IS ~無限の成層圏に舞う機竜~   作:ロボ太君G。

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第四章(11):タッグ決定

Side 一夏

 

「……という事で、いくつかの問題が起きましたが増援の方は掛け合ってもらえる事になりました」

「そう……。

 分かったわ。強行軍だったことでしょうし、ご苦労様」

「いえ。それが俺の役割ですので」

 

 新王国へと報告に行き、その後再度『球体(スフィア)』を通ってIS学園へと戻った其の後。

 ひとまず更識会長へと増援を打診した旨を伝えるため、生徒会室の方へと来ていた。

 

「こっちの方でも色々と決まってきたわ。

 ひとまず、向こうに出向く日程は二週間くらい後。色々と根回ししてるけど、時間がかかりそうだからそれくらいになりそうだわ」

「大丈夫なんですか?

 話を聞いた限りだと、状況がかなり逼迫しているみたいですが……」

 

 思いの他動くのが遅い事に意外な思いを抱くが、更識会長の考えは違うようだった。

 

「さっきも言った通り色々と根回ししてるのよ。

 それに、今回みたいなことがまた起こったら敵わないしねぇ……。少しでも可能性を減らすためにも、って意味もあるのよ。

 ま、悪いようにはしないわ」

「お願いしますよ」

 

 一応念を押しはしたが、当の更識会長は涼しい顔で応えるのみだった。

 とはいえ、これまでの事からその手腕は信頼している。ここは任せておく事にした。

 

「それと、更識会長。

 報告に行った際、こちらの方でも少々厄介なことが発覚しまして……。そちらの方についても頼んでいいでしょうか?」

「内容は?」

 

 更識会長の目線が少し鋭くなったような印象を受けたが、気にせずに続ける。

 

「最初にも話した、機体の流出の件ですが……。

 可能性が極めて高くなったため、出来る限り調査の方を急いでほしいのですが。よろしいでしょうか?」

「その件かぁ……。

 分かったわ。けど、流石に確実な事は約束しかねるわよ」

「それでも十分です」

 

 ひとまず伝えるべきことは伝えたので、もうお開きかと思い戻ろうかと考えた時だった。

 

「あ、それと最後に少しいいかしら?」

「何でしょうか?」

 

 だが、予想に反して更識会長にはまだ話があるみたいだった。

 

「さっきの話にも関連する事なんだけど、時期的に学年別トーナメントの事はもう聞いてる?」

「タッグマッチになった、という事ですか?」

「そうそう。

 で、そのタッグの事なんだけど……簪ちゃんと組んでくれないかしら?」

 

 意外といえば意外な言葉に、少し訝しんだ。

 正直、俺自身はわざわざ出場する理由は無いし、普段から一緒に練習している面々も簪と剣崎、凰とオルコットあたりで組みそうな気がするので出場しなくていいかと考えていたのだが。

 

「ぶっちゃけると、何かあった時に動きやすいからよ。

 この前のクラス代表戦でもあんな事があったし……」

 

 言わんとする事は分かったため、それ以上は言及しないことにした。

 

「分かりました。

 簪にはもう伝えたので?」

「あっと……それは、まだなの。

 できれば影内君の方から言って貰えるとありがたいんだけど」

 

 文句を言うつもりは無いが、それでも思う所はある台詞だった。故に、其処だけは付かせてもらう事にする。

 

「……何故に直接言わないのですか?」

「いやぁ~……影内君から直接言った方がスムーズに事が進むかなぁって……」

「……本当は、ただ単に話しかけづらいだけ。なんて事は無いですよね?」

 

 平素と変わらない口調で言ったつもりだったが、更識会長は一瞬その身を強張らせるとこっちへと向き直って返答を口にした。

 

「そ、そんな訳、な無いじゃな、いい……」

「口調がおかしいのですが」

 

 口にした返答は明らかに吃っており、向き直った表情も強張っている。誰が見ても隠せていないことが明らかだった。

 

「別に俺の方から簪に伝えること自体は構いませんが……いい機会ですし、打診するついでに色々と話してみたらどうです?」

「そうですよ、お嬢様。

 先程も私にそれを言って断られたばかりだというのに。今度は影内さんに頼んでいるのですか?」

「う、虚ちゃん!?」

 

 俺が言い終えるのとほぼ同時、虚さんが生徒会室へと入ってきた。

 心なしか、少しジト目気味になっているようにも思える。

 

「懲りずにまたですか……。

 そうやって切っ掛けを掴み損ねているからですね…………」

「そ、そう言えば虚ちゃん!

 デュノアさんと《打鉄弐式》の件はどうなったかしら!?」

 

 露骨な話題逸らしを慣行してきた更識会長だが、虚さんはそれ以上言及せずに溜息のみに止めると話題を切り替えた。

 

「ひとまず、デュノアさんには処遇が近日中に決まる事とそれまでは今まで通りの学園生活を送ってもらう旨を伝えました。本人も承諾したみたいです。

 《打鉄弐式》の件も同様です。如月さんの方もすでに準備はできているみたいですし、問題なく行けば学年別トーナメントまでに『マルチ・ロックオン・システム』以外の面は何とか用意できるかもしれないとのことでした。

 いずれの案件も、学園長も了承済みです」

「ん、お疲れ様」

 

 更識会長は短い言葉で虚さんを労ったが、此方としてはいくつか気になる単語が出てきた。

 

「《打鉄弐式》とデュノアの処遇、何かあったんですか?」

「ああ、そういえばまだ話してなかったわね。

 まずはデュノアさんの処遇からでいいかしら?」

「ええ」

 

 前置きも短く、更識会長は話し始めた。

 はぐらかされている気がしないでもないが、それは後で言及すればいいだろう。

 

「まず、当面はそれとなく監視の目を付けつつ普段通りの生活を送ってもらう事にしたわ。

 詳しい理由は後にするけど、今後の事を考えての事ね。あんまり露骨に隠してばかりだと色々と面倒なことになるだろうし。

 ひとまず、トーナメントには箒ちゃんと一緒に組んでもらう事になったわ」

「剣崎と? というか、出場させるので?」

 

 俺の疑問に、更識会長は頷きを返すとそのまま答えた。

 

「まあ、ね。

 さっきも言ったけど、あんまり事を荒立てるような真似はしたくないし。こちらからの提案の具体的な内容はまだ伝えていないけど、それも影内君の方の増援が決まり次第伝えられるくらいにはするつもりよ」

「そう、ですか……。

 もしかして、ペアの打診の件は」

「簪ちゃんも普段から一緒に練習している人の方が何かと組みやすいとは思うけど、その中から箒ちゃんが抜けちゃうとね……。

 勿論、簪ちゃん自身が決めた相手がいるなら何も言わないけど。相手が決まっていないんだったらと思ってね」

 

 ある程度の納得を得たところで、別な疑問の方にもこたえてもらう事にした。

 

「《打鉄弐式》の方も何かあったのですか?」

「実はねぇ……。

 いえ、今言うのは止めておこうかしら。でも、すぐに分かると思うわよ」

 

 話そうとしたところで考えを変えたらしく、更識会長ははぐらかすのみだった。

 が、その顔はどちらかと言えば悪戯を楽しむようなそれになっている。

 

「そうですか……。

 まあ、此方に問題が無いのであれば特に何もいう気はありませんが」

「それは大丈夫よ」

 

 大事な部分のみのを確認にとどめ、その日は終わりにした。

 

 

―――――――――

 

 

Side 箒

 

「さて。

 色々と思う所はあるだろうが、暫くの間はよろしく頼む」

「よろしく……」

 

 諸般の事情により、暫くは監視という意味も含めて一緒に行動することになった。

 が、肝心のデュノアが沈んだままだった。というより、生気が感じられない。

 

(……駄目だ、昔の自分を思い出すな)

 

 どこか親近感の様な感情も覚えたが、だからと言って何か進展する訳でも無い。

 

「……」

「……」

 

 そして、目下最大の問題として致命的なまでに会話が続かない。

 

「……なあ」

「……何?」

「後で、一度手合わせしてもらってもいいか?」

 

 会話の糸口が欲しかったというのもあり当たり障りの無い話題を言ったつもりだったが、ディノアには意外なセリフに聞こえたらしかった。

 目を見開きながら、聞き返してきた。

 

「……どういう事?」

「いや、トーナメントには出ることになるんだし、互いの実力を把握するためにもと思ってな」

「本当に、普通に出場していいの?

 てっきりどこかで負けるようにでも言われる物かと……」

 

 なぜか妙なことをデュノアが言い出したが、そんなことをしなければいけないことなどない。

 

「ああ。私としてもやるんだったら是非とも優勝を狙いたいし、楯無さんからもそう言われてるのでな」

「何で……?」

「知らん」

 

 楯無さんが何を考えているかなどわからないのは本当の事なので、そのまま嘘偽りなく答えた。

 

「……え?」

 

 そして、デュノアは素っ頓狂な声で返事していた。

 

(そんな声を出さなくてもいいだろう……)

 

 微妙に引かれた気がしたが、そこまでおかしなことは言っていない……はずだ。

 

「何、悪いようにはしないだろう。

 現に、お前の目の前にその一例がいる事だし」

「一例……?」

 

 理解できないとでも言いたげな表情で見られるが、其処を詳しく話すと色々と面倒なことになるので適当に答えておくことにした。

 

「気にすることじゃない。

 ただ、あんまり心配しなくてもいいんじゃないかという話だ。それに、悪いようにする気だったら軟禁なんてもんじゃ済んでいないだろうし」

「それは……そうかもしれないけど……」

 

 未だ言い淀んでいるデュノアだが、このまま意気消沈したままでいてもらうのは少々好ましくない。

 だが、これ以上気の利いた言葉が言えるわけでもないのでとりあえず話を元に戻そうかと思った。

 

「さて。とりあえず摸擬戦でもしないか?」

「……って、今までの流れでなんでそうなるのさ!?」

「いや、考えても結論が出ないなら体を動かした方がいいかと思ったんだが」

「発想が飛躍してない? それ……」

 

 私の返答にデュノアはどこか呆れ顔だが、先程までの沈み切った顔よりは幾分いい顔になっているように思えた。

 

「それに。どの道お前が沈んでいても話が好転するわけでもない。

 だったらどう転んでもいいように、何かしらの実績はあったほうがいいだろう」

「……そう、なのかな」

「何も無いよりはマシ、の方がいいか?」

「ちょっと前向き過ぎない……?」

 

 ひとまず、盛大に呆れられているのはとにかくとしてデュノアとの会話が生まれてきていた。

 

(これでいいか)

 

 当初の目的である会話を生むという事には成功しているし、デュノアの視線は未だ下向きだが、それでも最初の生気がまったく感じられない時よりは幾分良くなっているのではないかと思う。

 

「まあ、何はともあれだ。

 近日中にお前やデュノア社を含んだフランスに対してどう対応するかを決定するみたいだし、そこまではどっしりと構えるくらいの気持ちでいいだろう」

「それでいいのかなぁ……」

 

 相変わらず気落ちした感じはぬぐえないが、今はこれでもいいだろう。

 

(……やっている事が嘗ての如月さんや簪の真似事というのが何とも言えないが)

 

 かく言う私自身も、頭に浮かんだ情けない事実にまだまだかという思いを抱いてはいるのだが。

 

 

―――――――――

 

 

Side 一夏

 

 新王国に報告に行った日の翌日。

 掲示板に大々的に張り出された張り紙を見て、思わず固まっていた。

 

「……一体、何がどうしてこうなった?」

「えっと……倉持技研の設備が使えないから、学園の設備を使うって……。

 だけど、さすがに無条件で使わせてもらうのは色々と無理があるから、こんなことに……」

「いや……それでも、対価がこれでいいのか……?」

 

 学年別トーナメントまで残り二週間ほどと迫り、《打鉄弐式》の完成に某氏が意欲を見せていたのは知っている。そして、どこぞの生徒会長もそこに一枚噛んでいる事も知っている。

 が、だからと言ってもこれは予想外過ぎた。

 

「……一応、現役のIS技術の研究者。それも専用機の開発実績のある人っていう触れ込みだから、申し込みはむしろ殺到しているみたいだけど」

「だったら、いい……いい、のか?」

 

 簪の返答に困惑はしたが、それで誰も不幸にならないならそれでいい。

 そう思い直し、この話題はここまでにすることにした。

 

「ああ、それと簪。少しいいか?」

「何?」

「学年別トーナメントの事なんだが、タッグを組む相手はもう決まったのか?」

 

 この事について、まだ話していなかったことを思い出して聞いておく事にした。決まっていないのだったらついでに申し込んでおくのもいいだろう。

 

「えっと……まだ、だけど。箒はデュノアさんとだし、鈴はオルコットさんと組むことにしたみたいだしで……。

 でも、何で?」

「いや……良かったら組んでくれないか?」

 

 一応聞いてみた所、簪が妙に驚いたような顔になっていた。

 

「わ、私と!?」

「待て、声の音量を下げてくれ」

 

 予想外に大きな反応に一瞬戸惑ったものの、そのままでは

 

「先日、タッグを組んでくれと押しかけられたことがあったのは覚えてるか?」

「あ……うん」

「またあんな事があっては敵わないが、かと言って不参加にするわけにも行かなくてな……。だけど、もし有事になったときに組んだ相手が事情を知らない相手だったら色々とやりづらい。

 更に言えば、普段から一緒に特訓している相手の方が動きも合わせやすいんじゃないか、と思ってな。操縦者としての簪の腕前は疑っていないし、」

 

 ひとまず伝えるだけ伝え、後は返事を待つだけ。

 簪は少し逡巡したみたいで、返事まではわずかに時間を要した。

 

「わ、私でいいんなら……」

 

 其の後の返事は、俺としても安心できるものだった。

 だが、その中にも気になる点があった。

 

(それにしても……顔が少し紅潮していた気がするが、調子でも悪いのか……?)

 

 負担をかけていなければ、いいのだが。

 

 

―――――――――

 

 

Side 簪

 

 今現在、複数のクラスが合同で授業を行えるほどの大教室で行われている授業に出席していた。

 とは言っても、私と影内君に関してはある意味で儀礼的な側面が多分に含まれており、席も一番後ろの目立たない席に座っている。

 

「それでは、特別授業を始めます。

 臨時講師の如月さん、お願いします」

「はい。

 それでは、ISの基礎については授業である程度習っていると思いますので説明を省き……」

 

 そう、如月さんが整備課向けの臨時教員としてIS学園で授業していた。理由としては、整備課の設備を使わせてもらう代わりに整備課全体への授業を行うためとの事だけど、如月さんの性格を考えると多分この特別授業も楽しんでいるんじゃないかと思える。

 デュノアさんと組むことになった箒にも聞いてみたけど、同じ意見だったから多分間違いじゃないと思う。

 現に、今現在授業している如月さんはすっごい笑顔だった。

 

(如月さんの考え方に毒され過ぎた人が現れないといいけど……)

 

 授業の内容自体は特に心配していない。

 如月さん自身、箒にISに関する様々な知識を教えてきた経験と実績がある以上、ある程度教えるという事には慣れている。教えている内容に関しては言わずもがな。

 だけど、もしどこかで何かの間違いが起こり如月さんの設計思想が受け継がれてしまったら。私は、そこが少し心配だった。

 

 

―――――――――

 

 

「さて!

 元気に《打鉄弐式》の開発を始めようか!」

「よろしくお願いします」

 

 そして、特別授業も終わった放課後。

 私と如月さんは整備課の施設の一角をほぼ占領させてもらって、《打鉄弐式》の開発を行っていた。部品は既に解体された《白式》の部品を流用する形で調達したため揃っていて、後は組み立てるだけ。それだけでも二人だけで行うとなると相当に時間がかかるけど、それでも完全に開発が止められかねなかった時に比べればずっと希望が持てる。

 

「という事で、まずは組み立てから入ろうか」

「はい!」

 

 そうして、私たちが作業を始めてそう時間が経たない内の事だった。

 

「すいませーん!

 ちょっといいですか!?」

 

 扉を開けて現れたのは、先程授業を受けていたらしい整備課の生徒。それも、一人ではなく結構な人数がいる。

 

「ど……どうしてここに?」

 

 ここで開発していることはあんまり人には言っていないはずだし、いくらなんでもタイミングが良すぎる。そう思って聞いてみると――

 

「いやね~。

 影内さんと剣崎さんと凰さんとオルコットさんと布仏さんが、ここで更識さんが専用機の開発をしているってことを教えてくれてさ。しかも、如月さんもやっているって言うし。

 これは、もう手伝いに行くしかないと思ってね!」

 

――すごく意外な返事が返ってきた。

 

「四組の人としてはクラス代表の機体を仕上げるのを手伝えるなら手伝いたいし、整備課としてもIS一機丸々仕上げるのに関わる機会なんてそうそうないからいい経験になるしさ」

「それに、今まで更識さんが特訓とかいろいろと頑張っていたのを見ている人もいてね。頑張っている人が居たら手伝いたくなる人もいるんだよって」

 

 他にも来ていた人たちが、口々に追加で応えてくれていた。

 私は予想外な展開に思わす呆けた。けど――

 

「いや~……これは、予想外に嬉しい展開だねぇ~♪

 それでは皆さん、張り切っていきましょうか!」

 

――如月さんは特に驚くでもなく、むしろ嬉々として整備課の生徒達からの提案を受け入れていた。

 こうして、私の専用機開発は予想外な展開を見せつつも順調な滑り出しを見せていた。

 

 

―――――――――

 

 

Side 一夏

 

「……で、今度は何の用件でしょうか? 織斑教諭」

「《白式》が解体された件についてだ。

 お前は、その事を知っていたな……!?」

「さて。何のことでしょうか?」

 

 例の如く消灯直前に呼びだれた俺は、織斑教諭から《白式》解体の事について詰め寄られていた。

 

「とぼけるな!

 この前それらしいことを言っていたのは、しっかりと覚えているぞ!」

「そうですか……」

 

 もうなんか色々と面倒にしか感じないが、それでも答えるだけこたえるとしよう。

 後で直接言えばよかっただろうなどと言われても困るし。

 

「何故解体した!?

 アレはお前が乗るのに……」

「何度も言いましたが、俺は乗る気はないです。

 そして、乗る気の無い機体を押し付けられている人間の気持ちも少しは考えてください」

 

 ここまで言ったところで踵を返し、そのまま扉に手をかける。

 

「それで、要件はこれだけですか?

 なら、もう部屋に戻って寝ておきたいのですが……」

「待て!」

 

 織斑教諭が声を荒げて静止してきた。

 もう部屋を出ようとしていた手前、面倒に感じたが

 

「お前は、そんなにあの四つ足や……()()()()の方が、いいのか?」

 

 そして、聞き捨てならない一言が発せられた。

 

「……何のことでしょうか?

 俺は《ユナイテッド・ワイバーン》しか使っていませんが?」

「……クラス代表選の時、あの化け物共を倒した、あの白い機体。

 アレは、お前ではないのか?」

 

 俺が発した確認のための問いへの、織斑教諭の答えはある意味で重大な事実を物語っていた。

 

「……あの時の俺の動向は、事後処理の会議の席で全て話したはずですが」

「あの程度、その気になればいくらでも言える。

 白い機体の動き方は、根底の部分でお前とよく似ていた。機体の特徴も含めて考えても、お前が乗っていたと考えるのはそう可笑しくはないだろう」

 

 淀み無く答える織斑教諭に、いくつかの意味を含んだ苛立ちを覚えていた。

 

(腐っても世界最強(ブリュンヒルデ)と呼ばれただけの事はあるか……っ!)

 

 だが、いくら見破られていると言ってもそう簡単に認めるわけにはいかない事実でもある。

 だから、この場では白を切ることにした。

 

「仮に、そうだとして。あるいは、そうでないとしても。

 貴女に話す義理は無い。だからこれ以上、俺の仕事に干渉してこないで下さい」

 

 誰が来るかはわからないが、この次来る連絡要員への報告内容が増えたことに頭を抱えた。が、それ以上に別な思いもある。

 

(未だ隠せるほどの腕前は無いと。そういう事なのか……っ!)

 

 忸怩たる思いを抱きながら、部屋へと戻っていった。


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