射撃を放ってきた。手にしていたのは小型の銃火器のような装備で、そこそこの威力がありながら連射効率がよく弾幕を張るにはうってつけの装備。

 

(けど、止まらないわよ!)

 

 回避動作は必要最低限に抑えて、構わずセシリアとの合流を優先する。

 影内の機体である《ユナイテッド・ワイバーン》は、詳しいスペックは知らないけどそれぞれの基礎性能が優れているように思える。そこに並みの代表候補生などより高い能力を持つ影内の組み合わせは、単純に脅威であり同時に対処がし辛いという強みも生み出していた。だからこそ、一人で相手するのは得策とは言えない。

 かといって、二対一などやれば今度は後ろから簪が来る。だから私とセシリアが作るべき状況は、二対二。だからこそ、ここで止まってまた一対一という状況は悪手だった。

 

「私も居ましてよ、一夏さん!」

 

 影内からの射撃を受けていたところに、セシリアがライフルとビットでフォローを入れてくれた。この機を逃すわけもなく、無事合流。

 

「さて、反撃よ。セシリア!」

「ええ。訓練の成果を見せてあげますわ!」

 

 

―――――――――

 

 

Side セシリア

 

(やはり一筋縄でいく相手ではありませんわね……ですが、私とて!)

 

 ライフルを構え、狙いを定める。

 一旦は相手が簪さんから影内さんへと移りましたが、状況はなんとか悪化させずに済みました。簪さんは初見の装備と戦術が多くすぐに対処が思いつかなかったというのもありますが、影内さんなら前にも何度か立ち会わせてもらいある程度その動き方を知っています。それでも当り前のように回避されてしまうあたり、彼の強さは底が見えないとしか言えませんが。

 

「さて、反撃よ。セシリア!」

「ええ。訓練の成果を見せてあげますわ!」

 

 ですが、このまま手をこまねいているわけにも行きません。

 何より今の状況では実質一対一を二つやっている状況であり、このままでは私と鈴さんそれぞれの弱点を突かれて負けるという結果を晒しかねません。

 だからこそ、ここで合流しておきたかった。幸い、鈴さんがこちらへと来てくれたおかげで私にとっては簡単な援護をするのみで済みます。

 そして、無事に合流できたのは光明でした。

 

「簪!」

「分かってる!」

 

 向こうもすぐに合流し、二対二の状況になりました。けれど、先程よりは抵抗できます。

 まず、私が《スターライトMk—Ⅲ》と《ブルー・ティアーズ》での一斉射撃で二人へと先制攻撃。当然のように避けられましたが、二人が完全に離れきる前に鈴さんが衝撃砲と二振りに分割した青龍刀で襲い掛かりました。

 ですが、さすがに二人を同時に相手するには分が悪いです。其処へ再度、《ブルー・ティアーズ》で援護しました。狙うのは主に獲物を持っている手か手首の部分。いつかの箒さんへとやらせて頂いた手段と同じことですが、今回は前衛を務めて下さる鈴さんがいるおかげで以前よりずっと攻撃の機会が多いです。

 

「そこっ!」

「お行きなさい!」

 

 さらに、私が打ち漏らしてもすかさず鈴さんが衝撃砲と格闘で追撃をかけてくれます。

 私も鈴さんも、形は違えど全周囲への攻撃ができます。だからこそ、互いへの誤射にさえ気を付ければ互いへの射程内のどこからでも援護や追撃ができるのです。

 

(ですが、それだけで勝たせてくれるほど易い相手ではないでしょうけど……)

 

 現に、手首や関節部といった場所へとしつこく攻撃を仕掛けてはいますが、影内さんにも簪さんにも対応されています。何度か当てられそうな場面はありましたが、影内さんがあの四つ足と鞭のような装備を使って変則的な軌道を実現しているため、予想外の避けられ方をされてもいます。

 さらに、鈴さんも攻めあぐねているようでした。片や同格、片や完全に各上の使い手である計二人を相手にしての格闘戦なので当然といえば当然ですが、鈴さんが倒されれば私達に勝ち目など微塵も残りません。

 

『セシリア! 狙いはもうちょい粗くていいから、もっと撃てる!?』

『出来ますけど、それでは……』

『構わない!

 小手先の技術で勝てるような相手じゃないし、仮に手首や足を一つ撃ち抜けてもそこに行くまでのこっちの被害が多分とんでもないことになる!』

 

 鈴さんからの提案を受け、ほんの一瞬、思案しました。

 確かに、今現在の状態では当てるまでに時間が掛かることは必定でしょう。そうなれば、私も鈴さんもこの二人を相手に十分なエネルギーを残せない可能性は高いです。

 

(鈴さんの言う通り……私と鈴さんの攻撃力を考えるなら、鈴さんの攻撃を一撃でも多く当てたいところですわね)

 

 一撃が重いのは明らかに鈴さんであり、最大限に生かすべきはその火力。

 

(なら……!)

 

「そこですわ!」

 

 《スターライトMk—Ⅲ》の照準を、あえて影内さんが防ぎやすい正面へと持っていきます。さらに、五機の《ブルー・ティアーズ》の照準を簪さんの方へ。

 

  ビシュシュシュン!

 

 一斉射を仕掛けますが、影内さんはあの大剣の内一刀で防ぎ、簪さんには避けられました。

 ですが、そこで再度鈴さんが攻撃を仕掛けます。影内さんには衝撃砲で、簪さんには避け終えた瞬間を狙って接近しての格闘攻撃を。

 

「っらぁ!!」

「ッ!」

「いい連携だな……!」

 

 その攻撃は、致命傷には至らなくても確かに二人に傷跡を残しました。

 

「ここからは……」

「そちらの好きには、させませんわよ!!」


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