IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート)   作:ひきがやもとまち

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バケモノも同時に書いてたのですが、先に書き始めてたのがこちらだったのでこちらが先に出来ました。なので投稿しておきますね。

学園『寮』の話2回目です。本来なら新作枠で始めるべきなのでしょうけど、時間が時間なせいであらすじとか思いつきません。ひとまずは緊急避難と言うことでこちらに入れさせてください。明日か明日以降にでも考えますので。

今回の話は原作4巻、2話目のシャルロットとラウラの買い物シーン。
どういう訳だか変なのが一人混ざり込んできてしまった展開となります。セレニアではありませんのでご注意を。

*冒頭にある一夏の台詞に一部修正を加えました。


IS学園『寮』の言霊少女 第2話

「お買い物・・・ですか?」

「うん、そう」

 

 IS学園寮の食堂、そこで早めの朝食をとりながらボクこと、シャルロット・デユノアとラウラ、そしてセレニアは今日の予定について話し合っていた。

 朝早いからかな? 周りには部活で朝練してる子たち以外にはほとんどいない。知ってる顔ぶれだって、名前ぐらいは知ってるだけの顔見知り程度で・・・・・・

 

 

「ふははははははははははははははははっっっ!!!!!!

 俺より早く食べることなど誰にもできない! 俺が最速! 俺がスピーディーッ‼」

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・一部詳しく知ってるけど知りたくなかった変な友人が混じってはいたけれど、概ね今日の朝も学園寮の朝食風景は平和そのものだ。

 

 ーーそれにしても・・・・・・

 

「朝からステーキのラウラも凄いけど・・・セレニアのそれも中々すさまじいものがあるよね。時々すごみを感じさせられるほどだよ・・・」

「そうですか? いつも通りだと思いますけど?」

「うん、そうだね。いつも通りだね。いつもと変わらない、まったく同じメニューが毎朝必ず並んでいるところを見てると、何度も同じ日を繰り返させられてる錯覚を覚えそうになるよ・・・」

 

 セレニアの生活スタイルは健康面を考えられた、学生とは思えないほど立派なものだと言うのはわかる。わかるんだけども、限度というものがあってね?

 さすがに無個性きわまる料理が毎度のように並んでいると見ている方が変化を楽しむことが出来なくなってくるんだよ。

 

 特に朝食がひどい。酷すぎている。完全に同じメニューが連日続けて目の前に広げられているのを見てると、IS学園寮が刑務所か何かのように思えてきて途端に息苦しくなってきそうになる。

 

「ライ麦パン、バター、プレーンヨーグルトに紅茶。野菜ジュースにベーコンエッグ、フレンチポテト、玉ねぎとピーマンとレタスのサラダ・・・毎日同じものばかり頼んでいるけど、それってジンクスか何かなのかな?

 別に好きな訳でもなさそうなのに、時々変なこだわりを感じさせられることが多いんだけど・・・」

「似たようなものです。願掛けだとでも解釈しといてください。こういう食事を取らされてた人を個人的に尊敬しておりましてね。その人の気分に近づきたいために食事だけでも似せてみてるんですよ」

「へぇー、セレニアにもそういう人っているんだ! どんな人なの? ボクにも教えてもらっていいかな?」

 

 好きな人の好きな人について聞かされるのは複雑な気持ちになるのも確かだけど、それでも『好き』を共有できるのは悪い気分じゃない。

 ううん、むしろずっと楽しくて気持ちいい!

 やっぱり、好きな人のことを考える時には、一緒に楽しんだ思い出とともに思い出したいからね。

 

「別に構いませんけど・・・そんなに大した人ではないと思いますよ? 少なくも生活面では無能力者でしたしね」

「え、そうなの? ちょっとだけ意外だなー・・・」

 

 家事はよくできるセレニアのことだから、尊敬してる人もそっち系が得意な人かと思ってたのに・・・・・・。

 

「実際、ぐーたらでズボラな人でしたからねぇ。

 家に爆弾放り込まれて爆発したときなんか、衝撃で飛び散った壺の破片を片づけるのを手伝おうとして養子になってる少年から「邪魔だからテーブルの上にでも乗っててください」なんて言われてましたからねー。いやはや、三十代近くにもなってひどい生活無能力者な方でしたよ」

「爆弾!? その人、家の中にいたんだよね!?」

「ええ、そうでしたよ? 自分が養い親になってる少年の作ったシチューを食べながら学校卒業後の進路について話し合ってたところに『真に国を愛する者の集団』を自称する軍需品で身を固めた民間人の勇士団体に家を包囲されましてね。いやぁ、あれは大変そうでした」

「それもう事件じゃないかな!? テロ事件なんじゃないのかな!? 落ち着いて掃除している場合じゃないよね絶対に!?」

「掃除の片手間でテーブルの上に座ってるだけで暇してる養父のために、紅茶を入れてあげたりもしていましたが?」

「どこの完璧超人なのかなその人は!? むしろ、その人のことを尊敬しようよ! さっきから全然セレニアの尊敬してるって人、活躍してないじゃん!」

「まぁ、あの人は非常の人ですからねぇ~。役に立つのは戦争しているときぐらいなもので、それ以外は時々思い出したように温和な表情で辛辣な意見を言うだけの昼行灯」

「・・・あれ!? なんか最後の一文だけで物凄く納得しているボクがいるんだけど・・・」

 

 なんだろう・・・ものすっごく、これ以上ないほどに「セレニアが尊敬している人」オーラが滲みでている話だったね。最後の部分だけの話だけどさ。

 

「・・・はぁー、もういいや。

 それで? 買い物には一緒にいってくれるってことでいいんだよね?」

「構いませんよ。時間は十時半くらいに出発でよろしいですかね?」

「あ、うん。十時くらいに出ようかなって思ってたから、三十分ぐらい遅くする分には全然問題ないからいいんだけどーーどうして十時半なの? 三十分置く理由がよくわかんないんだけど・・・」

「いえ、私は別にいつでもいいのですが、ボーデヴィッヒさんが観たいアニメの再放送があるとのことでしたのでね。終わる時間まで三十分入れておこうかなと」

「プリキ○アをお母様と一緒に観て泣きたいです!」

「・・・・・・」

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒ。ボクとセレニアにとっては可愛い娘ではあるんだけれど、一応これでもドイツの代表候補生でドイツ軍少佐。二つ名は『ドイツの冷水』・・・。

 

「はいはい。わかりましたから、ボーデヴィッヒさん。口の中に物を入れたままおしゃべりしたらダメですよ?

 ほら、お口の周りがケチャップで赤く染まっちゃってるじゃないですか。拭いてあげますからこっち向いてください。はい、お口を前に出して、んーってしてください」

「んーっ!」

「・・・よし、綺麗に取れましたよ。お外に行くらしいですから、綺麗綺麗にしてから出かけましょーね?」

「あーい♪」

「・・・・・・・・・」

 

 セレニア・・・君はたぶん将来的には、ボクのお母さんみたいに良い母親になっていることだろうね。今の時点で幻視できてるボクは戦慄しているよ・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 ーーとまぁ、紆余曲折あった末に十時半になったのでバスに乗り、駅前まで移動中の僕たちなんだけど・・・。

 

 ハッキリ言っちゃおう。今の僕たち、超浮いちゃってます。

 

「ね、ね、あそこ見て。あの“四人”」

「うわ、すっごいキレ~」

「隣の子たちも無茶苦茶可愛いわよね。・・・モデルで姉妹なのかしら?」

「ばかっ。あの制服見てわかんないの? あれ、IS学園の制服よ。カスタム自由の」

「え!? IS学園って、確か倍率が一万倍越えてるんでしょ!?」

「そ。入れるのは国家を代表するクラスのエリートだけ」

「うわ~、それであのキレイさって、なんかズルイ・・・・・・」

「まあ、神様は不公平なのよ。いつでも」

 

 僕たちに注目している女子高生のグループが声のボリュームを抑えることなく騒いでる。

 普段通りに僕たちだけだったらそれでいい。なんの問題もなく事は済むはずだ。

 僕はこう言うのが苦手で恥ずかしいから、ひたすら黙ってうつむきながらバスが到着するのを待つだけだし、ラウラは軍人モードの時には他人に興味をしめさない。幼女モードの時には道路を走ってる車の方に目と意識がいってるから気が付かない。

 

 セレニアは・・・まぁ、うん。大丈夫なんじゃないのかな? 多分だけれども。多分だけれども!

 

 

 ーーでも、今日に限っては常にない人が付いてきちゃってるから完全に逆効果だ。火に油だ。水とルビジウムだ。この場合だと、彼女たちが水で、僕の隣にいる彼女がルビジウムだ。

 

 

 

「あら、随分な言いぐさですのね。たしかにIS適正は生まれ持った才能のあるなしだけで決まってしまう神様の気まぐれで与えられた恩恵みたいなものですけれど、身だしなみやお顔立ち、お化粧の類は本人の努力次第でどうとでもなるものですわよ?

 まぁ、自分には才能がないからやるだけ無駄と、戦うまえから諦めてやる気を失って逃げ出した負け犬さんたちには関係のない話かもしれませんけどね」

 

『なっ!?』

 

「ましてや『国家を代表するクラスのエリート様が、自分たちごとき一般人から挑発されたぐらいで怒って撃ってきたりするものか。銃を持ち出したら訴えてやればいい』等と、安全な位置から国家権力の陰に隠れて中傷する自己顕示欲だけは人一倍の日本を代表する落ちこぼれエリートのあなた方には都合の良い理屈ではあるのでしょうけど。

 相手はキレイだ。才能があるから、努力しないでもキレイでいられる。

 自分たちは凡人で平凡でアイツ等ほど恵まれてないからこの程度で良いんだ。

 平凡最高、才能最低、人類は平等なんて大嘘だ。自分たちにも同じ才能を与えてくれない神様はなんて不公平な存在なのでしょう、ドゥ・アズ・ファッキンゴッド・ディスボーゼス。

 強者を妬み羨んで、悪口だけ言っていられる弱者の椅子は座り心地の良い物だ~」

 

「な、な、な、な・・・・・・!!」

「あ、あんた! い、幾らIS学園生だからって、言っていいことと悪い言葉ってもんがあるでしょうが!」

 

「あら、そうなんですの? ごめんなさい、わたくし英国出身なものですから、日本の風習には未だに不慣れなものでして。よく理解し切れておりませんの」

 

「~~~~~っ!!!」

 

「よろしければお教えいただけません? 公衆の面前で声量も落とさず見ず知らずの相手の個人情報を大声で恥ずかしげもなく騒ぎ立てる日本の女子高生のみなさま方にとって、言って良いことと悪いことの区別はどの様に付けてらっしゃいますのかしら?

 わたくし、と~っても興味ありますわ~♪ うふふふ~(に~っこり)」

 

『~~~~~~~っ!!!! か、帰るわよみんな! あんたも、今日のところはこれぐらいで勘弁しといてあげるわ! 感謝なさい!』

 

「はい、色々とご親切にお教えくださいまして有り難うございました♪ 次の講義の日を心待ちにしてお待ち申し上げておりますわ♪」

 

『き~~~~~~~~~~~~っ!!!!!!!』

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・行っちゃった。本当に運のない人たちだったなー。

 

 

「ーーところでさ、セシリア。・・・なんで来ているの? ここに・・・・・・」

 

 駅前のデパートにセレニアとラウラの秋服を買いに行くための外出で、何故だか一緒に付いてきていた普段着がドレスか高級ブランドの二択しか存在しない英国貴族のお嬢様、セシリア・オルコット。

 

 ・・・・・・シュールだ。とてつもなくシュールで、どうしようもないほどに場違い過ぎてるよ・・・。本当になんで庶民の買い物に付いてきたんだよぉ~(T-T)

 

 

 僕が慟哭まじりにそう訪ねたら、何故かわからないけどセシリアは「何故ですって!?」と、大仰な仕草とポーズを交えながらクルクル回りだし(バスの中なのに器用だね。さすがは世界最高戦力であるISのブルー・ディアーズが奏でるワルツで踊れる人だよ)

 

 

「わたくしの名はセシリア・オルコット! 萌えを愛し、萌えを求道する伝道師!

 ラウラさんとセレニアさんという萌えの塊母娘がそろってお洋服をお買い物にいく等という萌えイベントを見逃すことなど決して有り得ません!

 わたくしは、萌え有るところ何処にでも現れるハートスナイパー!

 百発百中! 萌える魂(ハート)を狙い撃ちですわ!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 この時点で今日のショッピングが本来予定していたのとは全然別物になっちゃったのが予測できてると思います。なので切ります。疲れたから。

 

 ・・・日常、カームバーック!!




追記:修正個所を探すために読み返しながら思った事。
 銀英伝1巻目の憂国騎士団によるウェンリー家襲撃事件が、オータムによる一夏襲撃と大差なかった気がしてきました。

 民間団体でもやれる程度の事を国際テロリストが「戦争」と称している辺りから見ても、やはり平和な時代と150年間戦争し続けてる国とでは一般の認識が違ってるみたいですね。
 

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