IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート)   作:ひきがやもとまち

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Fate版の2話目です。
誰も需要ないだろうなーとは思いましたが、始めちゃったので何となくね(●´ω`●)


Fate Ward worid BREAKEI 第2章「セイバー召喚?」

「問おう。貴女が私のマスターか?」

 

 白煙の中から現れた、鉄の鎧と青色の装束を身にまとう女騎士。

 それを見た遠坂凜は、賭けに勝ったことを確信した。

 

(ーーやった! 触媒なしのサーヴァント召喚で本命を引き当てちゃう私って、やっぱり選ばれし者だったのね!)

 

 通常であれば練達の魔術師でさえ目当ての英霊を引き当てるために幾年も前から縁の品を探し出そうと手間も人も金さえ惜しまずに投入しまくる聖杯戦争。

 その第五回目の開催において、優勝候補の一角でもあり開催場所の管理人をも兼任している御三家の一家、遠坂の現当主遠坂凜は触媒なしで英霊召喚の儀を執り行い、全7騎のサーヴァント中でも最優と名高い騎士のクラス セイバーのサーヴァントを本命としてガチな本気で引き当てられると信じていた。

 

 ・・・冷静になって考えてみれば物凄い自信過剰(あるいは自意識過剰)ぶりである。

 五大属性は確かにすごい才能ではあるし、魔術師の実力は努力よりも才能や家柄の方が影響するのも事実ではあるので全くの故なしというわけではないが、それでも彼女が未だ十代半ばの小娘に属する年齢であり、才能で劣っていようとも実績実力共に秀でている熟練の魔術師たちが多く参戦を希望しているのが聖杯戦争という魔術儀式であることを鑑みると、やはり彼女の自信は過信に直結していたと断じざるを得ない。あくまで、この時点の彼女の実力ではの話であるが。

 

「私の名前は遠坂凜よ。あなたはセイバーのサーヴァント、ってことでいいのよね?」

「はい、無論です。訳あって、今はまだ真名を明かせぬ身ではありますが、我が名誉に賭けて騎士の剣に誓いましょう。リン、私が貴女に勝利をもたらす剣と成らんことを!」

 

 おお、スゴい! 格好いい! やっぱり伝説や神話上の英雄を召喚するからにはこうでなくっちゃね!

 

 ・・・変なところだけ乙女チックでロマンチストでもある彼女は、セイバーの名に相応しい騎士の対応に心の底から満足しつつ、明日からの予定を頭の中で組み立て始める。

 

 何処かの平行世界では半人前のマスターから権限と礼呪を譲渡されて、事実上のマスターとなっていた遠坂凛がいたが、あちらのセイバーは自らが奉ずる騎士道故に主替えを犯すことが出来ずにマスターが変わった後も忠義立てし続けた。

 その結果、内実はともかく形式的には正式な主従関係を結ぶことが叶わなかった第五次最強マスターとサーヴァントは、世界の壁を越えたことで今ようやく正式に主従契約を結ぶことができたのだった。

 

「さぁ、始めましょう! 私たちの聖杯戦争をーー・・・・・・っ!」

 

 息巻きながら凛は、高らかに開戦の雄叫びと先勝の叫びを上げようとした。

 まさにその時!

 

 

 

 

 く~~~~~~~~・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 ・・・室内に、腹の音が鳴り響いた・・・。

 

 自分ではない。

 と言って、ここは遠坂屋敷の地下にある魔術工房。彼女たち以外の人物など存在していただけで丸わかりのはずだ。

 

 つまりは、要するにーー

 

「・・・すみません、リン。私は英霊として性質上の理由により霊体化ができず、常時肉体を得た状態で現界し続けなければならないため魔力補給のための食事は必須なのです」

「・・・・・・」

「あと、私の生前は王でしたので本来のサーヴァントが持つ意味合い『かしづく者』としての能力は期待しないで頂きたい。むしろ、私の方がそれらを必要としなければ生活することさえままならない域に達した王でしたので」

「・・・・・・・・・」

 

 堂々と『家事に関しては無能です』と言ってのけた己が従者の意味を持つサーヴァントに、そこはかとないハズレ臭を感じさせられながらも遠坂凛は不安を振り切って前を向く。

 

 ーー大丈夫! 強ければ大丈夫! 勝てばいいの、それでいいの! 勝ちさえすれば多少のことなら全然OK!

 

 前向きに前向きに、明るく楽しい栄光の勝利者ライフを夢見ながら第五次聖杯戦争の始まりをまつ腹積もりとなった凛は即日の内に方針変更を求められ、決断を迫られる羽目になる。

 

 

 セイバーの食費は意外なまでに・・・・・・高かったのである!

 

 

 

 

 

 ・・・・・・この日の夜、遠坂家とは違う建物でも英霊召喚が行われ、家事は出来るけど戦いはまるでダメな役立たずサーヴァントが寝ている少年の脇へと喚び出されていたのだが。

 

 それは少年の魔術刻印を呼び起こすには十分ではあっても、本来呼び出すはずだった英霊本人が別のマスターに召喚されたからこそ目覚めた類のものでもあるため正しき時間軸からは外れてしまっており、実は『運命の夜』は今夜であって昨日の晩ではなかったのである!

 

 

 

 

 そんなアホすぎる召喚の結果として衛宮邸では、この様な惨事を招いてしまう悲劇が勃発してしまっていたのであったーー。

 

 

 

 

「お、落ち着くんだ桜。別に俺は何もやましいことはしていない。本当だ、信じてくれ。俺がお前に嘘付いたことなんて一度としてないだろう?」

「ええ、わかってます。安心してください先輩。桜は先輩のことなら全部分かっていますから、昨日の晩に別の女の子を家に泊めてた可能性とか、今朝起きて目が覚めたときにいかがわしい行為に耽っていたかもしれないとか、つい今し方まで本人と一緒に過ごしてたりしたら私自分を押さえきれる自信がないなぁー、なんて事は少しも思ってませんから。ええ、安心していいんですよ先輩。全て私に任せていただければそれだけで十分に・・・」

「い、いやその・・・桜さん? ーー目が死んでて怖いんですけども・・・」

「気のせいです」

「・・・・・・・・・」

 

 ・・・何ともわかりやすいヤンデレヒロインとハーレム系主人公による遣り取りだった。

 

 が、定番のシーンによるお約束の配役も、抱えている裏事情が洞察できたら状況はやや変化し始めるものだ。

 そして、そう言うことに特化しているサーヴァントという極めて異端な存在も、この世には実在しているものなのである。

 

(なんとも平和的で青い春な光景ですねぇ~。・・・後輩さんの背後に黒い影さえ見えてなければ素直にギャルゲー展開万歳を叫べていたことでしょうに、サーヴァントというのは本当に難儀な商売です)

 

 見えない体で軽くため息をつく彼女の目にはクッキリと、桜の纏っている暗い影が

見て取れていた。

 

 

 名ばかりキャスターの(偽)には魔術制御の練度など判別できない。そもそも理解ができないのだ。

 どれほど修練を積んで完璧にまで押し上げられた凡才出身の一流魔術師であろうとも彼女の目には他の魔術師たちとの差違が判別できずに純粋な総量と破壊力でしか測る基準を持っていないのだ。

 

 だからこの時も彼女はそうした。そういう風にしか出来なかっただけではあるが、間桐桜の魔術師としての実力は放置して才能だけに焦点を当てて視ていた。

 だから解る。間桐桜の天稟と習熟度の不整合ぶりが。制御されていない訓練未修の分だけ露骨すぎるほどに。

 

 

(ーー確か、子供が過剰すぎるほど『よい子』である場合には、親から虐待を受けてる可能性があると聞いたことがありましたねぇ。

 それから、ダメな人ほど好きになる女性は幼い頃、父親からのドメスティックバイオレンスに晒されてきた可能性が高いんでしたっけ。

 才能豊かで見目麗しく、礼儀正しくて献身的。先輩先輩と慕って世話を焼いてくれる男の願望を具現化したような理想の後輩巨乳美少女、一皮剥けば中から出てくるのはコトノハさま並のヤンデレ属性・・・。

 止めに特定の個人に対しての異常すぎる執着心・・・これってもう決まりでよくね?)

 

 魔術とか神秘とかSFとかも関係してない理由でアッサリ真実に至ってしまう在り方には、死後も生前も関係ない。セレニアがセレニアで在り続けている限りは未来永劫変わりようがない絶対普遍の特徴である。・・・迷惑な場合も多いのではあるが。

 

 

 そういった数々の逸話が元になった彼女の保有スキル《軍略:混沌》は、この時も問題なく機能して事の真相をほぼ正確に見抜いていた。

 

 スキル軍略は元々、一対一の戦闘ではなく多人数を動員した戦場における戦術的直感力を意味しているスキルであるが、セレニアの生涯で大軍を指揮統率した経験など一度もない。指揮官としての悪名とは裏腹に『軍』を率いた逸話が存在しないのである。

 

 にも関わらず軍略がスキルとして割り当てられているのは、少数部隊を率いて第三次世界大戦を引き起こした要塞撃墜作戦などの異常すぎる行動が多すぎたからだ。

 何処の誰が十人にも満たない少人数で行う、テロではない正面切っての軍事作戦で世界大戦まで勃発されてしまうなど想像できるというのか? 不可能である。

 

 その不可解さと理解不能な恐怖心が、噂として聞こえてきていた大戦の発端である『得体の知れない誰かさん』の名前を媒介として具現化し、聖杯によって本人を中身に呼び寄せ擬人化した存在がセイバー(偽)にしてキャスター(偽)のサーヴァント 異住セレニアだった。

 そういう意味で彼女は英霊ではなく、さりとて単なる魑魅魍魎としては恨み辛みを持っていない。もたらす被害もハンパないことから『悪魔』か『魔王』か、もしくは『邪神』辺りが尤も妥当な評価だったりするのだが、召喚者である衛宮士郎がこのこと知ったらどうなるのだろう?

 死んでも生きてても、死んだ後まで他人に不安しかもたらしてくれない迷惑きわまる少女であった・・・・・・。

 

 

(普通に考えるなら50年に一度の魔術儀式のために調整されてる日本の平凡な地方都市内で、儀式の知識もないのに英霊を召喚した素人魔術師の少年と、才能豊かな訓練未習の魔術師見習いな女の子が儀式開催と同時期にひとつ屋根の下なんてことは有り得ないでしょう。偶然としては出来すぎてますからね。

 仮にこれが運命だとしたら、双方にとって不幸しかもたらさないよう運命の女神のアバズレによって調整されてるとしか思えない悲惨ぶりですね。反吐がでる。

 おそらくは、土地を管理できて影響力を所持している旧家の差し金によるもの・・・歴史有る古い家と資産を持った魔術師の家系であれば簡単に事が進められそうです。

 大方、御三家とやらのどれかが糸を引いての結果なのでしょうけど、哀れなものですね全くもう・・・)

 

 桜の背後に間桐臓硯の影を感じ取り、セイバー(偽)は我知らず肌が逆立ってくるのを押さえるのに苦労させられていた。

 

 ーー何時の時代、何処の社会であろうとも、子供を捨て駒にする親を“殺さないよう我慢するのは難しい”と感じながら・・・・・・。

 

(それに、日本の国土は他国に比べて比較にならぬほど狭いとは言え、個人の足では広すぎます。

 地方都市ひとつだけで五百万人口を誇るのが昨今なのですから、五百万分の一を当てずっぽうのビギナーズラックで引き当ててしまったと考えるよりかは、誰かの思惑が絡んでの意図的な結果と見た方が効率いいはずです。

 魔術師たちが自分たちを頭脳派として捉えているなら偶然性に依存しすぎるのは屈辱と感じるかもしれませんしね。

 そういう意味では彼女との縁は誰の思惑によるものであれ、衛宮さんにとっては+に働かせることが可能かもしれません。

 なんと言っても私自身が素人な訳ですし、知識は在れども野心に乏しい敵にとっての捨て駒さんは貴重であり重要です。是非とも味方か中立勢力として確保しておきたい。

 裏切る危険性はありますが、洗脳ありな魔術師合戦において其れ言い出したら切りないですからねー。分相応な地点で妥協して割り切り、諦めも交えながらお腹を割って話し合うのが一番の得策でしょう。

 人間、強かろうと弱かろうと、備えていようと居るまいと、死ぬときは死に、殺されるときには殺されるものなのですから)

 

 ヤン・ウェンリーの教えを人生のバイブルに据えている彼女は、この時点で安全策を放棄することにした。

 どう考えてもリスクと結果を釣り合わせるには、情報秘匿が邪魔にしかならないからである。

 

 士郎と自分の二人で勝ち残れるか生き残れるならそれでいい。が、ズブの素人である衛宮士郎と三流以下のサーヴァントが組んだとして何が出来るかと聞かれたら自殺まがいの特攻ぐらいしか思いつかない。

 

 

(もしくはテロだが、これは絶対やりたくないので無意識のうちに除外しておくセイバー(偽)ことセレニアだった)

 

 

 味方を得るには自分の方から歩み寄らなくてはならないのだし、もともと士郎と間桐桜は友人同士のようでもあるし問題はないだろう。・・・いや、あるけど。ありまくるけど仕方ないじゃん、他に候補を知らないんだし。

 

 土台、知らない土地にいきなり喚びだしておいて命がけの大魔術儀式に勝利するため戦え!なんて無茶ぶりが過ぎるのだ。

 戦いに勝つには周到な準備が欠かせないのに、どうして当日になっていきなり呼び出す!?

 事前に通知しておけよ、舞台となる戦場の地形図とか味方として頼れそうな人物の提示できる情報とかを添付してさぁ!

 

 聖杯は呼び出された英霊に対して儀式に必要な最小限度の知識供与をしてくれるって話だったじゃん! 言語はともかく現地情報少なすぎますよ!

 生きてくのに必要最小限度の情報を死者に与えてどうすんだよ!? 生活する分には困らなくなっただけじゃ戦争で戦えませんよ! 戦う兵士に必要な分を寄越しなさいよ、この役立たずのガラクタ欠陥マグカップ!

 

 

 ーーここまで聖杯に悪意をぶつけまくってくる英霊も過去に例が少ないだろう。

 所詮は現代に生まれた英霊モドキ。神秘に対する畏敬の念など微塵もなく、性能のみを評価して酷評する。

 

 現代日本の資本主義は、少年少女の情操教育に良くない影響を及ぼし始めていることを今少し大人たちは実感すべきではないかと頓に思われる昨今であった。

 

 

(ーーま、とりあえず今は姿を現すのが先決ですか。その後のことはなるようになるでしょう。どうにもならなければ頭をかいて誤魔化しながら消え去るだけです。

 所詮サーヴァントは魔術師たちが聖杯戦争で勝つためだけに期間限定で呼び寄せる本体の劣化コピー品。クラスによって人格変わる辺り、本当に本人を元にしているのかも怪しい産物なわけですし、自分の命を捨て駒にするには十分すぎるほど安っぽい仮初めの命です。

 最終的に願いが叶えられるのは一組だけのバトルロワイヤル方式では、六組は殺されること前提で呼び出されている計算にもなりますからねぇー。

 燃やされるためのリアル藁人形として短期雇用されたと思えばどうという事もないでしょうよ)

 

 

 ーーでは行きます。

 

 

 

「ねぇ、先輩。答えてください。私にいったい何を隠してるんですか? 誰を隠していらっしゃるんですか? 教えてくださいよ先輩。先輩先輩先輩センパイせんぱーー」

 

「あの~・・・。その辺で止めておかないと本性バラす前にバレちゃいそうな顔色になって来ちゃってますよ? お二方ともにね」

「「!!??」」

「せ、セレニア!? お前いつからそこに居て・・・!?」

「あ、貴女いったい誰です、か・・・!! この魔力量はえいれーー」

「ストップ。そこから先は言わない方がよろしいでしょうね。貴女のお立場を考えるので在れば」

「!?」

 

 セレニアの保有スキル(嘘)『知ったかぶり』が発動した!

 間桐桜は怯んで唇を噛み、黙り込んでしまった!

 

「桜・・・? 一体どうしーー」

「衛宮さん。それ以上先へ踏み込むにはあなたにも覚悟が必要になりますよ? 友人の抱える秘密を共有しながら共に苦しみ立ち向かわなければならなくなる覚悟がね。

 あなたにその勇気と覚悟は存在してますか? 衛宮士郎。答えなさい!」

「!!! あ、あるさ勿論! 当然だ! だって桜は俺の大事な後輩で、慎二の妹でもある子なんだから!」

「!!!! せ、先輩・・・!!(ジ~ン・・・(≧∇≦*)!!)

 

 セレニアの保有スキル(嘘)『思春期少年の純粋すぎる正義感は乗せやすくて楽でいい』と『恋する女の乙女心はチョロい』が発動した!

 衛宮士郎は訳分からないながらも雰囲気に乗せられて自ら退路を断ってしまった!

 間桐桜は愛しの先輩の一言ですべてを水に流して妄想世界に浸っている!

 

「良い覚悟です衛宮さん。ーーさて、こうなると問題になりえるのは貴女だけです間桐桜さん。衛宮さんが示してくれた誠意に対して、貴女は何を持って報いるのが等価交換だと考えるのですか?」

「!! そ、それは・・・ーーいえ、それよりも貴女いったい何処のどなたで、なぜ先輩の家に・・・」

「おや? 意外ですね。貴女は自分への想いを声に出して伝えてくれた先輩に応えるよりも、私のような赤の他人の事情を聞く方が大事で大切で優先されるべき事柄であると、そう判断されているのですか?

 自分が相手に想いを伝えるのは相手からの告白よりも、私の正体開示よりも上位にある、他の何よりも守られ尊ばれ尊重されなければならない崇高な願いなのであるからと?」

「そ、そんなこと言うつもりはありません! 私はただ先輩の自宅警備に対する不用心さを心配しているだけでーー」

「将来的には自分との共有財産になるからですか?」

「違います! そ、そんなつもりは全然わたしはまったくこれっぽっちも・・・でもでも、そう言うのも悪くはないの・・・かな?」

「(よっし! 誤魔化せた!)」

 

 セレニアの保有スキル(嘘)『論理のすり替え』発動!

 間桐桜は自分に都合の良い妄想を提示されて夢見心地になっている!

 

「・・・別にすべての事情を話さなければいけない、などと言うつもりはありません。

 あなたが今、言える範囲だけで良いのです。それだけでも貴女の誠意は衛宮さんにも伝わるでしょうし、彼はそれだけでも貴女への想いを新たにしてくれますよ、きっと。

 ーーね? そうですよね、衛宮さん?」

「え? あ、いや、俺としては桜が困っているなら全部話してもらって助けてあげたいなとーー」

「・・・先輩、わたし・・・先輩が思っているほど良い子じゃないですけど・・・それでも、今伝えられることは全部お伝えします。だから・・・桜のことを嫌いにならないで・・・」

「うっ!! も、もちろんだ桜。だから、もう泣くな。桜が悪いヤツかもしれないってコトは、よく分からないなりによく分かったから泣くな。な!? 今話せる分だけで満足しとくから!!(やけっぱち)」

 

 セレニアの保有スキル(嘘)『他人を使って同意を得る』発動!

 衛宮士郎の正義感は、女の子の涙の前に譲歩せざるを得なくされてしまった・・・。

 

「もちろん、私から話してしまっても、私は困りませんし構わないんですけどねぇ。

 ねぇ? そうでしょう間桐さん。私から貴女の話すことが出来ない悩みや迷い、様々な想いなんかを代理として語って差し上げましょうか?

 ーーたとえば、乙女らしくも可愛らしいポエムとかを・・・・・・」

「わーっ! わー! わーーーーっ!! い、言わないでください言わないでください言わないでください! って言うか、どうして貴女がそのことを知っているんですか!?」

「魔術っぽいナニです。(嘘です。カマかけただけです。

 如何にもな見た目の人でしたし、外れてたら有ること無いこと無いこと本人の居ないところで告げ口しまくる事を示唆するだけで済む話でしたのでね。ハッタリは相手から冷静さを奪ってからが基本です)」

 

 

 ・・・・・・こうして間桐桜との同盟締結までは無理だったが、蚊帳の外に置かれて桜が黒化する危険性のみは減少させられることが出来た。

 が、しかし。互いが抱える悩み数は減った分より増えた分の方が多いので、意味があったかどうかまでは今一わからない。

 

 ただ一つ確かなコトは、セイバー(偽)にも大きな悩みが出来たことである。

 

 

(・・・・・・この後、私の正体開示はどのような形ですればいいんでしょうかね・・・。どんなタイミングでどう言っても問題が増える気しかしないんですけど・・・。

 しまったなぁ~。衛宮さんの味方を増やすことしか考えてなかったから、自分のことまで想い至りませんでしたよ。あはは~~、・・・マジどうしましょうかね、この混沌化した状況・・・誰かタステケー)

 

 勝機を逃がさないため決断すべき時にはためらわないが、絶好の機会に直面した瞬間に先の先まで展開を予測して予定した策を立てられるほどの才能あるなら、生きてる間に夢叶えられてるわ糞ボケがぁ!な、セレニアには優先順位的に下位に位置するオリジナルの影でしかない自分のことなどマスターの味方確保の前では些事だったから無視してしまい今になって激しく後悔しまくっていた。

 

(間桐さんが話せる事情を語り終えるまでに、何か良い案思いつくといいですねぇ~)

 

 人のためには自己犠牲を厭わない者同士なあたり、意外とよい主従関係が築けそうな駄目サーヴァントと駄目マスターによる聖杯戦争は、今ようやく始められそうなところまで来ることが出来たのだった!

 

 ・・・ってぇ、遅いよ! 遅すぎるよ! お前がスローディーだよぉぉぉっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・そして、所変わって『柳洞寺』。

 

「ーーああ!? また失敗しちゃったわ! どうして上手くできないのかしら・・・。この程度の出来では宗一郎様に捧げる宝物として相応しいとは到底言えない・・・。

 ・・・ちょっとアサシン! もっとちゃんと教えなさいよね! どうしたら私にも上手く、『美味しい目玉焼きが作れるようになるのかを』!!」

「・・・・・・くっ! (何故よりにもよって悲願である標的を目の前にしながら、私は小山の山門で青空クッキング教室などを開いてやらなくてはならなくなっているのか!

 ちぃっ! これもそれも全てアイツが悪い! アイツさえ居なくなればこの様な苦行を二度と味あわされなくて澄むようになーー)・・・って、こらキャスター。私に隠れてバレないように隠し味を入れようとするんじゃない。素人が料理をするときに必ずやりたがるお約束ネタを君まで真似する必要性などなかろうに・・・。

 だいたい、君がそれをやる事で何処の誰に需要があるのかね?

 キャラ的にも年齢的にも外見的にも年齢的にも年齢的にも年齢的にも・・・・・・」

「ふんっ!」

「ぐはっ!?(胸骨を飛び出させられる)」

 

 ・・・アサシンになってもアーチャーはアーチャー、エミヤシロウはエミヤシロウ。

 やっぱり幸運E(つまりは、運が悪い)は健在でした。


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