IS ~無限の成層圏に舞う機竜~   作:ロボ太君G。

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思ってた以上に時間がかかってしまった・・・・・・・。
文章書くのって難しいですね。


プロローグ(3):機竜の舞う空へ

―千冬達の到着より少し前―

 

Side 一夏

 

 バケモノがこちらに迫ってくる。

 手足を、翼を広げ、今にも襲い掛かってきそうな様子だった。

 

 だが、不幸中の幸いなのか、壁が元々古びていた上にさっきの跳弾でかなり穴が開いており、さらに後ろから何かに引っ張られるように軋んでいた。

 そしてついに壁が限界を迎える。

 

  バキャアアァァァ!!

 

 壁が崩壊したが、問題はその先だった。

 壁の向こう側は異様な空間と化していた。中空に光球が浮かんでいる。しかも、その光球自体が周りの物を徐々に飲み込むように吸引していっているみたいで、俺もその光球に引き摺られていた。

 それはあのバケモノも同じようで、ひたすら踏ん張っているように見える。

 

 一時的だけどバケモノの歩みが止まり、俺との距離が開く。

 だが、同時に俺は着実に光球との距離が詰まっていった。それもそのはずで、俺は手足を縛られているため

 

 そして、ついに―――

 

「う、うわあああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

―――俺は光球に飲み込まれた。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

「あ……ぐっ……!」

 

 体が打ち付けられ、そのまま転がる。

 そのまましばらく転がることになったが、幸いなことに手足を縛っていた鎖がなぜか切れており、止まった直後にすぐに外すことができた。

 

 だが、問題は他にあった。

 

「な……な……な……」

 

 さっきまで一体だったバケモノが、二体いた。

 この時は、控え目に言って死んだかと思った。

 

「……ノクト、幻神獣(アビス)の反応があったのはこちらであってますか?」

「Yes. ですが、少々厄介なことになってそうですね」

「なになにー、どういうことー?」

 

 その時、後ろの方から三人分の女性の声が聞こえた。でも、声の位置からしてまだ遠い。仮にこっちに来るとしても、時間がかかる距離に感じられた。

 それに加え、そもそもあのバケモノが二体。冷静に考えると本当に助かるのかどうかは怪しく思えてくる。

 

「私のドレイクで探索したところ、なぜか突然人の反応が出ました。

 しかも、幻神獣の至近距離です」

「……は? それってかなりマズイじゃん!」

「ああ。なぜいきなり反応が出たのかはさておき、今まで隠れていたにしろ、他の理由があるにしろ、とにかくできるなら確保しなければな」

 

 三人組、と思われる声がさらに近づいてくる。

 バケモノも気付いたらしい。声が聞こえるほうに顔を向けていた。

 

「……ガーゴイル二体、か。

 私たちだけだと厳しいな」

「Yes. 早急に確保し、リーズシャルテ様が来るまでの時間稼ぎをすべきかと」

「ルクっちが居てくれたら楽だったんだけどねー」

「No. 病み上がりの人に戦闘を強いるのはいくら何でも止めるべきかと」

「……さて、二人とも。

 もうそろそろ、だ」

 

 さらに近づいてくる声。

 同時に、二体のバケモノの内片方が飛んだ。そのまま上昇し、声のした方に高速で向かっていく。

 

 しかし、そこで俺は半ば信じられない光景を三度目のあたりにすることになる。

 

「ギエェェアアアァァ!?」

 

 声のした方からバケモノに向かって、一筋の光が走った。光はバケモノの一部を呑み込み、その片腕と片羽に確かなダメージを残していた。

 さらにそれだけに終わらない。今度は同じ方向からオレンジみたいな色の人型っぽい何かが飛んでくると、それがさっきよりも小さな光弾をバケモノに浴びせた。さすがに倒せてはいないものの、それなりにダメージは通っているように見えた。

 

 ついさっきISが蹂躙されるのを見た直後だっただけに、この光景は衝撃的だった。

 

 だが、二体のバケモノもやられるままじゃない。軽傷だった片方は飛び立ってさっきのオレンジの何かを追撃し始め、よりダメージが大きいと思われるもう片方は……最悪なことに、俺のほうを向いてきた。

 

 だが、バケモノが俺に襲い掛かる前に、バケモノと俺の間に今度は緑色の何かが浮かび上がっていた。よく見れば、それは四足であること以外は人型の何かであることが窺えた。

 

「ギ!?」

 

 バケモノが一瞬驚いたように声をあげるが、対して緑色の何かは冷静に

 

機竜咆哮(ハウリングロア)

 

 緑色の何かが円形の光を出して、バケモノを弾き飛ばした。

 そのまま緑色の何かが俺のほうに振り返ったが、そこにいたのは

 

「無事ですか?」

 

俺とそこまで大きく年は違わないであろう、女性の姿だった。

 

「え……あ……」

「大丈夫そうですね。それでは、離脱しますよ」

「え?」

 

 束の間の後、呆けた俺を半ば無視する形で機械の腕で俺を抱き抱えると、そのままバケモノから遠ざけるように走り出した。

 だが、速度ではバケモノのほうが上らしい。多少のリードはあったけど、すぐに追いつかれそうになってきた。

 

 だけど、その心配は杞憂に終わる。

 再び大きな光弾と小さいが大量の光弾が、バケモノに向かって飛来していた。倒すには至っていないものの、十分にバケモノを足止めできていた。

 

「す、すごい……」

「Yes. ですが、長くは持ちません。さあ、少し静かにしていてください。

 少し飛ばしますよ」

「え、え?」

 

 思わずつぶやいた直後、緑色の機体を操っている人は思いっきり駆け出した。

 その後ろでは、相変わらず激戦が続いていたが、その戦局はおそらく大きく動いていた。手負いのほうのバケモノが、なんの前触れもなく飛来した一際大きな赤い光弾に飲み込まれ、それっきりその姿を現すことは無かった。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

「……で、なんで私が彼の事情聴取担当なんですか!?」

「ごめんなさい。

 この前の反乱の時の怪我が治りきっていない人が多くてね」

「だからって……はぁ。もういいです……」

「まぁまぁそう言わないで。

 万が一の事態のためにフィルフィにもついてもらうから」

 

 どうにも俺の事情聴取関係でもめているらしく、銀髪の女の子が抗議していた。最終的には銀髪の女の子が諦めたように溜息を吐いていたけど。

 あの後、緑色の機体に抱えられた俺はそのまま豪華な施設へと連れられていた。その後、責任者らしい人が出てきて緑色の機体に乗っていた人から事情を聞いていたけど、何か都合が悪く銀髪の女の子を呼んだらしい。後、フィルフィという人もこれから来るらしい。で、来た後はとりあえず事情聴取が待っているらしい。

 

 だけど、色々と質問したいのはこっちも同じだった。そもそも、あの光球に飲み込まれた後から何が何だがさっぱりわからないことになっている。さらに、周りにいるのは外国の人ばかりというので自分でもわかるくらい委縮していた。こんな状況の中で唯一幸いなのは、相手の外国の人たちが日本語がわかるという一点に尽きるだろう。

 

 そうこうしているうちに、ピンク色の髪をしたゆっくりとした雰囲気の女性が入ってきた。この人がフィルフィという人らしい。

 

「……さて、いろいろと聞きたいことはありますけど。

 とりあえず、名前を聞いてもいいですか?」

「織斑一夏、です」

「織斑さん、ですか……」

 

 銀髪の女の子が無難に名字で呼ぼうとしたけど、この時の俺は色々あって混乱していたんだと思う。

 だからか、つまらない意地を張っていた。

 

「あの……」

「……? なんですか?」

「よければ……名前のほうで、呼んでもらえませんか?

 その……名字で呼ばれるのは、あまり好きではないので」

 

 銀髪の女の子は少し怪訝そうな表情になったけど、何かを察してくれたらしくすぐに「わかりました」と返事してくれた。

 

「では、一夏さん。

 私はアイリ・アーカディアです。気軽にアイリでいいですよ」

「アイリ、さん……」

「はい。では、一夏さん。

 まず、なんであんなところに丸腰でいたのか説明してもらえますか?」

「は、はい……」

 

 それから、俺は今回の一連の出来事について話し始めた。

 

 

 ドイツで行われた第二回モンド・グロッソの観戦に行ったこと。

 

 そこで観戦中に誘拐されたこと。

 

 誘拐されてから、姉か政府かに見捨てられたこと。

 

 そこで現れたバケモノと、それがISを纏った誘拐犯たちを殺した事。

 

 そのすぐ後に出現した謎の光球に飲み込まれた事。

 

 気が付いた時にはあそこにいて、二体のバケモノがいたこと。

 

 そして、さっきの人たちが来て戦闘になっこと。

 

 戦闘になった後は、さっきの緑色の機体を操っていた人が話していた内容とほぼ同じであること。

 

 

 一通り話し終えたところ、アイリさんは「信じられない」という気持ちが凄くよく伝わってくる表情をしていた。

 と言っても、これについては話している俺自身も信じられないような内容のほうが多いくらいなので仕方がないのかもしれない。

 

「……とりあえず、一夏さん」

「はい」

 

 気を取り直したようにアイリさんが話を再開した。

 

「まず……あなたがバケモノと呼んだものが何なのか、わかりますか?」

「わかりません」

「では、あなたがISと呼んでいるものは、世界的に一般的なものですか?」

「細かい部分はとにかく、名前だけでいえば」

「では、そうですね……。

 あなたが緑色の機体と言っていた、あれが何だか。わかりますか?」

「……わかりません」

 

 そこで再びアイリさんが困ったような表情を見せると、そのまま天を仰いだ。対照的に、もう一人のフィルフィさんの表情はほぼ変わらなかった。

 しばらくして、固まっていたアイリさんがようやく気を取り直したようで再び俺に向き直り、再度話を再開してくれた。

 

「まず、一夏さん。

 あなたがバケモノと言っていたのは、幻神獣(アビス)と呼ばれる、詳しいことは不明の敵です」

「はい」

「次に、あなたが緑色の機体と呼んでいた機体。

 あれは、装甲機竜(ドラグライド)と呼ばれる古代兵器の一機種、ドレイクと呼ばれる機体です」

「……は、はい?」

「そして、最後に。

 あなたが言ったISと呼ばれる物はここには存在していません」

「…………え?」

 

 今度は俺が固まる番だった。

 ただ、単純に信じられなかった。

 

 幻神獣と呼ばれる敵。装甲機竜と言う古代兵器。そして――存在しない、IS。

 

 それは、つまり――

 

 

 

「もし、あなたが言ったことが全て真実だとするなら。

 ここは、あなたにとっては、それこそ異世界とでも呼ぶべき場所なのでしょうね」

 

 

 

――本当に信じがたいけど、俺は異世界に来てしまったらしかった。




はい。以上でプロローグは終わりになります。
次話かその次くらいから本格的にIS側と関わって行く予定です。

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